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サプライチェーン マネジメント(SCM)とはなにか?クラウド技術との関連性も解説

サプライチェーン マネジメント(SCM)とはなにか?クラウド技術との関連性も解説

Posted by スパイスファクトリー公式 | |物流DX

原材料を調達して商品を製造し消費者の手元に届くまでの、物流を含めた一連の流れをサプライチェーンと呼びます。これを効率化し最適に管理するのが、サプライチェーンマネジメント(SCM)です。

サプライチェーンマネジメントはクラウドやIoTなどのテクノロジーとの連携が進み、企業の競争力を左右する重要な戦略のひとつとして注目されています。

しかし、「どのように取り組めば良いか分からない」と悩む企業も少なくありません。

本記事では、サプライチェーンマネジメントの仕組みや必要性、メリット・デメリット、成功のポイントをわかりやすく解説します。

サプライチェーンマネジメントの仕組み

原材料の調達から製造、在庫管理、物流、販売に至るまでの一連の流れをサプライチェーンと呼びます。

複数の企業や部門が関与することが多く、関係者間の連携が取れていないと無駄や遅延、過剰なコストが発生します。

この複雑なプロセス全体を効率的に管理し最適化につなげるのがサプライチェーンマネジメント(SCM)です。

サプライチェーンマネジメントの歴史と背景

サプライチェーンマネジメントは、1980年代にアメリカのコンサルティング会社Booz Allen Hamilton(ブーズ・アレン・ハミルトン)によって提唱された手法です。

それまでの企業活動は、調達・製造・物流・販売といったプロセスが部門間・企業間に分断されていました。

そんななか、アパレル業界がサプライチェーンマネジメントをいち早く導入したことで、大幅なコスト削減やキャッシュフローの改善に成功しています。

この事例をきっかけに、他の業界へと広がりを見せたのです。

1990年代以降はIT技術の普及とともに、情報の一元化・可視化が進展しました。インターネットの進展やグローバル化を背景に、ますます注目されています。

インダストリー4.0(第4次産業革命)とSCM

近年、「インダストリー4.0」(第4次産業革命)の進展が、SCMに大きな影響を与えています。

インダストリー4.0とは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先進技術を活用して製造業や物流の高度化を目指す取り組みです。

これらの技術をSCMに取り入れることで、サプライチェーン全体のリアルタイムな可視化や高度な自動化につながります。迅速かつ柔軟な意思決定により、変化の激しい市場環境への適応力が強化されます。

これらの取り組みは物流業界が抱えるさまざまな課題を解決する、物流DXにもつながります。物流DXについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

関連記事:「物流DXとは?業界内における課題とその解決策、DX導入事例を解説

物流DXとは?業界内における課題とその解決策、DX導入事例を解説

サプライチェーンマネジメントの必要性

サプライチェーンマネジメントの必要性

いまや、サプライチェーンマネジメントは企業活動を行ううえで欠かせない仕組みです。ここでは、その背景にある4つの視点を解説します。

企業のグローバル化

企業のグローバル化が進み、調達先、生産拠点、販売市場が世界中に分散するケースも増えています。

その結果、リードタイムの長期化や予期せぬリスクの発生といった課題が生じています。

複雑化したサプライチェーン全体を統合的に管理し、効率性と安定性を確保するサプライチェーンマネジメントを導入すれば、複雑な状況にもスピーディに対応できるでしょう。

働き方改革の影響

2024年から、ドライバーの時間外労働に上限が設けられました。近年では、ワークライフバランスを重視する働き方が浸透し、従来の長時間労働に依存した仕組みではカバーしきれない場面も増えています。

サプライチェーンマネジメントを活用すると、限られた人員や時間の中でも効率的な物流を実現でき、働き方改革にも対応できます。

働き方問題は2030年にピークになると言われています。物流業界が抱える2030年問題については、関連記事で詳しく解説しています。

関連記事:「物流業界の2030年問題を専門家がわかりやすく解説

物流業界の2030年問題を専門家がわかりやすく解説

消費者のニーズの多様化

インターネットの普及やグローバル市場の拡大により、消費者のニーズはますます多様化しています。

パーソナライズされた商品やサービスへのニーズも高まり、企業には多品種少量生産や短期対応が求められるようになりました。

市場の変化や顧客のニーズを迅速に把握し、柔軟な対応体制を構築するためにもサプライチェーンマネジメントが欠かせません。

ビジネスモデルの変化

サブスクリプション型ビジネスの普及やEコマースの拡大など、新たなビジネスモデルが次々と登場しています。こうした変化に対応するには、サプライチェーンの設計そのものの見直しが不可欠です。

サプライチェーンマネジメントを導入すると、新たなビジネスモデルにも対応できるので、変化に強い基盤づくりにつながります。

サプライチェーンマネジメントのメリット

サプライチェーンマネジメントのメリット

サプライチェーンマネジメントのメリットとして掲げられる最大の効果は全体状況を把握できることにより、合理的計画が各所で立案できる点が非常に大きいメリットと言えます。

ここでは、多くの企業が導入の決め手としている5つの代表的なメリットを解説します。

コスト削減

サプライチェーン全体で起きうる無駄や非効率を改善すると、大幅なコスト削減を実現できます。

適切な在庫管理による保管コストの削減、効率的な物流管理による輸送コストの削減、需要予測の精度向上による過剰生産や廃棄ロスの削減など、さまざまな領域でコストの見直しが可能です。

生産性の向上

サプライチェーンマネジメントを導入すると、企業や部門をまたぎ全体で情報が共有できます。結果として、プロセス全体が最適化されるため各工程の生産性が向上します。

製造計画の精度を高めると稼働率の改善が図れるでしょう。また、物流プロセスを合理化すれば作業時間の短縮にもつながります。

販売の最適化

正確な需要予測により、欠品による販売機会の損失や過剰在庫による値引き販売などのリスクを低減できます。

たとえば、市場のニーズに合った製品を適切なタイミングで供給すれば、販売機会の最大化が見込めるでしょう。

顧客満足度の向上

適切なサプライチェーンマネジメントを行うと、リードタイムの短縮、納期遵守率の向上、きめ細やかな物流サービスが実現します。

そのため、顧客に質の高いサービスを提供できるのが強みです。必要な商品を迅速かつ確実に届けられる体制が整えば、企業の信頼性が高まり、リピート率の向上も期待できます。

経営判断の高速化

サプライチェーン全体でリアルタイムに情報が可視化されれば、経営層も現場の状況を的確に把握できます。そのため、市場の変動や予期せぬトラブルでも迅速で適切な意思決定が可能になり、経営判断の質とスピードが大幅に向上します。

【監修者コメント】
サプライチェーンマネジメントの一番の核心部分は、「工場→倉庫→店舗」までの全工程を可視化し、先手で合理的な計画を回せることにあります。

工場での製品の製造個数、輸送にかかる日数、倉庫出荷にかかる日数があらかじめ具体的に分かっていれば、店舗側は事前にスタッフのシフト計画や販促の計画を組むなどし、需要に合わせた売り場作りができます。

ただ、商品が到着して初めて納品された商品の種類や数量を知るとなると、売り場作りや人員手配が後手に回り、販売活動が非効率な状況に陥ります。

また、工場側が店舗の残在庫状況を逐次把握しながら生産量をコントロールする事も売れ残りリスクの軽減に繋がりますし、最適な輸送量(コスト適正化)にも繋がります。

これらの情報を事前に共有できるかどうかが、運営効率、コスト、顧客満足に直結する決定的な差になります。

この差で生じる無駄や非効率を改善することこそが、SCMの最大の狙いとなるのです。

サプライチェーンマネジメントのデメリット

サプライチェーンマネジメントの導入には多くのメリットがありますが、注意すべきデメリットも存在します。ここでは、代表的な2つの課題を見ていきましょう。

1つは、システム構築費用やコンサルティング費、業務フローの見直しに伴う教育費などの導入コストがかかる点です。

特に、中小企業にとっては、初期投資の高さから導入をためらうケースもあります。

さらに、サプライチェーンは複数の企業にまたがるため、システムやデータ連携の構築に手間や時間がかかる点も考慮しなければなりません。

もう1つは、情報を一元管理し業務の標準化・効率化を進めていくと、幅広い顧客へのリーチが難しくなる点です。

プロセスや取引先の最適化が進むなかで、新規の顧客ニーズや少数派の要望に気づきにくくなるリスクが生じます。

対応の幅が狭まると、広範な顧客へのリーチや新たなビジネスチャンスを逃すこともあるでしょう。

こうした事態を防ぐには、サプライチェーンマネジメントの枠組みにとらわれすぎず、市場や顧客ニーズの変化に対して広い視野を持つことが欠かせません。

サプライチェーンマネジメントとクラウド技術

サプライチェーンマネジメントの現場では、オンプレミスからクラウドへの移行が進んでいます。クラウドを活用すると、多くのメリットが得られるためです。

特に大きなメリットが、可視性の向上です。在庫をあらゆる角度から見渡せると、在庫状況や出荷・納品の進捗などを即時に把握できるようになります。

クラウドではデータをリアルタイムで共有できるため、「情報収集」「資料作成」といった人手による作業を大幅に省力化できるのも利点です。

これまで、人がデータを集計・加工してレポートを作成していた企業では、情報共有の時間や手間の削減が期待できます。

加えて、クラウドは拡張性が高く、オンプレミスと比較して導入コストが抑えやすいのも強みです。事業の成長や多拠点展開にも柔軟に対応できます。

データは安全な環境で自動的にバックアップされるため、災害や障害が発生しても迅速な復旧が可能です。

AIによる需要予測やグローバル貿易管理などデータ量が爆発的に増える領域でも、クラウドの柔軟性と高い処理能力は大きな強みになります。

クラウド技術とオンプレミスとの違いやメリット・デメリットについて、詳しくは関連記事をどうぞ。

関連記事:「オンプレミスとは?クラウドとの違いを徹底比較し移行するメリットやデメリットをわかりやすく解説

オンプレミスとは?クラウドとの違いを徹底比較し移行するメリットやデメリットをわかりやすく解説

サプライチェーンマネジメントを成功に導くポイント

サプライチェーンマネジメントの効果を最大限に発揮するには、単にシステムを導入するだけでは十分とはいえません。

ここでは、サプライチェーンマネジメントを現場に根付かせ、成果を上げるための5つのポイントを紹介します。

データガバナンス

サプライチェーンマネジメントでは、調達・製造・在庫・物流・販売といった多くの過程でデータが発生します。データの正確性・一貫性・信頼性を確保するには「データガバナンス」が欠かせません。

たとえば、同一商品が部門ごとに異なる名称や単位で管理されていると、在庫数の把握や需要予測が難しくなります。共通のルールを整備し、全社で統一されたデータ運用ができる体制の構築が不可欠です。

柔軟性な仕組み化

変化の激しい市場環境では、固定的な仕組みよりも柔軟な調整力が求められます。新しい販売チャネルの追加やサプライヤーの変更などが生じた場合に、業務フローやシステム設定を調整できればスピーディな対応が可能です。

たとえば、ノーコードやローコードのツールを活用して現場の担当者が直接業務変更を反映できれば、全体の対応力が向上します。

従業員意識改革

優れた仕組みを導入しても、現場の従業員が活用しなければ成果にはつながりません。「今までのやり方の方が早い」「データ入力が手間」などの理由で、せっかくのシステムが活用されないケースもあります。

導入前からツールの必要性を共有し、現場の理解と納得を得たうえで進めることが大切です。従業員の意識を変え、現場で使いやすいUIを導入するとシステムの活用につながります。

スモールステップ

サプライチェーンマネジメントは対象範囲が広く、一気にすべての変更に取り組むと失敗のリスクが高まります。特定のプロセスや拠点など、小さく始めて成功事例を作ると全体の雰囲気が変わることも少なくありません。

一気に全部を変えるのが難しい場合は、「在庫管理のデジタル化」「出荷の自動化」など、効果の見えやすい領域からスモールステップで始めましょう。

収益貢献設計

サプライチェーンマネジメントを成功させるには、業務効率化にとどまらず「売上や利益にどう結びつけるか」を意識した設計が必要です。これを「収益貢献設計」といいます。

たとえば、在庫管理を最適化すると欠品や過剰在庫を防止でき、無駄や販売機会の損失を減らして売上向上につながります。また、需要予測の精度を高めれば不要な仕入れや廃棄を抑制でき、利益率の改善が可能です。

KPIを設定し、サプライチェーンマネジメントの成果を定量的に可視化して経営戦略を進めましょう。

サプライチェーンマネジメントの今後の課題

サプライチェーンマネジメントはデジタル技術の進化やクラウドの活用で大きく発展しています。しかし、変化の激しい市場で企業が生き残るには、さらなる改善が不可欠です。

今のサプライチェーンマネジメントにおいて注目すべき3つの課題を解説します。

可視化と連携強化

すべての拠点やサプライヤーの在庫状況・リードタイムをリアルタイムで見える化すれば、企業内の各部門だけでなく複数企業間でもデータの共有・連携が可能になります。

在庫情報や調達リードタイムが即時共有できると、調整業務の属人化を防ぎサプライチェーン全体の意思決定スピードが向上します。

そのためには、在庫・出荷・納品・需要予測などのデータを一元管理し、関係者全体で共有できる体制作りが重要です。

レジリエンス

地政学リスク、自然災害、パンデミック、需要変動などの予測困難な事態に対応するためにはレジリエンスが必要です。

レジリエンスとは、回復力や再起力などと訳され、突発的なトラブルにもしなやかに対応し素早く立て直す力を意味します。

たとえば、特定の地域に依存した調達や一社に依存した調達体制では、トラブル発生時にサプライチェーン全体が停止するリスクがあります。

このような事態に備えるには、代替供給先の確保や在庫分散、調達ルートの多様化など、リスクに強い仕組みづくりが必要です。

また、いざというときに迅速な切り替えができるよう、事前準備を整えておかなければなりません。トラブル時に対応するには平時からの備えが重要です。

サスティナビリティ

環境配慮や社会的責任への対応も、企業価値を左右する大きな課題です。サプライチェーンの各工程では、CO2排出やエネルギー消費、過剰在庫の廃棄など環境負荷の高い要素が多く含まれています。

こうした課題に対応するためには、CO2排出量や人権デューデリジェンスなどのESG指標をサプライチェーン全体で計測・開示する仕組みづくりが欠かせません。

企業が持続可能な社会の一員として責任を果たすためにも、サステナビリティ経営への転換が求められています。

物流DX専任チームの発足

スパイスファクトリーは、物流業界が抱える多くの問題を解消するために「物流DX支援特化型チーム」を発足しました。

人手不足やシステムの老朽化をはじめとした物流企業の現場の課題に寄り添い、業務フローの可視化からシステム導入、データ活用まで一気通貫で支援します。

クラウドやAIなどの先端技術を取り入れ、現場に即した持続可能で効率的なサプライチェーンを実現しています。

スパイスファクトリー、物流2030年問題に立ち向かう【物流DX支援特化型チーム】を発足

【事例】Connected NEO-アパレル在庫管理機能の開発

トレンドに左右されるアパレル業界は多くの在庫を抱えることが少なくありません。在庫状況を即時に的確に把握できなければ、販売機会の損失や過剰在庫による保管スペースのひっ迫といった事態を招いてしまいます。

そこで、スパイスファクトリーは、アパレルに物流の知見を持つFlow makers HDグループと共同し「Connected NEO-在庫トリアージ機能」を開発しました。

Connected NEOを使えば、これまで可視化できなかった在庫を可視化できるのが魅力です。在庫の動きがリアルタイムで分かるので、危険在庫や注意在庫を容易に判別できます。

在庫金額の多い順にデータを並べ替えることも容易で、素早い出荷指示が可能になるため無駄を省き業務効率化につながります。

詳しくは、関連記事をご覧ください。

関連記事:「株式会社エムエルシー|物流現場のDX・データ活用と直感的なUI/UXで変革するアパレル在庫管理【Connected NEO】

まとめ

サプライチェーンマネジメントを導入すると、業務効率化やコスト削減などさまざまな効果が期待できます。

一方で、サプライチェーンは多くの企業や部門がかかわるため、全体の足並みをそろえる難しさもあります。。情報連携をスムーズにし現場の混乱やミスを防ぐには、誰もが直感的に使えるUI/UXを備えたシステムが効果的です。

さらに、クラウド環境を利用すれば、オンプレミスと比較して初期コストを抑えつつ柔軟に導入できます。競合他社が先にサプライチェーンマネジメントを取り入れれば、業務効率化や対応スピードで大きな差が生まれる可能性もあります。

私たちスパイクファクトリーでは、変化に強い企業づくりに欠かせないサプライチェーンマネジメントの導入を支援しています。無料相談を行っておりますので、ぜひお気軽にご活用ください。

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【監修】株式会社データ・シェフ|代表取締役 濵田 雅人(はまだ まさと) 業務改善コンサルティング会社の代表取締役として、業務フローの改善やデータ活用支援を提供。これまでに物流運営会社やシステム開発会社での物流関連システムの企画・設計・導入を担当し、効率化の推進に寄与。特に物流業界における業務改善やDX支援に注力し、豊富な現場経験に基づいた実践的なアドバイスが強み。物流センターの運営や経営に関するノウハウを持ち、理論だけでなく、システム開発等の知見を掛け合わせた具体的な現場改善策を提案できる点で高く評価されている。

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