「2025年の崖」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
レガシーシステムは企業の足かせとなり、DX推進や効率的なシステムの運用管理の妨げとなります。レガシーシステムからの脱却が求められますが、一方でその取り組みは決して簡単なものではありません。
今回は、レガシーシステムについて、その概要と課題、脱却のための解決策を詳しくご紹介します。
「崖」とされた2025年はすでに過ぎましたが、2026年現在もレガシーシステムの問題は解決しておらず、システムの老朽化と有識者の退職はむしろ進み続けています。一方で、AIによるコード解析の実用化により、これまで刷新の最大の壁だった「現状把握のコスト」を下げられるようになり、脱却の選択肢は広がっています。当記事では、こうした2026年時点の変化も踏まえて解説します。
まず、この記事の要点を1枚にまとめると次のとおりです。
| 項目 | レガシーシステムの要点 |
|---|---|
| レガシーシステムとは | 長期間の利用で技術や構造が古くなり、改修・運用・データ活用が困難になった情報システム |
| 放置するリスク | 運用保守コストの高止まり、属人化、法改正・セキュリティ対応の遅れ、DX推進の停滞 |
| 生まれる主な要因 | 度重なる改修による複雑化、開発会社依存によるブラックボックス化、部署ごとの部分最適化、属人化 |
| 脱却の主な選択肢 | レガシーマイグレーション(環境の移行)/レガシーモダナイゼーション(刷新)/クラウドサービスの活用 |
| 2026年時点の変化 | 「2025年の崖」を過ぎても問題は継続。AIによるコード解析で現状把握のコストが下がり、刷新の選択肢が広がった |
| 最初にやるべきこと | 現状把握。コードと業務の両面から調査し、刷新・延命・撤退を根拠を持って判断できる状態をつくる |
なお、当社スパイスファクトリーでは、AIによるコード解析と現場調査を掛け合わせて「刷新・延命・撤退」の判断を支援するAIモダナイゼーション支援サービスを提供しています。刷新すべきか迷われている方は、記事と併せてご覧ください。
なぜ近年、「レガシーシステム」というキーワードが注目されているのでしょうか。
ひとつの契機となったのが、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(新しいタブで開きます)」です。
このレポートでは「レガシーシステムの存在により企業は最大で12兆円/年の損失が生じる」と警告し、「企業の成長や競争力強化のためにはレガシーシステムから脱却していく取り組みが必要である」としています。
多くのレガシーシステムはブラックボックス化しており、そのメンテナンスコストは高止まりしがちです。また、システムから生み出されるデータも活用しにくい状態となっています。
企業がDXを進め、競争力を強化していく際に、レガシーシステムが障壁となります。レガシーシステムからの脱却が求められているといえるでしょう。
DXレポートが「崖」と位置づけた2025年はすでに過ぎました。しかし、レガシーシステムの問題が解消されたわけではありません。刷新が完了しないままシステムの老朽化と有識者の退職がさらに進み、課題がより深刻になっている企業も少なくありません。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)でも「レガシーシステムモダン化委員会」を通じて企業のモダナイゼーション事例の収集・公開が続けられており(後述の事例でも同委員会の公開資料を参照しています)、レガシーシステムからの脱却は引き続き産業界全体の課題となっています。
一方で、2026年時点の大きな変化として、生成AIの実用化が挙げられます。従来は人手で行うしかなかったソースコードの解析やドキュメントの復元にAIを活用できるようになり、刷新の大きな障壁であった「現状把握のコスト」が下がり始めています。「調査だけで多額のコストがかかるため刷新に踏み切れない」という前提そのものが変わりつつあるのです。この点は後述の「AIを活用したモダナイゼーション」で詳しく紹介します。

レガシーシステムとは、企業や組織において長期間にわたり使用され続けてきた情報システムやソフトウェアのことを指します。
導入当初は最先端であったシステムも、技術の進化やビジネス環境の変化に伴い時代遅れのものとなってしまいます。
多くの場合、レガシーシステムは自社の業務プロセスに深く結びついており、その置き換えや更新が困難です。また、古い技術が利用されているケースも多く、エンジニアの確保が困難であったり、メンテナンスのコストが高くついてしまったりといった問題もあります。
現代のビジネス環境に合わせたスピード感のある対応や、最新の技術を活用した効率的なシステム活用が求められる中、レガシーシステムの存在は大きな課題となります。
ここでは、レガシーシステムが生まれる要因を以下の観点から解説します。
企業が利用するシステムは、時間の経過とともに新しい機能の追加や改修が繰り返されていき、システムは複雑化していきます。
すでに利用されていないプログラムや機能がそのままとなっていたり、繰り返し改修を行ったことで無駄の多いプログラムとなっていたりと、初期設計の目的や構造が失われ、パッチワークのような状態になっていることも多いといえます。
多くの企業では社内にエンジニアが存在せず、外部の開発会社へと委託を行い、システムの開発や運用を行っています。この状態だと、外部の開発会社に頼りきりとなり、どうしても社内で知識やノウハウが蓄積されていきません。
システム内部の仕組みやプログラムが十分に理解されないまま運用された結果、開発会社の人員入れ替えや事業撤退などをきっかけにメンテナンスやアップデートが困難になってしまいます。
企業内の各部署がそれぞれの要望に基づいてシステムを最適化していくことも、レガシーシステムが生まれる原因となります。
部署ごとに異なる仕様や機能が追加され同じような機能が複数存在してしまったり、処理プロセスが複雑化したりと、全体的な整合性が失われていきます。
システムに精通した一部の人材に頼ってしまうケースも、レガシーシステムが生まれる原因となります。
システムの運用には長年の経験や専門知識を持つ担当者が必要ではありますが、こうした担当者が退職や異動でいなくなったことをきっかけに、システムの維持や改修が困難になってしまいます。
このようないわゆる「属人化」もまた、レガシーシステム化の原因となります。

それでは、レガシーシステムの存在は、企業にどのような問題を引き起こすのでしょうか。
以下では大きく4つの観点から解説します。
プログラムが複雑化し、またブラックボックス化してしまったレガシーシステムは、運用保守コストが増加してしまいます。
複雑化したシステムは「このプログラムを修正することでどのような影響が起きるか分からない」状態となります。結果として、メンテナンスのたびにコストと時間をかけて大規模な影響調査を行う必要が生じます。
また、古い技術が使われている場合には、その技術に精通したエンジニアの確保も困難です。人材の確保難もまた、レガシーシステムのメンテナンスコストを上昇させる要因の一つとなります。
ITが進歩し、様々な製品やアーキテクチャが生み出されている一方で、レガシーシステムは古い技術のまま運用されています。
結果として、同じ処理であってもレガシーシステムでは多くのコンピュータリソースを消費したり、高いライセンスコストが必要になってしまったりします。
また、デザイン面やUI面が過去のものとなっているケースもあります。このようなシステムはユーザーの操作性も悪く、業務効率が悪化してしまいます。
長期間運用されてブラックボックス化してしまったシステムは、特定の担当者しか管理を行えない状況となってしまいます。
結果として、さらに特定の担当者に依存する属人化が進みます。特定の担当者のみがシステムの内部構造や処理方法に関する知識を持っている状況において、その担当者が退職や異動、病気などで不在になると、システムの維持や改修が困難となってしまいます。
メンテナンスが困難であることから、レガシーシステムは最新の法規制やセキュリティ基準に適合するための更新を実施しにくいといえます。
新たな法規制が実施される場合、施行日までにシステムを改修し、新たな規制に対応しなければなりません。しかしながら、レガシーシステムの改修には期間もコストも必要であり、迅速な対応は困難です。
また、古い技術が利用されていることから、セキュリティの観点にも注意が必要です。サポートが終了した古いソフトウェアを継続利用してしまっているケースもあり、サイバー攻撃を受けるリスクもあります。
加えて、新たに発見された脆弱性に対応するためには迅速な改修が必要ですが、レガシーシステムでは迅速な対応は難しいといえるでしょう。
一方で、レガシーシステムの問題を解決することは、必ずしも簡単ではありません。
なぜでしょうか?
レガシーシステムを刷新するためには投資が必要となります。特に企業の基幹システムがレガシー化してしまっている場合、刷新のためには大規模な投資が必要です。投資コストはレガシーシステム刷新の意思決定を妨げる原因となりがちです。
また、古いアーキテクチャから最新のアーキテクチャへと移行するためには、データの移行やユーザーのトレーニングなど、様々なタスクも必要となり、IT部門・利用部門の人的リソースも必要です。
これらのコストは短期的には企業にとって大きな負担となり、レガシーシステム問題の解消を躊躇させる要因となります。
さらに、レガシーシステムの刷新に対する投資対効果は理解されにくい点も課題です。
「すでに導入されており、業務でも問題なく利用されているシステムをリプレイスしても、新たな価値は生まれないのではないか」という認識を持たれてしまい、レガシーシステムの刷新にGoが出ないケースもあります。
このように、多額の投資を行ってレガシーシステムの刷新を実施する正当性が理解されにくいという点も問題です。
一般的にシステムの移行を行う際には、現行システムを分析して新たなシステムにどのような機能を持たせるか、要件定義を行います。
一方で、レガシーシステムでは設計書などのドキュメント類が整備されていないことも多く、現行システムの分析が困難となりがちです。
結果として、プロジェクトのスタート地点となる要件定義に多くの時間やコストがかかってしまいます。
このようにレガシーシステムの刷新にあたっては様々な課題があります。
しかし、レガシーシステムの問題は放置できません。メンテナンスコストの増加やシステムパフォーマンスの低下、セキュリティリスクの増大など、レガシーシステムは企業の競争力や信頼性に影響を及ぼします。
レガシーシステムの刷新は一時的な負担を伴いますが、将来的な利益とリスク軽減を考慮すれば必須で解決すべき課題であると言えるでしょう。
なお、ここで挙げた「刷新のコスト」や「要件定義の困難さ」の多くは、「現行システムの中身が分からない」ことに起因しています。この現状把握の工程は、近年AIによるコード解析で大きく効率化できるようになってきました。次章の「AIを活用したモダナイゼーション」で詳しく解説します。

それでは、レガシーシステムから脱却するためにはどうすればよいのでしょうか。
以下では、解決のための具体的なアプローチをご紹介します。
レガシーシステムから脱却するための一つのアプローチ例は、レガシーマイグレーションです。レガシーマイグレーションでは、レガシーシステムを新しいプラットフォームやクラウド環境へとそのまま移行します。
システムを刷新する際には、「現行の機能を担保できるのか」「データ移行はうまくいくのか」といった様々なリスクが発生します。レガシーマイグレーションにより現行の仕組みをそのまま新しい環境に移すことで、これらのリスクを抑えられます。
レガシーモダナイゼーションは、既存のシステムを最新の技術やアーキテクチャに改修する手法です。
システムのアーキテクチャを最新化したり、新しいプログラミング言語やフレームワークを導入したりと、システムの全体的な設計を見直しつつ、新システムへと移行します。
レガシーモダナイゼーションは、さらに様々な手法に分類されます。具体例としては下表のとおりです。
| 手法 | 概要 |
|---|---|
| リビルド | 既存のシステムを完全に再構築し、新しい技術やアーキテクチャを使用して一から作り直す手法。 |
| リプレイス | 既存のシステムを新しい商用ソフトウェアやパッケージソリューションで置き換える手法。 |
| リライト | 既存のシステムを新しいプログラミング言語やフレームワークで作り直す手法。 |
| リファクタリング | 既存のシステムの内部構造を改善し、プログラムの品質やパフォーマンスを向上させる手法。 |
これらのアプローチによりシステムの柔軟性や拡張性を向上させ、メンテナンスコストの削減と迅速なメンテナンスの実現を目指します。
2026年時点で注目したいのが、AIによるコード解析を活用したモダナイゼーションです。
従来のモダナイゼーションでは、現行システムの調査・分析を有識者へのヒアリングと人手によるコード読解に頼るしかなく、この工程だけで長い期間と大きなコストを要していました。ドキュメントが失われ、当時の担当者も離れてしまったレガシーシステムでは、そもそも調査が立ち行かないケースも珍しくありません。
AIによるコード解析を活用すると、ソースコードに書かれた「事実」(機能の一覧、処理の流れ、システム間の依存関係など)を機械的に洗い出し、失われたドキュメントを復元していくことができます。属人的な勘に頼るしかなかった現状把握を、誰が見ても同じ根拠にたどり着ける形に変えられる点が大きな進歩です。
ただし、AIによる解析だけでは十分ではありません。コードには「なぜこの仕様になっているのか」「現場で実際にどう使われているのか」といった業務の実態までは書かれていないためです。そこで、AIによるコード解析と現場への業務調査・ヒアリングという2つの視点を掛け合わせ、さらに解析結果をエンジニアがレビュー・検証することで、投資判断に耐える精度の現状把握が可能となります。
こうして得られた根拠をもとに「刷新」「延命」「撤退(廃止・統合)」の3つの選択肢を比較検討することで、勘や経験則ではなく、データに基づいてシステム刷新の意思決定を行えるようになります。
当社スパイスファクトリーでは、このアプローチによるAIモダナイゼーション支援サービスを提供しています。サービスの内容をまとめた紹介資料もご用意していますので、併せてご覧ください。
近年では、新たにシステムを開発せずともすぐに利用できるクラウドサービスが多く登場しています。これらを利用することもまた、レガシーシステムから脱却するための効果的な手法の一つです。
自社の業務に適合するクラウドサービスがあれば、積極的に導入していくことで、コストを抑えてレガシーシステムからの脱却を実現できます。

レガシーシステムからの脱却において困難となりがちな要件定義ですが、その解決方法の一つとして、「要件定義段階からUXデザイナーが参画する」というアプローチがあります。
要件定義においては「ユーザーとの目線合わせ」「関係者の巻き込み」「要件の精緻化」といった観点が重要ですが、UXデザイナーによりインセプションデッキやワイヤーフレーム、プロトタイプも作成しながら、ユーザーの要望を可視化することができます。
また、可視化により関係者での議論や意見出しも活発化させることができます。
このように、要件定義段階からUXデザイナーが参画するメリットは大きいといえるでしょう。
なお、当社スパイスファクトリーでは、豊富な実績をもつUXに関するプロフェッショナルが要件定義の段階から参画し、ユーザー視点からのシステム開発を支援しています。アジャイルマインドを意識し、素早くアウトプットし良い失敗を繰り返すことで、要件定義の精度を高めていきます。
また、当社は総合システムインテグレーターである株式会社DTSと資本提携を行い、同社が提供するシステム基盤とユーザー体験を重視した直感的で使いやすいシステムの設計を融合させるDXソリューションの展開も進めております。
※参考:スパイスファクトリー、DTSと資本業務提携を締結(新しいタブで開きます)
レガシーシステムの刷新にあたり検討したいのが、PoCの活用です。
PoCとは、「Proof of Concept」の略で概念実証のことを指します。ビジネスアイデアや技術の実証の他、レガシーシステムの刷新にあたっても活用できます。
PoCにより、新たなシステムが業務と適合するかを検証しつつ、システム刷新に向けた課題を洗い出すことで、失敗のリスクを抑えられます。
特に基幹系システムの刷新など、リスクの高いプロジェクトにおいてはPoCの実施を検討すべきでしょう。
https://spice-factory.co.jp/tips/poc_step/
これらの取り組みを進めていく上で必要となるのが、人材育成や採用です。
レガシーシステムの刷新にあたっては、最新のアーキテクチャや技術に精通した人材や、プロジェクトマネジメント能力を持った人材が求められます。これらの役割を担う候補者への研修が有効となります。
また、社内で十分に人材が確保できない場合は、レガシーマイグレーションやレガシーモダナイゼーションに精通した外部人材の活用も検討すべきでしょう。
特にレガシーマイグレーションやモダナイゼーション、DXの推進においては、アジャイルの知識に精通した人材も重要となります。以下の記事では、DXとアジャイルの関係性について解説しておりますので、併せてご覧ください。
https://spice-factory.co.jp/tips/agile_dx_reason/
最後に、レガシーシステムの刷新に成功した具体的な事例をご紹介します。
グリーティングカードや慶弔関連ギフトなどの通信販売事業を営む佐川ヒューモニー株式会社様では「様々なライフステージにおいて人と人を結ぶサービスとして選ばれる企業」を目指し、人生の様々な節目に大切な人に想いを伝える電報類似サービス「VERY CARD」を提供しています。
一方で、VERY CARDを運用するためのシステムは2002年の開発当初から継続利用されており、システムが複雑化してしまったことで商品追加やシステム改修に時間がかかるという課題がありました。
そこで同社では、同システムを最新のクラウド技術基盤を利用したシステムへと移行するべく、刷新プロジェクトを立ち上げました。当社スパイスファクトリーは本プロジェクトを支援させていただき、アジャイル型によるシステム開発やUI/UXの見直しなどを支援させていただきました。
同社では、今後もシステムを基盤に、お客さまにとってより利用していただきやすいサービスの提供を目指して機能の開発・改善を進めていくとのことです。
https://spice-factory.co.jp/works/18254/
「ガラス」「電子」「化学品」など、幅広く事業を展開するAGC(旧旭硝子)では、これまでメインフレームで運用してきた自社のシステムをAWS基盤へ移行しました。
本取り組みはレガシーマイグレーションにより、既存のシステムに大きな変更を加えず、AWSへ移行する形で進めました。
AWSへの移行により、システムの運用コストは約40%削減。また、5年ごとのハードウェア更改作業も不要となり、システム管理部門の負荷は大きく低減されています。
※参考:独立行政法人情報処理推進機構「レガシーシステムモダン化委員会 第3回 事例紹介3(新しいタブで開きます)」より
大手システムインテグレーターである富士通では、「ITガバナンスの不在」「個別最適システムの乱立」といった課題を解決するべく、自社システムのモダナイゼーションを実施しました。
同社では、各部門が構築したシステムなど合計で約4000システムが運用されていました。これらに必要な運用コストやメンテナンスコストを削減しつつ、迅速な改修対応やデータ活用を実現すべく、経営主導でモダナイゼーションを実施。システムの集約や廃止により約1,000システムにまで圧縮しました。
※参考:独立行政法人情報処理推進機構「レガシーシステムモダン化委員会 第3回 事例紹介2(新しいタブで開きます)」より
当社スパイスファクトリーは、AIによるコード解析と人間中心設計の知見を掛け合わせたモダナイゼーション支援を行っています。その中で、ご相談いただく企業に共通して見られる「レガシー化の典型的な症状」がいくつかあります。
こうした症状に心当たりがある場合にまず必要なのは、いきなり刷新プロジェクトを立ち上げることではなく、現状を正確に把握し、刷新・延命・撤退を根拠を持って判断できる状態をつくることです。当社のAIモダナイゼーション支援サービスは、対象システムのソースコードとヒアリングから現状把握を始められるため、ドキュメントが失われてしまったシステムでもご相談いただけます。
稼働年数だけで機械的に決まるものではありません。「サポートが終了した技術・製品に依存している」「仕様を把握している担当者がいない、またはドキュメントが実態と乖離している」「小さな改修でも影響調査に多くの時間とコストがかかる」「他システムとのデータ連携や活用が難しい」といった状態に複数当てはまる場合は、レガシーシステムとして対策を検討すべきといえます。
一律の正解はなく、事業とシステムの状況を突き合わせて判断します。具体的には、そのシステムが支える事業の今後の位置づけ(成長領域か、縮小予定か)、システムの技術的な寿命(サポート終了時期やエンジニア確保の見通し)、放置した場合のリスクとコストを比較します。このとき「刷新」「延命」の2択ではなく、「撤退(廃止・他システムへの統合)」も含めた3つの選択肢を、現状把握で得た根拠をもとに比較することが重要です。
レガシーマイグレーションは、現行システムの仕組みを大きく変えずに新しいプラットフォームやクラウド環境へ「移行」するアプローチです。一方、レガシーモダナイゼーションは、アーキテクチャやプログラミング言語の見直しを含めてシステムを「最新化」するアプローチで、リビルド・リプレイス・リライト・リファクタリングなどの手法があります。移行リスクを抑えたい場合はマイグレーション、複雑化や技術的負債そのものを解消したい場合はモダナイゼーションが向いています。
対象システムの規模・複雑さ・選択する手法によって大きく変わるため、一概には言えません。重要なのは、いきなり刷新全体の費用を見積もろうとするのではなく、「現状把握(調査・分析)」と「刷新の実行」を分けて、段階的に投資判断を行うことです。特に現状把握のフェーズは、従来は人手による調査に大きなコストがかかっていましたが、AIによるコード解析の活用により小さく始めやすくなっています。
当社のAIモダナイゼーション支援サービスを例にすると、AIによるソースコードの解析で機能や依存関係を洗い出して失われたドキュメントを復元し、並行して現場へのヒアリングでコードには残らない業務の実態を把握します。解析結果はエンジニアがレビュー・検証したうえで、刷新・延命・撤退の判断材料として整理します。詳しくはサービス紹介資料をご覧ください。
今回は、レガシーシステムの課題やその解決策、実際の解決事例などについて詳しくご紹介しました。
特に歴史の長い企業であればあるほど、レガシーシステムは自社の負債として経営に大きな影響を与えます。機動的な改修が難しく、また維持コストも高止まりしてしまうレガシーシステムからの脱却が必要です。
当社、スパイスファクトリーでは、レガシーシステムからの脱却を目指されるお客さまの支援を実施しています。
システム刷新に向けた要件定義やUX再設計など、上流からご支援が可能です。レガシーシステムの刷新に悩まれている企業の方は、ぜひ当社までお声がけください。
また、「刷新すべきか延命すべきか、判断の根拠が揃わない」という段階からのご相談も可能です。AIによるコード解析と現場調査を掛け合わせたAIモダナイゼーション支援サービスの詳細は、サービス紹介資料と併せてご覧のうえ、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
当社は【2025年最新版】DX支援おすすめ企業4選(新しいタブで開きます)に掲載されています。
アジャイルなシステム開発、デザイン、ブランディング、マーケティングを得意とし、全方位から企業の DX を支援するスパイスファクトリー株式会社です。
いわゆる多角化戦略なども念頭に、新規事業に果敢に取り組む企業も少なくありません。一方で、新規事業開発は難しい取り組みであり、なかなか上手くいっているとは言えないのが日本の現状ともいえるでしょう。
新規事業開発に有効な手法として、DX の考え方に基づくデジタル技術の活用が考えられます。
当社ではシステム開発やデザインなど含めた新規事業支援も行っておりますので、この記事では新規事業に DX をうまく取り入れる方法を事例とともに紹介していきます。新規事業をどう進めていけばいいのか迷っている方のお役に立てれば幸いです。

新規事業開発における一つの選択肢に、デジタル技術の活用という方法が挙げられます。近年では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の名のもとに多くの企業がデジタル技術を活用した新規事業の開発を進めていますが、なぜこのような流れが生まれているのでしょうか。
https://spice-factory.co.jp/development/new-business-about/
最近では耳にする機会も増えた DX という言葉ですが、まずはその定義をご紹介します。経済産業省によれば、DX は以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
引用元:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」(新しいタブで開きます)p1より引用
現代においては、スマートフォンやインターネット通した製品選択行動・購買行動の割合が増えており、またデジタルネイティブ世代の年齢が上がっていくにつれて主要な購買層となっている状況があります。このような中では、ビジネスを進めていくうえでデジタルの活用は不可欠となっている状況です。
一方で、旧来の日本企業においては、デジタルの活用が進んでいない現状があります。そこで、DX の考え方に基づき、企業文化・風土面まで含めてデジタルの利用が当たり前のものとなるように変革しつつ、ビジネスモデル構築においてデジタルを活用していく取り組みが求められています。
新規事業開発においてデジタル技術の活用が有効な理由を端的にいえば、「従来には存在しなかった多様な顧客体験を提供できるから」です。
たとえば卑近な例を挙げると、イベントや展示会に参加する際に、チケットを印刷して持っていくことが減ったと感じられている方は多いのではないでしょうか?
予約時に QRコード付きのデジタルチケットをスマートフォンに送っておけば「チケットを印刷し忘れた」「チケットを家においてきた」ということもなくなりますし、主催者側は予約の管理から来訪者の確認まで、一貫して対応できるようになります。
このように、デジタル技術によって新たな体験を提供できるようになりました。顧客への「新たな体験」・「新しい価値」の提供はまさに企業が新規事業に取り組む目的であるといえるでしょう。
新規事業開発においてデジタル技術は絶対に必要というわけではありません。しかし、顧客の体験価値を高めたり、新たに価値を感じてもらえるサービスを提供するためにデジタル技術の活用が非常に有効であることは感覚的にもご理解いただけるのではないでしょうか。
こうした背景から、新規事業開発においてデジタル技術は重要視されているのです。
一方で、日本企業における DX の進展状況には課題があります。ビジネスモデル変革や新たな価値を生み出す取り組みは少ない状況です。
コンサルティング企業である PwC が実施した調査※1では、DX に十分な成果が出ていると回答した企業はわずか 10% にとどまっており、約30% の企業は成果が出ていないと回答するという結果も明らかとなっています。
また、デル・テクノロジーズ社が実施した調査※2では、91.3% もの企業で DX が進捗していないという結果も判明しています。さらに、62.2% の企業が PoC(Proof of Concept:概念検証)(新しいタブで開きます) に取り組んだものの完了していない、もしくは完了する見込みがないと回答しており、残念ながら DX の初期のステップで躓いている企業も多い現状が見えています。
※1参考:PwC社「日本企業のDX推進実態調査2022(新しいタブで開きます)
※2参考: デル・テクノロジーズ社「DX動向調査2021」(新しいタブで開きます)

新規事業に DX を取り入れていくためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。以下では、新規事業推進と DX、それぞれの取り組みにおいて重要なポイントを取り上げます。
新規事業推進におけるポイントは多く存在しますが、ここでは2つのポイントを取り上げて紹介します。
新規事業開発におけるアプローチ方法は大きく「課題解決型」と「問題提起型」に分かれますが、前者のアプローチの場合、新規事業開発は顧客の課題を特定することから始まります。
まずは、ヒアリング活動(インタビュー・アンケート)や観察により顧客の課題・悩みを徹底的に洗い出します。収集した情報をもとにユーザーの課題を解決できるサービスや事業のアイデアを考えていきます。挙げたアイデアは、フレームワークを利用して体系的に整理することをおすすめします。新規事業開発に利用できるフレームワークは数多く存在しますが、一例としては VRIO分析が挙げられます。VRIO分析とは、自社の経営資源を以下の4つに分類し、分析を行うものです。
考えたアイデアを VRIO のそれぞれの要素に当てはめて整理してみることで、ビジネスとして有望か、既に他社がやっていてこれからの参入は難しそうだ、など評価を行うことができるでしょう。
PMF(Product Market Fit)とは、製品やサービスが特定の市場において適合している状態を指す言葉です。PMF の達成状況を計測することで、顧客が欲しい製品・サービスを提供できているかどうかを判断します。
PMF が達成されていれば、集客などを加速させビジネスを大きくしていくことが見込める一方で、PMF が未達成の状態では、いくら広告や集客に力を入れても顧客は離脱してしまい定着しません。穴の開いたバケツに水を溜めようとしているようなものです。貴重な資金の中から無駄な広告費を投じないためにも PMF できたか否かは新規事業における重要なポイントとなります。
PMF までの具体的な手順は以下のとおりです。
評価のプロセスの中でユーザーインタビューについては当社でもサービスとして実施する機会の多い手法です。
以下の記事に詳しいのでよろしければご参照ください。
ユーザビリティテストの手法・工程とは?事例を基にご紹介(新しいタブで開きます)
新規事業開発に DX の戦略を取り入れる際のポイントも多数存在します。同様に、ここでは3つのポイントを紹介します。
新規事業開発においてデジタルは広く活用できる余地があります。そのなかでも、デジタル技術を活用したユーザー体験(UX)の向上は、意識すべきポイントといえます。
デジタル技術により UX を高める余地は多分に存在します。わかりやすい例をあげると、住所を入力する際に紙にすべて手書きするよりも、フォーム内に郵便番号を入れることで自動入力された方がユーザー体験は優れているといえます。具体的には、店舗での会員登録などにおいて、申込書を書くことが面倒で登録を避けられてしまうことへの対策として、UXを意識したアプリをタブレット上で提供することなどが検討できるでしょう。
一方で、UX を意識しないデジタル技術の導入は、ユーザーのストレスを高める原因にもなります。やたらと入力項目が多いフォームにイライラした経験のある方もいるかもしれません。UX を意識しないで DX を進めても、ユーザーのニーズを満足させ、競争で優位に立つことは難しいといえます。
もう一つのポイントは「アイデアの検証」にデジタル技術を使うという観点です。
上述した PMF の達成までのプロセスで採用されることの多いシステム開発の手法のひとつである、アジャイル開発手法(新しいタブで開きます)では、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトである MVP を開発し提供することで、低コストかつ高速に新規事業アイデアが顧客に受け入れられるかを検証します。
参考:新規事業担当者必見。“アジャイル開発”で小さく始めるシステム開発(新しいタブで開きます)
また、PoC(Proof Of Concept:概念実証)として、新たなアイデアやコンセプトの実現可能性やそれによって得られる効果などについて検証を行うことも検討できます。この際にも、アジャイル開発手法を活用しつつ、プロトタイプを素早く構築し検証を行うことが有効でしょう。
近年ではさまざまな事業分野・業務領域において、SaaS などの「作らないで使える」サービスやテクノロジーが登場しています。これらを組み合わせて活用することで、リスクやコストを低減したり、仮説検証や施策の実行スピードを上げることが期待できます。これは企業の DXの実現において、大きな武器となるでしょう。
余談ですが、当社ではこのような SaaS や CMS など既存の最新プラットフォームを最大限活用した DX の進め方を「FastDX」と定義し、さまざまな企業に対して支援を行っています。
「FastDX」については以下の記事にて詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
DXが失敗する理由は?リスクを下げ成功確率を上げる「FastDX」という選択肢(新しいタブで開きます)
以上のことをまとめると
ということが重要といえます。

以下では、デジタル技術を活用して新規事業を成功させた3つの事例を紹介します。
ライドシェアのマッチングサービスである Uber は2009年より MVP を作成し活動を開始しました。Googleマップの API を利用することで安価にアプリを作成しつつ、配車の予約という1つの機能に限定することで開発規模を抑制。素早くアイデアを検証し、フィードバックを基に改善を繰り返すことで、大規模サービスに育てるための基礎を構築しました。
アメリカの靴のインターネット販売企業である Zappos は、「靴をインターネットで販売できるのか」というアイデアを検証するために、簡易な ECサイトと Webサイトのみで検証をスタート。当初は在庫も持たず、実際に注文が入ったらスタッフが靴屋に当該商品を買いに行き梱包して郵送するというコストとリスクを最小化した仕組みで、消費者のリアクションを測る取り組みを行いました。
結果として靴のインターネット販売というビジネスは成功し、Zappos は会社を大きく拡大させることに成功しました。
創業100年という伝統ある旅館である「陣屋」では、旅館業務に必要となる機能を搭載した「陣屋コネクト」というシステムを開発しています。陣屋コネクトでは当初、 SaaS の CRMプラットフォームである Salesforce を活用し顧客管理を安価に実現。当初は自社向けシステムとして開発したものの、現在では全国300以上の施設に導入されるサービスに成長しています。
既存の SaaS サービスを活用して小さくアイデアの検証を始めている点で、当社の考える「FastDX」の(新しいタブで開きます)考え方が実現されている例といえるでしょう。
※参考:第2回 サービス対象 受賞事例集 旅館・ホテル経営をITの力で改革する「陣屋コネクト」(新しいタブで開きます)
この記事では、新規事業開発においてデジタル技術の活用を考慮する重要性や、実際の事例などについて紹介を行いました。新規事業においては、小さく始めて素早く検証し、PMF を目指すことが肝要です。
「新規事業の実現はただでさえ難しいのに、さらに DX も取り入れるなんて無理だ!」と考えられていた方もいるかもしれません。
しかし、すでに多くの顧客のいる既存事業では、既存顧客への影響や既存システムとの兼ね合いで DX を進めたいと考えてもかえって一筋縄ではいかないケースも多いでしょう。しかし、新規事業ならば新たなアイデア・システムをデジタルの力で素早く検証することのハードルが低くなります。新規事業こそアジャイルや DX の考え方を取り入れやすい領域とも考えられるのです。
スパイスファクトリーでは、PoC支援やプロトタイプ開発など、FastDX により皆様の新規事業開発や DX を支援いたします。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
当社は【2025年最新版】DX支援おすすめ企業4選(新しいタブで開きます)に掲載されています。
https://spice-factory.co.jp/works/11256/
https://spice-factory.co.jp/works/9319/
田所雅之.「起業の科学」.日経BP. 2017/11/6
経済産業省.>「デジタルガバナンス・コード2.0」.https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf. 2022/6/16
PwCコンサルティング合同会社.>日本企業のDX推進実態調査2022 1割のDX成功企業から見えてきたDXMOの役割とは?.https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/dx-survey2022.html. 2023/2/2
デル・テクノロジーズ株式会社 データセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括.>「DX動向調査 2021」.https://drive.google.com/file/d/1eeYNRkihtjbdCQ6O9oslXOtkzNPLZhdg/view. 2022/1/20
2022年11月のリリース後、あっという間に世界を席巻した ChatGPT。
ビジネスの領域においても ChatGPT のインパクトは大きいものであり、国内・海外を問わず様々な活用方法が検討されています。
この記事では、ChatGPT についての理解をより深めるべく、国内・海外の8つの事例を取り上げ、その活用方法について詳しくご紹介していきます。
本記事は初公開(2023年)後、2026年8月に最新動向(GPT-5.x系モデル・法人向けプラン・エージェント機能)、社内導入の進め方、FAQを追記して更新しました。事例セクションは、公開当時に各社・各団体が発表した取り組みを原文のまま掲載しています。
まず、企業での ChatGPT 活用の要点を1枚にまとめると次のとおりです。
| 項目 | 企業でのChatGPT活用の要点 |
|---|---|
| 主な用途 | 文章の要約・作成、コードの自動生成、社内情報を活用したチャットボット、調査・資料作成の効率化など |
| 活用の潮流(2026年時点) | 個人の生産性向上ツールとしての利用から、エージェント機能や API 連携による「業務プロセスへの組み込み」へ |
| 導入形態 | 個人向けプラン/法人向けプラン(ChatGPT Business・Enterprise)/API を利用した自社システムへの組み込み、の3系統 |
| セキュリティ | 法人向けプランと API では、入力内容がモデルの学習に使われないことが標準仕様。個人アカウントの業務利用にはオプトアウト設定やガイドライン整備が必要 |
| 始め方 | 効果が見えやすい定型業務からスモールスタートし、ガイドライン整備→全社展開→業務プロセスへの組み込みへと段階的に拡大 |
| 相談先 | スパイスファクトリーの生成AI導入・開発支援では、活用の検証から本格導入・開発までを伴走支援 |

まず、ChatGPT の概要についてご紹介します。
ChatGPT はOpenAI社が開発・提供している対話型のチャットサービスです。
利用者は「明治維新は誰がどの様に実現したか教えてください」「部下の結婚式用にスピーチの原稿を作成してください」などと質問すると、ChatGPT はその質問に対する回答を作成することができます。
チャットボットをはじめ、従来から ChatGPT と同じようなサービスは存在しました。
その中で、 ChatGPT が特に注目されたのは「回答範囲の幅」と「回答精度の高さ」にあります。
あらゆることを学習している ChatGPT は、多様な質問に対して妥当な回答を作成することができます。
ChatGPT は2022年11月のリリース後すぐにその有用性に注目が集まり、活用方法が検討されるようになりました。
ChatGPT という名称にも含まれる「GPT」とは「Generative Pretrained Transformer」の略称であり、AI技術の一つである自然言語処理の一手法です。
OpenAIが開発したGPTは、人間のように自然な文章を作成することができるモデルであり、現在ではGPT-4が最新のバージョンとして利用できるようになっています。
その特徴は高い予測精度にあり、1億以上のパラメーターによる回答予測により、質問に対して高い精度で回答できるのです。
(※上記は本記事初公開当時の情報です。2026年時点の最新モデルについては、次章「【2026年最新】ChatGPTの現在地」で解説しています)
ChatGPT の基礎については以下記事でも詳しく解説しております。
https://spice-factory.co.jp/tips/what-is-chatgpt/
本記事の初公開後、ChatGPT は大きく進化しています。事例を見る前に、2026年8月時点の主なアップデートを押さえておきましょう。
2025年8月に GPT-5 が登場し、その後も GPT-5.5、GPT-5.6 と改良が続いています(2026年8月時点)。単に回答の精度が上がっただけでなく、必要に応じて深く推論してから回答する能力や、複数ステップのタスクを自律的に進める能力が大きく強化されました。
プランによって利用できるモデルは異なりますが、無料プランでも GPT-5.x 系のモデルを利用できるようになっています。
本記事の初公開当時、企業利用ではセキュリティ面から専用環境の構築が主な選択肢でしたが、現在では OpenAI 自身が法人向けプランとして「ChatGPT Business(旧 Team)」「ChatGPT Enterprise」を提供しています。
法人向けプランでは、入力した内容がモデルの学習に使われないことが標準の仕様となっており、管理機能をはじめ企業利用を前提とした機能も整備されています。社員が個人アカウントで業務利用するのではなく、法人向けプランで統制のとれた環境を用意することが、企業導入の事実上のスタンダードになりつつあります。
2025年以降の最も大きな変化が、エージェント機能の充実です。ChatGPT のエージェントモードでは、Web の閲覧・調査、資料の作成、外部サービスとの連携といった複数ステップの作業を、一度の指示で ChatGPT 自身が計画を立てて実行します。
さらに、API や開発フレームワークを利用して、自社の業務システムに AI エージェントを組み込む企業も増えています。「チャット画面で質問に答えてもらう」段階から、「業務プロセスの一部を AI に任せる」段階へと、企業活用のステージが移りつつあります。
こうした AI エージェントの企画・開発については、AIエージェント開発のページで詳しくご紹介しています。

ChatGPT が注目される理由に「単なるチャットサービス以上の利用方法がある」という点が挙げられます。具体的にはどのようなことが実現できるのでしょうか。
文章を ChatGPT に入力させ「この文章を要約してください」または「この文章の誤字脱字を指摘してください」のように指示を出すと、文章の要約や修正を行ってくれます。
文章を作成する機会の多い職種の方にとっては、有用な利用方法の一つです。
たとえば、コールセンターにおいてお客さまとの応対履歴を作成する業務も、会話内容を文字起こししたテキストデータを ChatGPT に取り込み、要約させることで自動化することができます。
さらに、ChatGPT では一から文章を作成するような利用方法も可能です。
たとえば「取引先へのメール返信の原稿を作成してほしい」のように指示を出すことで、メールの原案を作成することができます。
もちろん、必ずしもそのまま利用できる文章が作成されるとは限りませんが、原稿の下書きを作成できるという点で有用な利用方法の一つです。
ChatGPT はプログラミングにおけるコードの自動生成を実現することもできます。
特定の言語を指定して「ファイルをコピーして名称を変更するコードを作成してください」のように指示を出すことで、自動的にコードを作成することができます。
また、プログラミング中に発生したエラーコードを入力することで、エラーの原因を分析したり、コードを最適化して改善したりと、様々な方法で利用することもできます。
ここまでご紹介してきた方法は、ChatGPT が保有している一般的な知識を利用したものでした。
ChatGPT のすごいところは、これだけでなく自社のみが保有しているような個別の情報を追加学習させて利用することもできる点です。
このような利用方法をグラウンディングと呼び、ビジネスにおいて注目されている利用方法の一つです。
たとえば社内の規程やルールを ChatGPT に入力したうえで「育休の取得条件について教えてほしい」のように質問することで、自社のルールに基づいた形で ChatGPT は回答を作成できます。
これにより、社内向けチャットボットの高度化を実現することができます。

このように多様な利用方法が検討されている ChatGPT ですが、具体的にどのような活用事例があるのでしょうか。
以下では、海外・国内の双方においてどのように ChatGPT が活用されているのかご紹介します。
まずは海外における活用事例から紹介します。
Coca-Cola社では、コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニーと連携し、ChatGPT をはじめとした生成AIをマーケティングへ活用できないか検討を進めています。
マーケティング活動におけるローカライズを重要視している同社では、 ChatGPT によりパーソナライズされたメッセージを自動生成し、また翻訳して他言語展開する取り組みを実施しています。
同社では ChatGPT のみならず、画像生成AIを活用したプロモーションの実施など生成AIの活用を進めています。
参考:Consumer Goods社記事より(新しいタブで開きます)
メッセージングアプリを提供するSlackでは、Slackから簡単に ChatGPT を利用できるプラグイン機能を開発しました。
このプラグインでは、Slackから簡単に ChatGPT に問い合わせを行い、結果を確認することができます。
Slackから ChatGPT を活用することで、たとえば Slack上でチャットを行う中で生じた疑問やアイディアに対して、すぐに ChatGPT に確認し、議論を深めるような利用方法も可能となります。
参考:Slack社プレスリリースより(新しいタブで開きます)
オンライン学習プラットフォームを提供するUdacityでは、ChatGPT を活用した学習支援チャットボットを導入しました。
Udacity が提供するAIチャットボットは、学習者のチューターのような役割を担います。
たとえば、テキストの内容を要約し、学習すべき概念のポイントを提示したり、テキストは載っていないさらに深い質問を投げかけて発展的な学習を行ったりすることができます。
さらに、プログラミングを学習するコースでは、コードのエラーに対する修正方法を教えてもらうような使い方もできます。これにより、初心者のつまずきを防ぐことができるようになります。
参考:Udacity社プレスリリースより(新しいタブで開きます)
大手旅行検索サイトのExpediaでは、ChatGPT と連携して旅行計画を立案するサービスを提供しています。
旅行者の要望に沿って提案を行うことができる ChatGPT は、旅行計画の壁打ち役としても適任です。
行先や観光のリクエスト、食べたいもの、ホテルのグレードなどを指定することで、ChatGPT は旅行者に合わせてプランを提案することができます。
さらにExpediaでは、航空券やホテル代の最安値を分析するためにも ChatGPT を活用しています。
過去の価格動向を分析することで、旅行者はいつ予約を行うべきか提案するようなことも可能です。
参考:Expedia社プレスリリースより(新しいタブで開きます)
続いて、国内における主な活用事例をご紹介します。
教育産業の大手であるベネッセホールディングスでは「Benesse GPT」として全社員向けに ChatGPT サービスを提供しています。
同サービスでは、自社の業務効率化や商品開発に向けた技術検証などを実現することができます。
企業内で ChatGPT を利用する場合、機密情報の取り扱いなどセキュリティ面での考慮が重要となりますが、同社ではセキュアな環境下に ChatGPT を構築することで、情報漏えいなどの対策を行っています。
参考:ベネッセホールディングス社プレスリリースより(新しいタブで開きます)
サイバーエージェントでは、自社の広告運用を最適化するために ChatGPT を活用しています。
広告効果の最大化を実現するためには細かな広告配信設定を行う必要がありますが、これには多くの作業が必要となり、総作業時間は月間で約23万時間にのぼっていました。
そこで、ChatGPT により広告運用に関する社内コミュニケーションの自動化などを実現。
総時間約23万時間のうち30%にあたる約7万時間の削減を目指すとしています。
参考:サイバーエージェント社プレスリリースより(新しいタブで開きます)
農林水産省では、同省が所管する補助金申請のマニュアル作成に ChatGPT を活用しました。
数千ページあるマニュアルを人手で作成・更新するためには膨大な作業時間が必要です。
自然な文章を作成することができる ChatGPT を活用することで、作業の負担を軽減しつつ、文章の品質も高めることができます。
横須賀市では、各自治体に先駆けて ChatGPT の活用を推進しています。
たとえば、自治体初の取り組みとなる、「自治体向け問い合わせ応対ボット」を開発、運用しています。
この取り組みによって80以上の自治体から問い合わせが寄せられており、それらの問い合わせデータと横須賀市の ChatGPT の取り組みに関するデータを統合・整備することで、これまで、ChatGPT 本来の機能では回答できなかった、「横須賀市の ChatGPT の取り組み」という特定分野での回答を可能としています。
実証実験を行った結果、約8割の職員が「仕事の効率が上がる」「利用を継続したい」と回答しており、また利用者からは業務短縮効果があったというヒアリング結果も得ることができました。
同市では、本格的な ChatGPT 活用に向け、職員のスキルアップや他の自治体への展開などを進めていくとのことです。
ここまでご紹介した8つの事例は、本記事初公開当時(2023年)に各社・各団体が発表した取り組みです。現在ではこうした活用は特別なものではなくなり、より多くの企業が業務への組み込みを進めています。
当社の AI 活用支援の事例は、無料でダウンロードできる資料「AI活用支援コンサルティング 導入事例集」でご紹介しています。

ChatGPT をビジネスで利用する際のポイントは様々ですが、ここでは特に重要となるセキュリティとプロンプトエンジニアリングについて取り上げます。
企業が ChatGPT を利用する際に必ず意識すべきなのが、機密情報の取り扱いについてです。
ChatGPT における一般的な利用方法では、入力された内容は学習データとして用いられることになります。
よって、企業の機密情報を ChatGPT に入力すると、他の利用者への返答の一部として利用されてしまうことになります。
オプトアウト申請を行うことで、ChatGPT への入力内容を学習させないことも可能です。
しかしながら、必ずしも全社員がオプトアウト申請を行ってくれるとは限りません。
できれば、企業専用の環境を構築し、従業員はオプトアウトについて意識しなくて済む環境を用意するべきでしょう。
近年では、MicrosoftのAzureが企業向けに「Azure ChatGPT」というセキュリティ面を考慮したサービスを提供するなど、各社がエンタープライズ用途で利用できる ChatGPT の環境を提供するようになりました。
ChatGPT を利用する際にはこれらのサービスの活用も検討してみてください。
【2026年追記】現在では、前述の法人向けプラン「ChatGPT Business」「ChatGPT Enterprise」を利用すれば、入力内容がモデルの学習に使われないことが標準仕様となっており、セキュリティ面のハードルは大きく下がりました。API 経由での利用も同様に学習には使われません。一方、個人向けアカウントを業務利用する場合は、ここで述べたオプトアウトの考え方が引き続き当てはまります。ガイドラインの整備とあわせて、「学習に使われない環境」を会社として用意することが重要です。
ChatGPT の持つ性能を最大限に引き出すためには、ChatGPT への入力内容を工夫する必要があります。
たとえば、単に「結婚式のスピーチ原稿を作成して」とChatGPTに指示するよりも、「結婚式のスピーチ原稿を作成して。ただし、5分くらいで収まる長さで、時折ユーモアも混ぜて」というように指定した方が、ChatGPT はより良い結果を出力します。
このように、ChatGPT への入力内容を工夫する取り組みを、プロンプトエンジニアリングと呼びます。
プロンプトエンジニアリングには、一定の経験やノウハウが必要です。
自社で ChatGPT を利用する場合は、優れた利用方法を社内で共有する仕組みを構築したり、よくあるユースケースごとにプロンプトをまとめたりすることで、ChatGPT の価値をより引き出すことができるでしょう。
スパイスファクトリーは、システム開発会社として ChatGPT をはじめとする生成AIの導入・活用の支援を行ってきました。その支援の現場では、この数年で企業の活用フェーズが明らかに変化していると感じています。
本記事の初公開当時、ご相談の中心は「社員に ChatGPT を安全に使わせたい」「何ができるのかを知りたい」という、個人の生産性向上を目的としたものでした。
現在もこうしたご相談は多いものの、活用が定着した企業からは、「特定の業務プロセスそのものに AI を組み込みたい」という一歩踏み込んだご相談が増えています。たとえば次のような方向です。
一方で、「全社導入したものの一部の社員しか使っていない」「PoC(実証実験)は行ったが業務に定着しなかった」というご相談も少なくありません。ツールの導入だけで終わらせず、対象業務の選定と業務フローの設計までをセットで進めることが、成果につながっている企業に共通するポイントだと考えています。
スパイスファクトリーでは、生成AI導入・開発支援で活用の検証から定着までを、AIエージェント開発で業務プロセスへの組み込みを支援しています。また、システム開発の現場自体に AI を活用するAI駆動開発にも取り組んでいます。
これから ChatGPT の社内導入を進める場合の、標準的なステップをご紹介します。
最初から全社展開を目指すのではなく、「議事録の要約」「問い合わせメールの下書き」など、効果が見えやすく機密性の低い業務を選び、少人数で試すところから始めます。
この段階で「どの業務に効くのか」「どのような指示の仕方が有効か」という自社なりの手応えをつかみます。
本格展開の前に、入力してよい情報の範囲、アウトプットの確認ルール、利用する環境(法人向けプランや API など、学習に使われない環境)を定めたガイドラインを整備します。
禁止事項だけを並べるのではなく、「推奨する使い方」をあわせて示すことが、利用の定着につながります。
展開の段階では、うまくいったプロンプトや業務ごとの活用例を共有する場を用意します。
部門ごとに推進役を置き、現場の業務に即した使い方を発掘していくことで、「導入したが使われない」状態を防ぎます。
個人の利用で効果が確認できた業務は、API 連携や AI エージェント化により、業務プロセスそのものへの組み込みを検討します。
ここまで進むと、個人のスキルに依存しない、組織としての生産性向上につながります。
導入の初期段階で自社の現在地を整理したい場合は、無料資料「現在地から始める AI活用ワークショップ 紹介資料」もご活用ください。
個人で試す範囲であれば、無料版でも十分に有用性を体感できます。ただし業務で本格的に利用する場合は、入力内容が学習に使われない法人向けプラン(ChatGPT Business・Enterprise)の利用をおすすめします。利用できるモデルや機能、利用回数の面でも有料プランが有利です。
法人向けプラン(Business・Enterprise)と API 経由の利用では、入力内容がモデルの学習に使われないことが標準の仕様です。一方、個人向けプランでは設定(オプトアウト)を行わない限り学習に利用され得るため、業務利用では学習に使われない環境を会社として用意することが重要です。
「スモールスタート→ガイドライン整備→ノウハウ共有と展開→業務プロセスへの組み込み」の順で段階的に進めるのが定石です。詳しくは本記事の「ChatGPT社内導入の進め方【4ステップ】」をご覧ください。自社だけで進めることが難しい場合は、外部の支援会社と伴走しながら進める方法もあります。
法人プランの導入は「社員がチャット画面で AI を安全に使える環境を整える」取り組みで、比較的短期間で始められます。一方、API 活用・AI エージェント開発は「自社の業務システムや業務フローに AI を組み込む」取り組みで、開発は必要になるものの、特定業務の自動化・効率化を組織の仕組みとして定着させられます。まず法人プランで手応えをつかみ、効果の大きい業務から API 連携・エージェント化へ進む企業が多くなっています。
「文章の要約・下書き作成」「議事録の整理」「メール文面の作成」など、成果物を人が確認してから使う定型業務が始めやすい領域です。誤りが混ざっても人のチェックで補正でき、効果も実感しやすいためです。顧客対応や意思決定に直結する業務への適用は、精度の検証とルールの整備を経てから段階的に広げることをおすすめします。

この記事では、ChatGPT の活用方法についてご紹介しました。
ChatGPT をはじめとした生成AIは、使いこなせばビジネスにおいて大きな武器となります。
組織として ChatGPT の活用を推進し成果を挙げていくためには、セキュリティ面を意識した環境の構築や、ノウハウの蓄積と共有など、旗振り役の動きも重要となってくるでしょう。
当社、スパイスファクトリーでは ChatGPT を活用した新規サービスを提供しています。
「ChatGPT でどんなことができるかよくわからない」など、ChatGPT に関してお悩みをお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。
ChatGPT・生成AIの活用検証から本格導入、AI エージェントの開発までは、生成AI導入・開発支援およびAIエージェント開発のページで詳しくご紹介しています。お問い合わせより、お気軽にご相談ください。
グローバル化やデジタル化、少子高齢化など、行政機関を取り巻く環境は大きく変化しています。
コロナ禍を経た生活様式の変化への対応や、住民サービスに求められるさらなる利便性の向上などに対応するべく、地方自治体はデジタル化の取り組みを進めています。
当社では、2023年7月28日に『DX勉強会』を開催し、一般社団法人行政情報システム研究所 主席研究員である狩野英司氏に「自治体DX」というテーマでご登壇いただきました。
本記事では、狩野氏による講演内容について詳しくご紹介いたします。
なお、本記事は『DX勉強会』のイベントレポート記事の前編です。
後編ではスパイスファクトリーが東京都デジタルサービス局様と実施した例に基に詳細を解説しています。以下より確認いただけます。
後編:東京都デジタルサービス局とのアジャイル開発の取り組み事例 DX勉強会レポート(後編)(新しいタブで開きます)

登壇者:狩野 英司 氏
一般社団法人 行政情報システム研究所 主席研究員
中央官庁、大手シンクタンク、大手メーカー勤務を経て現職。
行政期間や企業の業務・システム改革、デジタルガバメントに関する調査研究に長年携わる。
2020年に筑波大学発ベンチャーD’s Linkを第二創業、地域DX人材育成に取り組む。
一般社団法人 行政情報システム研究所公式Webサイト:https://www.iais.or.jp/

冒頭、狩野氏から行政を取り巻く環境の急速な変化についてご紹介がありました。
地方自治体は、グローバル化、デジタル化、気候変動などの様々な周辺環境の変化に追随していかなければなりません。
また、少子高齢化の進展やインフラの老朽化の進行は今やほとんどの自治体にとって無視できない課題であり、特に過疎地域においては自治体の持続可能性リスクも高まっているのが現状です。
加えて、住民から期待される行政サービスの水準が高まっているという状況もあります。
生活・仕事両面において、民間ではオンラインサービスの提供が急速に一般化してきました。一方、自治体での手続きについては、相変わらず役所に足を運ぶ必要があったり、手続きに長い時間がかかったりします。
住民に「自治体の対応は遅れている」という認識を持たれてしまっていることも、自治体の抱える課題のひとつでしょう。
こうした現状に対応するべく、地方自治体においてもデジタル化を進めることでこれらの環境変化や課題に対応していく動きが見られるようになってきました。
デジタル化で効率的に業務遂行ができるようになることで、過疎化・労働力不足への対応や、住民サービスのレベル向上などが期待されています。
コロナ禍の影響により、自治体においては「現場主導型」でデジタル化が進んだと狩野氏は言います。
従来、国からの指示に基づき業務を進めることが多かった自治体ですが、コロナ禍における混乱状態では大量の業務に対し迅速に対応する必要に迫られ、効率化が求められました。
この結果、必要に迫られる形で自治体のデジタル化が進展。
狩野氏によれば、地方自治体のデジタル化は大きく以下の観点で進んだといえるとのことです。


たとえば、神戸市では職員によるローコードツールを利用したサービス開発が行われました。
ローコードツールとは、プログラミングに関する知識が少ない方でも比較的容易にシステムを作ることができるツールのことです。
実際に、プログラミングの知識がない職員の方が、1週間程度で特別定額給付金の申請状況確認サービスを開発し、住民へ提供しました。
以下の当社記事では、ローコード開発の実際の進め方について解説していますので併せてご覧下さい。
参考記事:AppSheetとは?できることや活用例、料金までやさしく解説(新しいタブで開きます)
狩野氏によれば、DX においては既存の業務プロセスを単にデジタルに置き換えるだけではなく、「デジタルを前提に再設計する」ことが重要だといいます。
既存の手続きを単純にデジタル化しただけでは「利用されない仕組み」が生まれてしまいます。
デジタルの特徴を意識せずに既存の手続きをそのまま電子化したり、特定のソフトがないと利用できなかったり、操作が煩雑であったりといった仕組みは、住民には支持されず、結果として利用もされません。
デジタルを前提としたプロセスを意識し、スマートフォンなどのデバイスの操作性や特徴を活かし、誰もが便利かつ直感的に利用できることが重要です。
このように、デジタルを前提として利用者にとって便利なサービスを作り上げるためには「デザイン思考」という考え方が有用です。

デザイン思考とは、サービスを利用する際の利用者の一連の行動に注目して、サービスを設計するというアプローチのことです。
たとえば、役所に書類を提出する際に、利用者はどのような行動をとるでしょうか。
行政の視点では「申請書の作成」「窓口での提出」「受理」といった住民と直接対面する部分しか見えません。
しかしながら、住民にとっては「必要性に気づく」「申請方法を調べる」「書類を集める」「問い合わせする」という役所に訪れる前までの流れがあり、書類の提出後も「結果の受領」「利用や実施」といった流れがあります。
デザイン思考の視点ではこれらすべての流れに注目して、住民に対してどのようなサービスを提供すればよいかを検討します。
※参考記事:なぜ今、アジャイル開発×デザイン思考が新規事業開発に必要なのか(新しいタブで開きます)

たとえば、電子申請の一元的な受付サービス「e-Gov」では、デザイン思考の考え方を取り入れたサービス設計を実施しています。
同システムのリニューアル開発においては、ユーザービリティテストとして利用者に実際に操作をしてもらい、その様子を観察することで、不満点や躓きやすいポイントを確認し改善を実施しました。
また、ペルソナやジャーニーマップの整理によるユーザー行動フローの整理を行うなど、UX(ユーザー体験)の向上を重要視した取り組みも行いました。
結果として、同システムは改善前と比較して電子申請の件数が 23% 向上するなど、結果を残しています。

このような業務プロセスや住民サービスなどを見直していく際に重要なのが「ひとつのチームとして一緒にやっていくという点」であると狩野氏は言います。
住民サービスの担当者やデジタルの専門家、関連するステークホルダーなど、デジタルの導入においては様々な知識や経験が必要となります。
よって、特にデジタル導入においては共創型の課題解決が重要となります。
従来のシステム開発は、請負契約型のプロジェクトが一般的でした。
請負契約型のプロジェクトにおいては、行政側である発注者とベンダーである受注者は分断されていました。
発注者は仕様書さえ作ってしまえばあとは受注者側にお任せであり、受注者側は仕様書に沿ってシステムを作るという関係性でした。
しかし、書類だけでは物事は動かないのが現実です。
よりよいサービスを生み出していくためには、人間同士のやり取りで課題認識や実現したいビジョンを共有し、詳細にコミュニケーションを行っていく必要があります。
アジャイル開発型のプロジェクトでは、従来発注者の立場だった行政側と、従来受注者の立場だったベンダーが一つのチームとして活動します。
アジャイル開発において比較的よく採用されるスクラムというフレームワークにおいては、サービスの機能に責任を持つ「プロダクトオーナー(新しいタブで開きます)」というポジションと、実際に開発を担当する「開発者」というポジションが一体となって、課題を解決していきます。
このような関係性により、開発者は提供すべき住民サービスの理解が進み、プロダクトオーナーは技術面での実現性を理解した要求ができるようになります。
アジャイル開発やスクラムについては、以下の当社記事で詳しく解説しておりますので、よろしければ併せてご覧ください。
※参考記事:アジャイル開発とは? – システム開発を発注する時に知っておきたい開発手法の話(新しいタブで開きます)
※参考記事:スクラム開発とは?アジャイル開発との違いやメリット・デメリット、プロジェクトの進め方例を解説(新しいタブで開きます)

海外の行政機関においてはアジャイル型の開発が一般的なものとなっています。
たとえば、デジタルガバメントに関する先進的国家として知られるデンマークにおいては、行政部門の 6割がアジャイル開発を利用しているというデータもあります。

日本においても、アジャイルというアプローチはすこしずつ浸透しています。
たとえば、上述したローコード開発においては約 2/3 がアジャイル型を採用しているという調査結果※もあります。
ローコード開発においては、住民に近い職員の方が住民ニーズや改善アイディアに沿って柔軟に開発を進めるため、アジャイルというアプローチが適しています。
ローコード開発の例からも見えてくるとおり、行政においては従来の「受注者・発注者という関係性によるシステム構築」から「アジャイルというアプローチによるデジタル導入」へと、意識や進め方が変化しているといえるでしょう。
※参考:一般社団法人行政情報システム研究所・一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構によるアンケート調査(2022年9月実施)より
この記事では「自治体DX」をテーマとして社会で DX をどのように進めていくのがよいかを紐解いてきました。
大きな示唆として、デザイン思考やアジャイル型開発など、従来、日本のシステム開発で一般的であったウォーターフォール開発とは異なるアプローチや方法も有効であること。
Appsheet に代表されるようなローコードツールを活用し、デジタル化のハードルを下げることなどが印象に残りました。
当社では、これまで自治体を含め様々な企業へアジャイル型でのサービス開発を支援してまいりました。今後、アジャイル開発を進めたいと考えられている方は、ぜひお問い合わせください。
IT人材の不足や DX推進の潮流において、システム開発を社内のリソースで行う内製化の取り組みが注目されています。
一方で、エンジニアリソースの確保の困難さなど内製化は簡単な取り組みではなく、一足飛びには難しいものでもあります。
このような課題がある中、内製化を実現する手法の一つとして、AppSheet を活用することが考えられます。ノーコード開発を実現する AppSheet により、これまで費用対効果の面やリソースの面などでシステム化が難しかった領域も含め、自社での開発を実現することができるでしょう。
この記事では、AppSheet の概要や特徴、活用例、料金などを紹介します。
弊社スパイスファクトリーには豊富な実績があります。
弊社の概要やサービスプラン、過去の導入実績などをまとめた資料をご用意しました。気になる方はこちらからダウンロードしてください。

AppSheet とは、Google Cloud のサービスの1つとして提供される、ノーコードでアプリを開発できるプラットフォームです。
ノーコードとは、プログラミングを行うことなく、画面上で各種設定や UI/UXデザインを実施することでアプリを開発する手法のことです。非エンジニアでもアプリを開発することができることもあり、IT人材不足が続く昨今においてノーコード開発の注目度は高まっています。

AppSheet を利用することで、画面上での設定や簡単な関数などの記載によりアプリを構築することができます。
自社でアプリ開発を行うメリットの一つは、スピード感です。従来、社外ベンダーに依頼して開発を行っていた場合は、見積や契約、発注手続きなどに時間がかかっていました。一方で、AppSheet により自分で開発や修正を行うことができれば、実際に手を動かす時間のみで対応が可能となります。
また、IT人材が不足する状況において、非エンジニアでもアプリ開発を行うことができる点は大きなメリットといえるでしょう。
AppSheet でのアプリ開発にあたっては、Google Workspace のスプレッドシートをはじめとして、業務で利用しているデータをそのまま利用することができます。また、Gmail との連携も可能です。dynamic email という仕組みを使うと、Gmail 画面上に AppSheet で作成したアプリを表示し、Gmail上で操作することができます。業務を Google Workspace で実施している企業であれば、とくにそのメリットを生かすことができるでしょう。
なお、AppSheet では Google関連サービスだけではなく、Microsoft Office の各種サービスや Dropbox、Salesforce などのサービスと連携し、データを利用することもできます。
AppSheet には、Automation としていわゆる RPA (Robotic Process Automation)機能が備わっています。Automation を利用することで、日常的に実施している定型作業を自動化できます。
たとえば、毎日何十件もスプレッドシートからドキュメントへ転記を行っているのであれば、Automation の利用が便利です。このような定型かつ繰り返しの多い作業は、自動化により業務効率を大きく上げることができます。

AppSheet をはじめとして、近年ノーコード開発 および 最小限のプログラミングでアプリを開発できるローコード開発に注目が集まっています。この背景として、DX推進に伴い内製化を進める企業が増えている点が挙げられます。経済産業省「DXレポート2※」でも指摘されているとおり、DX の進展においては内製化を進めることが重要です。
一方で、これまで自社開発を行ってこなかった企業においては、一足飛びに大規模な開発を行うことは難しい状況にあります。そこで活用を検討したいのが、比較的スキルを必要せずにアプリ開発を行えるノーコード・ローコード開発という手法です。
ノーコード・ローコードでの開発は、自社の基幹システムのように大規模開発を行う際には向かないものの、これまで投資対効果が合わなかったような比較的小規模の業務領域をカバーする選択肢として有効です。近年では、ノーコード・ローコード開発を実現できるプラットフォームとして、AppSheet のようにクラウド上で簡単に利用できる aPaaS (アプリケーションPaaS)が提供されています。これらを活用することで、手軽に開発を行うことができるようになりました。
※参考①:経済産業省『DXレポート2』(中間取りまとめ)(新しいタブで開きます)
※参考②:進むシステムの内製化 メリットや難しさを踏まえどう取り組むべきか(新しいタブで開きます)

以下では、具体的なイメージを持ちやすくなるように、AppSheet で開発できる主なアプリの例を紹介します。
営業活動やカスタマーサポートなど、案件の管理はさまざまな場面で必要です。
世の中には Hubspot(新しいタブで開きます) をはじめとしてさまざまなツールが用意されているものの、規模が大きくない組織・チームにおいてはスプレッドシートで案件を管理しているケースも多いのではないでしょうか。
AppSheet を利用することで、コストをかけることなく案件管理を実現することができます。スプレッドシートに登録されているデータを AppSheet で作成したアプリ上で表示しつつ、重要度や進捗状況で部員類したり、担当者のアサイン状況を把握したりすることができます。
案件の登録フォームを作成すれば、スプレッドシートを操作せずとも案件の追加が可能となります。担当者がフォーム上で必要事項を入力するようにすれば、必要事項の入力漏れチェックもできます。また、Looker Studio などの BIツールと連携すれば、データ分析や高度なグラフ作成まで行うことも可能です。
稼動状況を把握するために行う工数管理ですが、入力の面倒さから挫折してしまうケースも多いでしょう。
そのような場合には、アプリ化することで入力効率を上げることができます。
アプリ上で入力フォームを作成することで、プロジェクトと稼働時間を選択するだけで工数登録ができるようになります。これにより、面倒な工数入力を最小限の労力で行えるようにできます。Automation も併用し、入力がないメンバーに対してメールなどでリマインダを送ることもできるでしょう。
登録された工数管理は、スプレッドシートとして出力することもできますし、アプリ内でグラフ化などを行うこともできます。
申込書を受領した際に、それをスプレッドシートに手で入力しているというケースは多いのではないでしょうか。
Automation により、これらの作業もコストをかけず効率化できます。
あらかじめ様式を定めた申込書を読み込ませることで、スプレッドシートにまとめる処理を自動化。その後の集計や可視化、受領メール連絡などを Automation で自動化することもできます。

以下では、AppSheet によるアプリ開発フローを具体的に紹介します。今回は、部署内での経費申請・承認を行うワークフローアプリを開発します。
アプリを作成したい場合、AppSheet にログイン後に Createボタンを押下し、App → Blank App を選択します。

アプリの名称とカテゴリを設定すると、アプリの作成が開始されます。今回は「部署内経費申請」という名称のアプリを作成します。

処理が完了すると、画面が遷移します。サンプルとしてタスク管理機能を持ったアプリが自動的に作成されます。


続いて、デフォルトで生成されるテーブルを変更して、ワークフローを実現するために必要なデータを扱えるようにします。
左カラムの「Data」を選択後、デフォルトで作成された「Table 1」を選択すると、現在のデータ項目が表示されます。ここで「View data source」ボタンを押下すると、データ項目の編集を行うことができます。

既存のテーブルを修正し、「経費申請テーブル」として日付、申請者名、用途、摘要などワークフローに必要なデータを登録します。

AppSheet では、数値やテキスト、日付、リストなどさまざまなデータ形式から選択してテーブルを作成できます。たとえば、経費申請の「用途」の項目において、「物品購入」「セミナー参加費」「その他」という3つから選択させたい場合は「Enum型」を利用します。また、申請や承認のステータス管理を行う場合は、「Yes/No型」を利用するとフラグ管理ができます。

今回は、以下の図のとおり「経費申請テーブル」として各データ項目を設定しました。

テーブルを変更すると、自動的にアプリ画面も変化します。たとえばEnum型を利用した「用途」の項目については、画面上ではリストから選択できるようになります。

次に、複数のテーブルを結合して利用できるようにします。今回は、購入品目を設定する「物品テーブル」を作成します。
テーブルを追加したい場合、同様に左カラムから「Data」を選択後「Add new Data(プラスボタン)」から行います。以下のとおり、テーブル名称などを設定したうえで、「物品名」や「金額」などのデータ項目を設定していきます。


続いて、最初に作成した「経費申請テーブル」と物品テーブルを結合します。物品テーブルに Reference型の項目を追加し、参照先を経費申請テーブルとすることで、両者を紐づけられます。

関連付けを行うことで、アプリ画面にも反映されます。最初に作成した申請画面上で物品を登録したい場合、新たに追加された Addボタンを押すことで登録できます。これにより、複数の物品を一つの申請書に追加できるようになりました。

申請や承認の状況を管理できるようになりましたが、現在では誰でも申請を承認できる状態となっています。そこで、次に承認権限者の管理を行うための「ユーザーテーブル」を作成します。
同様にテーブルを作成の上、名前、メールアドレスに加えて、このユーザーが承認者(=部長かどうか)を設定できるようにします。

次に、申請・承認ボタンを作成します。処理の設定は左カラムの「Actions」より行います。
「経費申請」の「Add Action(プラスボタン)」を押下すると、新しいアクションを登録できます。

アクション名称を「申請をする」としつつ、アクションとして「Data:set the values of some columns in this row」を選択。set these columns において「申請されたか」を対象とすれば、承認ボタンを押すことで「申請されたか」のフラグがYesとなります。

同様に、承認ボタンを作成し、ボタンを押すことで「承認したか」フラグを Yes とできるようにします。画面側にも「申請をする」ボタンと「承認をする」ボタンが表示されました。

最後に、承認できる権限者を限定すれば、アプリは完成です。承認権限を持つユーザー(=部長)のみに承認ボタンが表示されるように修正します。
「承認をする」アクションの「Behavior/Only if this condition is true」の欄を選択します。

ログインしているユーザーのメールアドレスを基に、ユーザーテーブルを参照して部長権限があるかをチェックします。以下のコードを入力することで、権限のチェックを行えるようにします。

これにより、権限がないユーザーには承認ボタンが表示されないようになりました。

同様に、条件を設定することで「申請済みでないものは承認ボタンを表示させない」「承認済みのものは承認ボタンを表示させない」といった制御も可能です。
作成したアプリは、Shareボタンから共有することで他の人にアプリを使ってもらうことができます。

このように、AppSheet では画面上での設定や条件入力などを行うことで、簡単にアプリを構築することができます。

AppSheet にはさまざまなプランが用意されています。
まず、作成したアプリを他のユーザーへ公開しない限り、Appsheet は無料で利用できます。最大10ユーザーまでは、試験的に作成したアプリを共有することもできますので、小規模な利用においては無料プランでも問題ありません。
それ以上の利用を行う場合は、Starterプラン、Coreプラン、Enterprise Standardプラン、Enterprise Plusプランから選択することになります。各プランの主な違いは以下のとおりです。
詳細については、以下の価格表もご参照ください。
※参考:Appsheet「Start building and testing apps」(新しいタブで開きます)

この記事では、ノーコード開発を実現する AppSheet について、その概要や特徴、活用例などをご紹介しました。比較的小規模のアプリであれば、AppSheet を活用することで低コスト・ハイスピードに開発を実現することができます。業務の効率化はもちろんのこと、新規事業開発やPoC におけるプロトタイピングなどにも活用できるでしょう。
スパイスファクトリーでは、PoC におけるプロトタイピング構築や UXリサーチなどの支援を行っています。AppSheet を利用すべきか、開発を行うべきか悩まれている方や、デザイン面も含めた支援が必要である方は、ぜひお問い合わせください。
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弊社スパイスファクトリーは豊富な実績を持ち、これらのプロセスを効率的に進めるためのサポートを提供いたします。
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IT人材の不足やコストメリットから、海外に業務を委託するオフショア開発に目を向ける企業は少なくありません。しかし、期待した効果を得られず、結果的に失敗してしまうケースがあります。この記事では、オフショア開発初心者の方や一度失敗したことがある方に向けて、失敗例をもとに原因と対策を紹介します。
スパイスファクトリーはフィリピンにオフショア拠点を持ち、徹底した品質管理と円滑なコミュニケーションで「ハイクオリティオフショア開発」を提供してきました。オフショア開発に関する具体的な相談がある方は、お問い合わせください。
以下の記事も参考にどうぞ。
オフショア開発会社の選び方とは?確認すべきポイントを解説(新しいタブで開きます)

オフショア開発(新しいタブで開きます)を進める中で「これなら日本国内で開発した方が良かったかも……」という結果になってしまうことは残念ながらよくあります。この章では、オフショア開発のよくある失敗例を紹介します。
納品されたプロダクトやサイトの品質が想定以上に低いのは、オフショア開発でよくある失敗のひとつです。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
成果物が低品質なのは、エンジニアの質が低いという原因だけではありません。
事前に明確な仕様を伝えていなかったり、依頼側としてはよしなにやってくれると思っていたが、期待と違っていたりといったケースもあります。
オフショア開発のメリットとして比較的コストを抑えられると知られています。しかし、上記の通り品質に関わる失敗例が多いため、オフショア開発に安かろう悪かろうのイメージを持っている人も少なからず存在するのが現状です。
スケジュール通りにプロジェクトが進まず、納期が遅れるのもオフショア開発でよく聞く失敗のパターンです。
納期遅れの理由としては、初期のスケジュール設計の際に要件が整理されておらず、後から追加の開発が必要だと判明する、という国内でもよくあるケースが挙げられます。
また、残業してまで納期に間に合わせようという感覚がないといった、納期にややルーズな文化がある国も存在するため、管理がうまくいかず遅延につながる場合もあります。
日本国内での開発でも同様ですが、請負契約の場合は基本的にプロジェクト期間中の仕様変更ができません。
追加機能など後から必要な開発が増えると、想定以上に費用がかかってしまうでしょう。
オフショア開発では、言葉や文化の壁による品質低下や納期遅れをカバーするために、追加費用が必要となることも考えられます。さらに、経済・為替の状況で単価が高騰するといった外部環境に影響を受けて予算を超えてしまうケースもあります。
また、オフショア開発ではプロジェクトの立ち上げ時にイニシャルコストがかかります。
メンバーの構成やルールの明文化などの体制構築やコミュニケーションに時間がかかるためです。
上記から、短期間のプロジェクトではオフショア開発のコストメリットを享受できないこともあります。

前の章で紹介した通り、オフショア開発にはよくある失敗パターンがあります。なぜそのような失敗が起きてしまうのでしょうか。ここではその原因を解説します。
コミュニケーションの行き違いはオフショア開発において最もよく起こる、かつ根深い問題の1つです。
言語が違うだけでなく、文化や商習慣にもギャップがあり日本の常識が通用しません。
お互いの「普通」の感覚がズレているため、行き違いが生じてしまいます。
さらに、コミュニケーション齟齬の内訳として 3点ご紹介します。
母国語を使わない会話では、どうしても細かい部分を伝えられません。
相手の言葉を間違って理解してしまうこともあるでしょう。
オフショア開発では、要件定義書を用意して開発先に渡し、現地でブリッジSE(新しいタブで開きます) や PM などが現地語または英語に翻訳して作業するといった形がとられます。その翻訳時に、誤訳や誤読があると、依頼側の意図とは異なる仕様で開発が進むというミスが発生します。
生活習慣や商習慣など、文化の違いからも行き違いが発生します。
日本人には「よしなにやる」「阿吽の呼吸」に代表されるように、相手の意図を汲み取って柔軟に仕事を進めることがよくあります。しかし、基本的に外国籍のメンバーには「そのあたり、うまくやっといてください」などの曖昧な指示は通用しないと考えておくべきでしょう。「そのあたり」とは何か、「うまくやる」とは具体的にどういうことか、「いつまでに」するのかを具体的に伝える必要があります。
他にも、仕事に対する価値観や年中行事の違いにも注意が必要です。
たとえば、フィリピンではクリスマスなどのイベント近くでは「家族」の優先順位が仕事を圧倒的に上回り、ベトナムではとりわけテト(旧正月)を大事にします。当然ながら国民の祝日も日本とは異なりますので、スケジュールを決める際には注意が必要です。
物理的な距離から生じる行き違いも存在します。
拠点としている国と日本との時差によっては、必要なタイミングでのクイックな連携は難しいでしょう。
対面コミュニケーションには細かなニュアンスを伝えやすかったり、気軽にコミュニケーションが取れたり、雰囲気などの非言語情報を得やすいなどのメリットがあります。
海外にチームがある場合、どうしてもこのメリットを受けにくい体制となるためコミュニケーションに行き違いが発生しやすくなります。
言語や文化差・距離によるコミュニケーション齟齬は、どれだけ配慮しても完全になくすことが難しい問題といえるでしょう。
オフショア開発ではそうした違いを前提としたうえで、品質を担保するための管理体制の構築が重要となります。
この管理体制がうまく機能しない場合も、失敗を引き起こしてしまいます。
以下に管理体制の構築がとくに必要な領域をご紹介します。
オフショア開発においては、依頼側が認識しているレベルのコード品質が担保できるように、レビューやテストなどの体制整備が欠かせません。
エラーが出ないか、といった一般的なシステムテストの実施はもちろん、単に動くだけでなくメンテナンス性を考慮したコード品質の管理体制が重要です。
コード品質の管理体制が機能していない場合、仕様書通りの動作はするもののパフォーマンスが悪かったり、リリース後に多くのバグが発生したりといったことが懸念されます。
先述の理由からコミュニケーションの行き違いが起こりやすいオフショア開発においては、国内での開発以上にプロジェクトマネジメントが重要といえるでしょう。
言語や文化の違いを踏まえて、余裕を持ったスケジューリングや突発的なトラブルへの柔軟な対応が求められます。
たとえばベトナムでは「就社」ではなく「就職」の意識が強いといわれています。
今の会社でスキルを身につけ、成果を出して早く次の会社に転職して給料を上げたいと考えているため、プロジェクトの途中で担当エンジニアが変わるといったことはめずらしくありません。
そのような場合でもプロジェクト自体の遅延等が発生しないようにあらかじめ引き継ぎがしやすいような体制やチームメンバーがフォローしあえるようなルール・仕組み作りが大切です。
この点が体制として担保されていない場合、体制維持が難しくなりプロジェクト進捗や品質に影響を及ぼします。

ここまで、オフショア開発のよくある失敗とその原因について確認してきました。
この章では、失敗を避けるために取るべき対策について解説します。
請負契約で自社がオフショア開発拠点をマネジメントする必要がない場合もプロジェクト成功のために協力は必須です。どういった点で協力できるのかを確認しておきましょう。
また、ベンダー選定の軸として、以下で紹介する内容ができている会社か確認をすることをおすすめします。
ラボ型オフショア開発(新しいタブで開きます)の場合、オフショアメンバーが依頼する企業側のチームに参画するため、依頼企業側が直接マネジメントに入るケースが多いでしょう。
マネジメントにあたり、以下のような対策が必要です。
基本として、文化差への理解と対応が必要です。
言語の違いはもちろん、日本の働き方の常識は通用しないことを前提としたうえで、協力して業務を進められる体制を構築します。
また、時差に関しては修正ができないため、気になる場合はフィリピンなど日本との時差の少ない(フィリピンは時差1時間)オフショア拠点を持っている企業に依頼することを検討しても良いでしょう。
コード規約や各種ルール、決定した仕様、その他技術的なナレッジも含め明確にドキュメント化して共有しましょう。
仕様や決定事項が明文化されれば、認識の行き違いを小さくできます。
仕様や技術的知見を蓄積しておくことで、万が一引き継ぎが発生した場合も柔軟な対応がしやすくなります。
オフショアメンバーに必要なコードの品質を理解してもらうことも重要です。
先述したドキュメント化でルールや共通認識を定めるのに加え、QAエンジニア(新しいタブで開きます)によるテスト・機能チェックやブリッジSE(新しいタブで開きます) によるコードレビューで品質の担保と基準レベルの共有を行えます。
※参考記事①:ブリッジSEとは?オフショア開発での役割と必要性、注意点も解説
※参考記事②:QAエンジニアの重要性とは?システム品質を保つプロが求められる背景や役割を解説(新しいタブで開きます)
曖昧な情報から忖度して仕事を進めるのは、日本人ならよくあることです。しかし、これまでにお伝えしたとおり、オフショア開発においてこういった仕事の進め方は通じません。
そのため、日本側のメンバーで可能な限り仕様を具体的にしたうえで着手してもらうといった、依頼者側の工夫も必要です。
請負型の場合、開発を依頼された側の企業がオフショア拠点を管理します。
実際の対策については基本的にラボ型の場合と共通です。加えて、直接管理を行わない依頼企業として、失敗を引き起こさないために協力できる点を以下で紹介します。
曖昧な仕様が伝わらないのは先述のとおりです。
依頼側としても要件を明確にして提示することで認識の行き違いを減らせます。
直接的な管理をしないからと任せきりにならず、具体的にしてドキュメントなどで行き違いがないように伝えましょう。
日本国内でも同様ですが、依頼するシステムや制作物の類似案件を手掛けているなど、実績を把握しておくことで品質レベルが推し量れます。
依頼しようとしているシステムの類似案件の実績がある企業を選べば、失敗のリスクを下げられるでしょう。
本記事で紹介してきた課題に対し、どのような対策を講じているのか聞いてみることをおすすめします。
何らかの対策ができている企業であれば、快く対策内容を教えてくれるでしょう。
何の対策もされていない場合は、依頼を考え直すことも必要です。
体制に不安が残る企業への依頼を避ければ、オフショア開発で失敗するリスクを減らせるでしょう。

オフショア開発を実施する場合、大小の差はあれど、どの企業も今回ご紹介したような課題を抱えているでしょう。
重要なのは課題がないことではなく、課題に対して適切な対策を講じることができているかどうかです。
当社スパイスファクトリーでは、社内QAエンジニアによる「機能レベルの外部品質担保」とブリッジエンジニア/エンジニアリングマネージャーの 2重レビューによる「コードレベルの内部品質担保」、現地駐在責任者によるマネジメント体制構築や CTO による直接の技術指導、などを実施してオフショア開発の課題解消に取り組んでいます。
オフショア開発の依頼を検討している方はお問い合わせください。
本記事の内容が皆様のお役に立てれば幸いです。
https://spice-factory.co.jp/service/offshore-development/

DX というと AI(人工知能)やIoT、ビッグデータなどの活用がよく挙げられますが、これらは手段であって戦略ではありません。自社のあるべき姿(ビジョン)を策定して、どのように達成するかを計画するのが DX戦略です。
冒頭で述べた通り DX戦略の立て方に正解はありませんが、一定のフローは存在します。そのフローは下記のようなものです。
内容を順番にみていきましょう。

「DX戦略を立てよう」と考えても、すぐに戦略の中身について考え始めるのは得策ではありません。戦略立案に取り掛かる前に、準備として下記の項目を整理した方がいいでしょう。
前提項目の内容を一つずつみていきます。
まず、自社の課題・強みの明確化とアセットの整理に取り組みましょう。この段階では DX やデジタル化を意識しすぎる必要はまだありません。市場や競合と比較したときに自社ビジネスが強みにできるポイント、あるいは弱みになり得る所を整理します。
自社の課題・強みの明確化にあたっては有名な手法がいくつかあり、その一つが SWOT分析です。
上記に合わせて整理を行います。
SWOT分析を実施する前には、分析対象・目標・顧客属性・競合企業の4つについて情報を集めておくとスムーズです。
SWOT分析に続いて、アセット(経営資源)を整理していきます。アセットはヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産から構成されます。それぞれの項目について、自社にどのようなアセットが存在するかを整理しましょう。
続いて、「外部環境変化の分析」と「ビジネスへの影響評価」を整理していきます。
先述した SWOT分析の Opportunity(機会)と Threat(脅威)とも共通する内容です。
外部環境変化の具体例として記憶に新しいのは、コロナ禍の影響による働き方改革でしょう。
コロナ禍のように社会全体を巻き込むような大きな変化もあれば、自社の所属する業界に特化して影響が起きる場合(法改正や業界トレンド等)など環境変化と一口にいっても様々です。
外部環境変化を分析・整理する手法として、フレームワークを利用することも有効です。代表的には、PEST(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))分析や、業界内の状況を分析する5F(Force)分析、同じく業界内の自社の事業環境を分析する3C(Consumer、Competitor、Customer)分析などがあります。
実は、DX は一定のデジタル化が一定程度まで進んでいる企業でしか実施できません。
令和3年情報通信白書によれば DX(デジタルトランスフォーメーション)は以下のように定義されています。
「デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組を指す概念である」
業務プロセスを単にデジタル化するにとどまらず、新たな商品やサービスがビジネスモデルや組織までも変化させることをゴールにしています。
読んでいただいてお分かりかと思いますが、難易度が高いことは明白です。
そのため、デジタル化がそこまで進んでいない企業は、DX の前に「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」といったプロセスを順番に実施していく必要があります。
以下に DX 実現に至るまでの各プロセスをご紹介します。
アナログ情報をデジタルデータに変換する(例:紙で管理していた販売情報の電子化)
業務プロセスをデジタル化する(例:システムを活用し、人が事務作業で入力していた販売情報登録を自動化)
デジタル化した業務プロセスを用いたビジネスモデルの変革(例:販売プラットフォームの構築)
記載した「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」が未実施である場合には、後述するビジョンの達成向けて必要な整備から順番に対応することを戦略に盛り込む必要があります。
逆に、自社が取り組む領域において基本的なデータのデジタル化が完了していたり、業務プロセスのデジタル化が概ねできていたりしている場合には、満を持して DX の実現に向けた戦略を描けるでしょう。
DX推進は企業全体に影響がある取り組みです。組織横断で進めなくてはならない場面も多いため、推進していくには経営層が積極的に DX推進に関与することが重要です。
できれば戦略の策定の段階から経営層を巻き込んでチームを組み、議論を進めることが望ましいでしょう。
チームメンバーだけでは知見や方針不安がある場合は、DXコンサルティングを提供している企業に支援を依頼するのも一つの手段です。
具体的な戦略を議論していく前に、この章でご紹介した整理をしておきましょう。

前提整理ができたら、いよいよ DX戦略の策定に入っていきます。まずは DX戦略のビジョンを策定する方法についてみていきましょう。
すでに企業で何らかの DXビジョンが示されている場合は問題ありませんが、示されていない場合は、具体的なビジョンの案を複数策定し、経営層と合意をとる必要があります。
DX戦略のビジョンを考える際には、下記のポイントがあります。
これらの内容を盛り込みながら、自社の DX戦略ビジョンを検討しましょう。
DX戦略ビジョンを策定する際に、他社の事例を知りたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは事例を2つ紹介します。
株式会社三菱ケミカルホールディングスは「ヒトとデジタルの協調による、持続可能な未来に向けた新しい価値創出への変革」というビジョンを掲げ、そのビジョンを支える7つの DX計画を定義し、各事業をこの DX計画と関連付けて DX に取り組んでいます。
参考:https://www.mcgc.com/ir/pdf/01031/01178.pdf(新しいタブで開きます)
旭鉄工株式会社は「人には付加価値の高い仕事を」を合言葉に、機械やシステムができることは機械やシステムに任せ、人は人にしかできない創造的なことをやるべきとしています。
社長自ら頻繁に社内SNS を更新してビジョンを共有し、そのビジョンに基づくルールの一つとして「怪我以外は何をしてもいい」というルールのもと、闊達なチャレンジを生み出しています。
参考:https://www.istc.co.jp/about/dx(新しいタブで開きます)

DX戦略ビジョンが決まったら、続いて DX における取組領域を策定していきます。
自社の事業をベースにデジタル技術を掛け合わせて強みを活かせる領域を選定するのが基本ですが、どのような領域にどう取り組むべきかよくわからないという方も多いはずです。
そこで、ここではコロンビア大学の経営大学院で教鞭を執るデビッド・ロジャース氏が執筆した『The Digital Transformation Playbook』で取り組み領域の具体例の中から以下の3項目をご紹介します。
内容をひとつずつみていきます。
プラットフォームビジネスとは、企業と顧客(BtoC)や、顧客同士(CtoC)をマッチングする場を提供するビジネスです。今日では、たとえば以下のようなプラットフォームビジネスが展開されています。
プラットフォームビジネスについて、内容を紐解いていきましょう。
プラットフォームの主なタイプは以下の4つです。
プラットフォームビジネスを考えるうえでは、大部分が上記4つのいずれかに当てはまるでしょう。
プラットフォームが持つ大きな力は、主に以下の3点です。
基本的に、顧客をすでに多数集めている企業がいる既存のプラットフォームビジネスに後発で新規参入し、成功することは困難といわれています。
しかし、明確に顧客に差別化した価値が提供できる場合や、自社と顧客、競合他社などの相互作用によって新たな価値を提供できることもありますので、可能性があれば参入の検討をしても良いでしょう。
DX戦略といわれて、「データ活用」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?デジタルデータをうまく活用できれば、広告を打つタイミングの選択や、製品の製造量の決定、新サービス作成の意思決定など、イノベーションや戦略的優位性の源泉になります。
ここでは DX において、どのようにデータを資産へ変換していくかを事例と共に紹介します。
顧客心理や顧客行動は簡単には可視化できませんが、データの取得方法によっては、製品の使われ方や不正の有無まで明確化できます。
以下のような例があります。
データを活用して従来では不可能だった顧客セグメントの抽出が可能となり、状況に合わせてリアルタイムにターゲットを変更していくこともできます。
以下のような例があります。
データから顧客ニーズを得ることで、顧客ごとに最適化した製品やサービスの提供ができます。
以下のような例があります。
特定の顧客の心理や行動について、顧客全体の平均との相違度合が掴めるようになります。
以下のような例があります。
データを活用方法を検討する際に、ぜひ参考にしてください。
顧客体験をデジタル化することにより、企業と顧客、あるいは顧客同士のコミュニケーションが促進され、企業の売上拡大につながります。デジタルトランスフォーメーションの本丸とも捉えられる領域です。
どのように顧客体験をデジタル化するのか、その手法についてみていきましょう。
企業が顧客に新たなデジタル体験を提供するには、次の5つのステップがあります。
顧客にこのステップを経てもらうために戦略を立てていく必要があります。
以下で詳細を解説します。
前述した各ステップでのデジタル体験を促進するには、後述するポイントがあります。これらのポイントをふまえて、自社のビジネスではどんな切り口から顧客にアプローチできるかを考えましょう。
これらの内容を検討することで、効果的な各ステップの戦略を立案します。

取り組む領域の選定が完了したら、次は DX推進のプロセス策定と成果評価の手法検討に進みましょう。
前章までで決定した取り組み領域ごとに、事前整理の章でもご紹介した「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」のうちどのレベルの取り組みからするべきかを意識しつつやるべき施策・タスクと取り組みのスケジュールなどを整理していきます。
この段階では実行にあたり調整や協力が必要となる社内の事業部や部署とも議論が必要です。
システムの導入や刷新、データの管理などではシステム部門が、新サービス検討などは企画部門や営業部門とのアイデア出しや TODO 整理が欠かせません。
自社のリソースで対応できるか、外部のナレッジやリソースを取り入れる必要があるかを含めた判断が求められます。
自社内で開発の内製化を目指す場合には中長期的な視点が必要な場合もありますので以下の記事を参照ください。
進むシステムの内製化 メリットや難しさを踏まえどう取り組むべきか(新しいタブで開きます)
以下では DX の戦略推進プロセス策定と実行時に重要となる考え方、実行後の施策の評価時のポイントについて解説します。
DX においては、「アジャイル」を意識した推進プロセスが欠かせません。アジャイル(agile)は、「敏捷」や「機敏」という意味で、方針の変更やニーズの変化などに機敏に対応することを示します。
もともとアジャイル開発というシステム開発の手法が存在しており、近年ではそこから開発業務以外のビジネスプロセスや組織論においても「アジャイル」の考え方を取り入れる機運が高まっています。
アジャイル開発については以下の記事で詳しく解説しておりますのでぜひ参考にしてください。
アジャイル開発とは? – システム開発を発注する時に知っておきたい開発手法の話(新しいタブで開きます)
デジタル技術の発達によって、ビジネスをテストするコストは各段に下がりました。たとえば、ある製品の販促方法を複数試す場合、従来では複数の店舗が必要でした。しかし昨今ではインターネットでプロモーションができるため、少ないコストで複数の販促方法を試せます。
時代の流れに合わせて素早く・低コストで試行をすることで、仮に失敗したとしてもリスクを低減することができます。
市場や社会の変化が早い現代では、入念な準備をして一回で成功を掴み取るのは非常に困難です。それよりも試行回数を増やし、改善を重ねていくことで最終的な成功に近づく方がリスクも低く効率的です。
アジャイルの適用においては、以下の5つの考え方がポイントになります。
一つずつ説明していきます。
早い段階で対象の製品やサービス・プロセスの実験を繰り返し、多くの学びを得ることが重要です。この実験の繰り返しが遅くなると、失敗によるコストが大きくなってしまいます。制度や社内文化も含めてすぐ検証ができるような環境づくりも必要です。
解決策、つまり手段を最初に考えるのではなく顧客の課題を把握することに努めましょう。顧客の課題を適切に解決できるサービスでないとビジネスを成長させるのは難しくなります。
DX のよくある失敗として、顧客ニーズを無視して「とりあえず」デジタルのサービスを立ち上げるという手段ありきの取り組みをしてビジネスがスケールせずに撤退してしまうケースが挙げられます。
そのようなことにならないために、課題にフォーカスすることが重要です。
社内の同僚や幹部社員、役員などではなく、実際の顧客や見込み客から直接製品やサービスに関しての意見をもらいましょう。
たとえば、食べ物を提供するなら実店舗に立って試食してもらう、プロダクトやサービスなら実際に使ってもらう、という対応を取り、なるべく多くの顧客や見込み客から意見をもらうことです。
顧客や想定のユーザー層に対価を支払って、インタビューさせてもらうのも良い方法でしょう。一方で、その意見はあくまで一顧客の意見ですので、一人の意見にすべてを委ねてしまうといったことのないようにバランスをとることが重要です。
また、必ず製品やサービス、もしくはプロトタイプ(新しいタブで開きます)を作ってから意見をもらうことがポイントです。具体的な製品やサービスを作らずに意見だけ求めると、実際に使ったときの感想とはずれた内容を答えられてしまうことが多いためです。
当社でも提供していますが、開発を伴わないプロトタイプ制作や最小限の開発で初期プロダクトを作る MVP開発とユーザーインタビューを含む検証を支援している企業も存在します。
自社のみでの実行に不安がある場合はこうしたサービスの活用を検討するのも良いでしょう。
アイデアをテストする際、その前提条件は自分の思い込みであることがよくあります。そのため、実際にテストしてその前提が通用するかを確認することが必要です。
たとえば、アイデアの協力者として想定していた人物が、実は利益背反の立場にあり協力が得られなかったなどの場合です。自分たちが正しいという思い込みは捨てましょう。
特に日本の企業は、失敗による評価の低下や降格などを恐れてチャレンジしない傾向がありますが、その風土では残念ながらアジャイルとは程遠いといえます。
もしあなたが組織を動かせる立場にいるなら、この失敗を恐れない風土づくりにも取り組まなくてはなりません。この失敗の仕方にはポイントがあります。
たとえば上記を守った上での失敗であれば咎めない、というルールを作ってしまうなど、チームがチャレンジをしやすい仕組みや雰囲気をつくることからはじめるとよいでしょう。
取り組み後の評価にあたっては、以下2点のポイントに注力して進めましょう。
またガバナンスについては、以下3点のポイントに注力することが必要です。
DX戦略の修正頻度は米国においては、「毎月」が26.3%と最も多くなっています。外部からの評価も交えて高頻度の見直しを実施しましょう。

DX白書2021のデータをもとにスパイスファクトリーにて作成
※引用:DX白書2021_第2部_DX戦略の策定と推進p69より(新しいタブで開きます)

DX戦略の策定プロセスは以上ですが、DX戦略を策定・推進していくうえでは、いくつか失敗しやすい注意点があります。
戦略の策定段階で認識しておくことで、実行時の失敗を避けられる場合もあると考えます。
ここでは、その注意点についてみていきましょう。
冒頭でも述べた通り、DX を実施するうえでは大きな組織変革に臨まなくてはなりません。その内容は大きく以下3つです。
DX には推進デジタル関連スキルの習得が必要ということはみなさまも認識されているかと思います。
とくに社内でのデータ分析の分野においては以下2点のスキルが必要です
不足するスキルは採用や外注で補う必要がありますが、中長期的には社内で育成できることが望ましいでしょう。人事部と連携して教育体制を整えることも検討しましょう。
DX推進は最終的には全社プロジェクトとなります。各部門の文化や予算などを超えた協働が必要な場面も多くなります。予算や、人員のアサインなど、部門間の利害関係を調整する必要が出てきます。大企業ほど、この共同体制をつくる点に苦心するケースは多いようです。
部門間調整を担当する専任ポジションや推進部署の新設が対策としては挙げられます。
ただし、名ばかりで権限を持たない部署やポジションを作ってしまうと結局推進体制の構築に失敗するということに繋がります。
経営陣を新設部門長にするなど、相応の権限の付与がセットでなされるべきです。
すでに述べてきたように、DX を推進するためには企業文化や風土の変革も必要です。
DX推進においてとくに重要な風土は下記2点です。
すでに社風として浸透していれば対応する必要はありません。まだの場合は「DX戦略推進プロセスの策定と成果評価・ガバナンス」で紹介したような制度や取り組みが必要です。
企業トップのリーダーシップはもとより、社員一人ひとりが DX に対するリーダーシップを持ち、自分事として取り組むことが重要です。
とくに重要なのが、経営のトップが DXビジョンを示してリーダーシップを持って進めることです。
新たな取り組みを実施する際には、社内から反発の声が出ることもあるでしょう。
実際、これまでの自社ビジネスを大きくすることに貢献してきた社員からの意見は、一理あると感じることもあると思います。
ですが、DX が目指すのは既存ビジネスの改善ではなく「変革」です。
社内調整が難航した場合、最終的にはトップから方向性を強く示して推進することが重要になります。
もちろん、経営トップだけが大事なのではでなく、組織のメンバのー一人ひとりが DX の必要性を認識し、自分事として取り組む姿勢も大事です。
DX推進部といった新設部署を設けた場合に起こりがちなのが、既存の部署の社員が DX の取り組みを他人事だと感じて非協力的になってしまうことです。
そのような場合には前述したトップからのメッセージも重要ですが、自社にとって、自部署にとって、ひいては顧客にとって、DX することにどんな意味があるのかを地道に伝え続けることが必要となるでしょう。
また、小さくてもいいので社内での成功事例をつくり、共感してもらえる社内の仲間を増やしていくなど、泥臭く草の根的な活動も現場レベルでは求められます。
本記事でも注目の領域としてご紹介した、テーマであるデータ活用と分析。
DX における取り組み領域としてよく取り上げられることが多いです。
こちらにも取り組む際の注意点があります。その内容をみていきましょう。
「AI は人の仕事を奪う」などといわれて久しいですが、魔法のツールというわけではありません。以下に挙げるようなポイントを適切に理解しておく必要があります。
世界的にも顧客が企業からのプライバシー侵害を受けないようなデータに関する規制等が進んでいます。日本でも個人情報の扱いは年々厳しくなってきていると感じられている方も多いでしょう。
加えて、フィッシング詐欺や不正アクセスといったサイバー攻撃も年々激化しています。この点に関していえば、実践に関わらず企業として対策が必須です。
また、企業にデータを収集されることについて懸念を感じている顧客も存在します。提携先や顧客とデータ共有する前に契約書でデータの取り扱いを定めることは当然ですが、データの取り扱いや利用目的について単に定めるだけでなく、顧客にわかりやすく公表、説明するといった対応が求められます。
「データ活用」というけれど、どこから手を付けるべきかわからない。そもそも自社に活用できるデータは存在しているのか不明な場合もあるでしょう。
データを手に入れるポイントについては、5つの提案があります。
上記のいずれかですでに社内にデータがあれば、それを活用していきます。ない場合は戦略の中にデータ収集の方法や顧客接点のポイントをつくることを盛り込む検討してもよいかもしれません。
社内でデジタル人材が不足していたり、戦略の策定や実行にあたってリソースが不足するといったことが DXプロジェクトではよくみられます。
この章の最後にリソース不足に陥った際の対象方法について紹介します。
社内からスキルのある人材の抜擢や、採用などで対応することができればシンプルですが、デジタル人材はどの企業も喉から手が出るほど欲している状況です。思うように採用が進まないケースも想定しておくべきでしょう。
社内での調達が難しい場合は、外部の力を上手く使うと効率的です。
システム開発を受託開発の企業に依頼する場合や、戦略策定支援をコンサルティング会社に依頼するケースなどが考えられます。
一社員としての意思決定は難しいとは思いますが、M&A で企業ごと買収して調達する方法も考えられます。
一方で、外注にもコストが発生する点、外部の力に頼りすぎると内部にノウハウが蓄積されないといったデメリットになり得る点は念頭におく必要があります。
戦略の策定・実行には自社の現状を把握し、適切な領域に人とカネを投資する必要があります。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、判断を見誤り、無駄な取り組みに不要なコストや人的リソースを投下してしまっている企業は少なくありません。
とくに日本企業は、業務効率化や生産性の向上などのいわゆる「守りのDX」に投資が偏重しており、顧客に新しい価値を提供したり、市場に新しいサービスをつくる等の「攻めのDX」への投資ができていないという傾向がみられます。
長期的にビジョンを達成するために、何に投資するべきか、かけるコストは適切か、定期的に見直し続けることが大事です。

スパイスファクトリーでは、DX推進戦略において「極力開発しないDX」をテーマに『FastDX®』を提唱しています。
最近では、多くの企業にとって共通的に必要となる仕組みは、SaaS などの形でサービスとして提供されるようになりました。たとえば、営業やマーケティング領域で DX を実現しようとした場合、SFAや MA などの利用が有効です。これらは SaaS の形態でさまざまな製品が提供されており、手軽に利用することができます。
当社では、先述したアジャイル開発の思想やノウハウに加えて、SaaS や CMS など既存の最新プラットフォームを最大限活用した開発を行うことで、素早いデジタル変革を実現する手法を FastDX® と定義して実践しています。(FastDX® はスパイスファクトリー株式会社の商標登録です。)
FastDX を実行することで、企業はより素早く、より低リスク・低コストに DX にチャレンジできると考えています。
詳細は以下の記事もご参照ください。
【2023年版】DXが失敗する理由は?リスクを下げ成功確率を上げる「FastDX」という選択肢(新しいタブで開きます)
当社は、FastDX の他に、戦略策定からスクラッチ開発も含めて、企業の DX を一気通貫で支援できることを強みとしています。
自社内のみでの DX推進に課題を感じている方はぜひお気軽にご相談ください。

この記事では、DX戦略の立て方や推進の際に注意すべきことについて解説してきました。
まとめです。DX戦略の立て方は次の通りです。
プロジェクト推進にあたっては以下の領域で躓きやすかったり、配慮が必要な場合があるので意識しましょう。
自社のあるべき姿(ビジョン)に基づいて、DX を進めていきましょう。
DX の推進でお困りの方は、ぜひ一度スパイスファクトリーへご相談ください。
スパイスファクトリーでは、アジャイル開発や FastDX により皆様の新規事業開発や DX を支援いたします。ご興味のある方はお問い合わせ下さい。
The Digital Transformation Playbook「DX戦略立案書」:デビッド・ロジャース 著、笠原栄一 訳.2021/1/8
デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門:長尾一洋 著. 2022/10/20
DX経営戦略~成熟したデジタル組織を目指して~:ジェラルド・C・ケイン他 著、三谷慶一郎他 訳.2020/10/31
DX白書2021:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構.2023/2/24
あるべき姿をどう描くか:『ビジネス2.0』の視点:オルタナティブ・ブログ.2023/2/24
DX戦略とは?立て方のポイントなどを先進企業の事例を交えて基礎から解説.2023/2/24
成功につながるDX戦略の立て方と事前準備のアプローチ方法とは?.2023/2/24
DX戦略の立て方とは?失敗例と推進事例から探る成功のパターン.2023/2/24
5つの事例から学ぶ「DX戦略」の立て方と、成功のための3つのコツ.2023/2/24
DX戦略の立て方とは?成功のポイントやビジョンの設定事例も紹介.2023/2/24
輸送・配送網の高度化やECサイトの充実化などを背景としつつ、コロナ禍の影響も相まってオンラインでの購買行動は多くの消費者にとって一般的なものとなりました。一方で、実店舗では音響や照明、陳列など豊富な手法で顧客体験を演出できるというメリットもあります。
双方の良いところをうまく組み合わせ、顧客に新たな価値を提供しようとする OMO(Online Merges with Offline) を戦略に取り入れる動きが進んでいます。この記事では、OMO の概要や重視すべき理由、メリットや進め方についてご紹介します。
OMOとは、オンラインとオフラインを融合し、顧客体験を向上させる取り組みを意味する言葉です。2017年ごろに元 Google社の李開復(リー・カイフー)氏が提唱したといわれており、中国を中心として普及してきた概念です。近年、日本でも OMO のキーワードで取り組みを行う事例が増えつつあり、注目度が上がっています。
OMO戦略の一例としては、たとえば顧客がオフライン店舗で商品を見つけられなかった際に、オンラインへ顧客を誘導し購買へつなげるような取り組みが挙げられます。このケースでは、オンライン・オフライン両方の在庫データを統合的に活用し、顧客の状況や都合に合わせて最適な体験を提供できるようにしています。
OMO と似た概念として、2010年代前半に注目された O2O(Online to Offline)を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。O2O は、オンラインから実店舗へ誘導することを目指す戦略・施策です。たとえば、Webサイトやアプリ上でクーポンを配布して実店舗への来店促進することなどが挙げられます。
O2O ではオンラインからオフラインへの一方的な送客を主としているのに対して、OMO ではオンラインとオフラインの垣根を取り払い、チャネルの違いを感じさせないような体験を目指している点で異なります。O2O を発展・昇華させた概念が OMO といえるでしょう。

世界や日本の各企業が OMO戦略に取り組む理由はどこにあるのでしょうか。様々な理由が存在しますが、ここでは3つの観点から整理します。
消費行動のうち EC を利用する割合を示す EC化率は年々上昇を続けていますが、一方でその上限も見えつつあります。経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(新しいタブで開きます)によれば、世界の B to C 市場における EC化率は今後も伸びつつありますが、一方でその伸び率は低減傾向にあることが読み取れます。
特に EC の先進国であるアメリカや中国ではその傾向が顕著です。同調査では、アメリカの EC化率はほぼ頭打ちとなっており、また中国の EC化率も伸びが鈍化している傾向にあることが明らかとなっています。これには、いわゆる「最寄品」や「買い回り品」は EC での購買もしやすいものの、詳細な商品比較や検討が行われる「専門品」は EC での購買が難しい点も影響していると考えられています。
このような状況において、これまでオンライン・EC での販売を中心とした戦略をとってきた企業も、オフラインへの進出を検討することになります。たとえば、OMO戦略の代表事例として名前が挙がることの多い中国のアリババ社は、中国14億人の購買行動のうち、非EC化領域の80%を取りに行くために、OMO戦略によるオフライン進出を進めてきた背景があります。



なお、日本における EC化率は、同調査によれば2021年度時点で8.78%とされています。日本の EC化率はまだまだ増加傾向であり、諸外国に比べるとさらに伸びる余地があるといえますが、一方で日本の大都市中心の都市立地やスーパー・コンビニなど小売店の充実などを考慮すると、他国よりも低い値に収束する可能性も想定されます。
いずれにせよ、他国の状況を考慮するとオンラインのみをターゲットとした戦略には、いずれ限界が訪れることは明らかです。

もう一つの観点は、オンラインにおける顧客獲得コストの向上です。従来、オンラインの顧客獲得コストは実店舗などのオフラインと比較すると安いとみられてきました。メールやオンライン広告などで多数のユーザーにアプローチできるオンラインチャネルですが、近年ではその市場がレッドオーシャン化しています。
たとえば、中国では「オンラインでユーザー1人を獲得するために数万円コストを使う」※1ということも状態化しています。日本においても、総務省「令和4年 情報通信白書」第2部第3節(2)広告(新しいタブで開きます)によると、2021年にはインターネット広告費がテレビ・新聞・雑誌・ラジオの広告費を上回るなど、オンライン上での顧客獲得チャネルとして一般的な Web広告費用は増加傾向です。この傾向が続けば、日本国内のオンラインでの顧客獲得単価も増加していくことが想定されます。
このような中、実店舗での顧客獲得に再度注目が集まっています。実店舗においては、ディスプレイや陳列、内装などによるブランディングが可能であり、また顧客への細かい接客も可能です。オンラインに比べれば丁寧で質の高い顧客体験を実現しやすいことから、ロイヤルカスタマー化しやすいという観点でも、店舗戦略は有効といえます。
よって、これまでオンラインに注力していた企業においても、実店舗とオンラインを組み合わせることにより顧客獲得を目指す流れが生まれています。
※1 藤井 保文「アフターデジタル2 UXと自由」p101より引用
以下では、OMO を戦略に取り入れるメリットを企業・顧客それぞれの観点からご紹介します。
企業側が得られる OMO の大きなメリットは、販売・サービスの機会損失を防げる点です。たとえば、オンライン上で在庫切れだった商品を「お知らせリスト」に登録しておき、商品が入荷されたら自分がよく行く店舗に訪れた際に受け取れるようにします。これにより「在庫切れ」で途切れそうだった購買行動をつなぎとめることが期待できます。
また、オンライン・オフラインの一元的なデータ収集もメリットといえます。両者のデータを顧客に紐づけ一元化することで、これまでできなかった販促や分析にもつながります。
OMO のキモは顧客への提供価値の向上にあります。よって、当然ながら顧客側にもメリットがあります。
OMO により、顧客はこれまで以上に便利に買い物やサービス利用ができるようになります。必要な時・タイミングで好きなチャネルで情報が受け取れたり、オンライン・オフラインを問わずサービスの利用や商品の購入ができたりするようになります。

OMO戦略は「流通・提供の改善」と「接点の改善」という2つのアプローチから整理できます。以下では、それぞれのアプローチ方法の具体的な事例を紹介します
OMO による流通・提供の改善とは、商品やサービスの「届け方」を OMO の実践により改善するアプローチです。実店舗とデジタルの力を融合させ、ユーザーに対して、より便利な購買体験を提供します。

中国のアリババ社が展開するスーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマーシェンシェン)」では、オンラインでの注文を、条件により最短30分で届けるサービスを実施しています。ユーザーがアプリから商品を注文すると、盒馬の店舗スタッフの端末に注文情報が届き、スタッフはそれを見ながら手早く商品を袋詰め。食品の特性である「注文したらすぐに利用したい」というニーズに応えられるサービスとなっています。

同じく中国の「滴滴出行(DiDi)」社では、タクシーの配車や自家用車のカーライドシェア、高級車の手配などのマッチングサービスを提供しています。アプリから配車や予約を行い乗車すると、地図上には推奨ルート、混雑具合、自分とタクシーの現在地、推定到着時間、推定金額と現時点での金額が表示されます。走行データに基づいて自動精算されるなど、オンライン上の処理で快適な移動をサポートする仕組みを構築しています。
日本でも最近はタクシーアプリとして「GO」や「JAPAN TAXI」等が活用されています。タクシー会社の連絡先を調べて、電話で配車の依頼をして…という従来のサービスの利用方法がアプリを活用することでより簡単に、スピーディーになっていることがわかるかと思います。

コーヒーチェーン「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」では、注文をすべてアプリに集約。店舗ではコーヒー作りとデリバリーに特化した形でサービス提供を実施しています。これにより、ユーザーデータを蓄積しやすくしつつ、設備やワークフローの効率化により店舗にかけるコストを最小限に抑えることに成功。出店スピードの加速に繋がっています。

渋谷の西武百貨店内にある商業施設「CHOOSEBASE SHIBUYA」では、折々のテーマに合わせた商品展示を実施。商品のそばに二次元バーコードを設置し、スマホで読み取ることで商品説明や値段の確認、注文をできるようにするなど、リアル店舗での商品購買行動をオンラインでサポートしています。

大丸東京店では「明日見世」としてD2C(Direct to Consumer:製造者と消費者の直接取引)を提供している企業の見本市を展開。大きな特徴は、実店舗でじっくり商品を選んだうえで、購入する際はその場でECサイトから買い物かごに商品を入れる方式を採用している点です。出展ブランドは実際に来店した顧客から多様なデータを収集できるほか、現場でダイレクトな評価を受けられるメリットを享受できます。
もう一つの OMO戦略のアプローチとして、接点の改善が挙げられます。これは、顧客接点をオンライン・オフラインで高頻度に持つことで顧客解像度を高め、今までできなかった価値を提供するアプローチです。

中国の大手保険会社である平安保険が提供しているアプリ「平安好医生(平安グッドドクター)」では、医療機関の予約からオンライン診療、処方箋の受け取り、医薬品の購入まで、医療にかかるすべての接点をアプリで完結させている点に特徴があります。これにより、通院や処方にかかる時間を、患者と医師の双方において短縮させる効果を生み出しています。
中国の若者向け賃貸サービス「自如(ズールー)」では、サービスの一つとしてルームシェア向けのサポートを実施。家賃の支払いや清掃といったルームシェアの課題を解決するために、家賃の個別支払いや、追加費用により清掃や家具の修理を依頼できるサービスを提供しています。
日本のアイリックコーポレーション社が提供する「保険IQシステム」では、保険ショップで行うような高度な保険のシミュレーションをユーザー自らで行うことができるサービスを提供。ユーザーが希望した条件に合致する保険を提示しつつ、後続フローである保険加入のコンサルティングから実際の申し込みまでワンストップで対応することで、ユーザーが本当に必要とする保険を選択できるという価値を提供しています。
ここまで、OMO のメリットや事例をご紹介しました。ここまでの内容を踏まえつつ、具体的に企業は OMO にどのように取り組むべきかを解説していきます。
OMO戦略が目指す目的は顧客体験価値の向上です。よって、まずはユーザーの理解が重要です。ペルソナ設定やカスタマージャーニーマッピングなどを行うことで、ユーザーがどのようなニーズ課題をどんな時に抱えているかを理解していきます。
洗い出したニーズや課題に対して、それらを満たす・解決するための体験を設計します。ここで OMO の考え方がポイントとなります。従来は、オンラインとオフラインの体験は切り分けて設計するのが当然でした。OMO の戦略では、両者を組み合わせることでどのような体験を新たに提供できるかを思索し、アイディアを膨らませます。
この時、オンライン・オフライン双方でどんな接点を設けられるか、各接点でどのようなデータが収集できるか、必要に応じてそれらを統合することでどのような価値を提供できるかを考慮することも重要な観点となります。
次に、具体的な施策に落とし込みます。たとえば、オンライン・オフラインの購買データを統合することで、より高度に商品のリコメンドを実施したいケースを想定します。これを実現するためには「EC会員のAさんの購買データ」と「実店舗でのAさんの購買データ」が同一人物(同じAさん)であると紐づけなければなりません。このような時に検討できるのが、EC・実店舗でのポイントカードの統合です。ECサイト上の会員ID と実店舗のポイントカードID の紐づけを行うことが検討できます。ポイントカードはスマートフォン上のアプリでデジタル会員証として提供することで、この紐づけを実現できます。小規模店舗では、LINEミニアプリ(新しいタブで開きます)による低コストでのデジタル会員証発行も検討できるでしょう。このような取り組みにより、ECの購買データとPOSやレジの購買データを紐づけます。
これらを実現するためにはシステム面の対応が必要です。具体的には以下のようなシステム・ツールの導入が検討できます。
2で考案した顧客体験を具体的に実現するために必要なアセットやシステムの構成・接続を設計していきます。
この段階ではビジネスの企画を担当する部署だけでは検討が難しいケースも多くなるでしょう。自社の ECサイト・店舗の POSシステム・アプリの開発担当などシステムに詳しいメンバーを巻き込んだ議論と整理が必要です。
サービスもプロダクトも作って終わりではありません。改善してよりユーザーに喜んでもらえるように PDCAサイクルをまわすことが重要です。
サービスの利用データや商品の購買データの分析、アンケートなどで取り組みを検証することを計画しておきましょう。サービスが本当にユーザーにとって良い体験を提供しているかを振り返り、改善を重ねていきましょう。

この記事では、注目を集める OMO戦略についてご紹介しました。
スパイスファクトリーでは、OMO の戦略実践に必要な ECサイト構築やシステム連携開発、UXリサーチやアンケートの実施等取り組みの検証サポートも実施可能です。
「Form a Scrum:協力しながらチームで最大の成果を出すこと」を強みとし、お客様と伴走し最適な課題解決へ導きます。まだ具体的に構想が固まっていない、企画・検討段階からの考案サポートも承っておりますのでぜひお気軽にご相談ください。
他には以下の関連記事も読まれています。
https://spice-factory.co.jp/web-marketing/why-dx-will-fail/
https://spice-factory.co.jp/design/line-mini-app-individual-development/
藤井保文.「アフターデジタル2 UXと自由」.日経BP. 2020/7/29
日本経済新聞出版.「日経MOOK 店舗DX2022」.日経BP. 2022/2/18
DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業は増えていますが、思うように進まず導入フェーズで止まってしまう例が後を絶ちません。
特に日本ではシステムだけを先行導入し、現場の混乱や活用定着の失敗に直面するケースが目立ちます。
DXの失敗が事業継続を左右するリスクになることも少なくありません。「現場に浸透しない」「思ったような成果が出ない」「どこから見直せばよいか分からない」と悩む企業にとって、対応の遅れは深刻な課題です。
本記事では、「FastDX」という独自のアプローチで、スピードと実行性を両立したDX推進を提案するスパイスファクトリーが、DXが失敗に陥る理由とそこから脱却するための実践的な戦略を解説します。

社会全体のデジタル化は現在でも急速に進んでいます。スマートフォンの普及、オンラインサービスの浸透、キャッシュレス決済や宅配インフラの高度化など、消費者の“当たり前”はすでに大きく変化しています。
一方、企業の業務やサービス提供の現場では、いまだに紙やExcelベースの手作業が残り、顧客接点や業務プロセスのデジタル化が追いついていないケースが少なくありません。このギャップが、顧客満足度の低下や人材流出、さらには競争力の低下につながっていきます。
多くの企業が「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を掲げていますが、実際にはPoC(実証実験)や単発的なツール導入にとどまることも少なくなく、全社的な構造改革には至っていないことも多くあります。
こうした状況に対し、経済産業省は早くから「2025年の崖」として警鐘を鳴らしてきました。2018年に発表された「DXレポート」では、老朽化した基幹システムが刷新されないまま2025年を迎えると、年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性があると試算されています。
システムの老朽化・複雑化だけでなく、それを担う人材の高齢化や属人化も深刻です。また、昨今のAI技術の急速な進化や民主化により、ビジネスにおけるテクノロジーの活用と定着がより重要視されてきています。
日本企業においては、デジタル化や業務効率化に取り組む企業は増えていますが、DXの本質である新たな製品・サービスの創出や企業文化・ビジネスモデルの変革にまで踏み込んでいる企業は多くありません。
IPAの「DX動向2025」によると、2024年時点で新規製品・サービスの創出と企業文化や組織マインドの変革においてすでに十分成果が出ていると回答した企業の割合は、日本・アメリカ・ドイツで大きく異なります。
| 日本 | アメリカ | ドイツ | |
|---|---|---|---|
| 新規製品・サービスの創出 | 4.1% | 26.8% | 19.1% |
| 企業文化や組織マインドの根本的な改革 | 4.7% | 27.4% | 16.7% |
日本において、DXの本質的な取り組みがうまくいっている企業は5%以下とごくわずかです。これらの理由として、日本ではコスト削減や効率化といった「守りのDX」への偏重や、全社的な変革ではなく部分最適に偏る傾向が多いと指摘されています。
DXの成功に欠かせない戦略の立案方法については、関連記事をあわせてご覧ください。
関連記事:DX戦略の立て方とは?立案方法や成功のポイントを事例も交えて徹底的に解説!

DXに取り組む企業は増えていますが、なかなか思うような成果が出ていません。なぜDXは失敗してしまうのでしょうか。実はいくつかの共通点があります。
ここでは、「DX動向調査2025」を参考に、失敗の要因として挙げられることの多い5つのポイントを見ていきましょう。
DXを推進するために欠かせないのが、経営層の明確な意思と継続的な関与です。しかし実際には、DXをIT部門や現場に任せきりにし、経営層が十分に関与していないケースが少なくありません。
DXに成功した企業は明確なビジョンを示すだけでなく、社内に浸透させるための行動指針まで示しています。現場任せの状態では、社内に根付かず形だけの取り組みで終わるリスクが高まります。
失敗を防ぐには、経営陣自らが方針を示し現場との対話が重要です。
DX推進が形だけで終わる背景には目的の不明確さがあります。社内で何を目指すのかが共有されていなければ、システムも施策も十分に活かせません。
IPAの調査でもDXの取り組みを業務効率化にとどめている企業が多く、価値創出やビジネスモデル変革には至っていないのが実情です。
DXを成功させるには、明確な目的を掲げ、組織全体で共通認識を持たなければなりません。
DXを進めるには、専門的なスキルを持つ人材の確保や継続的な投資が必要です。しかし、「DX動向調査2025」では52.7%の企業が「人材の確保・育成」を課題として挙げており、多くの企業が人材不足に悩んでいることがわかります。
社内にDXを推進できる人材がいなければITベンダー任せとなり、内製化や現場主導の改善が進みにくくなります。
DXは一度導入して終わりではなく、継続的な改善と見直しが必要です。中長期的にリソースを確保し、安定して推進できる体制づくりが求められます。
老朽化した基幹システムが足かせとなり、新たな仕組みやサービスの導入が進まないという声も少なくありません。とくに、長年使い続けたカスタマイズシステムを抱える企業は移行のハードルが高く、変革を後回しにしがちです。
レガシーシステムが複雑で全体像が把握できない場合や属人化していて誰も手をつけられない状況などが、DXを阻む要素となります。
刷新にあたっては、現場からの反発や一時的な業務停止というリスクが伴いますが、将来の成長や持続的な競争力のために乗り越えなければなりません。
多くの業務がデジタル化される今、DXの要ともいえるのがデータ活用です。しかし、データを蓄積しても、分析や業務改善に活かせていない企業は少なくありません。
各部門でデータが分断されていたりリアルタイムでの活用が難しかったりと、基盤整備が追いついていない状況です。
DXで成功させるには、全社横断でデータ活用体制の構築が欠かせません。自治体のDX成功事例については、関連記事をあわせてご覧ください。
関連記事:自治体DXの事例紹介 成功につなげるポイントとは?

DXが失敗に終わる企業が多い一方で、確実に成果を出している企業も存在します。両者を分けているのは、人材と資金力の差が大きいといわれていますがそれだけではありません。DXを進めるうえでの考え方や進め方にも、大きな違いがあります。
ここでは、DXを成功に導くための実践的なポイントを8つ紹介します。
DXを成功させるには試行錯誤が欠かせません。柔軟に改善を進めるためには、従来のウォーターフォール型ではなく小さく試しながら素早く見直すアジャイル開発が効果的です。
フィードバックをすばやく反映できるので、現場の意見や課題を取り入れやすくなります。
関連記事:アジャイル開発がこれからのDX推進に必要な理由とは?活用するメリット・デメリットを解説
システムや仕組みの導入が目的化してしまうと、期待した効果にはつながりません。社内の業務効率化だけに目を向けるのではなく、顧客にどんな価値を届けられるかという視点が求められます。
サービスやプロダクトが実際にユーザーにどう使われ、どのような課題を解決しているのか見極めましょう。常に顧客視点で評価し改善を重ねていくと、本質的な価値を提供できます。
DXを全社的に推進するには、経営層の積極的な関与が欠かせません。現場任せではなく、トップが方向性を示し具体的な指示を出すことで組織全体の動きが加速します。
さらに、経営層と現場が対話を重ね、課題や進捗を共有しながら進めることもDXを組織全体に根付かせるうえで重要です。
DXは単なるIT導入ではなく、企業の在り方そのものを見直すための取り組みです。実現するには、目先の業務改善にとどまらず、中長期的なビジョンが求められます。
企業の方向性やDXで実現すべき目的を明確にすると、現場の判断や行動にも一貫性が生まれます。
DXは具体的な成果や効果が見えにくいので、「結局どんな効果があったか分からない」と思われがちです。進捗や効果を客観的に把握するには、KPIの設定が欠かせません。
業務効率の向上、顧客満足度の改善、新たな事業の創出など、目的に応じた評価軸を定めておくと現状とのギャップが把握しやすくなります。設定したKPIは定期的に見直し、必要に応じて現場へフィードバックしましょう。
DXを定着させるにはツールだけでなく、活用できる人材が欠かせません。専門性の高い領域や初期段階では、外部に依頼する方法もあります。しかし、現場ごとの課題に即した迅速な対応や社内文化の反映、継続的な運用には、自社での人材育成が大きな効果を発揮します。
ITスキルに加えて課題を見つけ改善する力や部門間の連携など、DX推進に必要なスキルを身につけた人材を育成しましょう。人材育成によってDXのノウハウを社内に蓄積できる点も大きなメリットです。
DXは業務改善にとどまるものではありません。その本質は、蓄積されたデータを活かした新たな価値の創出や企業文化の根本的な変革です。しかし、多くの企業でデータが活用されず埋もれたままになっています。特に、部門間同士でデータをやりとりする仕組みが整備されていないため、活用が進まないケースも目立ちます。
データを最大限に活用するには、一元管理やリアルタイム性の確保に加え、部門をまたいだ利活用体制の構築が欠かせません。また、蓄積されたデータを分析・活用するには、データアナリストやデータサイエンティストなどの専門人材も求められます。
近年注目を集めている生成AI技術の導入も、DX推進につながります。業務の自動化や分析の高度化、顧客対応の効率化など、さまざまな場面で活用可能です。
AI技術の活用には、セキュリティ対策に加えルールや運用体制の整備が必要です。意図した成果を得るには、明確なゴールを設定し検証しながら段階的に進めていきましょう。
DXを新規事業に取り入れる方法については、関連記事も参考にしてください。
関連記事:DXを新規事業に取り入れるには?事例に学ぶコストをおさえて小さくはじめる方法

スパイスファクトリーが提唱する「FastDX」のイメージ図
それでは、成果につながる DX を実現するためにはどのような考え方が必要なのでしょうか。当社では結論として、上述した DX の失敗原因を避けるために、できるだけ「開発しない・小さく作る」DX を目指すべきだと考えています。
最近では、多くの企業にとって共通的に必要となる仕組みは、SaaS などの形でサービスとして提供されるようになりました。たとえば、営業 DX やマーケティング DX を実現しようとした場合、SFA や MA などの利用が有効です。
これらは SaaS の形態でさまざまな製品が提供されており、手軽に利用することができます。
また、データ活用を見据えて自社に ERP を導入するケースにおいても、すでに大企業向け・中小企業向け含めて、さまざまな製品が SaaS の形で提供されています。
このように、DX の活動を実施していくうえで必要となる仕組みの多くは、すでに存在するものが利用できます。これらを組み合わせ最大限活用することが、効率的な DX 実現につながります。
そして近年では、生成AI(ChatGPTやClaude、GeminiなどのLLM)を組み合わせることで、SaaSだけでは難しかった“人に依存した判断・思考業務”にもデジタル変革の波が広がり始めています。また、SaaSそのものにAI機能が導入されているケースも少なくありません。
当社では、このように SaaS や CMS など既存の最新プラットフォームを最大限活用した開発を行うことで、素早いデジタル変革を実現する手法をFastDX®(新しいタブで開きます) と定義しています。(FastDX® はスパイスファクトリー株式会社の商標登録です。)

まずは「FastDX」で具体的にはどんなことができるのか、イメージを深めていただくためにユースケースをご紹介します。

たとえば、Hubspot×Shopify×LINEミニアプリによる OMO(Online Merges with Offline)(新しいタブで開きます)実現もその一つです。
HubSpot の CRM・MA 機能から得られる顧客データや、Shopify で構築した EC や ShopifyPOS から得られる購買データ、LINEミニアプリの会員証データなどを活用します。
Shopify で構築した EC 上の顧客の購買情報を CRMツールである HubSpot と連携します。これにより、EC上での購買データや会員情報を HubSpot で管理できるようになり、そのデータに基づいて条件を決めてメール等でパーソナルなオファーをしたり、MA の機能でそれらの送信を自動化することが可能になります。
さらに、HubSpot と LINE を連携することでよりできることが広がります。メール同様のキャンペーン連絡やオファーを顧客の LINE に送ることが可能になることはもちろん、LINEミニアプリで会員証機能などを使えば、リアル店舗での購買データも HubSpot CRM に統合することができます。
リアル店舗も含めた顧客の行動データに合わせた1to1のメッセージやオファーを、LINE やメールを使って自動化するような仕組みを構築することで、OMO の実現が可能となります。

HubSpot などの CRM情報や Shopify 等で構築した ECサイトの購買データ、LINEミニアプリで取得できる顧客の行動やコミュニケーションデータは、Google Data Portal および BigQuery を利用して統合・可視化が可能です。
ETLツールにより各ツールから BigQuery にデータを集約し、Data Portal でグラフ化や集計などを行って可視化します。
以上のように、FastDX では複数のツールを連携させることによって、それぞれのツールで得られる顧客の情報を統合して活用できます。
さらに統合したデータを分析することで事業やプロダクトの課題を把握したり、顧客により良い体験を提供するために必要な情報を得ることが可能になります。

FastDX の実践によりどのような効果が得られるのでしょうか。上述した「主な DX の失敗原因」を踏まえて解説します。
とくにスクラッチで開発を行う場合、システムのコストは高くなりやすいといえます。FastDX の考え方に基づき、SaaS をはじめとした既存プラットフォームを利用することで、コストを低く抑えて DX の取り組みを進めることができます。
スクラッチでのシステム開発には時間と人手が必要ですが、FastDX により開発を最小化し期間を短縮することで、社内リソースが開発に拘束される期間も短くなり、プロジェクト推進に必要な業務負担も減らせます。
上述のように、FastDX はスクラッチ開発に比べてコストやリソースが少なく済むことが期待できます。結果として、開発や施策の実行スピードの上昇にも寄与します。
節約できたリソースやコスト、時間は、顧客体験の向上や新たなビジネス的な価値を生みだす「攻めのDX」の取り組みに投資できるようになります。
可能な限り多くPDCAサイクルを回し、サービスアイデアや施策の検証と改善を行えるかどうかが「攻めのDX」、ひいては企業の DX そのものの成否を分けるでしょう。
FastDX は多くの企業が抱えるIT人材の不足に対しても効果的なソリューションになり得ます。FastDX で活用する SaaS ツールの多くはプログラミング等が不要なノーコード、または簡易な知識があれば使用可能なローコードのツールです。
システムの関係性やデータの扱い、各ツールの仕様や操作方法などの理解は必要ですが、プログラミングなどの専門知識やスキルは最小限で利用できる場合も多いでしょう。つまり、エンジニアの関与を少なくでき、マーケターや営業担当など、ビジネスサイドの社員でもプロジェクトを推進できる余地が大きくなります。
ビジネスサイドの社員でも運用が可能となれば、プロジェクトの参画メンバーの候補は大きく広がるでしょう。一方で、最小限とはいえ IT の専門知識に触れたり学んだりする機会も発生するため、FastDX プロジェクトを自社におけるデジタル人材の育成機会と捉えて活用することも考えられます。
FastDX により、仮に取り組みに失敗したときにも影響を最小化できます。
SaaS などのツールでは月額料金など利用料の形で課金されることが一般的です。よって、スクラッチ開発と比較して初期コストが抑えられます。契約を開始すればすぐに多くの機能が使えるようになるため、取り組み実施までのスピードについてもスクラッチ開発より速くなる傾向があります。また、取り組みの中断も行いやすいというメリットも得ることができるでしょう。
上記の特徴は、仮に取り組みに失敗してしまったときの早期撤退を可能にします。初期コストを抑え、PoC 等の検証をスピーディーに行えることで、失敗のリスクを軽減できます。
リスクが小さくなることで、失敗を許容するハードルも下がります。社内における失敗を許容する文化の醸成を行いやすくすることが期待できます。
FastDX の手法により、各 SaaS プラットフォームを最大限活用することで、結果として特定のベンダーへの依存度は下がります。
基本的に、各種プラットフォームの活用にあたっては初期設定やデータ登録などの作業が中心です。機能カスタマイズも最低限に抑えることで、できるだけ開発しないようにします。
これにより、将来的なシステムのブラックボックス化やベンダーロックインを避けつつ、取り組みのスピード感向上や柔軟な対応につながります。

スパイスファクトリーでは、2021年より FastDX Division を設立し、FastDX の取り組みを進めてきました。この章では当社が考える FastDX でのプロジェクト成功に必要な要素をご紹介します。
当社では、SaaSツールの活用だけではなくスクラッチ開発でも多数の実績があります。最初から大規模なシステムは作らずに、プロトタイプや MVP を活用してスモールに仮説の立案と検証を実施しながら進めていく「アジャイル開発」のプロジェクトを得意としており、この知見やマインドが FastDX の取り組みにも重要であると考えます。
本記事でご紹介してきたように、DX推進で成功をおさめている企業には「失敗を恐れない・許容する」文化が根底に必要です。表面的な取り組みだけではなく、実際に失敗しても、めげずに次の仮説検証に取り掛かる本質的な取り組み姿勢が求められます。
そのため当社では、クライアントと伴走してプロジェクトを進めることで、アジャイルな価値観やプロジェクト運営の方法をクライアント企業様にインストールすることも重視しています。
当然ではありますが、FastDX 実現のために使用する最新のプラットフォームに精通していることも重要です。実現したいことや、仮説の実証に必要な最適なツールの選択肢を考える必要があります。
各種プラットフォームの導入にあたっては、業務やビジネスに最大限活用できるように、各サービスの特徴や効果的な使い方をおさえましょう。SaaSツールは日々アップデートされていきますので、これまでできなかったことが機能追加で急にできるようになったり、設定が容易になったりといったことも多く発生します。
また、FastDX の実現には使用するツール同士を連携させる必要があることも頻発します。既存機能として他ツールとの連携が容易になっている製品もありますが、そうでない場合は API による連携をする必要があり、API 連携を構築できる人材がいることも重要です。
社内に使用する各ツールや連携に詳しい人がいれば問題ないですが、すでに述べているように IT 人材の不足は多くの企業が抱える課題です。社内にいない場合はツールの運営元から最新の情報を得たり、当社のような複数のツールに精通している企業のサポートを受けることで、短期的にカバーをし、中期的に人材を育成し、社内に知見を貯めていくのも一つの方法です。
FastDX がいかに有用であったとしても、ツールや仕組みを導入しただけでは DX が上手くいかないことはみなさんも同意いただけるのではないでしょうか。ビジネスの成功の鍵を握るのは、ITスキルやツールの理解だけではないからです。
そもそも、提供しようとしているサービスや商品が顧客にとって魅力的でなくてはどんなシステムも宝の持ち腐れです。
顧客が本当に価値を感じるものを検証するには UX(User Experience)リサーチやマーケティングリサーチのノウハウがあると優位ですし、実際に魅力を感じてもらうにはデザインやブランディングなどの要素も大きな影響を与えます。
MA や CRM を適切に使って価値を顧客に伝えるためには、マーケティングや営業の知見も必要です。
上記が DX プロジェクトの成功には必要な要素だと考えています。
関連記事:UIとUXの違いとは?顧客体験が変わる設計と成功事例
今回は、DX が失敗する原因を踏まえつつ、それらを解消することができる FastDX という考え方を紹介しました。
DX の取り組みを開始したものの、うまく成果につながらず失敗してしまった企業は多いのではないでしょうか。一方で、DX の実現は急務であり、今後もその重要性は変わりません。次こそ DX に成功したいと考えている企業において、FastDX は有効な選択肢であると自負しています。
FastDX による DX について、もう少し詳しく知りたい場合は無料で相談を受け付けております。DX の推進に悩まれている方は、ぜひお問い合わせください。
アジャイルなシステム開発、デザイン、ブランディング、マーケティングを得意とし、全方位から企業のDXを支援するスパイスファクトリー株式会社です。
ユーザーにとって使い慣れた LINEアプリ上で利用できることから、インストールの障壁が低い LINEミニアプリ。
スマホアプリをゼロから開発するのに比べ、コストをおさえた導入が可能な場合もあり、店舗ビジネスを中心に様々な用途で活用できます。一方で、スマホアプリと比較してまだ情報が少なく、LINEミニアプリの開発方法や機能などについて知りたいという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、LINEミニアプリで実現できることや、LINEミニアプリを使った DX の推進方法について紹介します。

LINEミニアプリとは LINE 社が提供するサービスのひとつで、LINE 内で店舗や企業のアプリを個別に提供できる仕組みのことです。
LINE のユーザー数は2022年6月末時点で月間9,200万人※であり、多くの方はスマートフォンの中に LINEアプリをインストールしている状況にあります。
一般に普及している LINE のプラットフォームを利用することで、自社や自店舗のアプリを多くのユーザーに届けやすくなるというメリットがあります。
LINE アプリは、メッセンジャー機能をはじめとして決済やショッピング、証券など複数の機能を統合したアプリです。このようなアプリのことをスーパーアプリと呼びます。
ミニアプリはスーパーアプリの中の1つの機能としてアプリケーションを提供することができるもので、LINEミニアプリはスーパーアプリである LINE アプリの中で動くWEBアプリの位置づけです。
スーパーアプリやミニアプリについては以下の記事で詳しく解説していますのでよろしければ参照ください。
スーパーアプリ・ミニアプリとは?企業が活用するメリット・最新事例をご紹介(新しいタブで開きます)
※参考:ユーザー数はLINE社「LINEBusiness Guide」2022年10月~2023年3月期版より
LINEミニアプリを導入することで、店舗向けを中心とした以下のようなサービスを提供できます。

前述の通り、多くの機能を実装できる LINEミニアプリですが、導入することによりビジネスでどのような成果を得られるのでしょうか。
以下では、LINEミニアプリにより実現できることや、解決できる課題など、得られるメリットについて紹介します。
LINEミニアプリにより来店予約や順番待ち受付を実現することで、店舗内でお客さまに待っていただく必要がなくなります。
これにより、お客さまへの利便性を提供し、店舗の混雑により待ち時間を嫌がったお客さまが離脱してしまうという課題の解決が見込めます。
LINEミニアプリでテーブルオーダーを実現することで、注文の聞き取りを効率化。聞き間違いによる注文のミスも減らせます。
また、来店予約や順番待ち受付を LINEミニアプリで提供すれば、電話予約対応業務も不要に。
店舗でのお客さまの整理や呼び出し業務も不要となるため、店舗オペレーションの効率化という観点でも効果的です。
LINEミニアプリでは、LINEの登録情報を利用してデジタル会員証を作成できます。
これにより、会員証の作成時にもお客さまの手間を減らすことができます。
デジタル会員証を導線に、店舗に訪れたユーザーに ECサービスへの誘導を行うことも可能になります。反対に、ECユーザーには家の近くに実店舗が存在することをお知らせし、クーポンなどを配布することで実店舗に誘導することもできます。このように、オンラインとオフラインを融合して顧客へ新たな体験を提供する、いわゆる OMO(Online Merges with Offline)(新しいタブで開きます)施策としても活用可能です。
デジタル会員証やクーポンの配布などにより、リピート率の向上につなげることもできます。さらに、LINEミニアプリでは上述した OMO の視点により、実店舗で商品を購入したお客さまを ECへ誘導しリピーター化したり、その反対に EC から入ったお客さまを実店舗に誘導したりするようなことも期待できます。オンラインとオフラインの垣根を越えたシームレスな体験を実現可能です。
一般的に実店舗はオンライン上と比較して内装や照明、音響などでブランドイメージを伝えやすいため、顧客のロイヤルカスタマー化などを見据えた取り組みにつなげることも可能でしょう。
また、LINEミニアプリの「インストールしやすい(新規のアプリダウンロードが不要)」という特徴は、新規顧客の獲得にもつながるでしょう。
BtoCビジネスにおいて顧客との接点を確保し、様々な取り組みを実施する場合の選択肢としてまず思いつくのはスマホアプリの導入ではないでしょうか。スマートフォンアプリと LINEミニアプリを比較した場合、どのような違いがあるか、以下で解説します。
ここまでの内容を整理すると、下表のようになります。

表で整理したとおり、ユーザーにとっては手軽に、かつ事業者にとっては比較的低コストから導入できるのが LINEミニアプリのメリットといえるでしょう。一方で、様々な独自機能を柔軟に構築したい場合は通常のスマホアプリとしての開発も検討できます。当社では、アプリ開発フレームワーク Flutter を活用したスマホアプリ開発を得意としておりますので、もしご興味があればこちらのリンクから詳細をご覧ください。
以下では、LINEミニアプリを活用した主な事例を紹介します。

東急株式会社では、コロナ禍による通勤需要の減少を乗り越えるべく、DX を推進しています。その中で、LINEミニアプリを活用した取り組みを実施。通勤定期利用者を対象とした新しい働き方を支援するサービスや、渋谷の各店舗で利用できるモバイルオーダーシステムを提供しています。また、LINEミニアプリを通して様々な行動データを収集することで、新たな取り組みへの活用も進めています。
引用・参照:LINEミニアプリ公式の事例ページ

大手化粧品会社であるカネボウでは、ユーザーとのオンラインコミュニケーションを強化すべく LINEミニアプリを導入。ブランドごとにアプリを提供することで、ブランドや商品の世界観を共有しています。
各ブランドアプリの大きな特徴は、メッセージ開封率の高さです。高いもので70%の開封率を実現しており、同社が別途提供しているスマホアプリと比較して約2倍の効果があるとのことです。
引用・参照:LINEミニアプリ公式の事例ページ(新しいタブで開きます)

三井住友カードではスマホアプリ「Vpass」を通してユーザーとのコミュニケーションを図っていますが、ライトユーザー向けにアプリのダウンロードや都度のログインが不要となるLINEミニアプリも併せて活用。わずか4か月という短期間で開発されたアプリにより、LINE公式アカウントとVpass IDとの連携数は従来の5倍となるなど、高い効果を挙げています。
引用・参照:LINEミニアプリ公式の事例ページ
これらの事例からも明らかなとおり、LINEミニアプリには「開発期間の短縮」「ライトなユーザーにもアプローチしやすい」「メッセージ開封率が高くコミュニケーションツールとして利用しやすい」といった特徴があるといえます。
LINEミニアプリを導入する方法には、大きく「パッケージプラン」と「個別開発」の2つの方法から選択することになります。以下では、それぞれの概要と特徴について紹介します。
パッケージプランでは、あらかじめ用意されたパッケージを利用することで、開発を行わない、もしくは最低限のカスタマイズで LINEミニアプリを利用することができます。
パッケージを提供している会社に個別に問い合わせをし、導入を進めることになります。
実現できる機能や利用金額にはバラつきがあるため、自社の実現したい要件を満たせるパッケージプランがあるか、まずは確認してみることをおすすめします。
利用できるパッケージと提供会社については、以下のリンクにまとまっていますのでご確認ください。
LINEミニアプリ 認定パッケージ一覧(新しいタブで開きます)
パッケージの活用が難しい場合は、個別開発を実施することになります。上述の通り機能面での制約はありますが、Webアプリケーションとして作成できる一般的な機能であれば、大抵は実装できます。
LINEミニアプリの開発においては、POS や顧客管理データベースなど既存システムと連携するケースも多くなります。これらの連携機能は個々に開発が必要です。また、LINE ID によるシングルサインオン機能を構築する場合も、個別開発が必要となります。
LINEミニアプリの開発においては、LIFF(LINE Front-end Framework)と呼ばれるフレームワークを利用します。
委託先を選定する際には、LIFF の知見有無についても確認してみてください。

以下では、LINEミニアプリの導入にかかる一般的な費用と期間をご紹介します。
パッケージでアプリを導入する場合、基本的には初期費用と月額料金を支払うことになります。価格は無料で始められるものから 100万円程度の初期費用がかかるものまで様々ですが、初期費用が数万円、月額費用が1万円以内程度の製品が多い印象です。
具体的な金額については、製品によって異なりますので以下のリンクから確認してみてください。
LINEミニアプリ 認定パッケージ一覧(新しいタブで開きます)
一方で個別開発を行う際には、費用は都度見積となります。
規模にもよりますが、一般的な WEBサービスの開発費用と大きな乖離はないといえるでしょう。
あくまで参考ですが、当社でお受けする依頼では、数百万程度から1,000万円程度のケースが多く見受けられます。
パッケージの場合、開発作業が不要となるため導入期間は短くなります。スピーディな導入を実現できるでしょう。
個別開発の場合、開発規模によるため一概には言えませんが、当社の事例では要件定義から一般公開まで半年程度で開発を行った実績がございます。
LINEミニアプリに多くのメリットがあることは前述の通りですが、当社では LINEミニアプリの活用は、企業の DX(デジタル・トランスフォーメーション)の実現にも有効であると考えています。
この記事の最後に、当社が LINE や LINEミニアプリを利用することで実現できると考えるビジネスの可能性についてご紹介します。
LINEミニアプリを活用した DX 施策においては、LINE の強みを活かせる点がメリットです。LINE という社会に普及したプラットフォームを利用することで、スマホアプリでは顧客接点を作るために最も大きな障壁といっても過言ではないダウンロードのハードルを下げられるため、強固な顧客接点を比較的容易に作れます。また、LINE は企業や店舗から送ったメッセージの開封率が高いという特徴があります。
メッセージチャネルとして定番のメールマガジンの開封率は業界にもよりますが、一般的に15%~25%程度といわれています。一方で LINE の場合は70%近い人(69.9%)が「企業からのメッセージを読んだ」※と回答しています。同じメッセージ内容やタイミング等の条件を揃えての検証結果ではありませんので、単純な数値の比較はできませんが、企業からのメッセージがしっかりと届くチャネルであることは間違いないといえるでしょう。
※出典:LINE Business LINE Guide株式会社マーケティングソリューションカンパニー2021年1~6月期版(Summary)(新しいタブで開きます)
調査機関:マクロミル社・インターネット調査(2021年1月実施/全国15~69歳のLINEユーザーを対象サンプル数2,060)
加えて、オンライン・オフラインどちらの接点も作れることも重要です。
特に実店舗を構えるような、小売・飲食・医療などの業種においては、デジタルの力で顧客体験を高めていくためにオンライン・オフラインでユーザーに垣根を感じさせないアプローチが必要となります。
その実現ためのキモといえるのがデータ活用です。オンラインのデータは EC や WEBサイト上でも比較的取得しやすいのですが、リアル店舗などオフラインでの行動データを取得・活用することは難易度が高く、まだまだ進んでいない企業が多いのが現状です。しかし、LINEミニアプリによりデジタル会員証やポイントサービスなどを導入することで、ユーザーに紐づく来店履歴や購買履歴、興味関心などオフラインでの情報もデジタルデータとして収集できます。
LINEミニアプリを通じて取得できるオフラインの情報とオンラインで取得した情報を組み合わせることにより、ターゲティングやセグメント分けを行い、効果的なマーケティング施策の実施やロイヤルカスタマー育成につなげられます。たとえば、来店回数が一定以上の顧客にシークレットセールの告知を送信する、店舗の創業記念日に該当の店舗に来店実績のある顧客に対して ECサイトで使える特別なクーポンコードを LINE で送るといった活用が考えられます。
また、HubSpot(新しいタブで開きます) に代表されるような CRM・MAツールと LINE を連携させれば、上記のようなメッセージ送信を条件に合致したタイミングで送るように自動化することも可能です。
参考記事:HubSpotとLINEの連携でできることとは?メリットや連携方法について解説(新しいタブで開きます)
近年ではカスタマーサクセスとして顧客の成功に貢献する取り組みも重要視されていますが、利用・閲覧頻度の高い LINE のメッセージング機能を利用した手厚い顧客サポートや、特定の商品を購入した顧客に一定のタイミングで商品の使い方を案内する取り組みのように、いわゆる「ハイタッチ」や「テックタッチ」のアプローチも実現できるでしょう。
このように、LINE というプラットフォームを活用し、リアル・デジタル両面での接点の構築とデータの活用をすることで DX の実現を目指せます。
当社、スパイスファクトリーでは LINEミニアプリの開発はもちろん、LINEミニアプリや LINE を使った DX 実現の伴走支援も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

この記事では、LINEミニアプリの概要や導入効果、LINEミニアプリによる DX の実現可能性などについてご紹介しました。DX 実現のための手段として LINEミニアプリを利用するイメージはつきましたでしょうか?
当社、スパイスファクトリーではコアバリューとして「Form a Scrum」を掲げており、エンジニア・デザイナー・マーケター・ブランディングなど様々なスキルを持ったメンバーがチームで成果をあげられることを強みとしています。単なる外注先にとどまらず、お客さまと伴走し、ビジネスを成功させるための最適な課題解決へとつながるように支援を行います。
LINEミニアプリとスマホアプリ、どちらが自社に適しているのか悩まれている方は、検討段階からサポートを承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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