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新規事業を成功に導くフレームワーク17選

新規事業を成功に導くフレームワーク17選

Posted by スパイスファクトリー公式 | |システム開発

既存の業務プロセスに基づき行う仕事とは異なり、新規事業開発は自由度が高く、進め方に悩むケースも多いといえます。そこで有効活用したいのがフレームワークです。

アイデアの具体化から市場投入まで、新規事業開発に利用できるフレームワークはさまざまです。これらをうまく活用することで、不確実性の高い新規事業の道筋をつけやすくなり、新規事業の成功確率を高めることができます。

本記事は、新規事業開発において特に有用とされるフレームワークをご紹介します。

新規事業とは

新規事業とは、既存の製品やサービスとは異なる新しいビジネスモデルや市場を開拓する活動を指します。

一般的には企業の成長戦略の一環として行われるものであり、市場競争力の強化や事業リスクの分散、多角化戦略の実現、新たな顧客ニーズへの対応などを目的とします。

特に近年では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、新しい技術やデータを活用して新規事業を展開することが重要になっています。実際に、株式会社アシックスによる3Dスキャン技術を用いたカスタムシューズ開発事業や日本郵船株式会社によるデジタル船舶管理サービスなど、DXを用いた新規事業の事例は枚挙に暇がありません※。

※参考:経済産業省「DX銘柄2024選定企業レポート」

DXを新規事業に取り入れるには?事例に学ぶコストをおさえて小さくはじめる方法

新規事業を立ち上げるプロセス

新規事業を立ち上げる一般的なプロセスは以下のとおりです。

責任者のアサインからアイデアの発想、市場・競合・自社分析などを通して、事業のアイデアを整理し、施策の実行・効果検証へと進めていきます。

ステップ詳細

1.責任者のアサイン新規事業の責任者を選任しつつ、明確な責任と必要な権限を与える
2.アイデアの発想ブレインストーミングや市場のトレンド分析を通じてアイデアを出す
3.事業ドメインの決定多数のアイデアから実現可能で重要なものを選ぶ
4.事業理念・コンセプト・ビジョンの明確化具体的な事業モデルや価値提供方法を明確化し、組織内で共有する
5.市場・競合・自社の把握市場調査、競合調査、自社分析を行い、現状を把握する
6.事業アイデアの数値的な分析・予測売上高、投資対効果、顧客獲得数、顧客満足度などの観点で事業を数値的に分析する
7.新規事業立ち上げ環境の整備予算や必要なリソース、スキルを持った人材を確保する
8.要件定義の実施新規事業にあたって求められるシステムの機能や性能を明確にする
9.施策の実行・効果検証PoCを実施し、改善点を見つけブラッシュアップを行う

各プロセスの詳細については、こちらの記事で解説しておりますので、併せてご覧ください。

新規事業とは?立ち上げ時の成功事例と共にポイントを解説

新規事業におけるフレームワークの役割

新規事業の各プロセスを進めるにあたっては、フレームワークをうまく活用することがポイントとなります。

フレームワークとは、新規事業を始めとした複雑なプロジェクトを、体系的に進めるためのガイドラインや枠組みのことです。

新規事業は既存事業とは異なり、不確実性が高く、取りうる選択肢も豊富に存在します。

また、新規事業においてはチームメンバーによって想いが異なったり、方針のブレが生じたりするケースもあります。

フレームワークを利用することで、考慮漏れや分析漏れが減り、自社や市場環境を正確に把握できるようになります。

また、共通のフォーマットで議論を深めることで、メンバーやステークホルダーとの間で共通認識を持ちやすくなる効果もあります。

【フェーズ別】新規事業立ち上げにおける主要フレームワーク

以下では、新規事業の立ち上げにおいて活用できる主なフレームワークを、新規事業のフェーズごとにご紹介します。

アイデア創出フェーズ

まず、アイデアを生み出すために有効なフレームワークをご紹介します。

マンダラート


マンダラートは、目標の明確化やアイデアの発想に有用なフレームワークです。

まず、9つの枠に分かれたマトリックスの中央にテーマを置き、その周囲に関連する8つの要素を記入します。

次に、その8つの要素をそれぞれ中央に置き、新たに関連する8つの要素を追加する過程を繰り返します。

マンダラートにより、幅広い視点からアイデアを膨らませつつ、アイデアの整理と発展を効率的に行うことができます。

ペルソナ分析

ペルソナ分析は、新規事業のターゲットとなる顧客像を具体的に描くためのフレームワークです。

架空の人物像を「ペルソナ」として設定し、その人物の属性や行動パターン、ニーズや課題を詳細に記述します。

新規事業のターゲットを「30~40代」「会社員」といった単なる属性のみで定義すると、どうしてもターゲットが持つ考えや感情をうまく想像できません。

ペルソナとして実際にその方が存在するレベルまで具体化することで、新規事業の設計時に具体的な顧客の視点を取り入れやすくなります。

また、ペルソナにより顧客に対する理解をチーム内で一貫させる効果もあります。方針に悩む際にペルソナに立ち返ることで、新規事業の方向性も定めやすくなります。

SCAMPER(スキャンパー)法

SCAMPER法は、既存のアイデアや製品を改良・革新するためのフレームワークです。

SCAMPERとは「代用する(Substitute)」「組み合わせる(Combine)」「応用する(Adapt)」「修正する(Modify)」「転用する(Put to another use)」「排除する(Eliminate)」、「逆転させる(Reverse)」の7つの略称です。

これら7つの視点から検討することで、さらにアイデアを発展させていくことができます。

アイデア整理フェーズ

以下では、アイデアの整理に有効なフレームワークをご紹介します。

MVV

MVVとは、Mission(使命)、Vision(ビジョン)、Values(価値観)の略称です。Missionは企業の存在意義や目的を示し、Visionは長期的に目指すべき姿を描きます。

Valuesは企業が大切にする価値観や行動指針を明確にします。

新規事業においてはさまざまな選択肢から「やるべきこと」「やるべきでないこと」を判断していく必要があります。このとき、MVVを前提とした判断を行うことが重要です。

MVVを設定することで、事業全体の方向性や戦略、意思決定が一定の基準に基づく一貫したものとなります。

ロジックツリー

ロジックツリーは、問題を階層的に分解して整理し、原因や解決策を明確にするフレームワークです。

新規事業においては、事業を構成する要素をもれなく、体系的に整理するのに役立ちます。

たとえば「顧客満足度を高めるために必要な要素を分析する」「売上を高めるために必要な施策を分析する」といったユースケースで利用できます。

ロジックツリーを作成する際には、MECE(Mutually Exclusive、 Collectively Exhaustive)の原則に基づき、もれなく、重複なく事業に関連する要素を分解することがポイントです。

ビジネスモデルキャンバス


ビジネスモデルキャンバスは、事業モデルを視覚的に構築するためのフレームワークです。

顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客関係、収益の流れ、主要リソース、主要活動、パートナー、コスト構造の9つの要素から、事業がどのようなものかを整理します。

ビジネスモデルキャンバスを用いることで、事業の全体像を一目で把握し、各要素間の関係性や依存性を明確にできます。

チーム内やステークホルダーとの共通認識を作り上げる上でも有効なツールであり、ビジネスモデルキャンバスを作成しながら議論を深めることで、事業の方向性を整理しやすくなります。

市場分析フェーズ

以下では、市場分析に活用できるフレームワークをご紹介します。

PEST分析

PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4つから分析する手法です。

新規事業開発において必須となる外部要因分析において活用できるものであり、取り組む事業にどのようなリスクがあるのか、またどのような追い風があるのかを把握できます。

PEST分析を行うことで、新規事業に影響する外部環境を抜け漏れなく、総合的に評価することができます。

SWOT分析


SWOT分析では、新規事業を実施する上での自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を評価します。

新規事業における市場参入可否の分析を行ったり、事業計画の改善策を検討したりする際に活用できるフレームワークです。

SWOT分析を活用することで、自社の現状をプラス・マイナスのそれぞれの観点から分析できるため、競合との差別化方針やリスク回避策などを立てやすくなります。

3C分析


3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から市場を分析する手法です。

顧客・競合・自社の3つの要素は、新規事業開発において必須で分析すべきです。

3C分析を活用することで、企業は市場の現状や自社の参入可能性を整理しつつ、競合との差別化戦略と市場シェアの獲得策の検討につなげることができます。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、自社が市場内で競合と比較してどのような位置づけにあるのかを、視覚的に示すためのフレームワークです。

ポジショニングマップは二次元のグラフとして描かれます。縦軸と横軸には顧客にとって重要な属性が配置されます。たとえば「価格とデザイン性・機能性のポジショニングマップ」や「シェアと顧客満足度のポジショニングマップ」などが考えられます。

ポジショニングマップを作成することで、市場内の競合との比較がしやすくなります。新規事業開発においては、継続的にポジショニングマップを見直し、自社の強みや改善点をアップデートし続けることも重要です。

事業計画立案・要件定義フェーズ

次に、具体的な事業計画の立案やシステム開発における要件定義フェーズで有効となるフレームワークをご紹介します。

As Is / To Be

As Is / To Beフレームワークは、現状(As Is)と目標状態(To Be)のギャップを明確にし、改善計画を策定する際に使用されます。

As Isとして現在の課題を洗い出し、To Beとして望ましい姿を描きます。As IsとTo Beの整理結果を踏まえ、ギャップを埋めるための具体的なアクションプランを立案します。

新規事業開発においては、現状存在する市場や顧客の課題を分析し、それをあるべき姿にするためにはどのような製品やサービスの開発・提供が必要であるかを分析するために活用できるフレームワークです。

6W3H

6W3Hフレームワークは、Who、What、When、Where、Why、Whomの6つのWと、How、How much、How manyの3つのHから構成される問題解決の手法です。

これらの各観点で問題や課題を分析することで、解決策を見つけやすくします。

新規事業においては、提供する製品・サービスについて具体化する際に「誰がこの製品を利用するのか」「どこで提供するのか」「どのようにして販売するのか」といった観点を整理するために有効です。

各要素に対して具体的な回答を考えることで、アクションプランの策定につながります。

リーンキャンバス


リーンキャンバスは、ビジネスモデルを簡潔に視覚化するためのツールです。1ページのキャンバスに、顧客の課題、顧客セグメント、提供価値、ソリューション、チャネル、収益の流れ、コスト構造、主要指標、他社と比較した際の優位性についてまとめます。
リーンキャンパスを利用すると、ビジネスアイデアの全体像が明確となり、ブラッシュアップもしやすくなります。

さらに、新規事業の価値を把握するために必要な情報を簡潔にまとめられることから、経営層やチーム内での共通認識を形成するためにも役立ちます。

ビジネスロードマップ


ビジネスロードマップは、企業の中長期的な戦略を視覚化し、達成すべき目標や必要なアクションを示すフレームワークです。

一般的には横軸を時系列とし、事業の各段階における主要なマイルストーンやアクティビティを明確にします。

新規事業においては、目標とする売上高や利益、顧客数、市場シェアなどをマイルストーンとして、どの段階でどの程度の状態に到達しているかを示します。

ロードマップを作成することで、組織全体で共通の方向性を持ち、計画的な進捗管理を行えるようになります。

効果検証フェーズ

最後に、新規事業の効果を検証するフェーズで有効となるフレームワークをご紹介します。

PoC

PoCとは「Proof of Concept」の略で、概念実証を指します。PoCでは実際に動作するプロトタイピングを構築し、検証を行うことで、ビジネスアイデアの実現可能性や効果を測ります。

PoC を行うことで、想定している仮説が正しいか、また技術的に実現可能かを低コスト・低リスクで検証できます。

PoCについて詳しくは以下の記事もご覧ください。

PoCとは。ビジネスにおけるPoC活用メリットや進め方を徹底解説

また、PoCの実施を検討されている方、どのような支援を受けられるか知りたい方は、以下のサービス資料も併せてご覧いただけると、より詳しくPoCについて理解できます。

PoCの資料請求はこちらから

MVP開発

MVPとは、必要最小限の製品(Minimum Viable Product)を略した言葉です。MVPとして最小限のプロダクト・サービスを開発することで、顧客の反応を検証しながら改善することができます。

MVP開発のメリットとして、コストと時間を節約しながらユーザーのニーズに合った製品を迅速に提供できる点が挙げられます。

市場での製品の受け入れを早期に把握することで、大規模な失敗を回避しつつ、ユーザーからのフィードバックを基に製品を改良することで、競争力のある製品を開発することが可能になります。
MVP開発の詳細は以下の記事もご覧ください。

MVP開発とは?アジャイル開発との違い、実施プロセスや注意点を解説

ラピッド・プロトタイピング

ラピッド・プロトタイピングは、製品やサービスの開発プロセスにおいて、迅速性を重視して高速に試作品を作成する手法です。

当初、主に製造業において利用されてきた手法ですが、ソフトウェア開発においても2010年代初頭からシリコンバレーなどで広く採用されています。

日本においても近年、ベンチャー企業や教育機関を中心にラピッド・プロトタイピングへの注目が高まっています。

ラピッド・プロトタイピングは、プロダクトの迅速なリリースを可能とし、新規事業の開発や既存サービスの強化において重要な役割を果たす、有用なアプローチといえるでしょう。

より詳しくラピッド・プロトタイピングについて知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。

ラピッド・プロトタイピングとは?導入目的・メリットとプロセスを分かりやすく解説

フレームワークの活用メリット

新規事業におけるフレームワークの活用メリットは以下のとおりです。

〇ロジカルシンキングにつながる
フレームワークを活用することにより、新規事業において整理すべき自社の強みや市場環境、プロジェクトの制約などを論理的に整理しやすくなります。

〇アイデアの整理が可能となる
特に新規事業開発の初期段階では数多くのアイデアを整理する必要があります。フレームワークを用いることで、多様なアイデアを体系的に整理することが可能です。

アイデアの優先順位を明確にし、人的・物的なリソースを最適配分しやすくなります。

〇共有しやすい情報となる
フレームワークは、複雑な情報を簡潔かつ視覚的に整理するためのツールでもあります。

チーム内やステークホルダーと新規事業の方向性や戦略を共有する際にも、情報共有が容易となり共通理解を形成しやすくなります。

フレームワーク活用時の注意点

フレームワークは新規事業開発において有用ではあるものの、利用にあたっては以下の観点に注意すべきです。

〇適切なフレームワークの見極め
多種多様なフレームワークが存在する中で、どのフレームワークを利用すべきか見極めが必要となります。

プロジェクトの規模や対象となる市場を踏まえて、適切なフレームワークを選定する必要があります。一例として、3C分析やSWOT分析、PEST分析などは多くの新規事業で共通して利用しやすいフレームワークといえます。

〇フレームワークの利用を目的化しない
フレームワークを活用すること自体が目的になってしまうと、本来の目標を見失う可能性があります。フレームワークはあくまで手段であり、新規事業の成功を支えるためのツールです。

最終的にどのような情報を整理したいのかを明確にしたうえで、フレームワークをツールとして使うという意識が重要となります。

スパイスファクトリーが支援した新規事業開発の事例

最後に、当社が実際に支援した新規開発事業の事例をご紹介します。

【事例1】本田技研工業株式会社様

当社は、世界有数の自動車メーカーである本田技研工業株式会社様のPoCプロジェクトにおいて、プロトタイプの開発からその検証、およびシステム開発への移行に至るまで、一貫したサポートをご提供いたしました。

新規事業の市場ニーズを的確に把握するため、プロトタイプ開発とリサーチを2ヶ月という短期間で実施。ユーザーエクスペリエンスの導線まで詳細に設計された高解像度のプロトタイプを開発することで、具体的なフィードバックの取得に寄与しました。

※参考:本田技研工業株式会社|PoC支援

【事例2】伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様のDX新規事業の支援においては、当社メンバーがプロジェクトチームに加わり、プロトタイプの開発を担当しました。

開発にあたっては、チーム内の議論から導かれたコンセプトや機能要件を基に、高速でプロトタイピングを実施。

また、マーケターやUI/UXデザイナーも参加し、デザインやリサーチ、デザインシンキングのワークショップも提供しました。

※参考:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社|DX新規事業支援

まとめ

今回は、新規事業開発において利用できるフレームワークについて詳しくご紹介しました。

特に新規事業開発における効果検証フェーズにおいては、プロトタイプを利用したPoCや市場からのフィードバックを受けるためのMVP開発など、システムを活用することが有効となります。

当社では、これまで多くの企業の新規事業開発を支援して参りました。アジャイル開発に精通したエンジニアやUI/UXデザイナーなど、高いスキルを持った豊富な人材がPoC開発やMVP開発、リサーチなどトータルでサポートを行います。

「新規事業開発においてPoCやMVP開発を行いたい」「アジャイル型でプロダクトを開発したい」といった方は、ぜひ当社までお問い合わせください。

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