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アジャイル開発がこれからのDX推進に必要な理由とは?活用するメリット・デメリットを解説

アジャイル開発がこれからのDX推進に必要な理由とは?活用するメリット・デメリットを解説

Posted by tomoaki_kaji | |システム開発

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代、企業が競争力を維持し、業務効率を向上させるためには、柔軟かつ迅速な開発手法が求められています。

そこで注目されるのが「アジャイル開発」です。この記事では、DX推進におけるアジャイル開発の有効性について詳しく解説します。

この記事を読むことで、以下のような内容を理解することができます。ぜひご覧ください。

  • DXに関する基本的な知識
  • DX推進におけるアジャイル開発の役割
  • アジャイル開発のメリット

DXとは?

デジタルトランスフォーメーション、通称DXは、企業や社会がデジタル技術を活用して業務や生活を根本的に変革することを指します。

デジタル技術の急速な進化により、これまでにはないアプローチでビジネスを推進できるようになりました。DXはさまざまな業界において新たなビジネスモデルの創出や既存業務の最適化を可能とし、競争力を高めるための重要な手段となっています。

DXの定義と目的

2024年に公表された経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」によれば、DXの定義は以下のとおりとされています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

※引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」P2脚注より

この定義において注目したいのは、「データとデジタル技術を活用して」「製品やサービス、ビジネスモデルを変革」するとともに「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革」するという点です。

DXは単なる業務の効率化や改善にとどまらず、ビジネスモデル自体の変革、もしくは組織・プロセス・企業文化・風土の快活という大上段の視点が求められる取り組みといえるでしょう。

なぜ、DXが今必要なのか?

DXが必要とされる背景として、デジタル企業による業界革新が進んでいることが挙げられます。ディスラプションとは「既存のビジネスを破壊するような革新的なイノベーション」を指す言葉です。

例えば、書籍における出版、取次、書店といった従来型のビジネスモデルは、Amazonに代表されるインターネット通販サービスの台頭により変化を余儀なくされました。決められた時間にしか見ることができないテレビは、オンデマンド型の動画配信サービスにより顧客を奪われつつあります。

ソフトウェア業界においては、クラウドサービスの一般化により個別にソフトウェアを開発したりするケースは減少しつつあります。また、石油業界においては電気自動車の普及などを背景に、長期的に需要が減少することが見込まれています。

このようなディスラプションに対抗するために、あらゆる業界においてデジタル技術の活用によるビジネスモデルの変革が求められています。

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5より

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5内画像をもとにスパイスファクトリーにて作成

このような中、近年では一定の企業でDXの取り組みが進んでいます。IPAによる「DX動向2024」では、2023年時点で「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業は全体の37.5%、「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」と回答した企業は21.9%となりました。

※引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5より

一方で、企業規模別にみると取り組みに濃淡があることが分かります。

同調査によれば、従業員数が100人以下の企業においては、「DXに取り組んでいない」企業が38.1%と、大企業と比較すると取り組みが進んでいない状況が明らかとなっています。中小企業におけるDXの取り組みは道半ばと考えられます。

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P6内画像をもとにスパイスファクトリーにて作成

※引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P6より

日本におけるDXの取り組みが一定進む一方で、経営層のITへの理解という観点が進まないという課題もあります。

2023年時点におけるIT分野に見識のある役員の割合について「3割未満」であると回答した企業は全体の53.8%に、「いない」と回答した企業は29.5%となりました。

下のグラフのとおり、この数字は近年で横ばいです。DXの取り組みが進む一方で、経営レベルでのIT・DXへの理解が進んでいない点が浮き彫りとなっています。

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P18内画像をもとにスパイスファクトリーにて作成

※引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P18より

DXの取り組みは単なる業務改革ではなく、ビジネスモデルや企業文化の変革を目標としたものです。よって、DXの推進には経営層の理解と旗振りが必要となります。DXの成功のためには、経営者がIT・DXの知識とスキルを持つことが重要です。

アジャイル開発とは?

DXの推進において意識したいのが、アジャイル開発の採用です。アジャイル開発とは、ソフトウェア開発における手法の一つで、反復的かつ増分的なアプローチを採用することで、柔軟かつ迅速にソフトウェアを開発することを目指します。

従来のウォーターフォール型開発とは異なり、アジャイル開発ではスプリントと呼ばれる短いサイクルごとに製品を部分的に完成させ、フィードバックを基に改良を重ねていく方法を取ります。

アジャイル開発はDXの推進において非常に有効です。具体的には、アジャイル開発には以下のようなメリットがあります。

〇柔軟な進行
まず、アジャイル開発の反復的かつ増分的なアプローチがDXの柔軟な進行に適しています。事業環境や市場の変化に迅速に対応することが求められるDXにおいて、アジャイルの短いサイクルでの開発と継続的なフィードバックは非常に効果的です。

これにより、プロジェクトの方向性を素早く修正し、適応することが可能となります。

〇不確実性への対応
アジャイル開発は不確実性への対応手法としても優れています。DXプロジェクトでは新しい技術やビジネスモデルの導入を行うため、どうしても不確実性が高くなります。アジャイル開発にてスプリントごとにリリースを行い、その都度フィードバックを得ることで、リスクを分散し、プロジェクトの成功確率を高めることができます。

〇チームのコラボレーション強化
アジャイル開発はチームのコラボレーションを強化します。DXの推進には組織全体での連携が不可欠であり、部門間や専門領域を超えた協働が求められます。

アジャイルの手法では、チームメンバーが頻繁にコミュニケーションを取り合い、共通の目標に向かって協力することで、チーム一体となってプロジェクトを進めることができます。

このように、アジャイル開発はDXの実現において効果的なさまざまなメリットが存在します。
なお、アジャイル開発のメリット・デメリットについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もおすすめです。

※関連記事:アジャイル開発のメリット・デメリット、相性の良いプロジェクトや事例まで解説

より実践的なケースについて知りたい方は、アジャイル開発の事例に関する記事もご覧ください。

※関連記事:4つの事例で学ぶアジャイル開発 スクラム手法を取り入れた最適なアプローチとポイント

DXとアジャイル開発の親和性が高い4つの理由

市場の変化への迅速な対応が可能

DXを推進する上で最も重要な要素の一つが、市場の変化へ迅速に対応する能力です。従来型の開発手法では、計画からサービスやプロダクトを社会に実装するまで長期間を要するため、完成時には市場のニーズが変化してしまうリスクがありました。

アジャイル開発では、2-4週間程度の短いスプリントサイクルで開発を進めるため、市場の変化に応じて優先順位や機能要件を柔軟に調整できます。これにより、競争が激化するデジタル時代において、企業の競争力を維持・向上させることが可能となります。

顧客価値の検証と改善が継続的に行うことができる

DXの成功には、デジタル技術を活用して真の顧客価値を生み出すことが不可欠です。アジャイル開発では、最小限の機能を持つプロダクトを早期にリリースし、実際のユーザーからフィードバックを得ることができます。
このアプローチにより、顧客が本当に求める機能や改善点を素早く特定し、製品やサービスの価値を継続的に高めていくことが可能です。また、投資対効果を早期に検証できるため、経営資源を効率的に配分することができます。

組織の変革を段階的に進められる

DXは単なるシステム導入だけではなく、組織全体の変革も必要とします。アジャイルで小規模に開発したプロダクトをいち早く展開し、段階的に運用と機能改善を行うことで組織へ定着させることができます。また、短期間での成功体験を積み重ねることで、組織全体のデジタル変革に対する理解と受容を促進することができます。これは特に従来型の業務プロセスが根付いている企業にとっても重要なメリットとなります。

デジタル技術の進化に柔軟に対応できる

AIやクラウドなどを始めとしたデジタル技術は日々進化しており、DXを推進する企業はこれらの新技術を素早く効果的に取り入れる必要があります。アジャイル開発の反復的なアプローチは、新技術の導入や検証を小規模に始め、効果が確認できた場合に段階的に拡大していくことを可能にします。

これにより、技術選定のリスクを最小限に抑えながら、最新のデジタル技術を活用したイノベーションを実現することができます。

DX推進においてアジャイル開発を活用した成功事例

以下では、当社が実際に担当したプロジェクトのうち、アジャイル開発を活用してDXを推進した事例をご紹介します。

東京都デジタルサービス局 | アジャイル型方式によるプロトタイプ開発委託

東京都は2021年にデジタルサービス局を設置し、行政のデジタル化を推進しています。当社は、同局が企画する4件のアジャイル型プロジェクトを受託しました。

これまで都庁ではウォーターフォール型開発を中心にプロジェクトを進められてきました。そこで、プロジェクトの成功には職員の皆様にアジャイルマインドを理解していただくことが重要と考え、ワークショップを実施しアジャイル開発の流れをイメージしてもらいつつ、職員の皆様と当社が「ワンチーム」となり一体感を持てるようにしました。

その後、4つのアジャイル型プロジェクトを推進し、成功させることができました。

プロジェクトの成功要因は、デジタルサービス局の「強い思い」と「自由度の高い組織体制」に、当社の「アジャイル開発スキル」がうまく組み合わさったことです。大規模な組織でも、アジャイルマインドを持つことでプロジェクトを成功させることができた事例です。

東京都がアジャイル型開発に取り組む意義から、具体的な開発の進め方まで、より汎用的に活用できるプレイブックの制作にも携わっています。制作したプレイブックは、都政の構造改革ポータルサイト「#シン・トセイ」より詳細にご覧いただけます。
※外部サイトに遷移します。

東京都デジタルサービス局 | アジャイル型方式によるプロトタイプ開発委託

株式会社トムス・エンタテインメント | アニメーションの制作管理システム「ProGrace」の開発

株式会社トムス・エンタテインメント様は、主に社内で活用するアニメーションの制作管理システム「ProGrace」を開発。当社は、ProGraceの開発をアジャイル開発で支援しています。
ProGrace は、これまでスタジオや制作進行担当者ごとに独自にエクセル管理していたカット表等の進行管理のための各表を統一し、制作管理業務の効率化、ひいては DX を目指すプロダクトです。

システムの仕様をきっちり決めてスタートするよりも、現場の意見を汲み取り、柔軟に改善を繰り返していくことを重視し、本プロジェクトではアジャイル開発手法を採用しました。実際にシステムを利用する制作進行担当者と密に連携し、UI/UXにもこだわっています。デモやレビューを重ねることで、現場のニーズに合致した直感的で使いやすいインターフェースを実現しました。

トムス・エンタテインメントが進めるアニメーション制作DX|単なる「受発注システム」ではないProGraceが目指すもの

株式会社トムス・エンタテインメント | アニメーションの制作管理システム「ProGrace」の開発

株式会社ネクスウェイ | 薬局向けDI (薬剤情報) ポータルサービス「アスヤク薬局ポータル」の開発

株式会社ネクスウェイ様では、これまでメールや郵送、FAXなどさまざまな方法で公開されていた薬剤情報(DI)を一本化して閲覧・管理できるサービス「アスヤク薬局ポータル」をアジャイル開発で支援しています。

DXの過渡期対応として、性急なデジタル化ではなく郵送などアナログとの共存が必要なプロジェクトでした。そのため、アスヤク薬局ポータルではWeb 上での閲覧やメール配信に加え、DIの郵送にも対応。印刷および郵送を行う外部サービスと連携し、薬局の希望に応じてメール配信と郵送を切り替えることができます。メール配信の場合には到達や開封、クリックの計測、郵送の場合には配送、不達の計測を行う機能も設けています。

株式会社ネクスウェイ | 薬局向けDI (薬剤情報) ポータルサービス「アスヤク薬局ポータル」の開発

まとめ

この記事では、DXの推進におけるアジャイル開発の有効性やこれからのDX推進に必要な理由についてご紹介しました。

市場のニーズや技術革新が絶え間なく起こっている現代で、不確実な取り組みとなりがちであるDXと、柔軟性に優れたアジャイル開発の相性はよく、これからのDX推進においてアジャイル開発の活用は必須ともいえるでしょう。一方で、これまでアジャイル型で開発プロジェクトを実施されてこなかった企業においては「どのようにアジャイル開発を進めればよいか分からない」「アジャイル開発のノウハウがない」という悩みも抱えられているのではないでしょうか。

当社では、これまで多数のアジャイル開発プロジェクトを通して、さまざまなDXプロジェクトを推進してまいりました。アジャイルの実践指導経験を持つ企業とパートナーシップも組んでおりますので、アジャイル型開発の内製化支援も対応可能です。記事中でご紹介した開発事例以外にも、多数の実績がございます。

アジャイル開発によるDX推進について悩まれている方は、ぜひお気軽にお声掛けください。

記事の監修者


プロフィール
CO-FOUNDER /執行役員CTO
泰昌平

工学院大学 情報学部卒業。CakePHP, WordPress, Drupal, React, Rails, GCP, WSO, Shopify, SEO。フルスタックエンジニア。SaaSのIntegration設計やWeb高速化、AWSやLaravelによる開発を得意とする。技術戦略や品質向上の取り組み、エンジニアチームビルディングを担当。2023年よりChatGPT事業の立ち上げ、社内研究を推進する。

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