- PRESS RELEASE
スパイスファクトリー、京都大学・今村知彦 特定助教が主導する「子供と死別した遺族支援の研究プロジェクト」に参画
年間8,000名以上のご遺族に支援が確実に届く社会基盤構築に向けたプロジェクトを支援。大切な人を亡くした悲しみに寄り添う「グリーフケア」にたどり着けるかどうかが「偶然」に委ねられている現状を変える。
デジタル・トランスフォーメーションを支援するスパイスファクトリー株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO:高木 広之介、以下「当社」)は、京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 予防医療学分野 特定助教である今村知彦氏(以下、今村氏)が主導する研究プロジェクト「子供と死別した遺族と支援をつなぐ社会基盤構築:遺族・支援者共創によるプッシュ型グリーフケアシステムの開発」に、体験設計・システム実装・関係性構築の3軸を強みとした共創パートナーとして参画します。本プロジェクトは、2027年1月に関西圏での先行リリース、2027年10月に全国展開を目指します。

■ プロジェクト始動の背景
※下部に、主要用語の解説あり
「ご遺族と接するのは恐怖だった。適切な接し方がわからず、地域で利用できる支援団体も知らなかった」 本研究プロジェクトを主導する今村氏は、小児科医として勤務していた時代をこう振り返ります。 医療者として「向き合えなかった」課題が、研究者として「向き合うべき」と決めた構造の出発点になっています。
日本では18歳未満の子供が年間約4,000名亡くなっており、子供を亡くしたご遺族は年間8,000名以上にのぼります。そのうち支援を必要とする深刻な悲嘆(遷延性悲嘆)を抱える方は年間約5,000名と推計されています。しかし、これだけの方々に支援が届いているかというと、現実はそうではありません。病院でケア情報の提供を受けられたご遺族はわずか7%、自治体の相談窓口を利用できたご遺族は20%未満にとどまっています(※ 大久保ら, 日本看護学会誌, 2011)。
背景には3つの構造的な問題があります。
①支援情報の散在と不明瞭さ
ご遺族が支援団体情報を一元的に検索できる場所がなく、自治体や団体ごとに支援内容の公開度合いもまちまちです。現状、混乱の渦中にある遺族が自力で支援を探さざるを得ませんが、多くの遺族が支援にたどり着けず路頭に迷っています。
②ご遺族のニーズと支援内容のアンマッチ
必要なサポートは死因や死別後の経過年数によって大きく異なります。しかし多くの支援団体で具体的な活動内容が公開されていないため、事前に情報を把握できず、参加後に「思っていたのと違った」と感じ、支援から離れてしまうケースが生じています。
③公的機関で紹介されにくい構造的な問題
公的機関側には、職員の情報不足・業務多忙・ご遺族と話すこと自体への心理的ハードルなど複数の障壁があります。医療者側にも「ご遺族と接することへの心理的負担」「接し方の知識不足」「地域の支援団体情報の偏在」といった共通課題があり、紹介のための情報も体制も整っていないのが実情です。
その結果として起きているのが、ご遺族の社会的孤立・抑うつ・遷延性悲嘆、そして自死のリスクです。今村氏はこの現状を「グリーフが個人の問題として扱われ、悲嘆に苦しむ人たちが孤立し脱落する世界」と表現します。
■ 研究プロジェクトの概要
本プロジェクトでは、信頼できるグリーフケア支援団体の情報を集約・可視化するポータルサイトを段階的に構築します。MVP(Minimum Viable Product:検証可能な最小限の機能を備えたプロダクト)を起点に、ご遺族や支援者からのフィードバックをもとに仮説検証を繰り返しながら開発を進めます。
2027年1月に関西圏で先行リリースを行い、ご遺族のアクセス状況や支援への到達度を検証した上で、2027年10月の全国展開につなげていきます。最終的には、支援を必要とする小児死別のご遺族(年間約5,000名)が必要な情報にアクセスできる状態を目指します。
<スパイスファクトリーの支援内容>
当社は研究プロジェクトの「届ける仕組み」を、体験設計(Design)・システム実装(Engineering)・関係構築(Public Relations)の三面から支える共創パートナーとして参画します。
・ポータルサイトの設計・開発(Design × Engineering)
支援団体の検索・マップ表示、ご遺族のニーズに沿った絞り込み機能、ユーザー体験設計や信頼性評価と連動した情報の可視化を実装。MVPから段階的に機能を拡張します。
・PR・社会実装支援 (Design×Public Relations)
病院・警察署・市区町村窓口など、死別後にご遺族が必ず立ち寄る場所への配布物(リーフレット・QRコード等)設置の交渉・推進を担います。死亡診断書の交付や行政手続きの場面でポータルサイトへ誘導できる社会的な仕組みの整備を最終ゴールとして、PR広報戦略策定と実行を支援します。
・協力機関ネットワークの構築(Public Relations)
医療機関・自治体・支援団体・企業等との連携体制の構築を推進し、サイト運営の持続可能性と社会的認知の拡大を支援します。
<プロジェクトチーム構成>
| 担当領域 | メンバー |
|---|---|
| 研究運営・専門家と遺族をつなぐ | 今村 知彦(京都大学予防医療学 特定助教/代表者) |
| 研究支援とポータルサイト普及推進 | 石見 拓(京都大学予防医療学 教授) |
| 実態把握・情報整理・語りの活用 | 髙橋 由光(京都大学パブリックヘルス実装学 特定教授)、中山 健夫(京都大学健康情報学 教授) |
| 遺族の心理的負担とスティグマへの配慮 | 福嶋 佳菜子(国際医療福祉大学 助教)、中神 由香子(京都大学学生総合支援機構 助教) |
| 語りや個人情報を扱う倫理基盤 | 井上 悠輔(京都大学医療倫理学 教授) |
| 遺族の視点とネットワーク | 田上 克男(SIDS家族の会 理事長) |
| ポータルサイトの設計・構築 | 難波 真人(京都大学予防医療学 研究員) |
| 共創パートナーデザイン・開発・PR領域 | スパイスファクトリー株式会社 |
■ 京都大学 特定助教 今村 知彦氏 コメント

予防医療学分野 特定助教 今村 知彦氏(いまむら ともひこ)
京都大学大学院医学研究科
社会健康医学系専攻 予防医療学分野 特定助教
今村 知彦氏(いまむら ともひこ)
小児科専門医・指導医、循環器専門医、薬剤師。九州大学薬学部、長崎大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センター、埼玉医科大学国際医療センターで小児循環器臨床に従事。2020年に自身の子供をSIDS(乳幼児突然死症候群)で亡くした経験を契機に、京都大学公衆衛生大学院へ進学し、現職にて遺族支援の社会基盤構築に取り組む。
<コメント>
突然死を引き起こす心疾患を専門とする小児科医として多くの子供の死に立ち会ってきました。にも関わらず、2020年、私自身も6ヶ月の娘を乳幼児突然死症候群(SIDS)で亡くしました。救急搬送された病院でも、死亡届を提出した区役所でも、具体的なグリーフケアの情報を案内されることはありませんでした。自助グループにたどり着いたのは、ネット検索の末の「たまたま」です。医師と遺族という両岸から死別を経験したことで、現在の遺族を取り巻く状況に危機感を抱きました。
その後、研究を通じて出会った31名のご遺族の方々も、ほぼ全員が同じ「たまたま」を経験していました。支援はあるのに、たどり着けるかどうかが運に左右されている。これは個人の問題ではなく、社会の構造的な空白だと考えています。
このポータルサイトは、その空白を埋めるための第一歩です。情報を集約するだけでなく、病院や行政機関を経由してご遺族のもとへ自然に届く経路を、専門家・当事者・開発者が共創してつくります。スパイスファクトリーの皆さんは、システム開発の枠を超えて社会実装まで一緒に描いてくださる姿勢を示してくれました。共にこの仕組みを社会に根づかせていきたいと考えています。
関連記事:京都大学|年間8,000名以上の遺族に支援が確実に届く社会基盤構築に向けた「子供と死別した遺族支援の研究プロジェクト」の開始について(新しいタブで開きます)
■ スパイスファクトリー株式会社 プロジェクト責任者 太田 佑祈 コメント

プロジェクト責任者 太田 佑祈(おおた ゆうき)
スパイスファクトリー株式会社 関西拠点所属
TOPS Division.
プロジェクト責任者 太田 佑祈(おおた ゆうき)
今村先生は「グリーフケアの選択肢が、すべてのご遺族に当たり前に届く社会をつくる」と語ります。このプロジェクトの本質は、ポータルサイトを公開することではありません。病院・行政・支援団体・市民社会の中に情報が流れる経路をつくり、ご遺族が確実に支援にたどり着ける構造を組み立てることが目的です。体験設計・システム実装・関係構築の三面を一気通貫で担う体制を組めたのは、社会実装には経路づくりが不可欠だという認識を、京都大学大学院医学研究科のプロジェクトチームと共有できたためです。
一度のリリースで終わるプロジェクトではなく、ご遺族とその周囲の方々に支援が確実に届くまで、長期的に関わり続けます。大切な人を亡くした悲しみに寄り添えるように、一歩ずつ歩み寄れるような取り組みができればと思っています。
■ スパイスファクトリーが本プロジェクトに携わる理由
当社は「1ピクセルずつ、世界をより良いものにする。」をパーパスに掲げ、社会課題の解決をDXを通じて実現することをミッションとしています。また、社会的インパクトの大きい5つの重点領域を「Priority5」(教育・医療介護・公共・気候変動・ガバナンス)として定義し、優先的に取り組むプロジェクトの判断軸としています。
本プロジェクトは、ご遺族の心身の健康に関わる「医療介護」、行政機関との連携による社会基盤構築に関わる「公共」の2領域に該当し、当社のパーパスと独自の社会インパクトを測る経営指標「Priority5」の両面において全力で支援すべき社会的意義の大きいテーマであると考えております。
■本リリースの主要用語解説
・グリーフケア
大切な人を亡くした悲しみ(グリーフ)を抱える方に寄り添い、心身の回復を支える支援活動の総称。専門家によるカウンセリングのほか、同じ経験をした人同士が支え合う自助グループ、医療機関や宗教者による支援など、多様な形態があります。
・遷延性悲嘆症(せんえんせいひたんしょう)
死別後の悲嘆が長期にわたり強く持続し、日常生活や心身の健康に深刻な影響を及ぼす状態。社会的孤立、抑うつ、自死リスクの上昇などにつながる可能性があり、専門的な支援を必要とします。