HubSpot は CRM を軸として、MA・SFA 等ビジネスを効率よく管理する機能が備わったオールインワンツールです。
Sales・Marketing といったビジネス領域ごとのツールごとに、有料のプランのグレードがあり、本格的な利用は課金して使うことが多いツールですが、無料プランもあり費用負担なしで使用することが可能です。そのため、「無料でどこまでできるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、CRMツールとして HubSpot の導入を検討されている方に向けて、HubSpot の無料プランではどんなことができるのかを解説していきます。
※本記事の内容は2023年6月時点の内容です。閲覧いただくタイミングによっては最新の情報でない場合がございますのでご注意ください。最新の情報は HubSpot 公式サイトをご確認ください。
Contents
HubSpotの製品の種類
まずは簡単に HubSpot の製品の種類を紹介します。
Marketing Hub
Marketing Hub は、メール・SNS・SEO の最適化・コンテンツ管理・分析などのマーケティング業務を最適化したり効率化したりする機能が備わっています。
顧客獲得、リード管理を最適化することででマーケティング活動を効率化させます。
Marketing Hub について詳しくは以下の記事も参考にしてください。
参考記事:HubSpot Marketing Hubとは?MA(マーケティングオートメーション)機能や活用イメージについて解説
Sales Hub
Sales Hub は、営業管理のツールで、一般的には SFA と呼ばれる領域です。営業情報をデータ化し、収集・分析することができます。
営業活動を推進するために、見込み客を追跡し (電子メールの追跡とアラート)、商談やフォローアップのタスクを管理したり、営業プロセスの進捗状況をモニタリングしたり、管理したりすることで営業の生産性や効率性を向上し製品やサービスの受注に繋げます。
Service Hub
Service Hub は、顧客のお問い合わせを追跡・管理するためのツールです。カスタマーサポートに必要な機能が備わっています。
課題(≒問い合わせ)のチケット管理、FAQ 記事集の作成(ナレッジベース)、ライブチャット、チャットボット、そして顧客満足度の測定などの機能により顧客の問題をトラックし顧客の課題を解決することで企業の製品・サービスのユーザーに対して、付加価値を与えます。
CMS Hub
CMS Hub は、その名の通り CMS の機能で、ウェブサイト制作などが行えるツールです。
CMS といえば WordPress などが有名ですが、CMS Hub も Webサイト制作を効率よく進行するための機能が揃っている製品です。
機能としてはコンテンツの作成・管理機能の他、SEO支援ツールなどがあります。SaaS ツールですのでセキュリティ対策などは個別に行わずとも HubSpot が高いレベルで対策してくれているのも嬉しいところでしょう。
また、他の HubSpot 製品と統合されているため、マーケティング、セールス、カスタマーサポートなど他製品との連携が容易な点もメリットです。
Operations Hub
Operations Hub は、HubSpot の各サービスにおいて発生するデータの管理や連携の自動化を促進するツールです。
ある程度の自動化は各製品内でも可能ですが、HubSpot 以外のツールやシステムとの連携を伴うような高度な自動化などは本製品を使わなくては実現できない場合も多いです。
各製品の有料プランでできることに関しては以下の記事にも詳しく書いておりますのでよろしければご参照ください。
参考記事:HubSpotプランの違いとは?料金や特徴比較で簡単にわかる最適なプランの選び方
無料プランでできること
ここでは上記で紹介した HubSpot の各製品を含む無料プランでできることを解説します。
ちなみに、有料プランは Marketing・Sales などを個別に契約して利用することもできますが、無料プランは 1 プランのみですべての領域に対応しています。
この章では便宜上、有料だったら Marketing、Sales、Service などのうちどの製品の領域に属するかに分けて説明していきます。
無料で使えるMarketing領域の機能
無料プランで使えるマーケティング領域の機能について紹介します。
広告の管理
HubSpot の無料プランの広告管理には、Facebook、Google、LinkedIn の広告管理機能が含まれています。
各広告アカウントと連携することで HubSpot上のレポートとして広告のパフォーマンスが可視化できます。
Eメールマーケティング
ドラッグ&ドロップで使えるEメールエディターでメールを作成できます。
テキストベースのメールも作れますし、画像の挿入なども比較的柔軟にでき、簡単に Eメールを作成できます。また、パーソナライゼーション機能を使えば、受信者の個人情報を利用して Eメールを個人に合わせてカスタマイズできます。メールの送信対象はリスト管理機能でセグメント可能です。
他にも、A/Bテスト機能を使うことで、異なるバージョンの Eメールを作成し、どちらがより効果的かをテストしたり、ワークフロー機能を使えば、作成したメールを特定の条件で自動配信するなど MA の機能も使えます。(※注意:A/Bテスト・自動ワークフローは 14 日間のトライアル期間のみ無料です)
送信したメールはレポート機能で開封率やクリック率などの成果測定も簡単に行うことができます。
ランディングページの作成・管理
広告などのランディングページを作成する機能が使用できます。
メールと同様にドラッグドロップでページの作成ができます。簡単なページであればプログラミングのスキルは不要です。
PC・モバイルやタブレットなどそれぞれのデバイスのタイプに応じた設定ができるので、レスポンシブ対応も安心です。また、パーソナライゼーション機能を使えば、HubSpot に記録する顧客情報を利用して、個人に合わせたコンテンツのカスタマイズもできます。
無料プランでもフォーム作成機能が使えますので、作成したランディングページにフォームを埋め込んで、送信情報を HubSpot に収集していくことも可能です。
公開したランディングページは、管理画面から簡単な効果測定もできます。
メールと同様に 14 日間のトライアル期間のみですが、A/Bテスト機能を使うことも可能です。
異なるバージョンのランディングページを作成し、どちらがより効果的かをテストできます。
フォームの作成・管理
スタンドアロンフォーム、ポップアップフォーム、埋め込みフォームなどの6つのフォームからタイプを選択でき、登録、問い合わせ、サポートなど用途に合わせた 6 つのテンプレートでお問い合わせフォームや資料請求フォームなど、さまざまなフォームを作成することができます。また、ボタンの色や文字のサイズ・色などフォームのデザインもカスタマイズ可能です。
作成したフォームの送信データは、HubSpot の CRM に自動的に蓄積されます。
注意:HTMLフォーム設定は 14 日間のトライアルのみとなっています。
無料で使えるSales領域の機能
コンタクト管理(見込み客の管理およびウェブチャット)
コンタクト(Hubspot では顧客情報のことをコンタクトと呼びます)の活動履歴を追跡することができます。
たとえば、コンタクトがメールを開封したか、フォームを送信したか、ウェブサイトを訪問したかなどを確認することができます。
タスクの割り当て機能では、コンタクトに対してのタスクを HubSpot のユーザーに割り当てることができます。
たとえば、〇〇様に電話をかけるタスクは Aさんに、△△様にメールを送信するタスクは Bさんが、などのようにタスクを割り当てることができます。
商談ミーティングの設定や見積作成
予約可能な時間の確認やミーティングの予約ができるリンクを作成する機能です。
Googleカレンダーなどのカレンダーアプリケーションと HubSpot を連携し、コンタクトとリンクを共有することで、自分が空いている時間帯を選んで顧客がミーティングを予約することができるようになります。
また、HubSpot 内で見積書を作成して共有できます。見積もりテンプレートが basic、modern、original の 3 種類から作成できます。
取引パイプライン
営業案件の進捗状況をステージごとに管理することができます。
見込客からの問い合わせや商談の開始を最初のステージとして設定し、ヒアリングや提案、見積もり提出や契約締結などのステージを追加することができます。また、各ステージにある案件対してタスクや担当者を割り当てることもできます。これにより、担当者がタスクを把握しやすくなり、案件ごとの営業の進捗をスムーズに管理することができます。
セールスレポート
複数ある案件全体の進捗状況をレポートとして作成することもできます。
たとえば、先月作成された案件の数や、クローズした案件の合計金額などをレポートとして可視化することができます。
とくにマネジメントの役割を担う方にとっては、取引の進捗状況を把握しやすくなり、戦略的な意思決定がしやすくなるでしょう。
無料で使えるService領域の機能
続いては、無料プランから使える Service 領域の機能を紹介します。
チケット管理
顧客からの問い合わせやサポート依頼を受けた際に、チケットを作成することができます。
チケットには、問題の内容や優先度などを記載し、担当者の割り当てや、対応ステータス(対応中・顧客の返答待ちなど)を管理することもできます。
チケットに対しては複数のメンバーがコメントを追加することができ、チケットの詳細状況や対応方針についてのメモやアドバイスを記載しておくこともできます。
Sales で記載した商談状況のレポート同様に、チケットの対応状況の全体像を把握するレポートを作成することも可能です。
ウェブチャット
Marketing の領域で紹介したフォームと前述のチケット管理機能があればカスタマーサポートは可能ですが、よりリアルタイムに顧客をサポートしたいといった場合はウェブチャットの機能も使えます。
サイトに訪問した人の要請に応じてリアルタイムのウェブチャットが可能です。必要に応じてチャットを他の担当者に転送することもできます。
有料プランには自動応答の機能であるチャットボット機能もあります。ただし、こちらは 14 日間のトライアル期間のみ無料です。
メール送受信(個別送信・アドレス共有)
HubSpot の個別のコンタクト画面やチケット画面から顧客に Eメールを送信できます。
また、チーム全体で使うサポート用の Eメールアドレスを共有の受信トレイに接続できます。
設定した共有アドレス宛の顧客からのメールは、共有受信トレイでチームメンバーそれぞれが閲覧することが可能です。顧客からの質問の取りこぼし防止につながります。
無料で使えるCMS領域の機能
Webサイトを制作する CMS の機能も無料で使えます。
webサイト作成・編集
エディターを使用してレスポンシブデザインの Webサイトページを作成できます。
ページエディターは、メールやランディングページでご紹介したのと同様に、ドラッグアンドドロップでコンテンツを追加したり、テキストや画像を編集することで作成が可能です。
また、ブログ機能があり、簡単にブログの作成も可能です。カテゴリーやタグ設定もできます。サイトのトラフィックやコンバージョン率などのデータを追跡するためのレポート機能も活用できます。
ただし、作成したページには HubSpot のロゴが入ります。(有料版で削除できます)
多言語コンテンツの作成
英語、日本語、スペイン語など、HubSpot がサポートしている言語から 3つまで必要な言語を選択してページを作成することができます。
無料で使えるOperations領域の機能
Operations 領域の機能はあまり無料で使える機能は多くありませんが一部の機能は利用可能です。
アプリを活用したデータ連携
HubSpotアプリを使用することで、データの同期ができます。
異なるプラットフォームやアプリケーション間でデータを同期ができます。たとえば、名刺管理システムの Sansan と連携ができるアプリなどがあります。これにより、Sansan のデータを HubSpot で使用することができ、データの重複や不整合を防ぐことが可能です。
無料プランでできないこと(制限)
当社が HubSpot の導入・運用支援をする際にも、無料からはじめればいいのでは?と考えられるお客さまも一定数いらっしゃいます。もちろん、不要なコストをかける必要はないと思いますので、「まずは無料でできることから」という考え方は正しいと考えます。
一方で、使ってはみたが無料だとやはり限界がある…というご意見も多数聞きました。
そこで、この章では、当社がよく耳にする無料プランではできず困ったこと、有料にしようと思ったきっかけにあたる機能として多く話題に登っていた機能について紹介していきます。
Marketing領域でできないこと
広告の管理
コンタクトリストオーディエンス(HubSpot の顧客情報をもとに広告のターゲティングに活用できる機能)、LinkedIn 会社リストオーディエンス、類似のオーディエンスは使用できません。
広告の高度な運用をしており、そこに HubSpot の持つ情報を活用したい場合は注意が必要でしょう。
Eメールマーケティング
基本的な制限として、1 ヶ月あたり 2,001 件以上のメール送信には課金の必要があります。
また、ワークフロー(自動化機能)を使うには有料プランにアップグレードが必要です。MA(Marketing Automation)ツールとしての機能は無料プランではほとんど使えないことになります。
さらに、無料版のメールには、HubSpot のロゴが入りますので、表示したくない場合はプランのアップグレードの必要があります。
他にも、A/Bテストが使用可能なのはトライアル(14日間)のみのため、それ以降も使用したい場合もアップグレードが必要です。
ランディングページ作成・管理
基本的な制限として、21 件以上のランディングページをつくるには課金が必要です。
また、使えるテンプレートのバリエーション、多言語バリエーションなどに制限があります。メール同様に、HubSpot のロゴ非表示対応もアップグレードの必要があります。
フォーム作成・管理
メールやランディングページ同様に、HubSpot ロゴ非表示対応はアップグレードの必要があります。
Sales領域でできないこと
プレイブック機能
チームでセールス用のマニュアルや資料のメンバー間共有ができるプレイブック機能は HubSpot でも人気の機能ですが、使うにはアップグレードの必要があります。
商談ミーティングの設定上限
無料プランでは最大 1 件の個人用ミーティングリンクは利用可能ですが、それ以上はアップグレードの必要があります。
また、ミーティング予約画面から HubSpot のロゴを非表示にしたい場合、プランのアップグレードが必要です。
取引パイプライン
無料プランでは、アカウントあたり 1 件の取引パイプラインが利用可能です。
有料プランであれば、複数のパイプラインの追加が可能になります。
サービスや製品、部署ごとに管理するパイプラインを変えたい場合などのご要望には有料プランの検討をおすすめすることが多いです。
Service領域でできないこと
チケット管理
チケットを管理するパイプラインを複数利用したい場合にはアップグレードが必要です。
また、ワークフロー機能で通知や回答をある程度自動化したい場合なども有料プランの契約が必要となるケースが多いです。
小規模なカスタマーサポートであれば不要かもしれませんが、頻繁に顧客からの問い合わせがくるようなサービスの場合は業務の効率化の観点からある程度の自動化や情報の整理・管理のしやすさが求められるはずです。
そのような場合には有料プランをおすすめしています。
チャットボット
顧客の問い合わせを自動回答させるチャットボットの十分な利用には有料プランが必要です。(一部は無料でも可)
顧客の選択肢に応じて次の回答を変更していく条件分岐ロジックを使用したいという声はよく聞きますが、こちらは Professionalプラン以上の契約が必要となります。
メール送受信(個別送信・アドレス共有)
無料版では HubSpot ロゴが表示されます。削除には有料版にアップグレードが必要です。
CMS領域でできないこと
webサイト作成・編集
無料プラン登録時点では最大で 25 件ページまで作成ができますが、それ以上のページ作成が必要な場合はアップグレードの必要があります。
また、動的コンテンツ(イベントカレンダー、製品カタログ、従業員リスト、リソースライブラリー)も同様に無料プランでは利用ができません。
Operations領域でできないこと
高度な自動化や外部システムとのカスタマイズ連携
HubSpot では webhook 等を利用したリアルタイム情報取得のワークフローの構築が可能です。
アプリを活用することで、外部ツールとの連携ができる HubSpot ですが、アプリが用意されていないツールとの連携や、アプリの仕様の範囲外の情報を取得、送信したりする場合にはカスタマイズが必要になるケースがあります。
その際に、OperationsHub を利用することが多いのですが、無料プランではほとんどその機能を使うことができません。
まとめ:無料プランでできることと限界を知っておこう
この記事では HubSpot の無料プランでできることを紹介してきました。
いろいろと説明してきましたが、「無料ではなく有料にしよう」となるケースで最も多いと感じるのが「ロゴの削除」です。
サービスや企業のブランディングにも関連するため「HubSpot ロゴがついている = HubSpot の無料版を使っている」ということが明確になってしまうのは避けたいという方が多くいらっしゃいました。
それ以外の機能に関しても、無料プランはあくまで HubSpot の体験版のような位置づけですので、ビジネスで本格的な利用を想定したプランではないことを理解しておいた方がよいでしょう。
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