オフショア開発はコストの削減や、近年の日本市場においてはエンジニア不足を解消するために、多くの企業が取り入れています。しかし、オフショア開発プロジェクトは納期の遅延や成果物品質の低さなど、上手くいかないケースも多く発生しています。
オフショア開発は、自社でオフショア拠点を保有していない場合、オフショア開発会社に委託をする場合がほとんどです。
つまりどの企業をパートナーとするかはオフショア開発プロジェクトの成否の大部分を占めているといっても過言ではありません。
そこで本記事では、オフショア開発プロジェクトを成功へ導くために重要なパートナー会社選びに焦点をあて、選定する際に押さえておくべきポイントについて解説します。
Contents
オフショア開発会社選定の流れ
まずはオフショア開発企業を選定する一般的な流れを説明します。
社内での前提整理
いきなり企業選びに着手するのではなく、まずは自社内で情報を整理するべきでしょう。
以下に整理のプロセスを紹介します。
目的・目標の整理
どんなものを、いつまでに、どのような状態で開発したいのか具体的に整理をします。
ビジネスとしてのゴールや、達成のために何が課題になっているのか、今回開発するシステムやサイトに期待している役割は何かを明確にしておきましょう。
ここがブレてしまうと、プロジェクトが開始された後に「やっぱり違った!」ということになりかねません。
手戻りがあれば当然スケジュールは遅れますし、費用もかさんでしまいますので注意が必要です。
予算なども決まっているようであればあらかじめ上限値等を確認しておきます。
依頼内容の具体化
目標などの前提整理が終わったら、可能であれば具体的な依頼内容を決定します。
具体的な機能要件や技術スタック、納期、品質、デザインのイメージなどを整理します。
依頼内容が明確であればあるほど、プロジェクト開始後の要件定義がスムーズになる他、選定したオフショア開発企業との認識齟齬や手戻りを避けることができるでしょう。
社内のシステム部門の方や技術的知見がある方と可能な範囲で整理しておくことをおすすめします。
不明な点などは商談や要件定義の際に開発の委託会社と相談して決めることも可能ですので、この段階ではわかる範囲までで問題ありません。
企業の情報収集
オフショア開発先として候補となる企業の情報収集をします。
多くの企業では、調査結果を踏まえて上長や決裁者の方に承認をもらうフローが必要になると考えられます。その観点からも複数の会社の情報を集めて比較検討できるようにすることが望ましいでしょう。
企業の情報は以下のような方法で集めることが一般的です。
- インターネット検索(「オフショア開発 会社」などで Google検索する)
- 相見積もりサイトの活用(『発注ナビ』など複数の企業から一括して見積をとれるサービスがあります。ほとんどの場合、見積を請求する側の会社は無料で利用できます。)
- 知見のある知り合いからの紹介
とはいえ、インターネットなどで入手できる情報には限界があります。
ある程度情報を集めたら、いくつか自社に合いそうな企業を絞り込んで、不足する情報については次に解説する商談で聞くようにします。
商談
候補となる企業を絞り込んだら、それぞれの企業と商談を行います。
サービスの詳細な提案や自社が依頼をする場合の正式な見積りを受けられる他、ネットなどではわからなかった点のヒアリングを行います。
また、ヒアリングを通じて企業との相性や信頼関係を構築できそうかといった数値に表れないような情報を確認することも重要です。
比較・検討
情報が大体集まったら、それぞれの企業を比較します。
比較検討するポイントとしては、以下のようなポイントが挙げられます。
- 企業規模(従業員数や資本金)
- 費用
- 技術力(対応言語・フレームワーク)
- 提案内容
- 過去の実績
- 納期への対応可否
- 品質管理体制
- コミュニケーション能力
- 保守・サポートの有無
- 契約条件
- その他特記事項
社内での承認や共有することを踏まえて、会社ごとに表の形式にまとめると比較がしやすくなりおすすめです。
上記はオフショア開発でなくとも必要になるであろう一般例ですが、これらのポイントと自社でとくに重要視したい点、オフショア開発企業の選定で重視すべき点を考慮して比較検討し、最終的に 1 社を選定します。
オフショア開発企業を選ぶ際にとくに注意するべき項目についてはこの後の章で詳しくご紹介します。
オフショア開発を依頼する会社選びのポイント
費用や企業規模など一般的なシステム開発で注目すべき項目はもちろん確認するべきですが、オフショア開発だからこそ注意するべき点が存在します。
この章ではオフショア開発を依頼する企業を選ぶ際にとくに着目すべきポイントをご紹介します。
企業選びの際に使える比較表テンプレートも作成しましたので、よろしければご利用ください。(以下のバナーより無料でダウンロード可能です)
契約形態
オフショア開発企業のサービスは、契約形態の違いにより、請負型とラボ型に大別できます。
ラボ型は、準委任契約として一定期間、人材の稼働に対して費用を支払います。
稼働人数 × 契約期間に対して対価を支払うイメージです。
契約期間内であれば仕様の変更などにも柔軟に対応できますが、成果物の完成に責任は発生しないので発注側企業も含めたプロジェクトマネジメントの意識が求められます。
一方、請負型はその名の通り請負契約での契約です。
プロジェクト全体の予算と成果物をあらかじめ決めて契約します。
契約で定めた要件通りの成果物を納品することに責任が発生しますが、追加の要望や仕様の変更はできません。
どうしても必要な場合は別途契約となり費用が膨らむことを覚悟しなくてはなりません。
オフショア開発における契約形態の違いとそれぞれのメリット・デメリットについては以下の記事にて解説していますので、参考にしてください。
※参考記事:ラボ型オフショア開発とは?メリットや請負型との違いも説明
オフショア開発国
オフショア開発の拠点国がどこなのかも重要な視点です。
国によって対応言語・法律・文化・祝日・時差・人件費相場・得意とする案件の種類などが異なります。
自社の要件を満たしていること、国の違いによってプロジェクトに生じるリスクを把握し、万が一の場合にも自社、もしくは選定企業でコントロール可能であることが重要となります。
拠点国として代表的なのは、ベトナム・フィリピンなど東南アジア圏の国です。
どの国なら OK という正解がある話ではありませんが、それぞれの国においてメリット・デメリットになり得る特徴があります。
わかりやすいのは言語の違い、国民の祝日の違い、時差などでしょう。
祝日や時差はトラブル時の緊急対応のしやすさや納期などに影響します。
他にもリスクになる可能性として政治情勢の観点もあります。
政治情勢が不安定な地域に拠点を置く企業は、ビジネス環境に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、リスクマネジメント能力が必要であり、自然災害や感染症の流行なども考慮すべきです。
前提として適切な現地情報の収集とリスク評価ができている企業かは確認しておきましょう。
企業によっては異なる複数の国に拠点を持っていることもあります。
オフショア開発の代表的な国とその特徴については以下の記事で解説していますので参考にしてください。
※参考記事①:オフショア開発とは?簡単にわかるメリットや最新の市場動向
※参考記事②:フィリピンのオフショア開発の特徴を紹介|メリット・デメリットを解説します
推進・社内体制
オフショア開発プロジェクトが失敗する原因としてよく挙げられるのが「コミュニケーション齟齬」と「品質管理体制」です。
言語・文化が異なるメンバーを含めてプロジェクトマネジメントをする必要があるため、国内で日本人のみのメンバーでのプロジェクト推進よりも難易度が上がる傾向があります。
以下に挙げるような体制があるかどうかは確認しておいた方が良いでしょう。
現地エンジニアのスキルレベル
国内の開発企業へ依頼する場合も重要ですが、人材のスキルとそのレベルがプロジェクトにマッチしているかは確認しましょう。
特にラボ型の場合は、中期的に同じチームの一員のような形でプロジェクトを進めていくことになります。
スキルだけでなくアサインメンバーの人柄なども含めて、自社のプロジェクトメンバーとの相性も確認をした方がいいでしょう。
また、現地人材のスキルアップのために企業としてどんな取り組みをしているかを聞くことで企業姿勢の判断材料にもなります。
集めた人材をきちんと育成するスタンスなのかどうかは人材の質に繋がるポイントでもあります。
ブリッジSEの有無とスキルレベル
ブリッジSE は、オフショア開発において日本側の開発チームと海外の開発チームの間に立ち、双方の意思疎通をスムーズにすることが主な役割です。
具体的な業務としては、オフショア先への説明、仕様書・設計書の作成、日本側(クライアント)の要件や仕様を海外の開発チームに翻訳して伝える、海外の開発チームからの報告や進捗状況を管理、開発成果物の品質管理などを行い、現地語の語学力やマネジメントスキルが必要とされます。
企業やサービスによっては、そもそもブリッジSE がいなかったり、オプションとなっているケースもあります。
自社にこの役割を担える技術的知見と語学力、そしてプロジェクトマネジメントスキルを兼ね備えた人材がいる場合は別ですが、そうでない場合オフショア開発プロジェクトの成否のカギを握る人物となり得ます。
ブリッジSE がいるかどうか、プロジェクトにアサイン可能か否かは検討のポイントになるでしょう。
※参考記事:ブリッジSEとは?オフショア開発での役割と必要性、注意点も解説
日本語コミュニケーション能力
上述したブリッジSE が担う場合もありますが、プロジェクトの窓口となるカウンターパートの人材が日本語で円滑なコミュニケーションがとれるかどうかは重要なポイントです。
ミーティング時の口頭コミュニケーションはもちろん、メールやチャット、仕様書などのドキュメント類にいたるまで、日本語でどの程度のコミュニケーションが可能なのか確認をしましょう。
営業の担当者は日本語堪能だったが、プロジェクトがはじまってみると担当者は日本語が得意ではなくコミュニケーションにおける誤解やミスが多いといったことの無いように注意が必要です。
品質管理体制
オフショア開発のよく聞く失敗例として成果物の品質が低いことが挙げられます。
要件の定義が甘かったり、コミュニケーション齟齬があったりすることで発生するケースが多いのですが、「ありがち」な失敗であるため、どんな対策で防止しようとしているかは確認しておいた方が良いでしょう。
具体的にはシステムテストの体制をどうしているか、コードの品質はどう担保しているかなどが挙げられます。
たとえば手前味噌ですが、当社、スパイスファクトリーの場合、QAエンジニアによるテストの実施で「機能レベルの外部品質担保」やブリッジSE による 2重レビューによる「コードレベルの内部品質担保」をしています。
それ以外にも、海外のエンジニアの特徴を理解してプロジェクトにアサインできるように、日本のブリッジエンジニアと海外エンジニア間での毎日のチームコミュニケーションや作業の連携フローを徹底しています。
当社の取り組みについては以下のページもぜひご参照ください。
プロジェクト体制の柔軟性
プロジェクト推進体制で気にしておくべき点として体制の柔軟性があります。
オフショア開発の拠点国に多い東南アジア諸国においては、文化的な違いとして転職へのハードルが日本に比べて低いということがあります。
プロジェクトの担当者やエンジニアが体調不良や退職でいなくなってしまうということはあらゆるプロジェクトで起き得ることですが、転職の頻度が高い東南アジアの国などがオフショア拠点国の場合、プロジェクト期間中にアサインメンバーが辞めてしまうといったことが起こりやすいといえます。
もちろん、退職などによるメンバーの離脱が起こらないに越したことはありませんが、そうなってしまったときに人材が十分におり、柔軟に別メンバーがフォローができる体制か、フォロー時にスムーズな引継ぎができるか(決定した仕様のドキュメント化や議事録の保管が出来ているかが重要になります)などは確認しておくと安心です。
得意領域
オフショア企業が得意とする領域も重要です。
どんな開発言語やフレームワークを使うことが多いのかや、サイト制作・アプリ開発・ Webサービス開発・ AI ・ IoT ・ゲーム開発など、得意とする案件の特徴も企業ごとに差が出るポイントでもあります。
企業が得意とする領域を把握することで、自社のニーズに合った企業を選定することができます。
また、企業が得意とする領域については、後述する実績と合わせて詳しく調べましょう。
過去案件での体制や開発手法、プロジェクト期間についても確認し、自社の開発との適合性を見極めます。
実績
自社が開発依頼しようとしている成果物の類似案件があるか、同業界の対応実績はあるかなどを確認します。
一概には言えませんが、自社の依頼内容に近しい事例がある方が安心でしょう。
開発会社から提供される実績資料などももちろん参考になりますが、少し踏み込んで、開発規模や期間、アサイン人数などを確認し、事例としてあまり積極的には出したくないであろうトラブル発生時の対応についても聞いた方がよいでしょう。
技術力や品質管理力、プロジェクトマネジメント力などを推し量る重要なポイントとなります。
提案力
オフショア開発企業は、その事業の成り立ちから国内の開発案件の下請けとして成長してきた背景があります。
そのため、指示された業務をこなすことは得意なものの、良いプロダクトにするために能動的な提案をする力は低い企業が比較的多いとされています。
実際、Resorz社が公表している『オフショア開発白書(2022年版)』※ではアンケート調査の結果としてオフショア開発企業が弱みに感じているポイントとして「営業力(レスポンスの速さ/提案力)」「デザイン力(UI/UX)」という回答が TOP となっています。
自社においてデザインや作りたいシステムについて明確に要件を整理出来ていれば大きな問題にはなりませんが、現代のデジタルプロダクトにおいて、ユーザーにとっての使いやすさである UI/UX の視点は重要度を増しています。
より良いプロダクトを開発企業の専門的なアドバイスをもとに一緒につくる形を望むのであればチェック項目として設けるべきでしょう。
他にも以下の記事ではオフショア開発で失敗しやすいポイントを解説しておりますので参考にしていただき、企業選びに活かしていただければ幸いです。
参考記事:オフショア開発は失敗しやすい?よくある失敗パターンの原因と対策を解説
※参考文献: 出典:『オフショア開発白書(2022年版)』(オフショア開発. com)
高品質なオフショア開発が希望ならぜひスパイスファクトリーも候補に
この記事では、オフショア開発企業を選定する際に重要な観点について解説してきました。
国内でシステム開発を外部企業に依頼する際にも共通するポイントもありますが、海外拠点を活用するオフショア開発独自の注意点や確認点を事前に把握したうえで企業選定することが重要です。
当社、スパイスファクトリーではフィリピンにオフショア開発拠点を設け、国外のリソースも活用したアジャイル開発を展開しています。
ブリッジSE らによる、万全の品質管理体制を用意している他、国内の UI/UX デザイナーと協働しユーザーにとって使いやすいシステム・プロダクトとなるよう専門的な提案もさせていただきます。
システム・ Webサービス開発やオフショア開発に関する相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。
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