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進むシステムの内製化 メリットや難しさを踏まえどう取り組むべきか

進むシステムの内製化 メリットや難しさを踏まえどう取り組むべきか

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これまで日本企業の多くは ITシステムをコストセンターととらえ、ビジネスのノンコアとしてシステム構築を外注化してきました。しかし、近年では DX(デジタル・トランスフォーメーション)に象徴されるように、IT がビジネスのコアとして認識されつつある傾向にあります。このような流れの中で、自社の競争力の源泉としてシステム開発の内製化に取り組む企業も少しずつ現れています。
一方で、内製化は簡単ではなく、失敗事例が多々あるのも事実です。その難しさを念頭に、どのようにシステムの内製化を進めていくべきなのでしょうか。この記事では、内製化の難しさや、取り組みのロードマップ例をご紹介します。

システムの内製化とは

システムの内製化とは
システムを自社の人員で開発することをシステムの内製化といいますが、近年、内製化に注目が集まっています。この背景はどこにあるのでしょうか。また、企業における内製化の取組状況はどうでしょうか。統計情報なども踏まえてご紹介します。

内製化が注目される背景

内製化が注目されている背景としては、いくつかの理由を挙げることができます。
まず、DX の推進という観点です。経済産業省「DXレポート2」では、DX の進展においては内製化の取り組みが必要であるとしています。上述したとおり、IT がビジネスのコアとして認識されるようになると、ITシステムやシステムを生み出すためのスキルを持った人的リソース、企業として ITシステムの開発経験の蓄積などが企業の競争力の源泉となります。DX を進めていく上では、このような IT に関する知的財産を確保していかなければなりません。
これら知的財産の内部化を進めるためにも外部委託から内製化へ移行する必要があります。
参考:システム開発リソース不足の原因と解決法とは?できること総まとめ

DXフレームワーク
出典:経済産業省「DXレポート2」

また、ビジネス速度の向上も内製化が必要とされる理由の一つといえます。特にウォーターフォール型でのシステム開発のデメリットとして、臨機応変な対応が難しい点が挙げられますが、このようなデメリットを解消するために、内製化・アジャイル開発を取り入れる企業が現れています。
参考:アジャイル開発とは? – システム開発を発注する時に知っておきたい開発手法の話

内製化のひとつのメリットはスピード感です。
もちろん、自社に十分なリソースがあることが前提となりますが、外注先との調整や発注手続きなどが不要となり、システム開発を高速化することができます。

企業におけるシステム内製化への取り組み状況

日本企業における内製化の取り組み状況はどうでしょうか。
多くのユーザー企業が所属する日本情報システム・ユーザー協会の年次調査「企業IT動向調査報告書」の 2022年度調査では、主に DX を推進している企業において内製化への取り組みが進んでいる状況が明らかとなっています。
具体的には「貴社は DX を推進できていると思うか」との質問に対して「非常にそう思う」と回答した企業の約 48% が今後内製化率を増やしていくと回答しています。
DX に前向きである、つまりシステムを競争力として活用していこうという意識の高い企業において、内製化を進める傾向がみられる状況にあります。

日本企業の DX の現状と課題については以下の記事で解説しておりますのでぜひ参考にご覧ください。
参考:DXが失敗する理由は?リスクを下げ成功確率を上げる「FastDX」という選択肢

システムの内製化は失敗も多く簡単な道のりではない

内製化への道のりは決して簡単なものではありません。従来 ITシステムの開発を外注していた企業においては、自社にスキルを持った人材やノウハウが存在しないため、特に難しい取り組みとなります。上述した経済産業省「DXレポート2」でも、「内製化する過程で必要となるアジャイル開発の考え方や、クラウドネイティブな開発技術等について、ユーザー企業の内部人材ではすぐに対応できないことが多い」と指摘されています。
実際に、内製化の取り組みに着手したものの失敗してしまったという企業の事例も多く聞きます。これはなぜでしょうか。
様々な理由がありますが、ここでは主なものをとりあげて紹介します。

ひとつは、十分なスキルのあるエンジニアを確保することが難しいという点です。
IT人材の不足が叫ばれる中、エンジニアを確保するためには十分な待遇やエンジニアが働きやすい環境整備・社内文化などが必要となります。
その一方で、内製化の旗手となる IT部門だけで社内人事制度や社内ルールの整備は難しいのが実情です。また、たとえエンジニアを確保したとしても、十分に活用できない、定着しないといった状況になるケースも考えられます。

加えて、リスク面の問題も挙げられます。
システム開発には QCD の観点でリスクが存在しますが、内製化をするとこれまで外出ししていたリスクも内部化します。たとえば、請負契約においてはシステムの品質についてはベンダー側に責任があり、それらが不十分であれば瑕疵担保責任もしくは損害賠償請求という形で保証がされます。つまり、品質が不十分であればベンダー側の費用・人員で対応することになります。
しかしながら内製化の場合、システムの品質に問題があっても自社で解決せざるを得ず、その対応にかかる費用・人員コストはすべて自社の持ち出しとなります。

このように、内製化を成功させるためには様々な課題があります。
一足飛びに実現できるものでは決してなく、会社として戦略的な取り組みが必要といえるでしょう。

システム内製化ロードマップの例

内製化ロードマップの例
内製化の取り組みを進めていくためには、長期的な視点に立って、ロードマップを作成し段階的に進めていくことが重要です。
一例をご紹介します。

「なぜ内製化をするか」の徹底的な議論と経営層を含めた合意

システムの内製化を進めることはすべての企業にとって必須というわけではありません。
内製化を進めるということは、IT を自社のコア・コンピタンス(=他社に真似できない競争力を生み出す能力)としてみなすということになります。自社にとって IT が競争力となるかどうかは、ビジネス環境や自社が持つ既存の経営資源などにより異なります。
たとえば、アパレル業界においてはもはや EC化は避けて通れず、IT をコア・コンピタンスとする経営戦略は現実的なものかもしれません。
教育業界においてはどうでしょうか。IT の力で教育を普及させることを目的に、オンライン教育サービスやアプリ開発などを進めるため内製化を進める戦略も検討できます。
一方で、自社のリソースを教育コンテンツの作成に集中し、アプリやシステムについては既存のプラットフォームを活用するといった選択肢も考えられます。
このように、内製化は企業の経営戦略と密接に紐づくものであり、IT 組織内でのみ検討するというよりも、経営層含めて全社的な決断が必要となるものです。
なぜシステムの内製化をするのか、本当に必要なのかを徹底的に精査・議論し、経営層を含めて全社方針として合意する必要があります。
この論点は企業の DX推進をどう行うのかにも密接に関係します。ぜひ以下の記事も参考にしてください。
参考:DX戦略の立て方とは?立案方法や成功のポイントを事例も交えて徹底的に解説! リーダーシップにおける注意点 より

最低限のリソース確保

内製化をするためには、当然ながらエンジニアリソースが必要となります。しかし、これまでシステムを外注してきた企業においては、社内にエンジニアが存在しないケースも多いでしょう。
まず、内製化を進めるための最低限のリソース確保が必要です。とはいえ、いきなりエンジニアを採用したとしても、自社にシステム開発ノウハウがなければ十分に活躍してもらえない状況となりかねません。
そこで、まずはスキル・ノウハウの社内蓄積が必要です。
そのためのひとつの方法は、アジャイル型開発手法や DevOps といった取り組みに精通しているベンダーに併走してもらい、開発ノウハウやエンジニアリング手法を学ぶことです。
これは上述した「DXレポート2」においても移行期のアプローチとして示されているものであり、有効な選択肢となりえます。

また、他社との人的交流によりエンジニアを受け入れるという案も考えられます。
スキルを持った方に自社メンバーとともに働いてもらうことで、より深い形でスキルの共有や文化面の理解などを進めることができます。このような対応に協力してくれる取引先があれば、検討してみるとよいでしょう。
当社、スパイスファクトリーもアジャイル開発を得意とする企業ですのでもしご興味があればお気軽にお問い合わせください。

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内製化ターゲットの見定め

システム内製化に着手した当初は、当然ながら自社のエンジニアリソースも十分ではなく、また社内のノウハウも蓄積されていない状況にあります。このような状況においては、内製化の対象とする領域を見定め、内製化に向くシステムから着手することが一つの選択肢となります。
たとえば、ひとつの方法は既存システムの外部に、システムの機能を拡張するような機能を構築する方法です。
システム本体を直接更新しない、もしくは API などを通して最低限の更新処理を行うような機能は、比較的開発ハードルが低くなります。
また、近年では Google社の提供する Appsheet に代表されるような、プログラミングを行うことなく開発ができるノーコードやローコードの技術も発達しています。
必要に応じて活用することで、プログラミングに関する知見が少ない方でも内製化に着手できる可能性があります。

成功パターンの確立

システム内製化ロードマップの最初の目標は、どのようなシステムなら内製化を行うことができるのか、内製化の成功パターンを示すことです。
内製化の本格的な拡大を進めるにあたって、社内の機運醸成の観点からも成功例が必要となります。一度成功例ができれば、類似する案件に手を広げやすくもなります。
成功事例ができれば、次の開発に必要な投資や人的リソースの確保についても、Go が出やすくなるでしょう。

人材確保

本格的に内製化領域を拡大していくためには、人材確保が必要です。
この段階では、可能であれば社内人事制度にもメスをいれ、エンジニアは既存の人材と別の処遇制度を設けるなど、全社的な優先度も変更して内製化を進められるとよいでしょう。
新入社員採用などにおいても、エンジニア枠を設けるなどの対応を検討します。
国内では IT人材の確保は困難な状況が続いており、当面解消される見込みはありません。
優れた IT人材を確保するためには、報酬面・環境面に加え、エンジニアが好む文化などを含めて検討が必要です。

内製化領域の拡大

人材確保を進めながら、段階的に内製化領域を拡大していきます。
内製化のメリットを生かすため、自社のビジネスにおいて中核となる事業や、成長事業、機動力が求められる事業などを対象としていきます。ここまでくれば、内製化はひとつの社内文化として定着します。
また、自社で獲得したシステム開発ノウハウを活用することで、ビジネス面における選択肢も多様化していきます。
たとえば、獲得したシステム開発ノウハウを活用して外販を進めていくことも一つの選択肢になり得るでしょう。自社向けに開発したツールをパッケージや SaaS の形で販売していくことも検討できます。
新規事業開発においても、システム開発スキルを活かしてスピード感を持った検討を行えるようになっていきます。

エンジニアに選ばれる会社になるために

エンジニアに選ばれる会社になるために
システム開発の内製化を進めていく上で最も難しいポイントが、人材の確保といえます。
上述のとおりエンジニア人材の不足状況は深刻であり、各社がその確保に奔走している状況にあります。
エンジニアに選ばれる会社になるためには、どのような観点が重要となるのでしょうか。

エンジニアリングへの理解

いかにエンジニアを集めても、エンジニアが動きやすい仕事の進め方ができなければ、すぐにエンジニアは去っていきます。
内製化をすすめる上で、システム開発の進め方を理解し、洗練させていくことは重要です。一方で、従来システム開発を外注してきた企業においては、エンジニアリングの理解は簡単ではありません。
発注者視点でのベンダー管理スキルは蓄積されていたとしても、開発者視点でのプロジェクト運営ノウハウについては持っていないためです。開発者視点でのノウハウは新たに身に付けていく必要があります。
このような状況を解決するための方法として、外部人材の一次的な活用が有効です。たとえば、並走型支援を実施してくれるベンダーなどを活用することも一案です。
このようなベンダーも活用し、自社にノウハウを蓄積していきます。

社内文化の醸成

エンジニアに選ばれる会社になるためには、カルチャー面もポイントとなります。
旧来型の会社に対してエンジニアが抱くイメージは「書類や社内調整が大変そう」「上下関係が重要で自分の意見が通らないのでは」といったネガティブイメージだと想定されます。
自由で失敗を恐れない文化は、エンジニアが働きやすい環境を提供する上で重要となります。
このような文化を醸成していき、かつ対外的にそれを発信していくことで、エンジニアに選ばれる会社となることができるでしょう。

人事制度の見直しや働きやすい環境の提供

特に事務職としてゼネラリストが多い企業においては、人事や報酬体系がゼネラリスト向けとなっており、エンジニアの受け入れに不向きなものとなっているケースが多いといえます。
エンジニアを受け入れやすいように、ジョブ型人事制度の導入や年次・資格等での給与制度の見直しなどを検討します。
加えて、労働環境面においてもエンジニアが働きやすいことは重要となります。たとえば、PC や机・椅子、ディスプレイ、テレワーク環境などを整備することはその一つでしょう。

開発の内製化はノウハウを貯めながらじっくりすすめよう

この記事では、内製化の進め方やエンジニアに選ばれる会社になるために必要なことについてご紹介しました。
内製化の取り組みは困難な面も多く、企業として覚悟を持って取り組んでいかなければならないものとなります。
長期的な視点でとらえ、自社にスキルやノウハウを蓄積していくプロセスが必要です。
スパイスファクトリーでは、これまで多くのお客さまに併走型で支援を実施してまいりました。当社では「Form a scrum」としてチームで最大の成果を挙げることをコアバリューとし、アジャイル型でのシステム開発を支援いたします。内製化を見据えた取り組みについても、柔軟に対応させていただきますので、ぜひお声がけいただければ幸いです。
アジャイル型での当社支援サービスの詳細については、こちらのページもご覧ください。

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