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DXを新規事業に取り入れるには?事例に学ぶコストをおさえて小さくはじめる方法

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アジャイルなシステム開発、デザイン、ブランディング、マーケティングを得意とし、全方位から企業の DX を支援するスパイスファクトリー株式会社です。
いわゆる多角化戦略なども念頭に、新規事業に果敢に取り組む企業も少なくありません。一方で、新規事業開発は難しい取り組みであり、なかなか上手くいっているとは言えないのが日本の現状ともいえるでしょう。
新規事業開発に有効な手法として、DX の考え方に基づくデジタル技術の活用が考えられます。
当社ではシステム開発やデザインなど含めた新規事業支援も行っておりますので、この記事では新規事業に DX をうまく取り入れる方法を事例とともに紹介していきます。新規事業をどう進めていけばいいのか迷っている方のお役に立てれば幸いです。
当社のサービスにご興味をお持ちいただけた方はぜひ以下よりサービスをご覧いただくかお気軽にお問い合わせください。

スパイスファクトリーのデジタルビジネス創造支援サービス

なぜ新規事業にDXを取り入れる必要があるのか?


新規事業開発における一つの選択肢に、デジタル技術の活用という方法が挙げられます。近年では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の名のもとに多くの企業がデジタル技術を活用した新規事業の開発を進めていますが、なぜこのような流れが生まれているのでしょうか。

DXとは何か?

最近では耳にする機会も増えた DX という言葉ですが、まずはその定義をご紹介します。経済産業省によれば、DX は以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

引用元:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」p1より引用

現代においては、スマートフォンやインターネット通した製品選択行動・購買行動の割合が増えており、またデジタルネイティブ世代の年齢が上がっていくにつれて主要な購買層となっている状況があります。このような中では、ビジネスを進めていくうえでデジタルの活用は不可欠となっている状況です。
一方で、旧来の日本企業においては、デジタルの活用が進んでいない現状があります。そこで、DX の考え方に基づき、企業文化・風土面まで含めてデジタルの利用が当たり前のものとなるように変革しつつ、ビジネスモデル構築においてデジタルを活用していく取り組みが求められています。

新規事業開発におけるデジタル技術の有効性

新規事業開発においてデジタル技術の活用が有効な理由を端的にいえば、「従来には存在しなかった多様な顧客体験を提供できるから」です。
たとえば卑近な例を挙げると、イベントや展示会に参加する際に、チケットを印刷して持っていくことが減ったと感じられている方は多いのではないでしょうか?
予約時に QRコード付きのデジタルチケットをスマートフォンに送っておけば「チケットを印刷し忘れた」「チケットを家においてきた」ということもなくなりますし、主催者側は予約の管理から来訪者の確認まで、一貫して対応できるようになります。
このように、デジタル技術によって新たな体験を提供できるようになりました。顧客への「新たな体験」・「新しい価値」の提供はまさに企業が新規事業に取り組む目的であるといえるでしょう。
新規事業開発においてデジタル技術は絶対に必要というわけではありません。しかし、顧客の体験価値を高めたり、新たに価値を感じてもらえるサービスを提供するためにデジタル技術の活用が非常に有効であることは感覚的にもご理解いただけるのではないでしょうか。
こうした背景から、新規事業開発においてデジタル技術は重要視されているのです。

日本企業のDXの状況と課題

一方で、日本企業における DX の進展状況には課題があります。ビジネスモデル変革や新たな価値を生み出す取り組みは少ない状況です。
コンサルティング企業である PwC が実施した調査※1では、DX に十分な成果が出ていると回答した企業はわずか 10% にとどまっており、約30% の企業は成果が出ていないと回答するという結果も明らかとなっています。
また、デル・テクノロジーズ社が実施した調査※2では、91.3% もの企業で DX が進捗していないという結果も判明しています。さらに、62.2% の企業が PoC(Proof of Concept:概念検証) に取り組んだものの完了していない、もしくは完了する見込みがないと回答しており、残念ながら DX の初期のステップで躓いている企業も多い現状が見えています。
※1参考:PwC社「日本企業のDX推進実態調査2022

※2参考: デル・テクノロジーズ社「DX動向調査2021」

新規事業にDXを取り入れるためにするべきこと


新規事業に DX を取り入れていくためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。以下では、新規事業推進と DX、それぞれの取り組みにおいて重要なポイントを取り上げます。

新規事業推進に大事なこと

新規事業推進におけるポイントは多く存在しますが、ここでは2つのポイントを取り上げて紹介します。

顧客の課題を特定する

新規事業開発におけるアプローチ方法は大きく「課題解決型」と「問題提起型」に分かれますが、前者のアプローチの場合、新規事業開発は顧客の課題を特定することから始まります。
まずは、ヒアリング活動(インタビュー・アンケート)や観察により顧客の課題・悩みを徹底的に洗い出します。収集した情報をもとにユーザーの課題を解決できるサービスや事業のアイデアを考えていきます。挙げたアイデアは、フレームワークを利用して体系的に整理することをおすすめします。新規事業開発に利用できるフレームワークは数多く存在しますが、一例としては VRIO分析が挙げられます。VRIO分析とは、自社の経営資源を以下の4つに分類し、分析を行うものです。

    • Value:経済的な価値。自社の人的・物的リソースや設備などが該当
    • Rareness:希少性。既存の他社製品・サービスと類似していないか
    • Imitability:模倣困難性。提供する製品・サービスは真似されにくいものか
    • Organization:組織。経営資源を活用できる組織が構築されているか

考えたアイデアを VRIO のそれぞれの要素に当てはめて整理してみることで、ビジネスとして有望か、既に他社がやっていてこれからの参入は難しそうだ、など評価を行うことができるでしょう。

PMFを目指す

PMF(Product Market Fit)とは、製品やサービスが特定の市場において適合している状態を指す言葉です。PMF の達成状況を計測することで、顧客が欲しい製品・サービスを提供できているかどうかを判断します。
PMF が達成されていれば、集客などを加速させビジネスを大きくしていくことが見込める一方で、PMF が未達成の状態では、いくら広告や集客に力を入れても顧客は離脱してしまい定着しません。穴の開いたバケツに水を溜めようとしているようなものです。貴重な資金の中から無駄な広告費を投じないためにも PMF できたか否かは新規事業における重要なポイントとなります。
PMF までの具体的な手順は以下のとおりです。

  1. プロトタイプ構築:PMF の達成状況を測定するために、最低限必要となる製品(MVP:Minimum Viable Productやそのプロトタイプを構築する。
  2. テスト:構築したMVPを市場に投入したり、プロトタイプを実際のユーザーにテストしてもらう場を設けたりして、想定ターゲットに使ってもらう。
  3. 評価:顧客の反応を計測する。評価方法はどんなサービス・プロダクトであるかによっても異なるが、NPS(Net Promoter Score)やエンゲージメント率、リテンション率などを用いた定量指標とユーザーインタビュー等で顧客から実際の感想をヒアリングしたり、サービスの利用状況を確認させてもらう定性指標を組み合わせて行うことが一般的。
  4. 改善:評価結果に基づき、製品・サービスの改善を行う。必要に応じてここまでのサイクルを繰り返す。一般的に、このサイクルはスピード感をもって進める必要があります。市場投入が遅れれば、先行者利益を得ることができず、また変化する市場に対応することも難しくなるためです。

評価のプロセスの中でユーザーインタビューについては当社でもサービスとして実施する機会の多い手法です。
以下の記事に詳しいのでよろしければご参照ください。
ユーザビリティテストの手法・工程とは?事例を基にご紹介

DXを新規事業に取り入れるために大事なこと

新規事業開発に DX の戦略を取り入れる際のポイントも多数存在します。同様に、ここでは3つのポイントを紹介します。

デジタルの力でUXが向上するアイデアであること

新規事業開発においてデジタルは広く活用できる余地があります。そのなかでも、デジタル技術を活用したユーザー体験(UX)の向上は、意識すべきポイントといえます。
デジタル技術により UX を高める余地は多分に存在します。わかりやすい例をあげると、住所を入力する際に紙にすべて手書きするよりも、フォーム内に郵便番号を入れることで自動入力された方がユーザー体験は優れているといえます。具体的には、店舗での会員登録などにおいて、申込書を書くことが面倒で登録を避けられてしまうことへの対策として、UXを意識したアプリをタブレット上で提供することなどが検討できるでしょう。
一方で、UX を意識しないデジタル技術の導入は、ユーザーのストレスを高める原因にもなります。やたらと入力項目が多いフォームにイライラした経験のある方もいるかもしれません。UX を意識しないで DX を進めても、ユーザーのニーズを満足させ、競争で優位に立つことは難しいといえます。

アイデアを高速で検証するためにデジタルの力を使うこと

もう一つのポイントは「アイデアの検証」にデジタル技術を使うという観点です。
上述した PMF の達成までのプロセスで採用されることの多いシステム開発の手法のひとつである、アジャイル開発手法では、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトである MVP を開発し提供することで、低コストかつ高速に新規事業アイデアが顧客に受け入れられるかを検証します。
参考:新規事業担当者必見。“アジャイル開発”で小さく始めるシステム開発
また、PoC(Proof Of Concept:概念実証)として、新たなアイデアやコンセプトの実現可能性やそれによって得られる効果などについて検証を行うことも検討できます。この際にも、アジャイル開発手法を活用しつつ、プロトタイプを素早く構築し検証を行うことが有効でしょう。

作らないDXという選択肢も

近年ではさまざまな事業分野・業務領域において、SaaS などの「作らないで使える」サービスやテクノロジーが登場しています。これらを組み合わせて活用することで、リスクやコストを低減したり、仮説検証や施策の実行スピードを上げることが期待できます。これは企業の DXの実現において、大きな武器となるでしょう。
余談ですが、当社ではこのような SaaS や CMS など既存の最新プラットフォームを最大限活用した DX の進め方を「FastDX」と定義し、さまざまな企業に対して支援を行っています。
「FastDX」については以下の記事にて詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
DXが失敗する理由は?リスクを下げ成功確率を上げる「FastDX」という選択肢

以上のことをまとめると

  1. 顧客の課題を把握し、UX を向上できるアイデアをサービスとして顧客に提供する
  2. アイデアが顧客ニーズにフィットしているのかを素早く検証・改善し、PMF を達成する
  3. 必要に応じて既存プラットフォームを活用するなど、デジタルを活用して、完璧を求めず最小限のプロダクトでサービスの提供・検証の効率化、高速化を行う

ということが重要といえます。

デジタルの力で新規事業を成功させた事例


以下では、デジタル技術を活用して新規事業を成功させた3つの事例を紹介します。

Uber

ライドシェアのマッチングサービスである Uber は2009年より MVP を作成し活動を開始しました。Googleマップの API を利用することで安価にアプリを作成しつつ、配車の予約という1つの機能に限定することで開発規模を抑制。素早くアイデアを検証し、フィードバックを基に改善を繰り返すことで、大規模サービスに育てるための基礎を構築しました。

Zappos

アメリカの靴のインターネット販売企業である Zappos は、「靴をインターネットで販売できるのか」というアイデアを検証するために、簡易な ECサイトと Webサイトのみで検証をスタート。当初は在庫も持たず、実際に注文が入ったらスタッフが靴屋に当該商品を買いに行き梱包して郵送するというコストとリスクを最小化した仕組みで、消費者のリアクションを測る取り組みを行いました。
結果として靴のインターネット販売というビジネスは成功し、Zappos は会社を大きく拡大させることに成功しました。

陣屋

創業100年という伝統ある旅館である「陣屋」では、旅館業務に必要となる機能を搭載した「陣屋コネクト」というシステムを開発しています。陣屋コネクトでは当初、 SaaS の CRMプラットフォームである Salesforce を活用し顧客管理を安価に実現。当初は自社向けシステムとして開発したものの、現在では全国300以上の施設に導入されるサービスに成長しています。
既存の SaaS サービスを活用して小さくアイデアの検証を始めている点で、当社の考える「FastDX」の考え方が実現されている例といえるでしょう。
※参考:第2回 サービス対象 受賞事例集 旅館・ホテル経営をITの力で改革する「陣屋コネクト」

新規事業こそDX実現の得意領域

この記事では、新規事業開発においてデジタル技術の活用を考慮する重要性や、実際の事例などについて紹介を行いました。新規事業においては、小さく始めて素早く検証し、PMF を目指すことが肝要です。

「新規事業の実現はただでさえ難しいのに、さらに DX も取り入れるなんて無理だ!」と考えられていた方もいるかもしれません。
しかし、すでに多くの顧客のいる既存事業では、既存顧客への影響や既存システムとの兼ね合いで DX を進めたいと考えてもかえって一筋縄ではいかないケースも多いでしょう。しかし、新規事業ならば新たなアイデア・システムをデジタルの力で素早く検証することのハードルが低くなります。新規事業こそアジャイルや DX の考え方を取り入れやすい領域とも考えられるのです。

スパイスファクトリーでは、PoC支援やプロトタイプ開発など、FastDX により皆様の新規事業開発や DX を支援いたします。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
スパイスファクトリーのデジタルビジネス創造支援サービス
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当社の支援実績

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社|DX新規事業支援

本田技研工業株式会社|PoC支援

参考文献

田所雅之.「起業の科学」.日経BP. 2017/11/6
経済産業省.>「デジタルガバナンス・コード2.0」.https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf. 2022/6/16
PwCコンサルティング合同会社.>日本企業のDX推進実態調査2022 1割のDX成功企業から見えてきたDXMOの役割とは?.https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/dx-survey2022.html. 2023/2/2
デル・テクノロジーズ株式会社 データセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括.>「DX動向調査 2021」.https://drive.google.com/file/d/1eeYNRkihtjbdCQ6O9oslXOtkzNPLZhdg/view. 2022/1/20

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