PoC(Proof of Concept:概念実証)としてアイデアを検証する取り組みは、多くの企業において定着化しつつあるのではないでしょうか。一方で、PoC をともに実施する会社をどのように選ぶべきか、悩まれている方もいらっしゃると思います。
そこでこの記事では、PoC の依頼先を検討されている方に向けて、会社選びのポイントや事前にやるべきことについてご紹介します。
当社では、経験豊富なエンジニアとデザイナーがワンチームとなってサービス企画のアイデア出しからプロトタイプ開発、検証後の本開発までを一気通貫でご支援しております。
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Contents
PoCの概要
まず、PoC とは具体的にどのようなものなのか、改めて整理します。
PoCとは
PoC とはビジネスアイデアなどの実証を目的とした、試作開発や検証のことを指します。アイデアを具体化するためには一定の投資が必要となるため、できる限り失敗は避けなければなりません。そこで、PoC により想定している仮説の正しさや、技術的な実現可否を検証します。これにより、アイデアの妥当性を低リスク・低コストで確認できます。
PoC の詳細については、こちらの記事もご覧ください。
PoCの種類
PoCには大きく分けて2つの種類が存在します。
①既存のサービスの課題を改善するためのPoC
ひとつは、既存サービスの課題を改善するための PoC です。たとえば「ユーザビリティを向上させる」ことを目的として PoC を実施するようなケースがこれに該当します。
この場合、まずヒアリングなどにより現状のサービス課題を分析し、その結果に基づき本番に近い形でプロトタイプを構築します。プロトタイプを評価することで、想定している方針で課題の改善ができるかを検証できます。
②0→1でサービスを開発するにあたり、アイデアを検証するためのPoC
もうひとつは、新サービスの開発を行うケースです。PoC により正式な事業化判断の前に市場ニーズや技術的な実現性を測ることで、事前にサービスの成否やリスクを予測できます。
このケースでは、事業化の成否やリスク測定がPoCの目的となります。よって、具体的な機能要件まで踏み込まない形でプロトタイプを構築することも多いです。
PoCの費用
サービス内容や開発期間にもよりますが、一般的にPoCの予算相場は数百万円程度となります。すでに構築しているものをカスタマイズして開発する場合は、費用が安くなる場合もありますし、0から開発を行う場合は、これより高くなる場合もあります。
一般的なPoC費用についてはこちらの記事もご覧ください。
PoC費用の変動要素となるポイントは以下の2つです。
成果物の種類
ひとつは成果物の種類です。ペーパーレベルで成果物を作る方法、デザインツールを利用して動作するプロトタイプを作る方法、システムとしてプロトタイプを実装する方法など、プロトタイプにはいくつかの種類があります。
PoC の目的によってどのレベルまでの成果物を作るべきかは異なります。たとえば、手戻りを避けるためにもアイデアの初期検証段階ではペーパープロトタイプを、アイデアが固まってきたらサービスの機能やニーズの検証としてデザインツールを用いてプロトタイプを制作。リアルな挙動や動作により実現可能性を図る必要性がある場合はシステムで実装するプロトタイプを選択するなど、目的から落とし込んで適切な成果物を決定していきます。
成果物のスコープ
もうひとつは成果物のスコープです。当然ながら、多くの機能を対象とした PoC を行う場合は費用が上がります。
また、検証規模も費用の変動要素です。インタビューの対象者を増やして多くの情報を収集したり、検証回数を増やしたりすると、その分費用がかかります。
PoC実施を外部に依頼すべきケースとは
PoC の実施に当たり、外部リソースを活用するか社内で対応すべきか悩まれる方は多いのではないでしょうか。ここでは、外部リソースへの依頼可否を判断する観点をご紹介します。
本当にPoCを外部に依頼すべき?
PoC は自社で行うことも可能です。たとえば、業務フローを再検討したうえで、実際に業務に適用してみて検証を行うような PoC であれば、自社のみで十分実施できます。
このように、自社リソースだけで PoC のサイクルを回せる場合は、必ずしも他社リソースを利用する必要はありません。
外部に依頼すべきケース
一方で、PoC の対象がシステムやアプリである場合は、外部リソースの活用も検討すべきです。特に、自社にエンジニアやデザイナーがいない場合は、プロトタイプ制作フェーズでは専門知識のあるプロに作ってもらった方がベターです。
また、第三者視点で課題の発見をしたい場合、外部の視点を入れるという選択肢もあります。新規サービス開発など、0→1 で検証する際などは、多様な視点を取り入れることが重要です。
その他、以下のようなケースに当てはまる場合は、社外への依頼を検討すべきといえるでしょう。
- アイデアはあるがシステム実装も含めて詳細化の方法が整理できていない
- 投資判断がつきにくく、外部の意見を入れたい
- システムの機能追加が適切か分からない
- 機能を追加した際にうまくユーザーが利用できるか不安がある
会社選びの前に整理すべきポイント
PoC の成否は会社選びの時点でほぼ決まるといっても過言ではありません。「とりあえず会社を選ぶ」というスタンスは非常に危険です。
まずは、自社でプロジェクトに関する理解度を上げ、会社に求める要件を洗い出すべきです。具体的には以下を整理します。
課題の整理
課題の整理は最初に着手すべきポイントです。通常、PoCの目的や目標は課題から導かれます。担当者の意見はもちろん、なるべく多くのステークホルダーにヒアリングすることで多角的に情報を集めることができます。
洗い出した課題から、重要度・緊急度などの観点で優先度を定め、どの課題が最も解決すべきものかを整理します。
目的・目標の決定
課題を踏まえ、PoC の目的や目標を定義します。たとえば、PoCの目的がビジネスコンセプトの定義か、実装を通したサービスのニーズ検証なのかで PoC の方向性は大きく異なります。目的や目標はプロジェクトの大方針となるので、社内で十分に議論したうえで決定すべきポイントです。
期限・予算の整理
これらの目標を達成するため、いつまでにどれくらいのコストをかけられるか、期限や予算を決定します。これらは会社の選定にあたって候補先の各社から必ず聞かれるポイントです。また、期限・予算により検証できる範囲も変わります。
本番開発を見通した会社選定
PoC に成功した場合、PoC を実施した会社にそのまま本番開発も依頼することで、コスト削減やスピード感を持った対応ができます。よって、PoC の依頼を行う際には本番開発の可否まで見通したうえで依頼すべきです。本番開発を実施するためには、十分なエンジニアが在籍していることや開発経験の豊富さなどが選定条件となります。
加えて、PoCフェーズからエンジニアが参加することで、実現可能性を考慮したプロトタイプの制作や検証が可能です。これにより、その後の円滑な開発につなげやすくなります。
役割分担の明確化
役割分担の整理は、PoC に限らず外部リソースを利用する際の必須事項です。役割分担により、PoC 実施にかかる費用や体制が変わってきます。
たとえば、自社にエンジニアが在籍しているものの、デザイナーはいない場合、デザイナーリソースのみ外部に委託することも検討できます。この場合、エンジニアリソース分の外部委託費用が削減できますが、社内でアサインすべきメンバー調整など体制の構築も必要です。
PoC実施を依頼する会社を選ぶポイント
次に、自社にマッチしたパートナー企業の選定に必要なポイントを紹介します。
料金・期間
想定する予算内に収まるかは選定の大きな軸となります。委託先候補に対する最初のヒアリングで予算感を相談してみることをおすすめします。
また、事前に想定していた実施期間についても、現実的なものであるか委託先候補に確認してみるとよいでしょう。特に、システムの実装には想定していたよりも長い期間が必要となるケースもあります。
実績と業界・業務知識
実績は各社の力量を測る大きなポイントとなります。特に、自社と同じ業界や類似するサービスに関する実績の有無が重要です。委託先に事業やサービスへの理解があれば、プロジェクトはスムーズに進みやすくなります。
PoC は単にモノづくりを行うのではなく、ビジネスの成長や成功を目的として行われるものです。ビジネスに資するPoCを実現するためには、業界やサービス、ターゲットなどの理解度が重要となるでしょう。
対応可能範囲
各社がどこまでの作業範囲に対応できるかも確認すべきポイントです。たとえば、デザイナーは一般的にデザインツールを用いて動作するプロトタイプの作成は可能ですが、実際にシステムとして動作する実装済みのプロトタイプの制作は難しくなります。実際の動きをプロトタイプで検証したい場合や、その後の実装までサポートしてほしい場合には、エンジニアリング力を持った会社を選ぶべきでしょう。
弊社では、PoC の目的に応じてデザイナー・エンジニア・マーケターなどからチームを構成します。これにより、たとえば figma などのデザインツールベースでプロトタイプを作成しつつ、動作を確認したい箇所については一部 html や CSS を使用して実装するような対応も可能です。
また、各社のスキルがプロジェクト目的に合っているかも確認します。たとえばユーザーニーズの把握が重要となるプロジェクトの場合、UX知見を活かしたユーザーインタビュー、ユーザビリティテストなどの経験がある会社を選定します。
弊社の実績
以下では、PoCプロジェクトのイメージをお伝えするために、弊社の事例を2つご紹介します。
本田技研工業株式会社様の事例
まず紹介するのは、本田技研工業株式会社様の事例です。当社では、同社の新規事業の構想段階における市場ニーズの把握を目的とした PoCプロジェクトを支援しました。本事例では、プロトタイプ開発とリサーチまでトータル2ヵ月で進行。ユーザーの導線まで作りこんだプロトタイプにより、想定ターゲットから具体的なフィードバックを収集するなど、検証精度の向上に寄与する取り組みを行いました。
本事例の詳細については以下をご覧ください。
株式会社NTTデータ関西様の事例
もうひとつ紹介するのは、株式会社NTTデータ関西様の事例です。同社では、マイナンバーカードの交付予約・管理サービスである「e-TUMO MYNUM」を展開されていますが、本サービスは比較的古くに開発されたものであることから、UI/UX 面に課題がありました。
そこで当社では、UI/UX改善策の提案とプロトタイプの構築を実施。同社内での評価会などを通してプロトタイプを紹介し UI/UX改善の価値を伝えるなど課題解決に向けたアクションを実践しました。
本事例の詳細については以下をご覧ください。
事例:株式会社NTTデータ関西| 個人番号カード 交付予約・管理サービス「e-TUMO MYNUM」のUI・UX改善
自社での対応が難しければPoCのプロから支援を受ける検討を
この記事では、PoC の依頼前の整理事項や、依頼先となる会社選びのポイントなどについてご紹介しました。
スパイスファクトリーでは、PoC から本開発までの一気通貫支援や、最短2か月での PoC 実施が可能です。弊社の詳しいサービス内容はをご覧ください。
PoCやシステム開発、新規ソフトウェアの開発についてお悩みがありましたら、ぜひください。
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