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なぜ、私たちは“希望の循環”を描くのか。― スパイスファクトリー、“次の10年”の選択 ―

なぜ、私たちは“希望の循環”を描くのか。― スパイスファクトリー、“次の10年”の選択 ―

これまで私たちは、「アジアを代表するデジタルインテグレーター」というビジョンを掲げてきた。10年後、20年後。到達している姿を定点的に描き、そこに向かう。明確で、力強い目標だった。

だが創業から10年。AIが進化し、社会の前提が揺らぎはじめたいま、問い直した。
これからのビジョンは“どこに到達するか”ではなく、“どんな社会をつくりたいか”ではないか。

その問いの末に制定したのが、新ビジョン【希望の循環】である。

目標ではなく、社会の状態を描く。そしてその実現にどれだけ貢献できているかをKPIに分解し、経営と接続する。創業10年の節目に、企業として社会に対する意思を、改めて言語化した。

なぜ「希望」なのか

ビジョンを考え直すなかで、ひとつの問いが、何度も立ち返ってきた。
この時代に、人間が担うべき役割とは何か。

AIが発展し、多くの仕事が自動化されていく。
正解を導くこと、効率を高めること、条件を整理すること。
それらは、これからますますAIが得意とする領域になっていくだろう。

だが、願いや価値観、そして希望を持つことは、依然として人間にしかできない。
より良い未来を信じること。その未来に向かって意思を持って歩き続けること。

それこそが、AI時代に人間に残された仕事なのではないかと思う。
だからこそ、希望という言葉に向き合わざるを得なかった。

絶望の連鎖を、断ち切るために

スパイスファクトリー株式会社 代表取締役CEO 高木広之介

AIに「幸せな国とは?」と聞けば、定義や条件は整理される。
だが、10代・20代の死因の第1位が自殺である唯一の先進国が日本であるという現実は、指標の外にある。※

ほかがどれだけ整っていても、子どもたちが絶望を抱いているという点において、この国は幸せとは言えないのではないか。

未来を担う子どもたちは、なにも悪くない。
結局、彼らは大人の背中を見て育っている。
もし、働く大人たちが希望を持たずに日々を過ごしていたら、大人になること自体が、魅力のないものに映ってしまう。

いまの日本には、どこか絶望の連鎖が漂っているように感じる。
「できない理由」が先に立ち、挑戦する前から諦めてしまう空気。

それを、このまま次の世代に渡していいはずがない。
仕事を楽しみ、意義を感じ、未来に期待を持って働く大人の姿を見せること。
それが、子どもたちにとって「早く大人になりたい」と思える社会につながっていく。
この関係性のなかにこそ、これからの時代に必要な「新しい豊かさ」があると考えた。

『悲観は気分で、楽観は意思。』
希望とは、状況ではなく、選び取る態度だと思っている。

※厚生労働省の『令和7年版 自殺対策白書(新しいタブで開きます)

理想と、経営の現実

社会貢献を実現したいという思いは、会社としても個人としてもあった。
SDGsという言葉が広がる以前から、資本主義と社会性は両立できるのかを考え続けてきた。

その葛藤が最も鮮明になったのが、フィリピン拠点の設立だった。

人材不足を背景に拠点設立を決断したとき、多くの経営者からこう言われた。
「フィリピン人はジョブホッパーだ」
「日本と同じ感覚ではやっていけない」
だが、納得できなかった。

エンジニアやプログラマーという仕事は、本来、国境や国籍を越えるはずだ。
イデオロギーが違っても、自分たちの技術が人類の進歩につながると信じている。
実際、多くのエンジニアと向き合うなかで、国籍による本質的な違いを感じたことはなかった。

それでも、現実は違った。
現地での打ち合わせのなかで、ある言葉に出会う。

「日本のことは好きだった。でも、日本人と仕事をして、嫌いになってしまった。」

日本企業は、単価が安いからフィリピンに発注する。
合理的だ。だが、そこに尊敬はあるのか。

生まれた場所や肌の色で賃金が変わる。
その構造を前提にしながら、SDGsを掲げる。

そのとき、自分の中で何かがざらついた。
そのずれを放置したまま、経営はできない。だから、安さを競争軸にしないと決めた。

能力に対して正当な対価を払う。
だが、それだけでは足りないと思った。

もし本当に、この場所から可能性を広げたいのなら、目の前のプロジェクトだけでなく、その先にいる子どもたちにまで視野を広げるべきではないか。

フィリピン法人を設立してすぐ、現地採用5名につき1名の大学進学を支援する奨学金制度「Spice Factory EDGE Scholarship(スパイスファクトリー エッジ スカラーシップ)」(※)を始めた。

理想を語るだけで終わらせない。未来に投資する。
それが、希望を意思に変える第一歩だった。

※「Spice Factory EDGE Scholarship」は、海外拠点を置く地域に必要とされる貧困家庭の子どもに対して、支援団体などの仲介を通さず直接就学・生活をサポートする仕組み
<主な支援内容>
・現地社員5名の雇用に対して1名の学生の支援を継続
・大学で勉強したくても経済的に困難な貧困家庭の子どもを対象に、大学入学から卒業までの4年間、就学・生活にかかる費用について支援を実施
・支援対象者には月に1度フィリピン現地拠点に来社いただき、学業や生活の近況報告などをヒアリングをしながら、支援を受けた学生に直接奨学金を渡しています

~詳細はこちら~

未来を育てる

支援している子どもたちが、ときどきオフィスに遊びに来る。そして現地スタッフと自然に言葉を交わし、同じ空間で時間を過ごす。

自分たちの仕事が、単なる受託ではなく、誰かの未来につながっている。
その実感が、日々の現場に確かにある。

賃金や休暇制度、イベントだけでは生まれない動機がある。
誇りは、環境からではなく、意味から生まれる。
結果として、フィリピン拠点では極めて低い離職率を維持している。

倫理はコストではない。組織の持続性を高める投資である。

そこで確信した。
希望は感情ではなく、設計できるものだ。
だからこそ、それをビジョンとして掲げる。

倫理は理想論ではない。経営戦略だ。

実際、私たちの姿勢を応援してくれるクライアントが増えている。名だたる企業や官公庁も、単なる発注者ではなく「一緒に考える存在」として向き合ってくれる。プロジェクト継続率も高い。

理想を掲げることは、遠回りではなかった。

厳しい市場競争の中で、正しい企業姿勢は、武器になる。
その確信は、AI時代を迎えたいま、さらに重みを増している。

AI時代に問われる「Why」

AIが進化し、あらゆる職種で代替が進む。
これから大事なのは「どうやるか」ではなく「なぜやるか」。

なぜ、この仕事をするのか。
Whyを持つ人はAIを使いこなす。その問いを持てる人と、一緒に働いていきたい。

Whyを持たない人は、不安に飲み込まれる。
AIに仕事が奪われるかもしれない。その不安は現実だ。

だからこそ、Whyを持つ。
難しいことであっても、それが自分たちにとって意義があり、正義と思えるのであれば、挑戦する。それが私たちスパイスファクトリーの基本スタンスだ。

人類の進歩は、世代を超えて受け継がれてきた。
私たちも、次の世代へ渡す側である。

希望が循環する社会へ

DX支援だけではない。このビジョンを共有しながら協業することで、仕事の本質的な価値に夢中になれる組織を増やしたい。

スパイスファクトリーだけで【希望の循環】を実現することはできない。
だからこそ、輪を広げたい。

公益と収益を両立する企業として存在し続ける。
そのモデルケースになることが、不安を抱える誰かの希望につながると信じている。

希望とは、願いであり、祈りであり、そして意思だ。

状況ではなく、選び取る態度。
1ピクセルずつ、小さな意思が積み重なり、やがて社会の風景を変えていく。

その循環のなかに、自分たちもいる。だからこそ、この仕事に誇りを持てる。
これが、スパイスファクトリーの描く【希望の循環】である。

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