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DX戦略の立て方とは?立案方法や成功のポイントを事例も交えて徹底的に解説!

DX戦略の立て方とは?立案方法や成功のポイントを事例も交えて徹底的に解説!

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉がビジネスシーンで頻繁に飛び交うようになり、実際に DX で成功した企業も出てきました。自社でも変革を図るべく DX に着手していこうとお考えの方も多いのではないでしょうか。
しかし DX戦略には正解がなく、自社や市場の状況を分析して最適な戦略を立てなくてはなりません。
今回は、これから DX に着手していこうとお考えの方に向けて、DX戦略の立て方について事例も交えて丁寧に解説していきます。
当社のサービスにご興味をお持ちいただけた方はぜひ以下よりサービスをご覧いただくかお気軽にお問い合わせください。

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Contents

DX戦略はどのように立てればよいか


DX というと AI(人工知能)やIoT、ビッグデータなどの活用がよく挙げられますが、これらは手段であって戦略ではありません。自社のあるべき姿(ビジョン)を策定して、どのように達成するかを計画するのが DX戦略です。
冒頭で述べた通り DX戦略の立て方に正解はありませんが、一定のフローは存在します。そのフローは下記のようなものです。

  1. DX戦略立案の前に前提整理
  2. DX戦略のビジョン(自社のあるべき姿)策定
  3. DX戦略における取組領域の策定
  4. DX戦略推進プロセスの策定と成果評価

内容を順番にみていきましょう。

DX戦略立案の前に前提整理


「DX戦略を立てよう」と考えても、すぐに戦略の中身について考え始めるのは得策ではありません。戦略立案に取り掛かる前に、準備として下記の項目を整理した方がいいでしょう。

  • 自社の課題・強みの明確化とアセット整理
  • 外部環境の変化による自社ビジネス影響評価
  • 自社が DX のプロセスのどの段階にいるかチェック
  • DX戦略策定のチームは企業トップを含めて構成

前提項目の内容を一つずつみていきます。

自社の課題・強みの明確化とアセット整理

まず、自社の課題・強みの明確化とアセットの整理に取り組みましょう。この段階では DX やデジタル化を意識しすぎる必要はまだありません。市場や競合と比較したときに自社ビジネスが強みにできるポイント、あるいは弱みになり得る所を整理します。
自社の課題・強みの明確化にあたっては有名な手法がいくつかあり、その一つが SWOT分析です。

    • Strength(強み):自社や自社商品の長所、得意分野
    • Weakness(弱み):自社や自社商品の短所、苦手分野
    • Opportunity(機会):社会や市場の変化による自社や自社商品のプラス要素
    • Threat(脅威):社会や市場の変化による自社や自社商品のマイナス要素

     

上記に合わせて整理を行います。
SWOT分析を実施する前には、分析対象・目標・顧客属性・競合企業の4つについて情報を集めておくとスムーズです。
SWOT分析に続いて、アセット(経営資源)を整理していきます。アセットはヒト・モノ・カネ・情報・時間・知的財産から構成されます。それぞれの項目について、自社にどのようなアセットが存在するかを整理しましょう。

外部環境の変化による自社ビジネス影響評価

続いて、「外部環境変化の分析」と「ビジネスへの影響評価」を整理していきます。
先述した SWOT分析の Opportunity(機会)と Threat(脅威)とも共通する内容です。
外部環境変化の具体例として記憶に新しいのは、コロナ禍の影響による働き方改革でしょう。
コロナ禍のように社会全体を巻き込むような大きな変化もあれば、自社の所属する業界に特化して影響が起きる場合(法改正や業界トレンド等)など環境変化と一口にいっても様々です。
外部環境変化を分析・整理する手法として、フレームワークを利用することも有効です。代表的には、PEST(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))分析や、業界内の状況を分析する5F(Force)分析、同じく業界内の自社の事業環境を分析する3C(Consumer、Competitor、Customer)分析などがあります。

自社がDXのどの段階にいるかチェック

実は、DX は一定のデジタル化が一定程度まで進んでいる企業でしか実施できません。
令和3年情報通信白書によれば DX(デジタルトランスフォーメーション)は以下のように定義されています。

「デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組を指す概念である」

引用元:令和3年情報通信白書

業務プロセスを単にデジタル化するにとどまらず、新たな商品やサービスがビジネスモデルや組織までも変化させることをゴールにしています。
読んでいただいてお分かりかと思いますが、難易度が高いことは明白です。
そのため、デジタル化がそこまで進んでいない企業は、DX の前に「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」といったプロセスを順番に実施していく必要があります。
以下に DX 実現に至るまでの各プロセスをご紹介します。

デジタイゼーション

アナログ情報をデジタルデータに変換する(例:紙で管理していた販売情報の電子化)

デジタライゼーション

業務プロセスをデジタル化する(例:システムを活用し、人が事務作業で入力していた販売情報登録を自動化)

デジタルトランスフォーメーション

デジタル化した業務プロセスを用いたビジネスモデルの変革(例:販売プラットフォームの構築)

記載した「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」が未実施である場合には、後述するビジョンの達成向けて必要な整備から順番に対応することを戦略に盛り込む必要があります。
逆に、自社が取り組む領域において基本的なデータのデジタル化が完了していたり、業務プロセスのデジタル化が概ねできていたりしている場合には、満を持して DX の実現に向けた戦略を描けるでしょう。

DX戦略策定のチームは企業トップを含めて構成するのがベスト

DX推進は企業全体に影響がある取り組みです。組織横断で進めなくてはならない場面も多いため、推進していくには経営層が積極的に DX推進に関与することが重要です。
できれば戦略の策定の段階から経営層を巻き込んでチームを組み、議論を進めることが望ましいでしょう。
チームメンバーだけでは知見や方針不安がある場合は、DXコンサルティングを提供している企業に支援を依頼するのも一つの手段です。

具体的な戦略を議論していく前に、この章でご紹介した整理をしておきましょう。

DX戦略のビジョン(自社のあるべき姿)策定


前提整理ができたら、いよいよ DX戦略の策定に入っていきます。まずは DX戦略のビジョンを策定する方法についてみていきましょう。

DX戦略のビジョンを考える際のポイント

すでに企業で何らかの DXビジョンが示されている場合は問題ありませんが、示されていない場合は、具体的なビジョンの案を複数策定し、経営層と合意をとる必要があります。
DX戦略のビジョンを考える際には、下記のポイントがあります。

  • いままでのやり方に固執せず未来のテクノロジーや事業機会を予測する
  • 自社の企業理念や存在意義(パーパス)、経営戦略に沿わせて強みを伸ばす形で検討する
  • 社会の課題や顧客の課題に対して提供できる価値や解決法を考える
  • デジタル技術を用いての変革を検討する

これらの内容を盛り込みながら、自社の DX戦略ビジョンを検討しましょう。

DX戦略ビジョンの事例

DX戦略ビジョンを策定する際に、他社の事例を知りたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは事例を2つ紹介します。

株式会社三菱ケミカルホールディングス

株式会社三菱ケミカルホールディングスは「ヒトとデジタルの協調による、持続可能な未来に向けた新しい価値創出への変革」というビジョンを掲げ、そのビジョンを支える7つの DX計画を定義し、各事業をこの DX計画と関連付けて DX に取り組んでいます。
参考:https://www.mcgc.com/ir/pdf/01031/01178.pdf

旭鉄工株式会社

旭鉄工株式会社は「人には付加価値の高い仕事を」を合言葉に、機械やシステムができることは機械やシステムに任せ、人は人にしかできない創造的なことをやるべきとしています。
社長自ら頻繁に社内SNS を更新してビジョンを共有し、そのビジョンに基づくルールの一つとして「怪我以外は何をしてもいい」というルールのもと、闊達なチャレンジを生み出しています。
参考:https://www.istc.co.jp/about/dx

DX戦略における取り組み領域の策定


DX戦略ビジョンが決まったら、続いて DX における取組領域を策定していきます。
自社の事業をベースにデジタル技術を掛け合わせて強みを活かせる領域を選定するのが基本ですが、どのような領域にどう取り組むべきかよくわからないという方も多いはずです。
そこで、ここではコロンビア大学の経営大学院で教鞭を執るデビッド・ロジャース氏が執筆した『The Digital Transformation Playbook』で取り組み領域の具体例の中から以下の3項目をご紹介します。

  1. プラットフォームビジネス
  2. データを企業の資産へ転換
  3. 顧客体験のデジタル化

内容をひとつずつみていきます。

プラットフォームビジネス

プラットフォームビジネスとは、企業と顧客(BtoC)や、顧客同士(CtoC)をマッチングする場を提供するビジネスです。今日では、たとえば以下のようなプラットフォームビジネスが展開されています。

    • 小売り:Amazonマーケットプレイス、楽天市場、メルカリ
    • メディア:YouTube、Forbes.com
    • モバイルOS:iOS、Android
    • 宿泊:Airbnb、トリップアドバイザー

プラットフォームビジネスについて、内容を紐解いていきましょう。

プラットフォームのタイプは4つ

プラットフォームの主なタイプは以下の4つです。

      • 交換場所:顧客同士が価値を交換(例:Amazonマーケットプレイス、Airbnb)
      • 取引システム:金融取引を促進(例:PayPal、Apple Pay)
      • 広告付きメディア:コンテンツ価値で読者を獲得(例:YouTube、Instagram)
      • ハードウェア/ソフトウェア:ビジネスの基礎を確立(例:iPhone、Windows OS)

プラットフォームビジネスを考えるうえでは、大部分が上記4つのいずれかに当てはまるでしょう。

既存のプラットフォームビジネスへの新規参入は難しい

プラットフォームが持つ大きな力は、主に以下の3点です。

      • 資産が少なく済む:たとえば、Uberは配車サービスを提供しているが1台の車両も持っていないサービスです
      • 規模拡大が素早くできる:上記に関連して、低い営業経費とクラウドコンピューティングの力でサービス拡大が容易です
      • 一人勝ちできる:他社に先行して支配的地位を築ければ競合にとっての参入障壁も上がり、収益を上げやすくなります

基本的に、顧客をすでに多数集めている企業がいる既存のプラットフォームビジネスに後発で新規参入し、成功することは困難といわれています。
しかし、明確に顧客に差別化した価値が提供できる場合や、自社と顧客、競合他社などの相互作用によって新たな価値を提供できることもありますので、可能性があれば参入の検討をしても良いでしょう。

データを資産へ変換

DX戦略といわれて、「データ活用」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?デジタルデータをうまく活用できれば、広告を打つタイミングの選択や、製品の製造量の決定、新サービス作成の意思決定など、イノベーションや戦略的優位性の源泉になります。
ここでは DX において、どのようにデータを資産へ変換していくかを事例と共に紹介します。

潜在項目(インサイト)の可視化

顧客心理や顧客行動は簡単には可視化できませんが、データの取得方法によっては、製品の使われ方や不正の有無まで明確化できます。
以下のような例があります。

      • コロンビア大学の研究:特定ブランドに興味を持つ顧客層と競合ブランドの洗い出しを試みています
      • Gaylord Hotels: SNS に投稿された口コミから自社にとっての重要な顧客体験を5つに絞り込んでいます

ターゲットの明確化

データを活用して従来では不可能だった顧客セグメントの抽出が可能となり、状況に合わせてリアルタイムにターゲットを変更していくこともできます。
以下のような例があります。

      • Custora:顧客のサイト訪問時に、将来自社にもたらす利益について予測します
      • InterContinental Hotels Group:詳細な顧客セグメンテーションで集客率が35%アップしました

ニーズに合わせた個別最適化(パーソナライゼーション)

データから顧客ニーズを得ることで、顧客ごとに最適化した製品やサービスの提供ができます。
以下のような例があります。

      • Kimberly-Clark:子どもの生育状況をおむつ購買状況から判断して商品提案をしています
      • British Airways:他部門のデータをカスタマー部門の責任者が閲覧して、顧客データ分析をしています

データ比較の基準構築

特定の顧客の心理や行動について、顧客全体の平均との相違度合が掴めるようになります。
以下のような例があります。

      • Nike:靴のセンサーで取得した今日の運動パフォーマンスを顧客が過去の自分やコミュニティ平均と比較でき、運動のモチベーションに繋げています
      • Bill Guard:過去に問題となったクレジットカード取引データを分析して他の問題がある取引の発見に活用しています

データを活用方法を検討する際に、ぜひ参考にしてください。

顧客体験のデジタル化

顧客体験をデジタル化することにより、企業と顧客、あるいは顧客同士のコミュニケーションが促進され、企業の売上拡大につながります。デジタルトランスフォーメーションの本丸とも捉えられる領域です。
どのように顧客体験をデジタル化するのか、その手法についてみていきましょう。

顧客のデジタル体験におけるステップ

企業が顧客に新たなデジタル体験を提供するには、次の5つのステップがあります。

    1. 接続:簡単にいつでもどこでも接続してもらえるようにする
    2. 参加:顧客にとって価値のあるコンテンツの供給源になる
    3. 適応:提供物を顧客ニーズに適応させたものにする
    4. 結合:顧客の会話、話題の一部になる
    5. 協働:顧客に事業構築の一端を担ってもらう

顧客にこのステップを経てもらうために戦略を立てていく必要があります。
以下で詳細を解説します。

顧客のデジタル体験を促進する戦略

前述した各ステップでのデジタル体験を促進するには、後述するポイントがあります。これらのポイントをふまえて、自社のビジネスではどんな切り口から顧客にアプローチできるかを考えましょう。

「接続」における戦略検討ポイント
        • どのように顧客の興味を誘発するか
        • 顧客の体験をどのようにして早く、簡単にできるか
        • 顧客がサービスをより利用しやすくするにはどうするか
        • 顧客がサービスをセルフ化するにはどうするか
「参加」における戦略検討ポイント
        • 顧客の関心を得るにはどうするか
        • このサービスによって解決できる顧客の課題は何か
        • このサービスは顧客が自分の知り合いに勧められるものか
「適応」における戦略検討ポイント
        • 顧客のニーズや関心は、どの領域で最も大きいと予想されるか
        • 顧客が選択肢の多さに惑わされずに自分に合った選択をするにはどうするか
「結合」における戦略検討ポイント
        • 企業が関与せずに顧客同士の会話や推奨を促進するにはどうするか
        • 会話を通じて顧客に価値をもたらすにはどうするか
「協働」における戦略検討ポイント
        • 顧客が持つスキルは何か
        • 顧客が持つスキルの限界はどこか
        • 顧客が行動する動機はなにか。ブランドか、金銭的報酬か、承認の欲求やその組み合わせなど
        • 顧客が自分の行動が認められたと感じるにはどうすればよいか

これらの内容を検討することで、効果的な各ステップの戦略を立案します。

DX戦略推進プロセスの策定と成果評価・ガバナンス


取り組む領域の選定が完了したら、次は DX推進のプロセス策定と成果評価の手法検討に進みましょう。
前章までで決定した取り組み領域ごとに、事前整理の章でもご紹介した「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」のうちどのレベルの取り組みからするべきかを意識しつつやるべき施策・タスクと取り組みのスケジュールなどを整理していきます。

この段階では実行にあたり調整や協力が必要となる社内の事業部や部署とも議論が必要です。
システムの導入や刷新、データの管理などではシステム部門が、新サービス検討などは企画部門や営業部門とのアイデア出しや TODO 整理が欠かせません。
自社のリソースで対応できるか、外部のナレッジやリソースを取り入れる必要があるかを含めた判断が求められます。
自社内で開発の内製化を目指す場合には中長期的な視点が必要な場合もありますので以下の記事を参照ください。
進むシステムの内製化 メリットや難しさを踏まえどう取り組むべきか
以下では DX の戦略推進プロセス策定と実行時に重要となる考え方、実行後の施策の評価時のポイントについて解説します。

DX戦略推進におけるアジャイルという考え方の必要性

DX においては、「アジャイル」を意識した推進プロセスが欠かせません。アジャイル(agile)は、「敏捷」や「機敏」という意味で、方針の変更やニーズの変化などに機敏に対応することを示します。
もともとアジャイル開発というシステム開発の手法が存在しており、近年ではそこから開発業務以外のビジネスプロセスや組織論においても「アジャイル」の考え方を取り入れる機運が高まっています。
アジャイル開発については以下の記事で詳しく解説しておりますのでぜひ参考にしてください。
アジャイル開発とは? – システム開発を発注する時に知っておきたい開発手法の話

デジタル技術の発達によって、ビジネスをテストするコストは各段に下がりました。たとえば、ある製品の販促方法を複数試す場合、従来では複数の店舗が必要でした。しかし昨今ではインターネットでプロモーションができるため、少ないコストで複数の販促方法を試せます。
時代の流れに合わせて素早く・低コストで試行をすることで、仮に失敗したとしてもリスクを低減することができます。
市場や社会の変化が早い現代では、入念な準備をして一回で成功を掴み取るのは非常に困難です。それよりも試行回数を増やし、改善を重ねていくことで最終的な成功に近づく方がリスクも低く効率的です。

素早く試行を繰り返す際の5つのポイント

アジャイルの適用においては、以下の5つの考え方がポイントになります。

    • 素早く学び、反復的に進める
    • 解決策ではなく課題を重視する
    • 顧客から意見をもらう
    • 前提を検証する
    • 失敗を恐れない

一つずつ説明していきます。

素早く学び、反復的に進める

早い段階で対象の製品やサービス・プロセスの実験を繰り返し、多くの学びを得ることが重要です。この実験の繰り返しが遅くなると、失敗によるコストが大きくなってしまいます。制度や社内文化も含めてすぐ検証ができるような環境づくりも必要です。

解決策ではなく課題を重視する

解決策、つまり手段を最初に考えるのではなく顧客の課題を把握することに努めましょう。顧客の課題を適切に解決できるサービスでないとビジネスを成長させるのは難しくなります。
DX のよくある失敗として、顧客ニーズを無視して「とりあえず」デジタルのサービスを立ち上げるという手段ありきの取り組みをしてビジネスがスケールせずに撤退してしまうケースが挙げられます。
そのようなことにならないために、課題にフォーカスすることが重要です。

顧客から意見をもらう

社内の同僚や幹部社員、役員などではなく、実際の顧客や見込み客から直接製品やサービスに関しての意見をもらいましょう。
たとえば、食べ物を提供するなら実店舗に立って試食してもらう、プロダクトやサービスなら実際に使ってもらう、という対応を取り、なるべく多くの顧客や見込み客から意見をもらうことです。
顧客や想定のユーザー層に対価を支払って、インタビューさせてもらうのも良い方法でしょう。一方で、その意見はあくまで一顧客の意見ですので、一人の意見にすべてを委ねてしまうといったことのないようにバランスをとることが重要です。
また、必ず製品やサービス、もしくはプロトタイプを作ってから意見をもらうことがポイントです。具体的な製品やサービスを作らずに意見だけ求めると、実際に使ったときの感想とはずれた内容を答えられてしまうことが多いためです。
当社でも提供していますが、開発を伴わないプロトタイプ制作や最小限の開発で初期プロダクトを作る MVP開発とユーザーインタビューを含む検証を支援している企業も存在します。
自社のみでの実行に不安がある場合はこうしたサービスの活用を検討するのも良いでしょう。
プロトタイプ開発に関するページ

前提を検証する

アイデアをテストする際、その前提条件は自分の思い込みであることがよくあります。そのため、実際にテストしてその前提が通用するかを確認することが必要です。
たとえば、アイデアの協力者として想定していた人物が、実は利益背反の立場にあり協力が得られなかったなどの場合です。自分たちが正しいという思い込みは捨てましょう。

失敗を恐れない

特に日本の企業は、失敗による評価の低下や降格などを恐れてチャレンジしない傾向がありますが、その風土では残念ながらアジャイルとは程遠いといえます。
もしあなたが組織を動かせる立場にいるなら、この失敗を恐れない風土づくりにも取り組まなくてはなりません。この失敗の仕方にはポイントがあります。

  • 失敗を検証し、戦略変更やサービスの向上に活用したか
  • 可能な限り初期段階で失敗したか
  • 失敗から得た学びを共有したか

たとえば上記を守った上での失敗であれば咎めない、というルールを作ってしまうなど、チームがチャレンジをしやすい仕組みや雰囲気をつくることからはじめるとよいでしょう。

アジャイルによる推進の評価・ガバナンス

取り組み後の評価にあたっては、以下2点のポイントに注力して進めましょう。

    • 顧客体験向上の KPI を設定して、評価結果に基づきアセットの配分を改善
    • 失敗を人事考課のマイナスとするなど、失敗からの学習を阻害しないよう配慮

またガバナンスについては、以下3点のポイントに注力することが必要です。

    • 自社の DX推進状況を KPI などで客観的に把握
    • 場合によっては DX が進んでいないと認識すること
    • 株主など企業の外側から DX推進状況を評価すること

DX戦略の修正頻度は米国においては、「毎月」が26.3%と最も多くなっています。外部からの評価も交えて高頻度の見直しを実施しましょう。

DX白書2021のデータをもとにスパイスファクトリーにて作成

※引用:DX白書2021_第2部_DX戦略の策定と推進p69より

DX戦略推進にあたっての注意点


DX戦略の策定プロセスは以上ですが、DX戦略を策定・推進していくうえでは、いくつか失敗しやすい注意点があります。
戦略の策定段階で認識しておくことで、実行時の失敗を避けられる場合もあると考えます。
ここでは、その注意点についてみていきましょう。

組織変革における注意点

冒頭でも述べた通り、DX を実施するうえでは大きな組織変革に臨まなくてはなりません。その内容は大きく以下3つです。

新たなスキルとの入れ替え

DX には推進デジタル関連スキルの習得が必要ということはみなさまも認識されているかと思います。
とくに社内でのデータ分析の分野においては以下2点のスキルが必要です

      • 統計学や機械学習の理解
      • 意思決定者へ伝わるプレゼンテーションスキル

不足するスキルは採用や外注で補う必要がありますが、中長期的には社内で育成できることが望ましいでしょう。人事部と連携して教育体制を整えることも検討しましょう。

縦割り組織を横断するような対応をする

DX推進は最終的には全社プロジェクトとなります。各部門の文化や予算などを超えた協働が必要な場面も多くなります。予算や、人員のアサインなど、部門間の利害関係を調整する必要が出てきます。大企業ほど、この共同体制をつくる点に苦心するケースは多いようです。
部門間調整を担当する専任ポジションや推進部署の新設が対策としては挙げられます。
ただし、名ばかりで権限を持たない部署やポジションを作ってしまうと結局推進体制の構築に失敗するということに繋がります。
経営陣を新設部門長にするなど、相応の権限の付与がセットでなされるべきです。

企業文化変革

すでに述べてきたように、DX を推進するためには企業文化や風土の変革も必要です。
DX推進においてとくに重要な風土は下記2点です。

      • 業務プロセスにアジャイルの5つのポイントを採用
      • 失敗も許容できる文化の醸成

すでに社風として浸透していれば対応する必要はありません。まだの場合は「DX戦略推進プロセスの策定と成果評価・ガバナンス」で紹介したような制度や取り組みが必要です。

リーダーシップにおける注意点

企業トップのリーダーシップはもとより、社員一人ひとりが DX に対するリーダーシップを持ち、自分事として取り組むことが重要です。

企業トップのコミット

とくに重要なのが、経営のトップが DXビジョンを示してリーダーシップを持って進めることです。
新たな取り組みを実施する際には、社内から反発の声が出ることもあるでしょう。
実際、これまでの自社ビジネスを大きくすることに貢献してきた社員からの意見は、一理あると感じることもあると思います。
ですが、DX が目指すのは既存ビジネスの改善ではなく「変革」です。
社内調整が難航した場合、最終的にはトップから方向性を強く示して推進することが重要になります。

組織全体で取り組む必要性

もちろん、経営トップだけが大事なのではでなく、組織のメンバのー一人ひとりが DX の必要性を認識し、自分事として取り組む姿勢も大事です。
DX推進部といった新設部署を設けた場合に起こりがちなのが、既存の部署の社員が DX の取り組みを他人事だと感じて非協力的になってしまうことです。
そのような場合には前述したトップからのメッセージも重要ですが、自社にとって、自部署にとって、ひいては顧客にとって、DX することにどんな意味があるのかを地道に伝え続けることが必要となるでしょう。
また、小さくてもいいので社内での成功事例をつくり、共感してもらえる社内の仲間を増やしていくなど、泥臭く草の根的な活動も現場レベルでは求められます。

データ活用と分析における注意点

本記事でも注目の領域としてご紹介した、テーマであるデータ活用と分析。
DX における取り組み領域としてよく取り上げられることが多いです。
こちらにも取り組む際の注意点があります。その内容をみていきましょう。

AI・データに関わる作業の注意点と過信

「AI は人の仕事を奪う」などといわれて久しいですが、魔法のツールというわけではありません。以下に挙げるようなポイントを適切に理解しておく必要があります。

      • AI の学習前には、ほとんどの場合、学習用データ前処理対応の人員が必要
      • データ解析には経験豊富な分析者が必要
      • データの質と精度(収集過程、誤差など)が重要
      • AI は万能ではなく、特定の問題に特化した AI構築が必要
      • AI の答えをみて最後は人間の判断が必要

セキュリティやプライバシーの問題

世界的にも顧客が企業からのプライバシー侵害を受けないようなデータに関する規制等が進んでいます。日本でも個人情報の扱いは年々厳しくなってきていると感じられている方も多いでしょう。
加えて、フィッシング詐欺や不正アクセスといったサイバー攻撃も年々激化しています。この点に関していえば、実践に関わらず企業として対策が必須です。
また、企業にデータを収集されることについて懸念を感じている顧客も存在します。提携先や顧客とデータ共有する前に契約書でデータの取り扱いを定めることは当然ですが、データの取り扱いや利用目的について単に定めるだけでなく、顧客にわかりやすく公表、説明するといった対応が求められます。

データの入手手段

「データ活用」というけれど、どこから手を付けるべきかわからない。そもそも自社に活用できるデータは存在しているのか不明な場合もあるでしょう。
データを手に入れるポイントについては、5つの提案があります。

      • 顧客:報酬やロイヤリティ向上などでデータ共有を促す
      • ロイヤリティの高い顧客:コミュニティ形成やボランティア依頼など
      • 提携企業:相互に利益が出ると想定される関連企業との連携で顧客行動を把握
      • 公開データセット:政府やインターネット上で公開されているデータ、SNS投稿など
      • 販売データ:顧客の個人情報が伏せられた非特定化データなど

上記のいずれかですでに社内にデータがあれば、それを活用していきます。ない場合は戦略の中にデータ収集の方法や顧客接点のポイントをつくることを盛り込む検討してもよいかもしれません。

リソースの調達についての注意点

社内でデジタル人材が不足していたり、戦略の策定や実行にあたってリソースが不足するといったことが DXプロジェクトではよくみられます。
この章の最後にリソース不足に陥った際の対象方法について紹介します。

パートナーシップ・アライアンスなど外部の力を活用

社内からスキルのある人材の抜擢や、採用などで対応することができればシンプルですが、デジタル人材はどの企業も喉から手が出るほど欲している状況です。思うように採用が進まないケースも想定しておくべきでしょう。
社内での調達が難しい場合は、外部の力を上手く使うと効率的です。
システム開発を受託開発の企業に依頼する場合や、戦略策定支援をコンサルティング会社に依頼するケースなどが考えられます。
一社員としての意思決定は難しいとは思いますが、M&A で企業ごと買収して調達する方法も考えられます。
一方で、外注にもコストが発生する点、外部の力に頼りすぎると内部にノウハウが蓄積されないといったデメリットになり得る点は念頭におく必要があります。

適切な領域に人とカネを投資

戦略の策定・実行には自社の現状を把握し、適切な領域に人とカネを投資する必要があります。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、判断を見誤り、無駄な取り組みに不要なコストや人的リソースを投下してしまっている企業は少なくありません。
とくに日本企業は、業務効率化や生産性の向上などのいわゆる「守りのDX」に投資が偏重しており、顧客に新しい価値を提供したり、市場に新しいサービスをつくる等の「攻めのDX」への投資ができていないという傾向がみられます。
長期的にビジョンを達成するために、何に投資するべきか、かけるコストは適切か、定期的に見直し続けることが大事です。

迅速なDXのニーズに応える『FastDX』


スパイスファクトリーでは、DX推進戦略において「極力開発しないDX」をテーマに『FastDX®』を提唱しています。
最近では、多くの企業にとって共通的に必要となる仕組みは、SaaS などの形でサービスとして提供されるようになりました。たとえば、営業やマーケティング領域で DX を実現しようとした場合、SFAや MA などの利用が有効です。これらは SaaS の形態でさまざまな製品が提供されており、手軽に利用することができます。
当社では、先述したアジャイル開発の思想やノウハウに加えて、SaaS や CMS など既存の最新プラットフォームを最大限活用した開発を行うことで、素早いデジタル変革を実現する手法を FastDX® と定義して実践しています。(FastDX® はスパイスファクトリー株式会社の商標登録です。)
FastDX を実行することで、企業はより素早く、より低リスク・低コストに DX にチャレンジできると考えています。
詳細は以下の記事もご参照ください。
【2023年版】DXが失敗する理由は?リスクを下げ成功確率を上げる「FastDX」という選択肢

当社は、FastDX の他に、戦略策定からスクラッチ開発も含めて、企業の DX を一気通貫で支援できることを強みとしています。
自社内のみでの DX推進に課題を感じている方はぜひお気軽にご相談ください。

自社のビジョンに基づいたDXの推進を


この記事では、DX戦略の立て方や推進の際に注意すべきことについて解説してきました。
まとめです。DX戦略の立て方は次の通りです。

  1. 自社のあるべき姿(ビジョン)の策定
  2. 取り組み領域の策定
  3. 推進プロセスの策定
  4. 成果評価とガバナンス

プロジェクト推進にあたっては以下の領域で躓きやすかったり、配慮が必要な場合があるので意識しましょう。

  • 組織変革
  • リーダーシップ
  • データの利活用
  • リソースの確保

自社のあるべき姿(ビジョン)に基づいて、DX を進めていきましょう。

DX の推進でお困りの方は、ぜひ一度スパイスファクトリーへご相談ください。
スパイスファクトリーでは、アジャイル開発や FastDX により皆様の新規事業開発や DX を支援いたします。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
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参考文献

<書籍>

The Digital Transformation Playbook「DX戦略立案書」:デビッド・ロジャース 著、笠原栄一 訳.2021/1/8
デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門:長尾一洋 著. 2022/10/20
DX経営戦略~成熟したデジタル組織を目指して~:ジェラルド・C・ケイン他 著、三谷慶一郎他 訳.2020/10/31

<サイト>

DX白書2021:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構.2023/2/24
あるべき姿をどう描くか:『ビジネス2.0』の視点:オルタナティブ・ブログ.2023/2/24
DX戦略とは?立て方のポイントなどを先進企業の事例を交えて基礎から解説.2023/2/24
成功につながるDX戦略の立て方と事前準備のアプローチ方法とは?.2023/2/24
DX戦略の立て方とは?失敗例と推進事例から探る成功のパターン.2023/2/24
5つの事例から学ぶ「DX戦略」の立て方と、成功のための3つのコツ.2023/2/24
DX戦略の立て方とは?成功のポイントやビジョンの設定事例も紹介.2023/2/24

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