スパイスファクトリー株式会社マーケターの大嶋です。
こちらの記事では、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは何か、なぜ企業がSXに取り組む必要があるのかについてお伝えいたします。また、スパイスファクトリーではシステムの開発、カスタマイズから運用保守まで一貫したサポートを行っています。ご興味がおありでしたら、ください。また、弊社のもご覧ください。
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SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、「企業のサステナビリティ(企業の稼ぐ力の持続性)」と「社会のサステナビリティ(将来的な社会の姿)」の両立を踏まえた経営の在り方や対話の在り方を変革するための戦略指針のことです。
2020年8月、経産省を主体とした「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」の中で「SX」が提示されており、企業・投資家による議論や具体的な問題解決の方向性について示されています。
画像引用元:経済産業省. “サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会中間取りまとめ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~”
なぜ企業はSXに取り組む必要があるのか
企業が今、SXに取り組むべき理由とは。結論から申し上げますと、企業の長期的な利益獲得のためにはSXへの取り組みが不可欠になっているからです。
PwCグループの坂野氏・磯貝氏は著書「SXの時代」において、長期的に利益を出し続けるためには以下3点が必要だと述べています。
①その企業が長期にわたって市場から求められ続けること
②供給(原材料、知財、人材など)を長期的に維持すること
③社会からも信頼され続けること
市場があっても供給体制や社会的信頼なしでは事業を継続することは不可能です。
また、2020年10月に菅義偉首相(当時)が「2050年に二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」目標を宣言するなど国全体でサステナブルな方向を目指す動きがとられており、今後も勢いづくことが予想されます。
新たに注目されるであろうサステナブル市場を見据え、供給体制を担保し、社会からの信頼を獲得し続けることが、長期的な事業存続につながるのです。
SXの背景にある市況
前項では企業がSXに取り組まなければならない理由についてご説明しました。
ここでは、なぜいまSXの重要度が増しているのか、その背後にある2つの市況についてお話しします。
ひとつが「世界における不確実性の高まり」、ふたつめが「企業の社会活動に対する興味関心の向上」です。
世界における不確実性の高まり
近年では新型コロナウイルスが全世界で猛威を振い、多岐の業界にわたり影響が及んでいます。
特に飲食やホテル・旅行等、オリンピックにより産業市場とされていた業界では状況が一変しました。帝国データバンクが発表した「倒産集計」によると、2020年の宿泊業倒産数は前年比76.4%の127 件、飲食店では780件と過去最多の数値となっています。
画像引用元:帝国データバンク. “全国企業倒産集計2020 年報”
新型コロナウイルス以外にも、自然災害や国境問題等の社会問題とビジネス運営は表裏一体の関係にあります。以下の具体例はそれらの関係性の強さを示しています。
- 第4次産業革命やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展による産業構造の変容
- 災害や気候変動、パンデミックによる経済リスクの拡大
- 米中対立構造によりグローバル経済に対しての先行きが不透明となり、リーンなグローバルサプライチェーンの脆弱性が露呈
中長期的な企業価値創造をし企業が生き残っていくためには、このような世界の不確実性を踏まえ自分たちの所属する企業のみならず、社会全体にコミットした戦略が必要なのです。
企業の社会活動に対する興味関心の向上
ふたつ目は、「企業の社会活動に対する興味関心の向上」です。
企業のサステナビリティ(持続可能性)やレジリエンス(強靭性)への要請が高まると、併せて企業による社会貢献活動が求めれらるようになりました。以下の動きは、企業の社会貢献活動に対する興味関心の向上と関係しています。
- ESG投資・サステナブル投資の拡大
- ミレ二アル世代・Z世代の台頭による消費者の意識・行動変容
資本市場において、ESG投資(持続可能な事業への投資)はリーマンショック以降に「短期的な利益獲得」の対極として重要視されてきましたが、この度の新型コロナウイルスによるパンデミックにより、ESG投資ならびにサステナブル投資はさらに注目を増しています。
また、社会全体を見てもミレ二アル世代・Z世代へと世代が移ってきていることで、消費者の行動変容に伴いマーケットの変化が現れています。
1981年~1996年に産まれたミレニアル世代は社会貢献への関心度が高いと言われていますが、2017年にデロイトが世界30ヵ国、約8,000人のミレニアル世代を対象として行った「第6回ミレニアル年次調査」では以下のように記載があります。
ほぼ10人に9人(87%)は「企業の成功は財務実績だけでなく、それ以外のものを基準に測定されるべきである」と考えている。これは広く支持されている考え方であり、企業の成功を純粋に財務実績だけで測定すべきだとするミレニアル世代が5分の1を超えるのは、ドイツ(22%)と韓国(30%)だけである。
以上のように、企業の社会貢献活動に対する興味関心の向上は、資本市場や社会全体の市況と大きく関係しています。
SXに必要な3つのポイント
SXの軸となるポイントは「中長期的な時間軸における企業価値の向上」です。
具体的な項目として、「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」では以下の3点が挙げられています。
① 企業の稼ぐ力を強化し、企業のサステナビリティを高める
企業として稼ぐ力(強み・競争優位性・ビジネスモデル)を中長期で持続化・強化する、事業ポートフォリオ・マネジメントやイノベーション等に対する種植え等の取組を通じて、企業のサステナビリティを高めていくこと②社会のサステナビリティを経営に反映させる
不確実性に備え、社会のサステナビリティをバックキャストして、企業としての稼ぐ力の持続性・成長性に対する中長期的な「リスク」と「オポチュニティ」双方を把握し、それを具体的な経営に反映させていくこと③ 企業経営のレジリエンスを高める
不確実性が高まる中で企業のサステナビリティを高めていくために、将来に対してシナリオ変更がありうることを念頭に置き、企業と投資家が、①②の観点を踏まえた対話やエンゲージメントを何度も繰り返すことにより、企業の中長期的な価値創造ストーリーを磨き上げ、企業経営のレジリエンスを高めていくこと
これまでの企業の経営同様利益を重視しつつも、気候変動や資源枯渇で事業が続けられなくなってしまうというような状況に将来ならないように社会や環境への対策や対応を経営戦略に盛り込んでく必要があるということですね。
具体的なSXの取り組み
最後に、具体的なSXの事例を2つご紹介いたします。
他の記事でも事例を紹介していますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
【2021年】SX(サステナブル・トランスフォーメーション)の最新事例を紹介!
【事例をご紹介】SX推進企業が行っている、SDGsの取り組みとは
①古いiPhoneから新しいiPhoneに「Apple to Apple」
Appleは、2021年の株主総会で「将来、すべての製品と容器包装に100%再生可能なリサイクル材を使用する」ことを発表しました。
また、同社はすでに企業運営においてカーボンニュートラルを達成していますが、2020年には「販売されるすべてのAppleのデバイスについても、2030年までに気候への影響をネットゼロにすること」を宣言しています。
「すべての製品と容器包装に100%再生可能なリサイクル材を使用する」とは、シンプルにリサイクルするということではなく古いAppleから新しいAppleを製造するという、いわゆる「Apple to Apple」を目指すということです。
Appleは、事業存続に必要な資源の限界が来ていることを把握しています。さらに、迫りくるリスクを逆手に取り、他社に差をつける圧倒的な競争力を強化させました。
よって、単に気候変動に対してのみ策を打っているのではなく、事業存続のためにSXが必要だと認識しているのです。
②ビジネスの力で気候変動を逆転させる「Allbirds」
天然のウール素材でスニーカーを製造する「Allbirds」では、自然由来の資源を利用したものづくりを通してサステナブルな未来へ貢献する姿勢を見せています。
Allbirdsでは「ビジネスの力で気候変動を逆転させる」をミッションとしており、製造過程全体で排出される二酸化炭素の量を示す「カーボンフットプリント」をゼロにする活動をしております。
それだけでなく、スポーツメーカー大手のアディダスとパートナーシップを組み、フットウェア業界が年間に排出する700億tの二酸化炭素排出削減に向けたコラボレーションプロジェクトを遂行しています。
Allbirdsは、社会課題の解決には1社の力では不可能であり、複数の企業が提携する必要があることを理解しています。ミッションのためには競合ともとれる企業と提携し、まさに「ビジネスの力で気候変動を逆転」しようとしているのです。
SXの実行はすべての企業に求められている
今回は、SXとは何か、なぜ企業が取り組まなければならないのかについてまとめさせていただきました。
企業にとって、SXは「やったほうが良い」=Nice to haveではなく、「やらなければならないもの」=Mustな取り組みとなっています。
本記事がSX理解の参考になれば幸いです。
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引用・参考
- 経済産業省. “サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会
中間取りまとめ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の
実現に向けて~”. https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200828011/20200828011.html. 2020年.(参照 2021-10-01). - デロイト トーマツ グループ. “2016年 デロイトミレニアル年次調査”.
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/millennial-survey-2016.html. 2016年.(参照 2021-10-01). - 坂野俊哉・磯貝友紀. “SXの時代 究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営”. 日経BP. 2021年.(参照 2021-10-01).
- 帝国データバンク. “全国企業倒産集計2020 年報”. https://spice-factory.atlassian.net/jira/projects?selectedProjectType=software. 2020年.(参照 2021-10-01).
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