未来に企業の意思を残す。
スパイスファクトリーが「ミッションロック条項」を定款に刻んだ理由
2026年、スパイスファクトリーは創業10周年を迎えました。
この節目に向かうなかで、私たちは次の10年に何を引き継ぐのかを考えてきました。
「1ピクセルずつ、世界をより良くする。」というパーパス。
社会的インパクトの大きい領域に力を注ぐPriority5。
日々の判断に立ち戻るための各種ポリシー。
そして、次の10年に向けて描いた「希望の循環」というビジョン。
これらは異なる役割を持ちながら、同じ方向を向いています。
私たちはその意思を、今の経営陣だけのものにせず、未来のスパイスファクトリーにも引き継ぎたいと考えました。
そのために、2025年8月、定款を変更し、「ミッションロック条項」を導入しました。
掲げるだけでは、守り続けられない
企業が、自分たちの大切にする考え方を言葉にすることは、決して新しいことではありません。
理念、クレド、行動指針、パーパス、ミッション。
多くの会社が、「自分たちは何のために存在するのか」を言葉にしてきました。
ただ、掲げるだけでは守り続けられません。
どれほど大切な理念であっても、時間の経過とともに形骸化してしまうことがあります。
経営陣が交代することもあります。
株主構成が変わることもあります。
短期的な収益性や市場からの期待が、意思決定に強く影響する局面もあります。
そんなとき、理念として「大切にしている」と言うだけで、本当に守り続けられるのか。
私たちは、その問いを避けたくありませんでした。
だからこそ、企業の意思を言葉だけで終わらせず、未来の経営にも引き継がれる形にしたいと考えました。
そのために選んだのが、定款にミッションを刻むという方法です。
定款は、会社の基本原則を定めるものです。
その変更には、株主総会の特別決議が必要です。
つまり定款に刻むということは、経営陣だけの判断で簡単に書き換えられるものではなく、より高い合意形成が求められるところに、会社の意思を置くということでもあります。
ミッションを、未来に残すために
ミッションロックとは、企業が掲げた社会的使命が、将来の経営環境や株主構成、経営陣の変化によって失われないよう、統治構造の中に組み込む考え方です。
海外では、企業の社会的使命やパーパスを将来にわたって守るために、さまざまなガバナンス上の工夫が行われています。
その代表的な事例のひとつが、Tony’s ChocolonelyのMission Lockです。
同社は、自社のミッションが事業成長や株主構成の変化によって損なわれないよう、Mission Lockというガバナンス構造を導入しています。
※参考:Tony’s Mission Lock公式記事(新しいタブで開きます)
私たちも、同じように「ミッションを未来にどう残すか」という問いに向き合ってきました。
「1ピクセルずつ、世界をより良くする。」というパーパスを、現在の経営陣だけの意思に留めない形に未来へ意思を伝える形にしようと思いました。
定款に、意思を刻む
今回2025年8月に、私たちは定款に「社会的使命の遂行」に関する条項を新設しました。
導入した主な条項は以下です。
第7章 社会的使命の遂行
第41条 当会社は、「1ピクセルずつ、世界をより良いものにする。」というパーパスのもと、利益の追求のみを目的とすることなく、社会課題の解決と持続可能な未来の実現に寄与することを使命とする。
当会社は、事業活動を通じて次に掲げる事項を追求する。
(1) 従業員・顧客・取引先・地域社会・地球環境を含むすべてのステークホルダーへのポジティブな影響の創出
(2) 倫理的かつ持続可能な経営判断の遂行
(3) 多様性・公平性・包摂性の実現を支える人事・組織運営
(4) 社会的責任を果たすパートナーシップ及び公正な取引慣行の確立
(5) 地域及び地球環境への貢献を重視した事業活動の推進
また、ミッションロックに関する条項として、以下を定めました。
第44条 第41条に定める当会社の使命は、社会及び環境に対するポジティブなインパクトを含むものであり、当該条項の変更または削除には株主総会の特別決議を必要とする。また、使命を逸脱する行為は、取締役・執行役員の忠実義務違反とみなす。
この条項によって、社会的使命は単なる理念やスローガンではなく、会社の目的および経営判断の前提として位置づけられました。
もちろん、ミッションロック条項は、企業の利益追求を否定するものではありません。
社会的使命を果たし続けるためには、健全な収益基盤が必要です。
むしろ、私たちは、社会性と経済性を両立するものだと考えています。
社会にとって必要な価値を生み出すことが、中長期的な経済価値の源泉になると考えて
次の10年に、何を引き継ぐのか
ミッションを掲げることは、現在の経営陣による意思表示です。
一方で、それを定款という会社の基本原則に組み込むことは、未来の経営に対する約束でもあります。
短期的な利益最大化や株主価値の絶対視という考え方から見れば、ミッションロック条項は、経営の自由度を自ら制約する選択に見えるかもしれません。
けれど私たちは、社会性を経営の制約ではなく、成長の源泉だと考えています。
企業は、社会から切り離されて存在するものではない。
顧客、社員、パートナー、地域社会、環境、そして未来の世代との関係性の中で存在しています。
だからこそ、私たちの意思を言葉だけで終わらせたくありませんでした。
定款に刻む。
ポリシーに落とし込む。
Priority5(新しいタブで開きます)として事業判断に接続する。
そして、「希望の循環」という未来像に向かって、日々の選択を重ねていく。
これは、特別なひとつの施策ではありません。
スパイスファクトリーが次の10年に向けて、何を大切にし続けるのかを、経営と現場の両方に実装していくための取り組みです。
希望は、願いであり、祈りであり、そして意思です。
その意思を、事業に、組織に、制度に、日々の判断に落とし込んでいく。
1ピクセルずつ、小さな意思が積み重なり、やがて社会の風景を変えていく。
ミッションロック条項は、その強い意思が伝わればいいと思っています。
これは、現在の私たちの宣言であり、未来のスパイスファクトリーへの約束でもあると思います。
みなさんの企業だったら、どのような意思を定款に刻みますか?