「オンプレミスのままで、本当に大丈夫なのか」と、不安を感じている担当者の方もいるでしょう。

近年、多くの企業がクラウドを活用し、ITインフラの効率化を進めています。しかし、オンプレミスにも依然として強みがあるため、クラウド移行に踏み切れない企業も少なくありません。

本記事では、オンプレミスとクラウドの違いや費用の比較、メリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、「オンプレミスが向いているケース」「クラウドが向いているケース」についても紹介しますので、参考にしてください。

オンプレミスとは

オンプレミスとは、企業が自社内にITインフラを構築し、システムを運用・管理する形態です。サーバーやネットワーク機器などのハードウェアだけでなく、業務アプリケーションやデータも自社で管理します。

運用や管理は社内のシステム部門やエンジニアが担当するのが一般的です。外部のクラウドサービスに依存せず社内ネットワークを活用できるため、インターネット環境がなくてもシステムを利用できます。

クラウドが普及するまでは、オンプレミスが企業のITインフラの標準的な形でした。

オンプレミスは時代遅れなのか?

オンプレミスは時代遅れなのか?

総務省の調査によると、日本における企業のクラウドサービスの利用率は2023年時点で77.7%です。

そのなかで、クラウドとの比較もせず古いレガシーシステムのオンプレミスを使い続けている企業は、技術的な制約やコストの増大が問題視され「時代遅れ」とみなされることもあるでしょう。

一方、高度なセキュリティ要件が求められる政府機関や金融機関やリアルタイム制御が必要な製造業loTシステムなどでは、最新技術を活用しながらオンプレミスを活用しています。また、クラウドとオンプレミスを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」を採用する企業もあります。

そのため、オンプレミスだけを理由に「時代遅れ」と言い切ることはできません。

参考:総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」(新しいタブで開きます)

2026年問題について

ガートナージャパンは、2026年にはクラウド導入の遅れが企業の競争力に大きな影響を与えると指摘しています。

「2026年問題」として挙げた、6つの課題は次のとおりです。

  1. クラウドはまだ早いと考え導入を見送っている(30%)
  2. 「2025年の壁」を乗り越えられず、2030年までレガシーシステムを継続する懸念
  3. オンプレミス対クラウドの議論を続け、採用に至らない(40%)
  4. ベンダーへの丸投げから脱却できない(30%)
  5. クラウド化してもコスト削減できない(40%)
  6. SI(システムイングレーション)・仮想ホスティングとクラウドの違いが分からない(30%)

2026年問題を乗り越えるには、単にクラウドへ移行するだけでなく、IT戦略の見直しや社内の理解促進が不可欠です。

クラウドとは

クラウドとは
クラウドとは、インターネットを経由してサーバーやメモリ、データベース、ソフトウェアなど幅広いサービスを利用できる仕組みです。企業が自社でサーバーやハードウェアを準備することなく、クラウドサービスを契約するだけで利用できます。

クラウドサービスは主に、次の3種類です。

種類 概要
IaaS サーバーやメモリなど、ハードウェア部分をオンラインで提供するサービス
PaaS データベース、プログラム環境など、アプリ開発のできるプラットフォーム機能を提供するサービス
SaaS メールやチャットツール、会計ソフト、営業ソフトなど、クラウド上で使えるアプリケーション機能を提供するサービス

機器の導入が不要なので、クラウドを利用すれば初期コストを抑えられます。サービスを契約するだけで運用を始められるため、すぐに導入できる手軽さも魅力です。

ハイブリッドクラウドとは

ハイブリッドクラウドとは

ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスとクラウドを組み合わせた運用方法です。

既存のオンプレミス環境を活かしつつ、クラウドの利便性を取り入れられます。たとえば、機密データや基幹システムはオンプレミスで管理し業務アプリやファイル共有はクラウドで運用する、といった使い分けが可能になります。

オンプレミスとクラウドの両方を運用することで双方の強みを活かし、弱みをカバーできます。複数運用になるため、リスクを分散できることもメリットの一つです。

オンプレミスとクラウドの違い

オンプレミスとクラウドの違いを5つの観点で比較します。

項目オンプレミスクラウド

項目 オンプレミス クラウド
コスト
  • 初期費用が高い
  • 機器のメンテナンスや規模拡大の都度、コストがかかる
  • 初期費用が抑えられる
  • 従量課金制
セキュリティ
  • 高度なセキュリティ対策が可能
  • 自社での管理が必須
  • クラウド事業者に依存し、最新のセキュリティ対策が適用される
構築スピード
  • 機器の調達・設置・設定に時間がかかる
  • 契約後すぐに利用できる
災害・障害時
  • 火災や地震など物理的な災害の影響を受けやすい
  • システム障害の影響を受けない
  • 障害発生時は自社対応
  • データセンターが分散しているため火災や地震など物理的な災害には強い
  • クラウドでシステム障害が発生するとサービスが一時的に利用不可になる
カスタマイズ性
  • 自由にカスタマイズできる
  • クラウド事業者の提供する環境に制限される

オンプレミスはカスタマイズ性やセキュリティの高さが強みです。一方、クラウドは初期コストが低く、導入しやすい点で優れています。

オンプレミスとクラウドの費用比較

オンプレミスはハードウェアやOSなどの機器や設備をそろえ、社内で運用管理しなければなりません。

導入時には、ハードウェアやソフトウェアライセンスの購入も必要で、大きなコストがかかります。社内に専用の管理部門やエンジニアを確保するため、人件費も発生します。

一方、クラウドは物理機器を用意する必要がなく、初期投資を抑えられるのが利点です。月々の支払いは、利用量に応じて変動する従量課金制が一般的です。

オンプレミスの導入費用相場

オンプレミスの導入時には、サーバー本体、ストレージ、ネットワーク機器などのハードウェアと、OSやデータベース等のソフトライセンスの購入が必要です。

標準的なサーバー代としては、50万〜300万円程度が目安です。高性能のサーバーは500万円以上が相場で、1,000万円以上かかるものもあります。

さらに、機器設置や環境構築に必要な工事費・設定費・人件費も初期投資として必要です。合計すると、導入費用の相場は数百万円かかります。システムの種類や規模によっては1,000万円以上になることもあります。

クラウドシステムの導入費用相場

クラウドシステムの導入費用は基本的に無料です。特にSaaSを使用する場合は、社内に専門家を雇う必要もなく、契約後すぐに利用を開始できます。そのため、オンプレミスと比べ初期費用を大きく抑えられる点がメリットです。

オンプレミスのメリットデメリット

ITシステムの導入を検討する際は、それぞれの特徴の理解と比較が欠かせません。ここでは、オンプレミスを使用するメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット

オンプレミスのメリットは、カスタマイズの自由度が高くセキュリティ性に優れている点です。自社の要件に合わせたシステム構築が可能で、社内システムとの連携もスムーズです。

外部から独立した環境を構築すれば、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクを最小限に抑えられます。

さらに、社内ネットワーク内にサーバーを設置するとインターネット接続なしでも運用できるため、通信障害の影響を受けにくいのも利点です。

デメリット

オンプレミスの大きなデメリットは導入コストが高額になる点です。システムを拡張する際も新たな機器の導入やシステムの再構築が必要となり、追加費用がかかります。

管理には、システムの構築・運用・セキュリティ対策を担当できる人材の確保が不可欠です。しかしながら、IT人材の確保や育成には継続的にコストが発生します。

クラウドのような自動復旧機能がないため、災害時に独自の対策が必要になる点もデメリットです。バックアップや遠隔地でのデータ保管など、独自の取り組みが欠かせません。

また、オンプレミスは、システムやネットワーク危機の脆弱性を突かれる攻撃に弱い傾向があります。特に最近の動向としては、VPN機器のみならずメールや偽装サイトから侵入されるランサムウェアの被害が数多く発生している状況です。

一方、クラウドの場合は独立したネットワークで運用しているため、このような攻撃への対策が立てやすくなります。

クラウドのメリットデメリット

クラウドサービスを導入するメリット・デメリットについて解説します。

メリット

クラウドのメリットは、機器購入が不要で初期費用を抑えられる点です。契約後すぐに利用でき、サーバー構築などの手間はありません。

毎月利用した分だけ課金される従量課金制が多く、無駄なコストを抑えられます。さらに、メンテナンスやセキュリティ対策はクラウド事業者が対応するため、自社での管理負担が軽減されます。

社外のサーバーでデータ管理されるため、災害時のリスクが低いのも利点です。

デメリット

提供される機能に依存するため、カスタマイズ性が低い点はデメリットです。自社システムに合うように調整したくても細かい仕様変更が難しい場合があります。

当然のことながらクラウドであるためオフライン環境では使用できません。事業者のメンテナンスや通信障害により、一時的に使えなくなる場合もあります。

外部のクラウド環境にデータを預けるため、情報漏えいや不正アクセスのリスクにも考慮が必要です。リスクを抑えるためには、信頼度の高い事業者選びが重要になります。

オンプレからクラウドへの移行と併用について

企業のIT環境は急速に変化し、クラウドへの移行やハイブリッドクラウドを選択する企業が増えています。

日本でオンプレから移行する企業が増えたのは、災害対策やテレワークの普及が大きく後押ししたためです。

ここでは、オンプレからクラウドに移行・併用する企業が増えた背景について解説します。

オンプレから移行する企業が増えている

総務省の調査によると、企業のクラウドサービスの利用率は、2010年の時点では14.1%と非常に低い水準でした。

転機の一つとなったのが、2011年の東日本大震災です。この震災で、オンプレミスは災害に弱いことが明らかになり、災害対策の一環としてクラウドサービスを検討する企業が増加しました。また、働き方改革や新型コロナウイルスによるテレワーク推奨も、クラウド移行を加速させた一因です。

これらのデジタル環境を取り巻く急激な変化がクラウドへの移行やDX化の推進を推し進め、レガシーシステムの脱却にもつながりました。

このような理由から、オンプレミスからクラウドへと移行する企業は年々増加しているのです。

参考:総務省「平成23年通信利用動向調査の結果」(新しいタブで開きます)

オンプレミスとクラウドとどっちを選ぶべきか

オンプレミスとクラウドとどっちを選ぶべきか

オンプレミスとクラウドには、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットがあります。そのため、どちらを選ぶべきか悩む担当者もいるでしょう。

それぞれの特徴を踏まえ、どのような企業に向いているのか詳しく解説します。

オンプレミスが向いているケース

医療機関のように個人情報の保護が求められる企業では、オンプレミスが適しています。たとえば、オンプレミス型電子カルテを導入して院内にサーバーを設置すると、ウイルス感染や個人情報漏えいのリスクを抑えられます。柔軟性が高いため、「診療科別のカスタマイズ」が容易な点も強みです。

IoTシステムや制御システムを扱う製造業のように、リアルタイム処理が必須の場合にも向いています。クラウドはインターネット接続が必要になるため、遅延リスクがあります。

毎月、大容量のデータやストレージを扱うため、クラウドサービスでは運用コストが膨らむ企業にも、オンプレミスがおすすめです。

クラウドが向いているケース

小売業やサービス業のように、需要の変動が大きく、システムの規模を柔軟に調整したい場合はクラウドが向いています。チームで情報を共有しながら業務を進めたい場合にも最適です。日報や顧客情報を簡単に共有できるので、業務効率化につながります。

月額料金のみで利用でき大規模な設備投資が不要なため、初期コストを抑えたいスタートアップ企業や中小企業にも適しています。

リモートワークや外部アクセスが必要な企業にもクラウドはおすすめです。在宅ワークはもちろん、支店や店舗が多数ある場合でも、クラウドを利用すればどこからでも同じ環境で業務を進められます。

ハイブリッドクラウドという選択肢もある

オンプレミスとクラウドの両方を活用する「ハイブリットクラウド」という選択肢もあります。

かつて、金融機関のようにセキュリティ要件と厳格な法令遵守が求められる業界ではオンプレミスを選択するのが一般的でした。しかし、コスト削減や新サービスの導入を目的として、ハイブリッドクラウドを採用する企業も増えています。

オンプレミスのみでは災害発生時にデータ消失リスクが高まります。ハイブリッドクラウドを採用すれば、バックアップやデータ保護を強化できるのも利点です。

ハイブリッドクラウドはコストの最適化を求める企業にも適しています。たとえば、頻繁にアクセスするデータはオンプレミスで管理し、使用頻度の低いデータをクラウドに保存することも可能です。それぞれの強みを生かしてコストを抑えながら柔軟に運用できます。

クラウドの種類

世界のシェア率トップを占めるクラウドは次の3つです。

クラウド 概要
AWS(Amazon Web Services)
  • Amazonが提供
  • 世界のシェア率第一位
  • 連携可能なサービスの種類が豊富
Microsoft Azure
  • Microsoftが提供
  • 世界のシェア率第二位
  • WordやExcelなど、Microsoft製品との親和性が高い
Google Cloud Platform(GCP)
  • Googleが提供
  • 世界のシェア率第三位
  • データ分析やデータ活用に強い

どれもセキュリティ性が高く、システムの規模や使用量に応じて柔軟に調整できるため、幅広い業界で活用されています。それぞれの特徴を解説します。

AWS(Amazon Web Service)

AWSはAmazonが提供するクラウドサービスです。サーバーレスの先駆者として、多様なクラウド技術を展開しています。

データ分析、AI、IoT、セキュリティなど、200以上のサービスを提供し、幅広い分野を網羅しています。世界最大のシェアを誇り、業種・業界を問わず幅広いニーズに対応できるのが強みです。

Microsoft Azure

Microsoft AzureはMicrosoftが提供するクラウドサービスです。Microsoft製品との親和性が高く、Office365、Microsoft Teamsなどとシームレスに連携できます。

オンプレミス環境との親和性も高く、Windows Serverを活用したハイブリッドクラウドに適しています。既存のMicrosoft環境を活かしながら、クラウド化を進められるのが特徴です。

Google Cloud Console

Google Cloud ConsoleはGoogleが提供しているGCP(Google Cloud Platform)を管理するツールです。

GCPは150以上のサービスがあり、特にビッグデータ処理や高度なAI活用が求められる分野を中心に広く活用されています。

BigQueryやTensorFlowなど、Googleのサービスと親和性が高くデータ活用に取り組む企業に適しています。

オンプレミスからクラウドに移行した事例

オンプレミスからクラウドに移行すると、どのような効果が得られるのでしょうか。ここでは、実例を紹介します。

佐川ヒューモニー株式会社様

佐川ヒューモニー株式会社では、インターネット電報サービス「VERY CARD」を提供しています。長年オンプレミスで運用していましたが、システムの老朽化・複雑化による運用負担やコストの増大が課題でした。事業拡大を機に、クラウド環境へ移行し、システム基盤を刷新しています。

結果として、運用負担の軽減とコスト削減を実現しています。さらに、画面設計を見直し、直感的に操作できるデザインに改善し、顧客満足度の向上にもつながりました。

https://spice-factory.co.jp/works/18259/

まとめ

オンプレミスとクラウドサービスには、それぞれ異なる特徴があります。

費用対効果やセキュリティ、柔軟性を考慮し適切に使い分けることで、業務効率化や顧客満足度の向上が期待できます。また、クラウドの利用はレガシーシステムの課題解決にも有効です。

さらに、クラウドは災害対策や働き方改革の側面からも注目されており、現在では約80%の企業がクラウドやハイブリッドクラウドを採用しています。

「クラウド移行はまだ早い」と決めつけず、メリット・デメリットを比較検討し、自社に最適なIT環境を選択しましょう。

UI/UXを得意領域とするスパイスファクトリーでは、レガシーシステムのリプレイス案件も承っております。要件定義の上流から開発・運用まで支援可能です。

ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

「2025年の崖」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

レガシーシステムは企業の足かせとなり、DX推進や効率的なシステムの運用管理の妨げとなります。レガシーシステムからの脱却が求められますが、一方でその取り組みは決して簡単なものではありません。

今回は、レガシーシステムについて、その概要と課題、脱却のための解決策を詳しくご紹介します。

レガシーシステムが注目されている背景

なぜ近年、「レガシーシステム」というキーワードが注目されているのでしょうか。

ひとつの契機となったのが、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(新しいタブで開きます)」です。

このレポートでは「レガシーシステムの存在により企業は最大で12兆円/年の損失が生じる」と警告し、「企業の成長や競争力強化のためにはレガシーシステムから脱却していく取り組みが必要である」としています。

多くのレガシーシステムはブラックボックス化しており、そのメンテナンスコストは高止まりしがちです。また、システムから生み出されるデータも活用しにくい状態となっています。

企業がDXを進め、競争力を強化していく際に、レガシーシステムが障壁となります。レガシーシステムからの脱却が求められているといえるでしょう。

レガシーシステムとは?

レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、企業や組織において長期間にわたり使用され続けてきた情報システムやソフトウェアのことを指します。

導入当初は最先端であったシステムも、技術の進化やビジネス環境の変化に伴い時代遅れのものとなってしまいます。

多くの場合、レガシーシステムは自社の業務プロセスに深く結びついており、その置き換えや更新が困難です。また、古い技術が利用されているケースも多く、エンジニアの確保が困難であったり、メンテナンスのコストが高くついてしまったりといった問題もあります。

現代のビジネス環境に合わせたスピード感のある対応や、最新の技術を活用した効率的なシステム活用が求められる中、レガシーシステムの存在は大きな課題となります。

レガシーシステムが生まれる要因

ここでは、レガシーシステムが生まれる要因を以下の観点から解説します。

改修や追加開発による複雑化

企業が利用するシステムは、時間の経過とともに新しい機能の追加や改修が繰り返されていき、システムは複雑化していきます。

すでに利用されていないプログラムや機能がそのままとなっていたり、繰り返し改修を行ったことで無駄の多いプログラムとなっていたりと、初期設計の目的や構造が失われ、パッチワークのような状態になっていることも多いといえます。

開発会社への依存・ブラックボックス化

多くの企業では社内にエンジニアが存在せず、外部の開発会社へと委託を行い、システムの開発や運用を行っています。この状態だと、外部の開発会社に頼りきりとなり、どうしても社内で知識やノウハウが蓄積されていきません。

システム内部の仕組みやプログラムが十分に理解されないまま運用された結果、開発会社の人員入れ替えや事業撤退などをきっかけにメンテナンスやアップデートが困難になってしまいます。

部署ごとの部分最適化

企業内の各部署がそれぞれの要望に基づいてシステムを最適化していくことも、レガシーシステムが生まれる原因となります。

部署ごとに異なる仕様や機能が追加され同じような機能が複数存在してしまったり、処理プロセスが複雑化したりと、全体的な整合性が失われていきます。

人事的な問題

システムに精通した一部の人材に頼ってしまうケースも、レガシーシステムが生まれる原因となります。

システムの運用には長年の経験や専門知識を持つ担当者が必要ではありますが、こうした担当者が退職や異動でいなくなったことをきっかけに、システムの維持や改修が困難になってしまいます。

このようないわゆる「属人化」もまた、レガシーシステム化の原因となります。

レガシーシステムが引き起こす課題

レガシーシステムが引き起こす課題

それでは、レガシーシステムの存在は、企業にどのような問題を引き起こすのでしょうか。
以下では大きく4つの観点から解説します。

運用・保守の負担増加に伴うコスト増加

プログラムが複雑化し、またブラックボックス化してしまったレガシーシステムは、運用保守コストが増加してしまいます。

複雑化したシステムは「このプログラムを修正することでどのような影響が起きるか分からない」状態となります。結果として、メンテナンスのたびにコストと時間をかけて大規模な影響調査を行う必要が生じます。
また、古い技術が使われている場合には、その技術に精通したエンジニアの確保も困難です。人材の確保難もまた、レガシーシステムのメンテナンスコストを上昇させる要因の一つとなります。

システムのパフォーマンスの低下

ITが進歩し、様々な製品やアーキテクチャが生み出されている一方で、レガシーシステムは古い技術のまま運用されています。

結果として、同じ処理であってもレガシーシステムでは多くのコンピュータリソースを消費したり、高いライセンスコストが必要になってしまったりします。

また、デザイン面やUI面が過去のものとなっているケースもあります。このようなシステムはユーザーの操作性も悪く、業務効率が悪化してしまいます。

属人化した開発・運用

長期間運用されてブラックボックス化してしまったシステムは、特定の担当者しか管理を行えない状況となってしまいます。

結果として、さらに特定の担当者に依存する属人化が進みます。特定の担当者のみがシステムの内部構造や処理方法に関する知識を持っている状況において、その担当者が退職や異動、病気などで不在になると、システムの維持や改修が困難となってしまいます。

法改正やセキュリティチェック対策に弱い

メンテナンスが困難であることから、レガシーシステムは最新の法規制やセキュリティ基準に適合するための更新を実施しにくいといえます。

新たな法規制が実施される場合、施行日までにシステムを改修し、新たな規制に対応しなければなりません。しかしながら、レガシーシステムの改修には期間もコストも必要であり、迅速な対応は困難です。

また、古い技術が利用されていることから、セキュリティの観点にも注意が必要です。サポートが終了した古いソフトウェアを継続利用してしまっているケースもあり、サイバー攻撃を受けるリスクもあります。

加えて、新たに発見された脆弱性に対応するためには迅速な改修が必要ですが、レガシーシステムでは迅速な対応は難しいといえるでしょう。

レガシーシステムの問題はなぜ解決しないのか?

一方で、レガシーシステムの問題を解決することは、必ずしも簡単ではありません。
なぜでしょうか?

刷新のためにコストがかかる

レガシーシステムを刷新するためには投資が必要となります。特に企業の基幹システムがレガシー化してしまっている場合、刷新のためには大規模な投資が必要です。投資コストはレガシーシステム刷新の意思決定を妨げる原因となりがちです。

また、古いアーキテクチャから最新のアーキテクチャへと移行するためには、データの移行やユーザーのトレーニングなど、様々なタスクも必要となり、IT部門・利用部門の人的リソースも必要です。

これらのコストは短期的には企業にとって大きな負担となり、レガシーシステム問題の解消を躊躇させる要因となります。

投資対効果が理解されにくい

さらに、レガシーシステムの刷新に対する投資対効果は理解されにくい点も課題です。

「すでに導入されており、業務でも問題なく利用されているシステムをリプレイスしても、新たな価値は生まれないのではないか」という認識を持たれてしまい、レガシーシステムの刷新にGoが出ないケースもあります。

このように、多額の投資を行ってレガシーシステムの刷新を実施する正当性が理解されにくいという点も問題です。

要件定義が困難

一般的にシステムの移行を行う際には、現行システムを分析して新たなシステムにどのような機能を持たせるか、要件定義を行います。

一方で、レガシーシステムでは設計書などのドキュメント類が整備されていないことも多く、現行システムの分析が困難となりがちです。

結果として、プロジェクトのスタート地点となる要件定義に多くの時間やコストがかかってしまいます。

このようにレガシーシステムの刷新にあたっては様々な課題があります。
しかし、レガシーシステムの問題は放置できません。メンテナンスコストの増加やシステムパフォーマンスの低下、セキュリティリスクの増大など、レガシーシステムは企業の競争力や信頼性に影響を及ぼします。

レガシーシステムの刷新は一時的な負担を伴いますが、将来的な利益とリスク軽減を考慮すれば必須で解決すべき課題であると言えるでしょう。

レガシーシステムから脱却するための解決策

レガシーシステムから脱却するための解決策

それでは、レガシーシステムから脱却するためにはどうすればよいのでしょうか。
以下では、解決のための具体的なアプローチをご紹介します。

レガシーマイグレーション

レガシーシステムから脱却するための一つのアプローチ例は、レガシーマイグレーションです。レガシーマイグレーションでは、レガシーシステムを新しいプラットフォームやクラウド環境へとそのまま移行します。

システムを刷新する際には、「現行の機能を担保できるのか」「データ移行はうまくいくのか」といった様々なリスクが発生します。レガシーマイグレーションにより現行の仕組みをそのまま新しい環境に移すことで、これらのリスクを抑えられます。

レガシーモダナイゼーション

レガシーモダナイゼーションは、既存のシステムを最新の技術やアーキテクチャに改修する手法です。

システムのアーキテクチャを最新化したり、新しいプログラミング言語やフレームワークを導入したりと、システムの全体的な設計を見直しつつ、新システムへと移行します。

レガシーモダナイゼーションは、さらに様々な手法に分類されます。具体例としては下表のとおりです。

手法 概要
リビルド 既存のシステムを完全に再構築し、新しい技術やアーキテクチャを使用して一から作り直す手法。
リプレイス 既存のシステムを新しい商用ソフトウェアやパッケージソリューションで置き換える手法。
リライト 既存のシステムを新しいプログラミング言語やフレームワークで作り直す手法。
リファクタリング 既存のシステムの内部構造を改善し、プログラムの品質やパフォーマンスを向上させる手法。

これらのアプローチによりシステムの柔軟性や拡張性を向上させ、メンテナンスコストの削減と迅速なメンテナンスの実現を目指します。

クラウドサービスの活用

近年では、新たにシステムを開発せずともすぐに利用できるクラウドサービスが多く登場しています。これらを利用することもまた、レガシーシステムから脱却するための効果的な手法の一つです。

自社の業務に適合するクラウドサービスがあれば、積極的に導入していくことで、コストを抑えてレガシーシステムからの脱却を実現できます。

要件定義段階からUXデザイナーが参画

要件定義段階からUXデザイナーが参画

レガシーシステムからの脱却において困難となりがちな要件定義ですが、その解決方法の一つとして、「要件定義段階からUXデザイナーが参画する」というアプローチがあります。

要件定義においては「ユーザーとの目線合わせ」「関係者の巻き込み」「要件の精緻化」といった観点が重要ですが、UXデザイナーによりインセプションデッキやワイヤーフレーム、プロトタイプも作成しながら、ユーザーの要望を可視化することができます。
また、可視化により関係者での議論や意見出しも活発化させることができます。

このように、要件定義段階からUXデザイナーが参画するメリットは大きいといえるでしょう。

なお、当社スパイスファクトリーでは、豊富な実績をもつUXに関するプロフェッショナルが要件定義の段階から参画し、ユーザー視点からのシステム開発を支援しています。アジャイルマインドを意識し、素早くアウトプットし良い失敗を繰り返すことで、要件定義の精度を高めていきます。

また、当社は総合システムインテグレーターである株式会社DTSと資本提携を行い、同社が提供するシステム基盤とユーザー体験を重視した直感的で使いやすいシステムの設計を融合させるDXソリューションの展開も進めております。

※参考:スパイスファクトリー、DTSと資本業務提携を締結(新しいタブで開きます)

PoCの活用

レガシーシステムの刷新にあたり検討したいのが、PoCの活用です。
PoCとは、「Proof of Concept」の略で概念実証のことを指します。ビジネスアイデアや技術の実証の他、レガシーシステムの刷新にあたっても活用できます。

PoCにより、新たなシステムが業務と適合するかを検証しつつ、システム刷新に向けた課題を洗い出すことで、失敗のリスクを抑えられます。

特に基幹系システムの刷新など、リスクの高いプロジェクトにおいてはPoCの実施を検討すべきでしょう。

https://spice-factory.co.jp/design/poc_step/

DX人材の育成・採用

これらの取り組みを進めていく上で必要となるのが、人材育成や採用です。

レガシーシステムの刷新にあたっては、最新のアーキテクチャや技術に精通した人材や、プロジェクトマネジメント能力を持った人材が求められます。これらの役割を担う候補者への研修が有効となります。

また、社内で十分に人材が確保できない場合は、レガシーマイグレーションやレガシーモダナイゼーションに精通した外部人材の活用も検討すべきでしょう。

特にレガシーマイグレーションやモダナイゼーション、DXの推進においては、アジャイルの知識に精通した人材も重要となります。以下の記事では、DXとアジャイルの関係性について解説しておりますので、併せてご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/agile_dx_reason/

レガシーシステムの刷新に成功した事例

最後に、レガシーシステムの刷新に成功した具体的な事例をご紹介します。

佐川ヒューモニー株式会社:「VERY CARD」創業以来のシステム基盤刷新

グリーティングカードや慶弔関連ギフトなどの通信販売事業を営む佐川ヒューモニー株式会社様では「様々なライフステージにおいて人と人を結ぶサービスとして選ばれる企業」を目指し、人生の様々な節目に大切な人に想いを伝える電報類似サービス「VERY CARD」を提供しています。

一方で、VERY CARDを運用するためのシステムは2002年の開発当初から継続利用されており、システムが複雑化してしまったことで商品追加やシステム改修に時間がかかるという課題がありました。

そこで同社では、同システムを最新のクラウド技術基盤を利用したシステムへと移行するべく、刷新プロジェクトを立ち上げました。当社スパイスファクトリーは本プロジェクトを支援させていただき、アジャイル型によるシステム開発やUI/UXの見直しなどを支援させていただきました。

同社では、今後もシステムを基盤に、お客さまにとってより利用していただきやすいサービスの提供を目指して機能の開発・改善を進めていくとのことです。

https://spice-factory.co.jp/works/18254/

AGC株式会社:メインフレームからのAWSへの移行

「ガラス」「電子」「化学品」など、幅広く事業を展開するAGC(旧旭硝子)では、これまでメインフレームで運用してきた自社のシステムをAWS基盤へ移行しました。

本取り組みはレガシーマイグレーションにより、既存のシステムに大きな変更を加えず、AWSへ移行する形で進めました。

AWSへの移行により、システムの運用コストは約40%削減。また、5年ごとのハードウェア更改作業も不要となり、システム管理部門の負荷は大きく低減されています。

※参考:独立行政法人情報処理推進機構「レガシーシステムモダン化委員会 第3回 事例紹介3(新しいタブで開きます)」より

富士通:自社モダナイゼーションにより4000システムを1000システムに圧縮

大手システムインテグレーターである富士通では、「ITガバナンスの不在」「個別最適システムの乱立」といった課題を解決するべく、自社システムのモダナイゼーションを実施しました。

同社では、各部門が構築したシステムなど合計で約4000システムが運用されていました。これらに必要な運用コストやメンテナンスコストを削減しつつ、迅速な改修対応やデータ活用を実現すべく、経営主導でモダナイゼーションを実施。システムの集約や廃止により約1,000システムにまで圧縮しました。

※参考:独立行政法人情報処理推進機構「レガシーシステムモダン化委員会 第3回 事例紹介2(新しいタブで開きます)」より

まとめ

今回は、レガシーシステムの課題やその解決策、実際の解決事例などについて詳しくご紹介しました。

特に歴史の長い企業であればあるほど、レガシーシステムは自社の負債として経営に大きな影響を与えます。機動的な改修が難しく、また維持コストも高止まりしてしまうレガシーシステムからの脱却が必要です。

当社、スパイスファクトリーでは、レガシーシステムからの脱却を目指されるお客さまの支援を実施しています。

システム刷新に向けた要件定義やUX再設計など、上流からご支援が可能です。レガシーシステムの刷新に悩まれている企業の方は、ぜひ当社までお声がけください。

当社は【2025年最新版】DX支援おすすめ企業4選(新しいタブで開きます)に掲載されています。

新規事業の成功の可否は、優れたアイデアを生み出せるかにより、大きく変わります。

一方で、新しく、価値のあるアイデアを生み出すのは簡単ではありません。そこで活用したいのが、アイデアを創出するために利用できる発想法やフレームワークです。

本記事では、新規事業のアイデア創出に活用できる12の方法について、詳しくご紹介します。

新規事業とは

新規事業とは、新しいビジネスモデルや市場を開拓する活動を指します。市場競争力の強化や事業リスクの分散、多角化戦略の実現、新たな顧客ニーズへの対応などを目的として行われます。

新規事業への取り組みは、企業の成長のために重要です。に経済産業省による「社会実装を支援するサポート産業の実態とその振興に関する調査(新しいタブで開きます)」では、新規事業による市場創出を目指した企業は、CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)が約4%に達しているというデータも紹介されています。これは、日本企業の平均である0.8%と比較すると非常に大きな数字です。

このように、他企業に先駆けて積極的に新規事業に取り組むことで、高い成長率の実現につながります。

https://spice-factory.co.jp/development/new-business-about/

特に近年では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及により、新しい技術やデータを活用し新規事業を展開することが重要となっています。

以下の記事では、DXを新規事業に取り入れるためのポイントをご紹介しています。併せてご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/design/how-to-incorporate-dx-into-new-businesses/

新規事業のアイデアを生み出す発想法・フレームワーク

新規事業の企画を行う際には、いかに優れたアイデアを発案できるかが重要となります。以下では、アイデアを生み出すための発想法やフレームワークをご紹介します。

https://spice-factory.co.jp/development/new-business-framework/

KJ法

KJ法は、日本の文化人類学者である川喜田二郎氏が考案したアイデアを整理するための手法です。

KJ法では、アイデアをカードに書き出し、それらをグループ化しながら関係性を見出すことで、新たな発想や洞察を得ることを目的とします。

KJ法は以下のステップで進めていきます。

  1. 各アイデアや情報をカードに書き出す。
  2. 書き出したカードを机や床に広げ、内容を確認しながらグループ化する。
  3. グループごとにラベルをつけ、各グループの共通点や相違点を分析する。
  4. 最終的に、グループ間の関係性を図にまとめ、新たな発想や解決策を導き出す。

KJ法は直感的かつ視覚的にアイデアを整理できるため、チーム内での意見交換やブレインストーミングの際に有用です。

マンダラート

目的の設定や深掘りに用いられるマンダラートもまた、アイデアの発想に用いることができるフレームワークです。

最初に、9つの枠に分かれたマトリックスの中央にテーマを配置し、その周囲に関連する8つの要素を記入します。その後、それぞれの要素を中央に移し、新たに関連する8つの要素を追加していきます。

この形で整理することで、幅広い視点からアイデアを発展させることができます。

デザイン思考


デザイン思考とは、ユーザー中心のアプローチを用いて創造的な問題解決を行うフレームワークです。新規事業の開発のみならず、ビジネス戦略や組織改革など、幅広い分野で応用されています。

デザイン思考は以下の5つのステップで進めます。

1. 共感(Empathize)
ユーザーのニーズや課題を深く理解するために、観察やインタビューを通じて共感します。ユーザーの視点に立ち、彼らの感情や行動を探ります。

2. 問題定義(Define)
得られた視点を基に、解決すべき具体的な問題を定義します。

3. アイデア創出(Ideate)
ブレインストーミングなどの手法を用いて、多様なアイデアを生み出します。まずはアイデアの量を重視し、自由な発想を行います。

4. プロトタイプ(Prototype)
選ばれたアイデアを基に、簡易的な試作品を作成します。プロトタイプは迅速かつ低コストで作成し、実際の検証に利用します。

5. テスト(Test)
ユーザーにプロトタイプを使用してもらい、フィードバックを得ます。このフィードバックを基に、アイデアやプロトタイプを改善し、再びテストを行います。

デザイン思考では、試行錯誤を行いながら解決策を磨き上げていきます。ユーザーの視点を大切にすることで、ユーザーにとって価値のあるアイデアを生み出すことができます。

ジョブ理論

ジョブ理論は、顧客が製品やサービスを利用する理由を理解するためのフレームワークです。

ジョブ理論では、顧客が特定の仕事を片付けるために製品やサービスを「雇う」という観点から顧客のニーズを分析します。

たとえば、ファーストフード店においてドライブスルーで商品を選択する場合、味やフレーバーなどよりも「通勤中の空腹と退屈を紛らわす」ことが顧客にとって重要となります。

よって、いかに味やフレーバーを工夫しても、効果のない施策となってしまいます。

このように、製品やサービスを利用することで、顧客がどのような仕事を達成しようとしているのかを理解し、適切な製品やサービスの提供につなげていきます。

SCAMPER法

SCAMPER法は、アイデアや製品の改良・革新のためのフレームワークです。アイデアを無から生み出すのではなく、既存のアイデアを様々な観点から深掘りする際に利用できます。

SCAMPERとは「代用(Substitute)」「組み合わせ(Combine)」「応用(Adapt)」「修正(Modify)」「転用(Put to another use)」「排除(Eliminate)」「逆転(Reverse)」の略称です。

これらの視点からアイデアを深掘りしていくことで、アイデアを深化させたり、新たなアイデアを発見したりすることができます。

PEST分析

PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4つから分析する手法です。

各要因の評価方法については下表のとおりです。

要因 概要
政治的要因 政府の規制、税制、貿易政策、労働法など、政治環境を評価
経済的要因 経済成長率、インフレ率、為替レート、失業率など、経済指標を分析
社会的要因 人口動態、文化、教育水準、ライフスタイルの変化などを評価
技術的要因 新技術の進展、研究開発の動向、技術インフラの整備状況を分析

PEST分析では、これら4つの視点から外部要因を分析し、企業の戦略的計画策定のインプットとします。

SWOT分析


SWOT分析では、自社を取り巻く内部・外部環境を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの視点から評価します。

SWOT分析を用いると、自社の現状を多角的に分析でき、競合との差別化やリスク回避策を立てやすくなります。

新規事業においては自社が持つリソースや設備、ノウハウなどの強みを理解しつつ、どのようなリスクがあるのかを把握するために活用できます。

3C分析


3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から市場を分析する手法です。

これらの観点を通して、自社の強みと弱みを理解し、競争優位性を確立するための戦略の検討を行います。

特に新規事業を立ち上げる際には、顧客ニーズの把握や競合他社の動向分析、自社のリソース評価といった観点が重要となります。

この3C分析を通じて、市場の現状を整理しつつ、参入機会を見極めることができます。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、市場内で自社が競合と比較してどのような位置にあるかを視覚的に示すためのフレームワークです。一般的に二次元のグラフとして描かれ、縦軸と横軸には顧客にとって重要な属性が配置されます。

たとえば、「価格と品質」や「デザインと機能性」といったポジショニングマップが考えられます。ポジショニングマップを作成すると、市場内での競合との比較が容易となり、自社の立ち位置を分析しやすくなります。

ペルソナ分析


ペルソナ分析は、顧客像を具体化するフレームワークです。架空の人物を「ペルソナ」として設定し、その属性や行動、ニーズ、課題を詳細に記述します。

具体的な顧客像を描くことで、新規事業の設計において実際の顧客視点を取り入れたアイデアを生み出すことにつながります。

また、ペルソナを定義することでチーム内での顧客理解を一貫させることができ、アイデア出しの方針に迷った場合に立ち返りやすくなる効果も得られます。

オープンイノベーション

オープンイノベーションとは、企業が自社内だけでなく、外部のリソースや知識を活用して革新的なアイデアや技術を生み出す取り組みのことです。

研究機関、大学、他企業、スタートアップなど、外部のパートナーと協力することで、新しい価値を創出することを目指します。

オープンイノベーションにより、自社にない技術や視点を活用した新規事業の立案が可能となります。また、外部リソースの活用により、研究開発のコストやリスクを分散できる点もメリットといえるでしょう。

アイデアを事業化する上では仮説・プロダクト検証が鍵

ここまでアイデアを生み出すためのフレームワークについてご紹介してきましたが、実際にアイデアを事業化する際には、仮説検証のプロセスも重要です。

以下では、アイデアを事業化するために重要となるビジネスの立ち上げ方や検証方法についてご紹介します。

適切なプロセスでビジネスを構築する

まず、新規事業開発においては適切なプロセスでビジネスを構築していくことがポイントです。
新規事業を立ち上げるための一般的なプロセスは以下のとおりです。

これらのプロセスに沿って、新規事業の企画から分析、実効性の検証までを進めていきます。

ステップ 詳細
1.責任者のアサイン 新規事業の責任者を選任しつつ、明確な責任と必要な権限を与える
2.アイデアの発想 ブレインストーミングや市場のトレンド分析を通じてアイデアを出す
3.事業ドメインの決定 多数のアイデアから実現可能で重要なものを選ぶ
4.事業理念・コンセプト・ビジョンの明確化 具体的な事業モデルや価値提供方法を明確化し、組織内で共有する
5.市場・競合・自社の把握 市場調査、競合調査、自社分析を行い、現状を把握する
6.事業アイデアの数値的な分析・予測 売上高、投資対効果、顧客獲得数、顧客満足度などの観点で事業を数値的に分析する
7.新規事業立ち上げ環境の整備 予算や必要なリソース、スキルを持った人材を確保する
8.要件定義の実施 新規事業にあたって求められるシステムの機能や性能を明確にする
9.施策の実行・効果検証 PoCを実施し、改善点を見つけブラッシュアップを行う

各プロセスの詳細については、こちらの記事で解説しております。併せてご覧ください。

※関連記事:新規事業とは?成功事例と共にポイントを解説します

仮説・プロダクト検証のスピードが鍵

特に検証のプロセスにおいては、スピード感が重要となります。市場が高速に変化する現代のビジネス環境においては、アイデアを生み出してから市場投入までに時間をかけすぎると、せっかくの優れたアイデアも時代遅れとなってしまう可能性があります。

スピード感のある検証を行うためには、アジャイル開発やPoC、MVP開発、ラピッド・プロトタイピングなどの手法が活用できます。

〇アジャイル開発
アジャイル開発は、ソフトウェア開発手法の一つで、迅速かつ柔軟にプロジェクトを進めることが特徴です。

アジャイル開発ではプロジェクトを小さな反復期間に分け、短期間で成果物をリリースし、それを基にフィードバックを受けながら改善を進めます。この手法により、変化する顧客のニーズや市場環境を迅速に理解することができます。

https://spice-factory.co.jp/development/agile-development-design-thinking/

〇PoC
「Proof of Concept」の略で、概念実証を指します。PoCでは実際に動作するプロトタイピングを構築し、検証を行うことで、ビジネスアイデアの実現可能性や効果を測ります。

PoC を行うことで、想定している仮説が正しいか、また技術的に実現可能かを低コスト・低リスクで検証できます。

https://spice-factory.co.jp/design/what_is_poc/

〇MVP開発
MVPとは、必要最小限の製品(Minimum Viable Product)の略です。MVPを構築することで、顧客の反応を素早く確認できます。コストと時間を節約しつつ、ユーザーのニーズに合った製品を早く提供できる点がMVP開発のメリットです。

https://spice-factory.co.jp/development/what-is-mvp-development/

〇ラピッド・プロトタイピング
ラピッド・プロトタイピングは、迅速性を重視して高速に試作品を作成する手法です。プロダクトの迅速なリリースが可能となり、新規事業の効果検証を素早く行うために有用なアプローチといえるでしょう。

https://spice-factory.co.jp/development/rapid-prototyping-about/

スパイスファクトリーが支援した新規事業開発の事例

最後に、当社が実際に支援した新規開発事業の事例をご紹介します。

【事例1】本田技研工業株式会社様

一つ目の事例は、世界有数の自動車メーカーである本田技研工業株式会社様のPoCプロジェクトです。当社は本プロジェクトにおいて、プロトタイプ開発から検証、システム開発への移行まで、一貫したサポートをご提供いたしました。

本プロジェクトにおいては、新規事業の市場ニーズを的確に把握するため、プロトタイプ開発とリサーチを2ヶ月で実施しました。ユーザー体験の導線まで設計されたプロトタイプを開発することで、具体的なフィードバックの取得に寄与できた事例です。

※参考:本田技研工業株式会社|PoC支援

【事例2】伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様

もう一つご紹介するのは、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様のDX新規事業の支援に関する事例です。こちらの事例では、メンバーがプロジェクトチームに加わり、プロトタイプの開発まで担当しました。

本プロジェクトにおいては高速でプロトタイプを開発しつつ、マーケターやUI/UXデザイナーによりデザインやリサーチ、デザインシンキングのワークショップも提供しました。

※参考:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社|DX新規事業支援

まとめ

この記事では、新規事業のアイデア創出に活用できる12の発想法についてご紹介しました。
発想したアイデアが有効であるかどうかは、検証してみないと分かりません。

素早くアイデアを検証するためには、ご紹介した通りアジャイル開発やPoC、MVP開発、ラピッド・プロトタイピングなどの手法を活用することがポイントとなります。

当社では、これまで多くのお客さまの新規事業開発を、アジャイル開発によるプロジェクト推進やPoC、MVP開発の実施などの観点から支援してまいりました。

新規事業開発に関してお悩みやご質問がある方は、ぜひお気軽に当社までご相談ください。

既存の業務プロセスに基づき行う仕事とは異なり、新規事業開発は自由度が高く、進め方に悩むケースも多いといえます。そこで有効活用したいのがフレームワークです。

アイデアの具体化から市場投入まで、新規事業開発に利用できるフレームワークはさまざまです。これらをうまく活用することで、不確実性の高い新規事業の道筋をつけやすくなり、新規事業の成功確率を高めることができます。

本記事は、新規事業開発において特に有用とされるフレームワークをご紹介します。

新規事業とは

新規事業とは、既存の製品やサービスとは異なる新しいビジネスモデルや市場を開拓する活動を指します。

一般的には企業の成長戦略の一環として行われるものであり、市場競争力の強化や事業リスクの分散、多角化戦略の実現、新たな顧客ニーズへの対応などを目的とします。

https://spice-factory.co.jp/development/new-business-about/

特に近年では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、新しい技術やデータを活用して新規事業を展開することが重要になっています。実際に、株式会社アシックスによる3Dスキャン技術を用いたカスタムシューズ開発事業や日本郵船株式会社によるデジタル船舶管理サービスなど、DXを用いた新規事業の事例は枚挙に暇がありません※。

※参考:経済産業省「DX銘柄2024選定企業レポート」(新しいタブで開きます)

https://spice-factory.co.jp/design/how-to-incorporate-dx-into-new-businesses/

新規事業を立ち上げるプロセス

新規事業を立ち上げる一般的なプロセスは以下のとおりです。

責任者のアサインからアイデアの発想、市場・競合・自社分析などを通して、事業のアイデアを整理し、施策の実行・効果検証へと進めていきます。

ステップ詳細

1.責任者のアサイン 新規事業の責任者を選任しつつ、明確な責任と必要な権限を与える
2.アイデアの発想 ブレインストーミングや市場のトレンド分析を通じてアイデアを出す
3.事業ドメインの決定 多数のアイデアから実現可能で重要なものを選ぶ
4.事業理念・コンセプト・ビジョンの明確化 具体的な事業モデルや価値提供方法を明確化し、組織内で共有する
5.市場・競合・自社の把握 市場調査、競合調査、自社分析を行い、現状を把握する
6.事業アイデアの数値的な分析・予測 売上高、投資対効果、顧客獲得数、顧客満足度などの観点で事業を数値的に分析する
7.新規事業立ち上げ環境の整備 予算や必要なリソース、スキルを持った人材を確保する
8.要件定義の実施 新規事業にあたって求められるシステムの機能や性能を明確にする
9.施策の実行・効果検証 PoCを実施し、改善点を見つけブラッシュアップを行う

各プロセスの詳細については、こちらの記事で解説しておりますので、併せてご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/new-business-idea/

新規事業におけるフレームワークの役割

新規事業の各プロセスを進めるにあたっては、フレームワークをうまく活用することがポイントとなります。

フレームワークとは、新規事業を始めとした複雑なプロジェクトを、体系的に進めるためのガイドラインや枠組みのことです。

新規事業は既存事業とは異なり、不確実性が高く、取りうる選択肢も豊富に存在します。

また、新規事業においてはチームメンバーによって想いが異なったり、方針のブレが生じたりするケースもあります。

フレームワークを利用することで、考慮漏れや分析漏れが減り、自社や市場環境を正確に把握できるようになります。

また、共通のフォーマットで議論を深めることで、メンバーやステークホルダーとの間で共通認識を持ちやすくなる効果もあります。

【フェーズ別】新規事業立ち上げにおける主要フレームワーク

以下では、新規事業の立ち上げにおいて活用できる主なフレームワークを、新規事業のフェーズごとにご紹介します。

アイデア創出フェーズ

まず、アイデアを生み出すために有効なフレームワークをご紹介します。

マンダラート


マンダラートは、目標の明確化やアイデアの発想に有用なフレームワークです。

まず、9つの枠に分かれたマトリックスの中央にテーマを置き、その周囲に関連する8つの要素を記入します。

次に、その8つの要素をそれぞれ中央に置き、新たに関連する8つの要素を追加する過程を繰り返します。

マンダラートにより、幅広い視点からアイデアを膨らませつつ、アイデアの整理と発展を効率的に行うことができます。

ペルソナ分析

ペルソナ分析は、新規事業のターゲットとなる顧客像を具体的に描くためのフレームワークです。

架空の人物像を「ペルソナ」として設定し、その人物の属性や行動パターン、ニーズや課題を詳細に記述します。

新規事業のターゲットを「30~40代」「会社員」といった単なる属性のみで定義すると、どうしてもターゲットが持つ考えや感情をうまく想像できません。

ペルソナとして実際にその方が存在するレベルまで具体化することで、新規事業の設計時に具体的な顧客の視点を取り入れやすくなります。

また、ペルソナにより顧客に対する理解をチーム内で一貫させる効果もあります。方針に悩む際にペルソナに立ち返ることで、新規事業の方向性も定めやすくなります。

SCAMPER(スキャンパー)法

SCAMPER法は、既存のアイデアや製品を改良・革新するためのフレームワークです。

SCAMPERとは「代用する(Substitute)」「組み合わせる(Combine)」「応用する(Adapt)」「修正する(Modify)」「転用する(Put to another use)」「排除する(Eliminate)」、「逆転させる(Reverse)」の7つの略称です。

これら7つの視点から検討することで、さらにアイデアを発展させていくことができます。

アイデア整理フェーズ

以下では、アイデアの整理に有効なフレームワークをご紹介します。

MVV

MVVとは、Mission(使命)、Vision(ビジョン)、Values(価値観)の略称です。Missionは企業の存在意義や目的を示し、Visionは長期的に目指すべき姿を描きます。

Valuesは企業が大切にする価値観や行動指針を明確にします。

新規事業においてはさまざまな選択肢から「やるべきこと」「やるべきでないこと」を判断していく必要があります。このとき、MVVを前提とした判断を行うことが重要です。

MVVを設定することで、事業全体の方向性や戦略、意思決定が一定の基準に基づく一貫したものとなります。

ロジックツリー

ロジックツリーは、問題を階層的に分解して整理し、原因や解決策を明確にするフレームワークです。

新規事業においては、事業を構成する要素をもれなく、体系的に整理するのに役立ちます。

たとえば「顧客満足度を高めるために必要な要素を分析する」「売上を高めるために必要な施策を分析する」といったユースケースで利用できます。

ロジックツリーを作成する際には、MECE(Mutually Exclusive、 Collectively Exhaustive)の原則に基づき、もれなく、重複なく事業に関連する要素を分解することがポイントです。

ビジネスモデルキャンバス


ビジネスモデルキャンバスは、事業モデルを視覚的に構築するためのフレームワークです。

顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客関係、収益の流れ、主要リソース、主要活動、パートナー、コスト構造の9つの要素から、事業がどのようなものかを整理します。

ビジネスモデルキャンバスを用いることで、事業の全体像を一目で把握し、各要素間の関係性や依存性を明確にできます。

チーム内やステークホルダーとの共通認識を作り上げる上でも有効なツールであり、ビジネスモデルキャンバスを作成しながら議論を深めることで、事業の方向性を整理しやすくなります。

市場分析フェーズ

以下では、市場分析に活用できるフレームワークをご紹介します。

PEST分析

PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4つから分析する手法です。

新規事業開発において必須となる外部要因分析において活用できるものであり、取り組む事業にどのようなリスクがあるのか、またどのような追い風があるのかを把握できます。

PEST分析を行うことで、新規事業に影響する外部環境を抜け漏れなく、総合的に評価することができます。

SWOT分析


SWOT分析では、新規事業を実施する上での自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を評価します。

新規事業における市場参入可否の分析を行ったり、事業計画の改善策を検討したりする際に活用できるフレームワークです。

SWOT分析を活用することで、自社の現状をプラス・マイナスのそれぞれの観点から分析できるため、競合との差別化方針やリスク回避策などを立てやすくなります。

3C分析


3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から市場を分析する手法です。

顧客・競合・自社の3つの要素は、新規事業開発において必須で分析すべきです。

3C分析を活用することで、企業は市場の現状や自社の参入可能性を整理しつつ、競合との差別化戦略と市場シェアの獲得策の検討につなげることができます。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、自社が市場内で競合と比較してどのような位置づけにあるのかを、視覚的に示すためのフレームワークです。

ポジショニングマップは二次元のグラフとして描かれます。縦軸と横軸には顧客にとって重要な属性が配置されます。たとえば「価格とデザイン性・機能性のポジショニングマップ」や「シェアと顧客満足度のポジショニングマップ」などが考えられます。

ポジショニングマップを作成することで、市場内の競合との比較がしやすくなります。新規事業開発においては、継続的にポジショニングマップを見直し、自社の強みや改善点をアップデートし続けることも重要です。

事業計画立案・要件定義フェーズ

次に、具体的な事業計画の立案やシステム開発における要件定義フェーズで有効となるフレームワークをご紹介します。

As Is / To Be

As Is / To Beフレームワークは、現状(As Is)と目標状態(To Be)のギャップを明確にし、改善計画を策定する際に使用されます。

As Isとして現在の課題を洗い出し、To Beとして望ましい姿を描きます。As IsとTo Beの整理結果を踏まえ、ギャップを埋めるための具体的なアクションプランを立案します。

新規事業開発においては、現状存在する市場や顧客の課題を分析し、それをあるべき姿にするためにはどのような製品やサービスの開発・提供が必要であるかを分析するために活用できるフレームワークです。

6W3H

6W3Hフレームワークは、Who、What、When、Where、Why、Whomの6つのWと、How、How much、How manyの3つのHから構成される問題解決の手法です。

これらの各観点で問題や課題を分析することで、解決策を見つけやすくします。

新規事業においては、提供する製品・サービスについて具体化する際に「誰がこの製品を利用するのか」「どこで提供するのか」「どのようにして販売するのか」といった観点を整理するために有効です。

各要素に対して具体的な回答を考えることで、アクションプランの策定につながります。

リーンキャンバス


リーンキャンバスは、ビジネスモデルを簡潔に視覚化するためのツールです。1ページのキャンバスに、顧客の課題、顧客セグメント、提供価値、ソリューション、チャネル、収益の流れ、コスト構造、主要指標、他社と比較した際の優位性についてまとめます。
リーンキャンパスを利用すると、ビジネスアイデアの全体像が明確となり、ブラッシュアップもしやすくなります。

さらに、新規事業の価値を把握するために必要な情報を簡潔にまとめられることから、経営層やチーム内での共通認識を形成するためにも役立ちます。

ビジネスロードマップ


ビジネスロードマップは、企業の中長期的な戦略を視覚化し、達成すべき目標や必要なアクションを示すフレームワークです。

一般的には横軸を時系列とし、事業の各段階における主要なマイルストーンやアクティビティを明確にします。

新規事業においては、目標とする売上高や利益、顧客数、市場シェアなどをマイルストーンとして、どの段階でどの程度の状態に到達しているかを示します。

ロードマップを作成することで、組織全体で共通の方向性を持ち、計画的な進捗管理を行えるようになります。

効果検証フェーズ

最後に、新規事業の効果を検証するフェーズで有効となるフレームワークをご紹介します。

PoC

PoCとは「Proof of Concept」の略で、概念実証を指します。PoCでは実際に動作するプロトタイピングを構築し、検証を行うことで、ビジネスアイデアの実現可能性や効果を測ります。

PoC を行うことで、想定している仮説が正しいか、また技術的に実現可能かを低コスト・低リスクで検証できます。

PoCについて詳しくは以下の記事もご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/design/what_is_poc/

また、PoCの実施を検討されている方、どのような支援を受けられるか知りたい方は、以下のサービス資料も併せてご覧いただけると、より詳しくPoCについて理解できます。

PoCの資料請求はこちらから

MVP開発

MVPとは、必要最小限の製品(Minimum Viable Product)を略した言葉です。MVPとして最小限のプロダクト・サービスを開発することで、顧客の反応を検証しながら改善することができます。

MVP開発のメリットとして、コストと時間を節約しながらユーザーのニーズに合った製品を迅速に提供できる点が挙げられます。

市場での製品の受け入れを早期に把握することで、大規模な失敗を回避しつつ、ユーザーからのフィードバックを基に製品を改良することで、競争力のある製品を開発することが可能になります。
MVP開発の詳細は以下の記事もご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/what-is-mvp-development/

ラピッド・プロトタイピング

ラピッド・プロトタイピングは、製品やサービスの開発プロセスにおいて、迅速性を重視して高速に試作品を作成する手法です。

当初、主に製造業において利用されてきた手法ですが、ソフトウェア開発においても2010年代初頭からシリコンバレーなどで広く採用されています。

日本においても近年、ベンチャー企業や教育機関を中心にラピッド・プロトタイピングへの注目が高まっています。

ラピッド・プロトタイピングは、プロダクトの迅速なリリースを可能とし、新規事業の開発や既存サービスの強化において重要な役割を果たす、有用なアプローチといえるでしょう。

より詳しくラピッド・プロトタイピングについて知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。

https://spice-factory.co.jp/development/rapid-prototyping-about/

フレームワークの活用メリット

新規事業におけるフレームワークの活用メリットは以下のとおりです。

〇ロジカルシンキングにつながる
フレームワークを活用することにより、新規事業において整理すべき自社の強みや市場環境、プロジェクトの制約などを論理的に整理しやすくなります。

〇アイデアの整理が可能となる
特に新規事業開発の初期段階では数多くのアイデアを整理する必要があります。フレームワークを用いることで、多様なアイデアを体系的に整理することが可能です。

アイデアの優先順位を明確にし、人的・物的なリソースを最適配分しやすくなります。

〇共有しやすい情報となる
フレームワークは、複雑な情報を簡潔かつ視覚的に整理するためのツールでもあります。

チーム内やステークホルダーと新規事業の方向性や戦略を共有する際にも、情報共有が容易となり共通理解を形成しやすくなります。

フレームワーク活用時の注意点

フレームワークは新規事業開発において有用ではあるものの、利用にあたっては以下の観点に注意すべきです。

〇適切なフレームワークの見極め
多種多様なフレームワークが存在する中で、どのフレームワークを利用すべきか見極めが必要となります。

プロジェクトの規模や対象となる市場を踏まえて、適切なフレームワークを選定する必要があります。一例として、3C分析やSWOT分析、PEST分析などは多くの新規事業で共通して利用しやすいフレームワークといえます。

〇フレームワークの利用を目的化しない
フレームワークを活用すること自体が目的になってしまうと、本来の目標を見失う可能性があります。フレームワークはあくまで手段であり、新規事業の成功を支えるためのツールです。

最終的にどのような情報を整理したいのかを明確にしたうえで、フレームワークをツールとして使うという意識が重要となります。

スパイスファクトリーが支援した新規事業開発の事例

最後に、当社が実際に支援した新規開発事業の事例をご紹介します。

【事例1】本田技研工業株式会社様

当社は、世界有数の自動車メーカーである本田技研工業株式会社様のPoCプロジェクトにおいて、プロトタイプの開発からその検証、およびシステム開発への移行に至るまで、一貫したサポートをご提供いたしました。

新規事業の市場ニーズを的確に把握するため、プロトタイプ開発とリサーチを2ヶ月という短期間で実施。ユーザーエクスペリエンスの導線まで詳細に設計された高解像度のプロトタイプを開発することで、具体的なフィードバックの取得に寄与しました。

※参考:本田技研工業株式会社|PoC支援

【事例2】伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様のDX新規事業の支援においては、当社メンバーがプロジェクトチームに加わり、プロトタイプの開発を担当しました。

開発にあたっては、チーム内の議論から導かれたコンセプトや機能要件を基に、高速でプロトタイピングを実施。

また、マーケターやUI/UXデザイナーも参加し、デザインやリサーチ、デザインシンキングのワークショップも提供しました。

※参考:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社|DX新規事業支援

まとめ

今回は、新規事業開発において利用できるフレームワークについて詳しくご紹介しました。

特に新規事業開発における効果検証フェーズにおいては、プロトタイプを利用したPoCや市場からのフィードバックを受けるためのMVP開発など、システムを活用することが有効となります。

当社では、これまで多くの企業の新規事業開発を支援して参りました。アジャイル開発に精通したエンジニアやUI/UXデザイナーなど、高いスキルを持った豊富な人材がPoC開発やMVP開発、リサーチなどトータルでサポートを行います。

「新規事業開発においてPoCやMVP開発を行いたい」「アジャイル型でプロダクトを開発したい」といった方は、ぜひ当社までお問い合わせください。

システム開発手法は大きくアジャイル型とウォーターフォール型に分かれます。

近年では変化に強いアジャイル開発が注目されるようになり採用事例も増えていますが、アジャイル開発とウォーターフォール開発にはどのような違いがあり、そしてどのように使い分けるべきものなのでしょうか。

本記事では、アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いや双方の使い分けについて詳しく解説します。

弊社スパイスファクトリーではアジャイル開発において豊富な実績があります。

弊社の概要やサービスプラン、過去の導入実績などをまとめた資料をご用意しました。気になる方はこちらからダウンロードしてください。

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い


以下ではアジャイル開発とウォーターフォール開発の概要をご紹介しつつ、両者の違いを解説していきます。

アジャイル開発とは

アジャイル開発とは、顧客に価値のあるソフトウェアを早く、継続的に提供するためのアプローチのことです。アジャイル開発では、一度に全ての機能を開発するのではなく、各工程を繰り返しながら徐々に開発を進めていきます。

「機敏に」という意味を表す「アジャイル」という言葉のとおり、必要に応じて方針を修正していけるのがアジャイル開発の大きなメリットです。

一口にアジャイル開発といっても、以下のとおり様々な開発手法が存在します。アジャイル開発というのはこれらの手法の総称です。

  • スクラム
  • XP(エクストリームプログラミング)
  • FDD(ユーザー機能駆動開発)
  • リーンソフトウェア開発
  • ラピッド・プロトタイピング など

アジャイル開発については以下の記事で詳しく解説していますので、よろしければ併せてご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/agile-software-development/

また、近年ではシリコンバレーをはじめとした海外を中心に、ラピッド・プロトタイピングと呼ばれる手法がソフトウェア開発領域においてもその有用性が認識されるようになりました。

以下の記事でラピッド・プロトタイピングについて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/rapid-prototyping-about/

ウォーターフォール開発とは

ウォーターフォール開発の特徴を一言で言えば、あらかじめ作る機能を決めたうえでシステム開発を行う点です。ウォーターフォール開発では、要件定義、設計、開発、テストといったフローでシステム開発を進めていきます。

要件定義工程で決めた内容を基に、設計工程へと進みます。設計で決めたことを開発し、開発した内容をテストしと、まるで水が流れていくかのように段階的に開発を行っていきます。

過去、ウォーターフォール開発はシステム開発における一般的な手法として採用されてきました。しかしながら、ビジネス環境が激しく変化する現代においては、アジャイル開発を採用するケースも増えています。

アジャイル開発とウォーターフォール開発の相違点

アジャイル開発とウォーターフォール開発にはどのような違いがあるのでしょうか。結論として、各観点での違いをまとめると以下の表のとおりです。

アジャイル開発とウォーターフォール開発の比較表

両者にはメリット、デメリットがありますが、変化に対する柔軟性が高く、また早い段階で実際にシステムに触ることができるというメリットがあるアジャイル開発は、変化の激しい現代において有効なシステム開発手法といえます。

一方で、開発内容があらかじめ確定しているシステムであれば、ウォーターフォール開発により各工程を厳密にクローズさせていくことで、品質の高いシステムを作りやすくなります。

以下では、さらに観点ごとに詳しく比較を行っていきます。

観点①:作業工程

それぞれの開発手法におけるもっとも大きな違いは、作業工程の考え方です。ウォーターフォール開発においては、要件定義・設計・開発・テスト・リリースと各フェーズを段階的に実施していきます。要件定義工程が完了するまで設計工程には進みませんし、設計工程が完了するまで開発工程には進みません。

各工程の最後にはフェーズ完了レビューを行い、作成した成果物の承認を行います。その工程で作成した成果物は、次工程へのインプットとなります。

一度作成した成果物は基本的に変更しません。要件定義で定めた内容をそのまま設計・開発していくこととなります。アジャイル開発においては、ウォーターフォール開発における要件定義~リリースまでのサイクルを短期間で繰り返し実施することとなります。

たとえば各サイクルを2週間程度とするのであれば、その2週間で開発する内容を決め、実際に開発を行い、テストし、操作できる形でリリースを行うまでの一連の作業を完了させます。

観点②:柔軟性

このような作業工程の違いは、柔軟性の違いに影響します。

ウォーターフォール開発においては、要件定義工程で決めたものをそのまま開発しますので、柔軟に開発内容を変更することはできません。ウォーターフォール開発においても変更を吸収するための方法として、変更管理という仕組みがありますが、変更管理での変更は最低限とすることが原則です。

開発内容の変更を途中で行うと、どうしても作業工数が大きくなりがちです。対してアジャイル開発は柔軟性に優れます。

2週間など短いサイクルで開発を繰り返すため、タイミングごとに今後開発する機能を検討し続けることができます。

開発内容が明確である場合は、各工程で開発内容を定義し、開発を進めていくウォーターフォール開発が有効です。一方で柔軟に開発内容を変更していきたい場合は、アジャイル開発が適しています。

観点③:テスト

テスト方法や頻度についても、それぞれの手法は異なります。ウォーターフォール開発においては、テストはテスト工程のみで行います。

一方で、アジャイル開発は、それぞれのサイクルごとにテストを行います。よって、アジャイル開発の方が高頻度でテストを行うこととなります。

アジャイル開発では繰り返しテストを行うため、一般的にテストは自動化します。

観点④:レビュー

発注者がレビューを行うことができるタイミングも異なります。
ウォーターフォール開発においては、基本的に実物を確認できるのは開発の最終工程である受入テスト段階となります。

もちろん、それまでに画面のイメージ図などで認識合わせを行うものの、実際のシステムを確認できるタイミングはプロジェクトの最終場面です。アジャイル開発では、各サイクルの完了時点で実際に触ることができる実物を完成させます。
よって、発注者は開発内容を実物の形で確認しやすくなります。

観点⑤:発注者側のかかわり方

発注者の方のかかわり方もそれぞれの開発手法で大きく異なります。ウォーターフォール開発においては、要件定義工程で集中的に開発内容を議論します。

その後、設計工程では要件定義内容を基に実際の画面イメージなどのレビューを行うものの、開発・テスト工程へと移るにつれてプロジェクトへの関わりは薄くなります。

最終的に受入テストの段階で、要件定義で定めた内容が確実に実装されていることを確認します。一方で、アジャイル開発においては発注者の方は開発中、継続的に深くプロジェクトに関わることとなります。

各サイクルにおいて何を開発するのか、開発しようとした機能は正しく実装されたかを、繰り返し検討・確認していきます。このように、アジャイル開発の方が、よりプロジェクトへのコミットメントを強く求められるという特徴があります。

アジャイル開発とウォーターフォール開発のメリットを比較


以下では、アジャイル開発とウォーターフォール開発の双方のメリットを比較していきます。

アジャイル開発のメリット

①変化に対する柔軟性

アジャイル開発の一つのメリットは、変化に対する高い適応力です。

アジャイル開発では、イテレーションごとに小規模な改善を繰り返し行い、最適なソフトウェアへと漸進的に近づけるアプローチを採用しています。そのため、プロジェクトの途中で新たな要件やニーズが生じても迅速に対応することが可能です。

たとえば、競合他社が新機能を導入し、その機能がユーザーの需要に適合している場合には、自社サービスにもその機能を追加する戦略をとる必要があります。

また、開発中のソフトウェアに不満点が見つかった際には、リリース前にそれを改善したいと思うこともあります。ウォーターフォール開発では、このような変更を加えるためには変更管理プロセスを経る必要があり、要件やスケジュールの見直しに時間がかかりオーバーヘッドも大きくなります。

一方で、アジャイル開発においては比較的容易に仕様変更が可能です。顧客の要求や市場の変化に迅速に適応でき、最終成果物の品質向上を図る点は、アジャイル開発の大きなメリットと言えるでしょう。

②早期フィードバックの実現

アジャイル開発では、各イテレーションにおいて最低限動作するソフトウェアを構築します。
必要最小限の機能を持ったソフトウェアを実際のユーザーに提供することで、早期に意見や満足度、ニーズを収集することができます。

新規事業開発の場面では、市場調査やユーザー調査を行って仮説を立てた上でプロダクトを開発しますが、そのプロダクトが市場やユーザーに適しているかどうかは、市場やユーザーの反応を見て確認します。

こうした「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)」を評価するためにも、アジャイル開発のアプローチが有効です。社内向けシステムでも早期フィードバックが重要です。プロジェクトの終盤で「思っていたシステムと違う」という事態はよくある失敗ケースといえるでしょう。

プロジェクトの初期段階で改善点を収集し、修正を行うことで、コストや開発期間を抑えつつ、利用者のニーズに沿ったソフトウェアを構築することが可能です。

③チームの一体化とモチベーション向上

アジャイル開発の特徴として、チーム全体で協力しながら開発を進める点が挙げられます。プロジェクトメンバーは一丸となってプロジェクトを推進し、「顧客」の役割を持つ人はいません。

ウォーターフォール開発では、請負契約によって発注側と開発側が明確に分かれ、発注側は開発側のプロジェクトマネージャーのみとコミュニケーションを取ります。このような体制は、時に「受注側への丸投げ」や「発注側の無関心」といった結果を招くことがあります。

一方でアジャイル開発では、発注側と開発側が一つのチームとしてプロジェクトを運営します。この一体感は問題発生時の迅速な解決につながります。チーム内のコミュニケーションが活発になることで、各メンバーの専門知識が最大限に活かされ、効率的な開発が可能になります。結果として、高品質なソフトウェアの開発が実現します。

このような体制のもとプロジェクトが進むアジャイル開発では、チームメンバーが協力して目標を達成する文化が醸成されます。各メンバーが自身の役割と責任を持ち、プロジェクトの進行状況を共有しつつ主体的に取り組むことができます。

この特性はメンバーの「やらされている感」を排除し、モチベーションアップにつながります。
ソフトウェアを作り上げるのは人間であるため、モチベーションはソフトウェアの品質において非常に重要な要素です。

ウォーターフォール開発のメリット

一方で、以下ではウォーターフォール開発のメリットをご紹介します。

①スケジュールとコストの予測しやすさ

ウォーターフォール開発の最大のメリットの一つは、スケジュールとコストの予測がしやすい点です。ウォーターフォール開発では企画構想・要件定義といった初期段階で詳細な計画を立てるため、開発のために必要なリソースやスケジュール、コストを明確に算出することができます。

基本的に当初立てた計画に沿って開発を進めるため、プロジェクトの進行中においても変更は最小限に抑えられます。これにより、予算の超過や開発の遅延といった事態も避けやすくなります。

②マネジメントのしやすさ

ウォーターフォール開発では、進捗管理、課題管理、品質管理などのマネジメント手法が体系化されており、ベストプラクティスに沿ったマネジメントを行うことができます。

進捗管理においては週次や月次などでの進捗確認の他、各フェーズの終了時にレビューを行うことで、プロジェクト全体の進捗状況を明確化します。また、課題管理表やタスク管理表によりドキュメントベースでプロジェクトの現状を整理していきます。

特にプロジェクト規模が大規模となると、マネジメントのしやすさは重要な観点です。サブチームごとに各種マネジメントを行いつつ、プロジェクト全体はプロジェクトマネージャーが統括するといった体制を組みやすいのもウォーターフォール開発の特徴といえるでしょう。

③明確な成果物

各手法はどのような使い分けが有効なのでしょうか。以下では、具体的なケースを想定してご紹介します。

ケース①:新規事業開発

新規事業開発においては一度に大規模な投資を行うのではなく、PoC(Proof of Concept:概念実証)などを通して事業の成功可否を段階的に判断していくのが一般的です。

このような進め方をする際に向いているのが「継続的な改善」を前提とするアジャイル開発です。アジャイル開発によりまず最低限動作するプロトタイプを構築し、ユーザーニーズの調査などを進めていくことで、より市場にフィットしたプロダクトを開発することができます。

なお、アジャイル開発を適用した新規事業開発の進め方については以下の記事でも詳しくご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

※関連記事:なぜ今、アジャイル開発×デザイン思考が新規事業開発に必要なのか

ケース②:基幹システムのモダナイズ

基幹システムをモダナイズする場合、基本的には現行システムと同じ機能を構築することとなります。このように、開発内容がある程度明確となっている場合は、ウォーターフォール開発が適しています。

要件定義工程で既存システムの分析を行い、開発内容を確定することで、品質面も担保しやすく、また開発スケジュールや総額のコスト見通しも立てやすくなります。

企業において予算とスケジュールが見通せることは意思決定において重要な観点ですので、これらを見通しやすいウォーターフォール開発が有効です。

ケース③:業務改革プロジェクト

システム導入により業務改革を行うような場合、両者をうまく組み合わせることも選択肢の一つとなります。

業務をそのままシステム化する場合は要件が明確となりますが、業務プロセスの変更など既存業務から改善を行う場合、アジャイル開発で実証しながら取り組みを進めることが有効です。

既存業務をそのままシステム化する領域についてはウォーターフォール開発を採用しつつ、検証を繰り返しながら改善していく領域についてはアジャイル開発を採用するような分担も検討できます。

ハイブリット開発を採用するケースもある


両者様々な特徴があるアジャイル開発とウォーターフォール開発ですが、前述した例のようにその両者を組み合わせたハイブリット型の開発手法が採用されることもあります。
ハイブリット開発における開発の流れは以下のとおりです。

  1. プロジェクト計画を明確に定める
  2. 要件定義、開発、テストはアジャイル方式で繰り返し実施する
  3. システム全体のテストを結合テスト・システムテスト・受入テストで行う

ハイブリット開発では、プロジェクトの最初と最後はウォーターフォール開発を採用し、中盤の実際に開発を行う工程はアジャイル開発を採用することで、両者の良いところを組み合わせています。

大企業における基幹システム開発など、コストやスケジュールへの制約が厳しくプロジェクト全体にアジャイル開発を適用することが難しいものの、開発内容自体は柔軟に検討を進めたい場合に、このようなハイブリット開発の採用が適しています。

以下では、実際にハイブリッド開発を採用した事例をいくつかご紹介します。

ハイブリット開発の事例 その①

エンタープライズ向けのシステムを再構築したある事例では、要件定義から基本設計までの上流工程と結合テスト以降のテスト工程をウォーターフォール開発で行い、詳細設計やプログラミングはアジャイル開発で行うハイブリッド開発を採用しました。

本事例では、スクラムをベースにテスト駆動開発や継続的インテグレーションなどの手法を利用し、品質向上を図りました。結果として、ウォーターフォール開発を採用したケースよりも、バグの抽出件数が増加し、システムの品質向上を実現。生産性についても、10%程度改善を図れたとのことです。

※参考:アジャイルプロセスにおける実践的な品質向上施策の適用事例(新しいタブで開きます)

ハイブリット開発の事例 その②

次に紹介する事例は、ある損害保険会社がパッケージソフトウェアをベースにハイブリッド開発により基幹業務システムを開発した事例です。

本プロジェクトでは要件定義工程の後、画面インターフェイスの定義から結合テストまでをアジャイルにより開発しました。

プロジェクトはスクラムをベースとして進めつつ、プランニングポーカーやかんばんなどの手法も採用。プロジェクト推進にあたっては、社外メンバーによるアジャイル研修も活用し、アジャイルマインドをインプットした事例です。

※参考:アジャイル型開発におけるプラクティス活用事例調査 調査報告書(新しいタブで開きます)

まとめ

この記事では、アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いについて詳しくご紹介しました。

両者は「どちらが優れている」というものではなく、使いどころに合わせて採用するべきものです。「要件が明確であるか」「柔軟な変化が求められるか」「繰り返し検証を行うべきものか」などの観点で、どちらを採用するか検討してみてください。

特に、新規事業・新サービスの開発においては、アジャイル開発が適している場面も多々あります。これらの取り組みにおいては、プロダクトのUXデザインも重要となってきます。プロジェクトにおいて、UXデザイナーが参画することも重要です。

当社では、アジャイル開発の豊富な知見を生かし、密なコミュニケーションを行いながらお客さまのビジネスを具現化していくことを強みとしています。
新規事業開発においては、企画・構想や要件定義の段階からUXデザイナーが参画し、よりユーザーに届きやすいプロダクトの開発を支援します。

開発に関して悩まれている方、アジャイルでシステム開発を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

また、弊社スパイスファクトリーは豊富な実績を持ち、これらのプロセスを効率的に進めるためのサポートを提供いたします。

詳細を知りたい方は、こちらからサービス紹介資料をダウンロードしてください。

当社は【2025年最新版】アジャイル開発おすすめ企業4選(新しいタブで開きます)に掲載されています。

柔軟な開発を実現しやすく、サービスインまでの期間を短縮しやすいアジャイル開発は、新規サービス開発や DX推進などにおいて有効な手法です。

アジャイル開発を実施する上では、アジャイル開発手法の一つであるスクラム開発を採用するケースも多いですが、アジャイル開発とスクラム開発にはどのような違いがあるのでしょうか。

この記事では、スクラム開発を得意とする当社、スパイスファクトリーが、スクラム開発の概要やそのメリット・デメリット、アジャイル開発との違い、主な事例などについて解説します。

また、弊社スパイスファクトリーではアジャイル開発において豊富な実績があります。

弊社の概要やサービスプラン、過去の導入実績などをまとめた資料をご用意しました。気になる方はこちらからダウンロードしてください。

アジャイル開発とは?


アジャイル開発とは、ビジネス価値の最大化に向けて、顧客に価値のあるソフトウェアを早く、継続的に提供するためのアプローチのことです。

アジャイル開発では、一度に全ての機能を開発するのではなく、各工程を繰り返しながら徐々に開発を進めていきます。「アジャイル=機敏に」という言葉のとおり、必要に応じて方針を修正していけるのがアジャイル開発の大きなメリットです。

アジャイル開発については以下の記事でも詳細を解説していますので、よろしければご参照ください。

https://spice-factory.co.jp/development/agile-software-development/

ウォーターフォール開発との違い


過去、一般的なシステム開発においてはウォーターフォール開発と呼ばれる手法が利用されてきました。
従来広く利用されてきたウォーターフォール開発では、要件定義からリリースまで上流から下流に流れる形で進み、前の工程に戻ることはありません。

一方でアジャイル開発では各工程を繰り返すことで、一度に 100点を取るのではなく、進みながら方針を修正することができます。
両者にはメリット、デメリットがありますが、変化に対する柔軟性が高く、また早い段階で実際にシステムに触ることができるというメリットがあるアジャイル開発は、変化の激しい現代において有効なシステム開発手法といえるでしょう。
アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いについては、以下の記事でも詳しく解説しております。併せてご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/difference-agile-waterfall/

アジャイル開発の一つ「スクラム開発」とは?

スクラム開発は、アジャイル開発の一手法という位置づけのものです。以下では、スクラム開発についてご紹介します。

スクラム開発の概要

スクラム開発とは、少人数のチームで「スプリント」と呼ばれる1~4週間程度の開発期間を繰り返すことで、システムを作り上げていく手法のことです。

スクラム開発という言葉は、ラグビーのスクラムに由来しています。ラグビーのスクラムでは、チームメンバーが肩を組んでチームワークを発揮しますが、スクラム開発でも同様にチームが一丸となって開発を進める行うことが特徴です。

スクラム開発はアジャイル開発手法の一つであり、その中でも代表的なものといえます。
スクラム開発の流れや役割、イベントに関しては以下の記事で詳細に解説していますのでぜひ参照してください。

https://spice-factory.co.jp/development/about-scrum-event/

スクラム開発の特徴

スクラム開発では「経験主義」と「リーン思考」という思想をベースとしています。経験主義として経験を重要視し、観察に基づき意思決定を行います。また、リーン思考としてムダを省き、本質に集中することを大切にします。

このような思想の下、スクラム開発は以下の要素を三本柱としています。

〇透明性
スクラム開発において、プロセスや作業は実行する人とその作業を受け取る人が把握できるようにします。透明性の低い成果物は、リスクを高める意思決定につながる可能性があります。透明性を高めることで、作成したプロダクトの価値を明確に確認できます。

〇検査
スクラム開発で作成された成果物とゴールに向けた進捗状況のチェックを重視します。これは、望ましくない状況や発生した問題を素早く検知するためであり、スクラム開発では検査のためのイベントが用意されています。

〇適応
開発プロセスに課題があったり、成果となるプロダクトが受け入れられなかったりした場合は、プロジェクトの進め方や成果物を素早く調整します。前述した検査を通して課題や問題を検知したら、正しい目標に向けて瞬時に適応することが求められます。

スクラムガイドとは

スクラム開発を理解する上で押さえておきたいのがスクラムガイドです。スクラムガイドは、スクラム開発のフレームワークを説明するドキュメントであり、スクラムの原理原則や価値観、基本的なルール、役割、イベントなどについて解説されています。

スクラムガイドは、スクラムの創設者であるジェフ・サザーランドとケン・シュウェーバーによって作成されたものであり、現在でも継続的に更新されています。

無料で公開されており、誰でも閲覧可能です。スクラムガイドの内容は非常にシンプルで文章量も多くありませんが、実際のスクラム運用において有用な情報が詰まっています。

スクラム開発について学びたい方は、まずスクラムガイドを一読することをおすすめします。

スクラム開発に必要な体制


前述した通り、スクラム開発には「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「開発者」という3つの役割が存在します。以下では、それぞれの役割についてご紹介します。

プロダクトオーナー(PO)

プロダクトオーナーとは、プロダクトの要求管理、機能の優先順位付け、品質チェックを行い、プロダクトの価値最大化を目指す責任者です。

プロダクトオーナーはプロダクトの成果に責任を持ち、プロダクトの方向性を決めます。方向性を明確にするためにも、一つのプロダクトにつきプロダクトオーナーを担当するのは一人です。プロダクトオーナーは、スクラムチームから生み出されるプロダクトの価値を最大化することを目指します。

プロダクトオーナーの役割や必要なスキルなどについては以下の記事にて詳しく解説しておりますので、よろしければご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/what-is-productowner/

スクラムマスター(SM)

スクラムマスターは名前の通り、スクラム開発の専門家として活動し、スクラムの理論と実践をチームメンバーに理解させるための支援や、問題解決を担当します。

スクラムマスターは「スクラムを確立させる責任者」と表現できます。ウォーターフォール開発ではプロジェクトの責任者はプロジェクトマネージャーが担いますが、プロジェクトマネージャーとスクラムマスターの役割は少し異なります。
スクラムマスターはプロジェクトがスムーズに進むようサーバントリーダーとして奉仕します。従って、プロジェクトマネージャーが行うようなタスクの割り当てや進捗管理などのマネジメント作業は行いません。

スクラムマスターについてさらに詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/what-is-scrum-master/

開発チーム(DEV)

開発チームはシステムの開発を担当し、スプリントでプロダクトを改善する専門家です。開発チームはプロダクトの品質に責任を持ちます。
スクラムにおける開発チームは3~9人が適切とされます。少人数だと属人化しやすく、大人数だとコミュニケーションコストが増えます。

スクラム開発においては、ウォーターフォール開発でよくみられる「特定作業のみを行うサブチーム」は設置しません。全員が機能横断的に設計からドキュメント作成まで多様な作業を担当することが求められます。各担当者に明確な役割分担はなく、「自己組織化」によりチームで合意形成を図りながら進めます。

スクラムを採用するメリット


以下では、主にビジネス側においてスクラム開発を採用することでどのようなメリットを得ることができるのかをご紹介します。

メリット①:優先度やサービスの方向性の柔軟な変更

一度に全機能の要件定義を実施するウォーターフォール開発と比較して、スクラムでは開発単位(スプリント)で要件の変更ができます。実際に開発されたシステムを見て、機能面やデザイン面の改善も可能です。

現代のビジネスはスピードが重要であり、また環境の変化に追従するために方向性を修正していかなければなりません。このような環境においては、変化に強いスクラム開発が有効な手段となります。

メリット②:早期リリース

スクラム開発では継続的な機能拡張を前提としているため、早期にリリースしたうえで、段階的に機能を追加していくというアプローチが可能となります。
これにより、新規事業開発において MVP(Minimum Viable Product:顧客のニーズを満たす最小限のプロダクト)を構築し、想定ユーザーに評価してもらうような取り組みもしやすくなります。評価結果を受け、機能の修正や追加などを行っていく際にも、スクラムであれば対応しやすくなります。

メリット③:チームのモチベーションアップ

スクラム開発の採用は、チームのモチベーションアップという観点でも効果があります。
スクラム開発では、おのおのが自律的・主体的に作業を担当し、チームに貢献することが求められるため、メンバーの自主性と責任感が向上します。また、定期的なミーティングにより継続的なフィードバックを受けることで、コミュニケーションも促進されます。スクラム開発は、チーム全体の一体感とモチベーションが向上し、結果として組織全体のパフォーマンスが向上する仕組みであるといえるでしょう。

スクラムを採用するデメリット

一方で、スクラムにはデメリットもあります。

デメリット①:メンバーにスキルが必要

スクラム開発では、ウォーターフォール開発のように正確に定められた設計書に沿って機能を開発するわけではなく、エンジニアの柔軟性が重要となります。また、少人数でプロジェクトを進めることから全員が主役になる必要もあります。

このような理由から、チームメンバーには一定レベル以上のスキルが必要です。十分にスキルを持ったメンバーでチームを構成することが求められます。
近年では、IT人材の不足状況もあり、人材確保が難しい状況にあります。スキルのあるベンダーの選定や活用もスクラムでシステムを構築していく上では重要といえるでしょう。

https://spice-factory.co.jp/development/insufficient-development-resources/

デメリット②:開発着手時点でスコープ・スケジュール・予算が確定しない

ウォーターフォール開発では、要件定義工程にて開発のスケジュールと工数を確定させます。
一般的には開発工程は請負契約となり、スコープとなる機能を実現するためのスケジュール・コストに対する責任はベンダー側にあります。
また、仕様書に定められた要件の範囲内であれば、コストは一定となります。

一方で、スクラムにおいてはスプリント単位での短期的なスケジュールや工数は確定させるものの、全機能のスコープ・スケジュール・コストは事前に確定させません。契約形態としても準委任契約が一般的であり、成果物に対する責任はベンダー側にはありません。
スクラム開発においてはスコープ・スケジュール・コストを柔軟に変更できるメリットはあるものの、契約面でこれらが担保されているわけではないので注意が必要です。

このような理由から、スクラム開発を行う際には信頼できるパートナーを見つけたうえで、協力できる体制を構築することが重要といえます。

デメリット③:チーム内のコミュニケーションが重要となる

スクラム開発において、チーム内のコミュニケーションは非常に重要です。
スプリントごとに柔軟にスコープやスケジュールを変更できる点がメリットである反面、全体のスコープやコストが事前に確定しないため、常にチームメンバー間での密な連携と信頼関係が求められます。
チーム内のコミュニケーションが不十分であれば、スクラム開発の強みが生かされないどころか、プロダクト開発に支障が生じる事態ともなりかねません。

よって、スクラム開発を成功させるためには、メンバー同士が適切にコミュニケーションをとる必要があります。

スクラム開発の流れ


具体的に、スクラム開発はどのような流れで進めていくものなのでしょうか。以下では、スクラム開発の具体的な流れは以下のとおりです。

スクラムチームの体制構築

まず初めに、スクラム開発を実施していくうえでのチームを構築します。前述のとおり、スクラム開発では以下の3つのロールが存在します。
・プロダクトオーナー
・スクラムマスター
・開発チーム
まずこれらの役割を誰が担当するのか決定し、スクラム開発プロジェクトの立ち上げを行います。

プロダクトゴールおよびプロダクトバックログの作成

スクラムでは、チームの目標はプロダクトゴールとして定めたうえで、ゴールを実現するために必要となる機能をプロダクトバックログとしてまとめます。プロダクトバックログの要求項目は優先順位をつけ、各スプリントで優先順位の高いものから開発します。
プロダクトゴールやプロダクトバックログの作成はプロダクトオーナーが行いますが、必要に応じてスクラムマスターが支援します。

スプリントプランニング

スクラム開発では、一定の期間である「スプリント」を繰り返し、計画・設計・開発・テストを行います。スプリントは通常1週間から1カ月程度で設定され、チームの成熟度や人数、ビジネス状況によって決まります。
スプリント開始時にはスプリントプランニングを行い、開発する機能とゴールを定義します。各スプリントでは、チームのリソースと見積もりを基に、実現可能な範囲で開発を進めます。
スプリントの完成条件はプロダクトオーナーと開発チームが合意を行います。

スプリントの実施

各スプリントでは、スプリントプランニングで定義した開発範囲を目標とし、コーディングとテストを進めます。スプリントの完了時までに、実際に利用できる形でシステムを構築します。スプリント期間中は毎日デイリースクラムを行い、本日の作業や進捗をチームで報告します。デイリースクラムは15分程度で同じ場所・時間に実施することが一般的です。
通常は開発チーム内のみでデイリースクラムを行いますが、スクラムマスターやプロダクトオーナーも参加する場合があります。

スプリントレビューの実施

スプリント終了時には、主要なステークホルダーを招き、今回開発した機能のデモを行うスプリントレビューを実施します。
スプリントレビューでは、要求通りに開発が進んでいるか、改善点が無いかを検討します。そして、この結果を元に、プロダクトゴールに向けてプロダクトオーナーはプロダクトバックログの内容や優先順位を見直します。

スプリントレトロスペクティブによる振り返り

スプリント終了後にはスプリントレトロスペクティブと呼ばれる振り返りを行います。
スプリントレトロスペクティブでは、スプリント実施中における課題の特定や改良案をチームで検討します。
改善策を次のスプリントに取り入れることで、次回以降のスプリントの質を高めつつ、チーム全体の成長も目指します。
ここでは簡単にスクラム開発の流れについてご紹介しました。より詳しくスクラム開発の流れについて知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/about-scrum-event/

また、スクラム開発の中でも、特にスプリントについて知りたいという方は、以下の記事も参考になるはずです。併せてご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/what-is-sprint/

アジャイル開発・スクラム開発を採用した主な事例

当社、スパイスファクトリーでは、アジャイル開発やスクラム開発を採用した多数の開発事例があります。ここでは、そのうち 3つの事例をご紹介します。

東京都デジタルサービス局 | アジャイル型方式によるプロトタイプ開発委託

東京都は、デジタル技術を活用した行政の革新を目指し、都政のQOS(Quality of Service)向上を図るために、2021年にデジタルサービス局を発足させました。
同局では、国際的な競争力の強化や、都民生活の質と利便性の向上を目指し、新たな価値を迅速かつ柔軟に生み出すためにアジャイル開発手法を積極的に採用しています。
当社は、このたび、その取り組みの一環として企画された4つのアジャイル型プロトタイプ開発プロジェクトを担当いたしました。

https://spice-factory.co.jp/works/14765/

株式会社トムス・エンタテインメント|ProGrace開発によるアニメーション制作DX

株式会社トムス・エンタテインメントは、日本のアニメーション制作業界が抱える制作面、ビジネス面、そして人材育成に関するさまざまな課題を踏まえ、「アニメSDGs -2030年までに持続可能な日本アニメ産業の未来を創る-」というビジョンを掲げています。
当社では、アニメ業界のDXを推進する「ProGrace(プログレース)」の開発を継続的に支援しております。
本記事では、同社のプロジェクトご担当者様に、プロジェクトの背景や今後の展望について詳しくお話を伺いました。

https://spice-factory.co.jp/works/17700/

株式会社ネクスウェイ | 薬局向けDI (薬剤情報) ポータルサービス「アスヤク薬局ポータル」の開発

株式会社ネクスウェイ様では、薬剤情報(DI)を統合して閲覧・管理できる「アスヤク薬局ポータル」を提供しております。当社は、同サービスをアジャイル型で開発するにあたり、サポートを行いました。
同サービスは、デジタル化とアナログの共存が求められるDX過渡期に対応するため、Web閲覧やメール配信に加え、郵送にも対応しています。また、メールの到達や開封、クリックの計測、および郵送の配送、不達の計測も行い、施策の効率性を測定できます。
開発にあたっては、宛先情報をまとめて管理するため、表記揺れのある住所や薬局情報のマッチング処理の開発も行いました。マッチング精度を高めるため、レーベンシュタイン距離と呼ばれる文字列間の近似度を測る手法を採用しています。

https://spice-factory.co.jp/works/14733/

変化の激しい現代にあった開発手法がスクラム開発

この記事では、スクラム開発の概要やそのメリット・デメリットなどについてご紹介しました。
ビジネスの速度が向上している現代において、柔軟に開発内容を変更できるスクラム開発の有効性は高いといえます。
一方で、スクラム開発を成功させるためには高いスキルを持ったエンジニアが必要となります。

スパイスファクトリーでは「Form a scrum」という企業文化に基づき、スクラムをはじめとしたアジャイル開発によってこれまで多くのお客さまのシステム開発を支援してまいりました。アジャイル開発でプロジェクトを実施したいという方は、ぜひお声がけください。

また、弊社は豊富な実績を持ち、これらのプロセスを効率的に進めるためのサポートを提供いたします。

詳細を知りたい方は、こちらからサービス紹介資料をダウンロードしてください。

当社は【2025年最新版】アジャイル開発おすすめ企業4選(新しいタブで開きます)に掲載されています。

企業の成長と競争力を維持するためにも、新規事業の立ち上げは企業において不可欠な取り組みです。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代においては、新規事業の成功はますます重要となっています。

これまで当社、スパイスファクトリーでは、経営課題から現場の事業課題解決まで全方位で関わる360°デジタルインテグレーターとして、多くのお客さまの新規事業開発をデジタル活用の観点から支援してまいりました。

今回はその経験も踏まえながら、新規事業の定義からその重要性、そして具体的なプロセスについて、成功事例を交えながら詳しく解説していきます。

新規事業とは

まずは新規事業の定義や重要性など、基本的な要素についてご紹介します。

新規事業の定義

新規事業とは、既存の製品やサービスとは異なる、新しいビジネスモデルや市場を開拓する活動を指します。

企業の成長戦略の一環として行われるものであり、市場競争力の強化や事業リスクの分散、多角化戦略の実現、新たな顧客ニーズへの対応などを目的とします。

近年ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、デジタル技術やデータを活用して、これまでにない切り口で新規事業を展開することが重要になっています。

関連記事:DXを新規事業に取り入れるには?事例に学ぶコストを抑えて小さく始める方法

https://spice-factory.co.jp/design/how-to-incorporate-dx-into-new-businesses/

新規事業の重要性と必要な理由

新規事業が重要である理由はさまざまですが、ひとつは企業の成長と競争力の維持のためです。市場は常に変化しており、新しいニーズや技術が次々と登場します。

これに対応し続けるためには、既存のビジネスモデルに依存するだけでは不十分であり、新しい事業の創出が必要となります。

また、事業リスクの分散という観点からも新規事業の開発が求められます。既存の事業が市場の変化や競合の浸透によって衰退するリスクを軽減するためにも、事業を複数持つことは有効です。

一方で、日本企業においては新規事業の創出や市場形成が苦手という現状もあります。
経済産業省による「社会実装を支援するサポート産業の実態とその振興に関する調査」(新しいタブで開きます)では、市場に投入された新規事業の占める売上高の割合は、全体のわずか6.6%にとどまっているという結果も紹介されています。これは、米国の11.9%と比較すると大きく差がある状況です。

同資料では、ルール形成を含めて市場創出を目指した企業は、CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)が約4%に達しているというデータも紹介されています。これは、日本企業の平均である0.8%と比較すると非常に大きな数字といえます。

このように、日本においては新規事業への取り組みを苦手とする企業が多く、他企業に先駆けて積極的に新規事業に取り組むことで、高い成長率の実現につながります。

新規事業を立ち上げるタイミング

新規事業を立ち上げるべきタイミングは「市場の環境」と「自社の環境」という2つの観点から見定めます。

市場環境の観点では、消費者のニーズやトレンドの変化を捉えることが重要です。新しいライフスタイルや嗜好が生まれている場合、それに応じた新規事業を展開することで競争優位を確立できます。

たとえば、以下のような例が考えられます。

  • リモートワーク向けのコラボレーションツール
  • ヘルスケアを意識したデバイスやアプリの提供
  • AIを活用したタレントマネジメントや人材の採用

自社環境の観点では、既存のビジネスが成熟しているかどうかが一つのポイントです。市場が飽和状態にある場合、新たな成長の機会を見つけるために新規事業を展開することが効果的でしょう。

また、競合他社が新しい技術やサービスを導入している場合、それに対抗するためにも新規事業の立ち上げが必要となります。

新規事業を立ち上げるプロセス


以下では、新規事業の一般的な立ち上げプロセスについてご紹介します。

1. 責任者のアサイン

新規事業の立ち上げには責任者が不可欠です。責任者は、事業の方向性を決定し、戦略を策定し、チームを指揮する役割を果たします。

新規事業の立ち上げは大きな負荷がかかるものであるため、責任者は専任で担当するべきでしょう。経営層や上司は、適切な人材を選定したうえで明確な責任と権限を与えることで、責任者が動きやすい環境を作ります。

責任者の選定は新規事業の成否を左右するため、リーダーシップや業界知識、戦略的思考を持つ人物を選ぶことが求められます。

2. アイデアの発想

まずは精度ではなく数を重視して、アイデア出しを行っていきます。ブレインストーミングや市場のトレンド分析を通じて、多様な視点から新規事業の種を見つけ出します。

発想したアイデアが優れているかを確認するためにおすすめなのが「他人に話してみる」という方法です。自分自身では優れたアイデアだと思っていたものも、他人に話してみると思ったよりも価値が伝わらなかったりもします。

3. 事業ドメインの決定

事業ドメインとは、企業が事業を展開する領域や範囲、競争領域を指す言葉です。

多数のアイデアの中から、実現可能性が高く、戦略的に重要なものをフォーカスする事業ドメインとして決定します。

事業ドメインを選ぶ際には、企業の強みやリソースを最大限に活用できる領域であることが求められます。

たとえば、すでに木材の加工技術や製造設備を保有している家具製造会社であれば、その技術を活用して新たに木製のPCやマウスを製造する事業に参画すると、シナジー効果を得ることができます。

事業ドメインの選択にあたっては、後述する「SWOT分析」や「PEST」分析などのフレームワークの活用も有効です。フレームワークを利用することで、自社が置かれている環境や参入すべき事業ドメインを把握しやすくなります。

4. 事業理念・コンセプト・ビジョンの明確化

選定されたアイデアを基に、事業の理念やコンセプト、ビジョンを整理します。新規事業開発においてよくあるのが、方向性のブレです。

メンバーが限られる初期フェーズにおいては方向性が明確であっても、プロジェクトが進んでいくうちにメンバーも増え、統制がとりにくくなっていきます。

このような事態を防ぐためにも、具体的な事業モデルや価値提供の方法を策定し、プロジェクトメンバーやステークホルダーと共有することが重要です。

5. 市場・競合・自社の調査

新規事業開発を進める上では、必ず市場・競合・自社に関して調査や整理を行い、現状を把握します。

市場調査

市場については、ニーズ調査として想定顧客層へのヒアリングやアンケートなどを行います。調査を通して、想定する製品やサービスは市場とマッチするのか、どのような点を重視すべきなのかを把握します。

自社にニーズ調査のノウハウがない場合、調査会社を活用するのもおすすめです。市場調査のノウハウやデータを持った調査会社を利用することで、効率的な市場調査が可能となります。

スパイスファクトリーで産学連携の一環として、東京大学未来ビジョン研究センター/グローバル・コモンズ・センター様のサステナビリティ消費行動に関する実証実験の例
参考:https://note.com/spice_factory/n/n810c565a2432(新しいタブで開きます)

競合調査

競合調査として、対象となる市場にはどのような競合が存在し、各社がどの程度のシェアを持っているのかを整理します。

既存の製品やサービスが存在する場合、その改善点を洗い出し、新たな市場機会を探ることが一つのアプローチとなります。実際に製品やサービスを利用してみて、不便に感じる点や不満点などが見つかれば、新規参入にあたって絶好のブラッシュアップポイントとなるでしょう。

自社分析

最後に、自社の分析を行います。企業自身の強みや弱み、所有する設備や人材などのリソースを把握し、競争優位性を確保するための戦略を検討します。

なお、このように市場・競合・自社の3つの観点で分析を行うことを3C分析と呼びます。3C分析についての詳細は後述します。

6. 事業アイデアの数値的な分析・予測

収集したデータを基に、事業の具体的な分析と予測を行います。新規事業は当然ながら利益の確保を目的として行われるものですので、数字に基づく根拠ある分析が必要です。

新規事業の効果を測定するためによく用いられる指標は以下のとおりです。

項目 概要
売上高 事業からどの程度の売上を生み出すか
投資対効果 投資額に対してどの程度の期間・割合で収益が回収できるか
顧客獲得数 事業においてどの程度の顧客を獲得するか
顧客満足度 顧客は製品・サービスに満足しているか
顧客生涯価値 獲得した顧客はトータルでどの程度の利益を提供するか

新規事業の立ち上げ段階では、各指標が各年でどのように推移していくのか、見込みを立てます。

各指標は相互に関係するものです。顧客数が増えれば売上高も増える傾向にありますし、投資対効果も出しやすくなります。

7. 新規事業立ち上げ環境の整備

新規事業を成功させるためには、さまざまなリソースを確保する必要があります。まずは予算の確保です。

新規事業の投資判断にOKを出してもらうためには、経営層の承認が必要となります。これまで整理してきた事業コンセプトや投資計画を基に、経営層への説明を行い、合意を得ます。

予算に基づき、必要なリソースの確保を進めます。必要なスキルを持った人材の確保、必要な設備や材料の調達、デジタルインフラの整備などを行います。

特に難しいのが、スキルを持った人材の確保です。デジタル技術を活用した事業を行う場合は、デジタルに精通した人材が不可欠となります。社内にエンジニアがいない場合、社外人材の確保も検討します。

8. 要件定義の実施

特にデジタル技術を利用した新規事業開発を行う場合には、必ず要件定義のプロセスを設けます。要件定義とは、開発するシステムに求める機能や性能を定義するプロセスであり、システム開発の最序盤に行う作業です。

要件定義を行わない、もしくは不十分なままプロジェクトを進めてしまうと、プロジェクトが迷走する原因となります。

要件定義を通して初めて、実際に構築するシステムの具体像が見えてきます。提供する機能やサービスの提供方法など、具体的なプロダクトが明確化され、関係者間での認識が統一されます。

また、要件定義を行うことで必要な費用やスケジュールも確定されます。
要件定義について詳しくは以下の記事でもご紹介しております。併せてご覧ください。

9. 施策の実行・効果検証

これらのプロセスを踏まえ、新規事業の実行に着手します。要件定義で定めたスケジュールや予算に従って、事業で活用するためのシステムを用意します。

また、事業内容にあたっては取引先や協業先、監督官庁などとの調整が必要となるケースもあります。

新規事業開発にあたっては、常にブラッシュアップを繰り返すことが重要です。事業を進める中で必要に応じて改善点を見つけ、迅速に対応することで、事業の成功率を高めます。

ブラッシュアップにおいては、実際に動作するプロトタイプを活用するとよいでしょう。プロトタイプを想定顧客に利用してもらうことで、より具体的なフィードバックを得やすくなります。

そのためにも、PoC(Proof of Concept:概念実証)のフェーズを設けてプロトタイプを構築し、想定顧客に利用してもらいます。

プロトタイプの開発においては、高速にプロトタイプを開発する「ラピッド・プロトタイピング」という手法も有効です。PoCやラピッド・プロトタイピングについては以下の記事もご覧ください。

関連記事:PoCとは。ビジネスにおけるPoC活用メリットや進め方を徹底解説

https://spice-factory.co.jp/design/what_is_poc/

関連記事:ラピッド・プロトタイピングとは?導入目的・メリットとプロセスを分かりやすく解説

https://spice-factory.co.jp/development/rapid-prototyping-about/

PoCを含め、事業を進める中では顧客やステークホルダーからのフィードバックを得るチャンスがあります。このフィードバックを基に、事業の持続的な成長を目指し、継続的な改善を行います。

新規事業の立ち上げに役立つフレームワーク

不確実性の高い新規事業開発においては、フレームワークの活用が有効です。フレームワークを活用することで、考慮漏れのリスクが減り、計画の精度を高めることができます。

ここでは、主要なフレームワークを4つご紹介します。さらに、詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてお読みください。

https://spice-factory.co.jp/development/new-business-framework/

PEST分析

PEST分析は、企業が直面する外部環境を政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から分析する手法です。

新規事業開発において行う外部要因分析において活用できるフレームワークとなります。
各要因の具体例は以下のとおりです。

要因 内容
政治的要因 政府の政策、規制、税制、貿易障壁
経済的要因 経済成長率、為替レート、インフレーション率、失業率
社会的要因 人口動態、文化、ライフスタイル、教育水準
技術的要因 新技術の開発、技術革新の速度、技術インフラの整備状況

PEST分析により、新規事業に影響する外部環境を抜け漏れなく、総合的に評価することができます。

SWOT分析

SWOT分析では、組織や事業の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を総合的に評価します。新規事業における市場参入可否の分析において有効なフレームワークです。

要素 説明
強み(Strengths) 組織が優れている点や競争優位を持つ要素 技術力、ブランド力、リソースの豊富さ
弱み(Weaknesses) 組織が改善すべき点や競争上の劣位性 資金不足、技術の遅れ、マーケティング力の不足
機会(Opportunities) 外部環境の変化や市場動向による成長の可能性 新市場の開拓、技術革新、規制緩和
脅威(Threats) 外部環境の変化により直面するリスクや障害 競争の激化、経済不況、規制強化

SWOT分析を活用することで、自社の現状を正確に把握しやすくなります。

3C分析

3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から市場環境を分析する手法です。各要素について、以下のような観点で分析を行います。

領域 観点
顧客(Customer) ターゲット市場のニーズや購買行動を明らかにする
競合(Competitor) 市場での競合他社の動向や強み・弱みを評価する
自社(Company) 企業自身の強みや弱み、リソースを把握し、競争優位性を築くための戦略を検討する

顧客・競合・自社の3つの要素は、新規事業開発において必ず整理すべきものです。3C分析を活用することで、企業は市場の全体像や自社の参入可能性を理解し、効果的な戦略を策定することが可能となります。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、企業や製品が市場内でどのような位置づけにあるのかを視覚的に示すためのツールです。

ポジショニングマップは二次元のグラフとして描かれることが多く、縦軸と横軸には競争要因や顧客にとって重要な属性が配置されます。

一例としては「価格と品質のポジショニングマップ」や「シェアと顧客満足度のポジショニングマップ」などが考えられます。

ポジショニングマップを作成することで、企業は市場内の競合他社との比較を視覚的に行うことができ、自社の強みや改善点を明確に理解できます。

また、新規事業を進める中で市場環境の変化に応じてポジショニングマップを見直すことも、持続的な競争力を維持するためには大切です。

新規事業を成功させるためのポイント

ここでは、新規事業を成功させるためのポイントについて、デジタル活用の観点も含めながらご紹介します。

要件定義を重視する

新規事業開発において、デジタル技術を活用する場合によくあるのが「アジャイル開発を採用するから要件定義は行わずにプロジェクトを進めよう」と考えてしまうケースです。しかしながら、アジャイル開発であっても要件定義プロセスは必要です。

実際に当社では、アジャイル型のシステム開発プロジェクトを実施する際にも、多くの場合でユーザー視点を取り入れた要件定義を実施しています。要件定義を実施することで、開発するシステムの全体像が見えやすくなり、効率的かつ手戻りの少ないシステム開発が実現できます。

また、新規事業開発においてはユーザー体験を重視し、顧客満足度を高めることも重要な観点です。そこで当社では、要件定義段階からUI/UXデザイナーが参画することを推奨しています。

これにより後工程での手戻りを減らしつつ、「ユーザーがより使いやすい」システムの開発につながりやすくなります。

フィージビリティスタディやPoCにより評価を行う

不確実性の高い新規事業の取り組みの成功確率を高めるためには、フィージビリティスタディによる調査・分析、PoC(概念実証)をうまく活用することをおすすめします。

よくあるのが「新規事業をスタートしたものの、技術的もしくは費用的な理由により実現ができなかった」というケースです。

フィージビリティスタディやPoCを通して、技術的な実現性や費用対効果などの確認を行うことで、このような失敗の影響を最小化し、事業の実現が困難な場合でも早期の撤退が可能となります。

ユーザーの声を聴く

開発するプロダクトが市場にフィットしなければ、事業目標の達成は困難です。本番開発前にプロトタイプを利用してユーザーの声を聞き、フィードバックを行うべきです。

ユーザーに利用してもらうための最小限の機能を備えたプロダクトをMVP(Minimum Viable Product)と呼びます。ユーザーからのフィードバックを早期に受けるために、まずMVP開発を行います。

PoCやMVP開発を実施する際には、アジャイル開発手法の採用が効果的です。アジャイル開発は柔軟かつ素早く必要な機能を構築することに優れます。

MVP開発やアジャイル開発について、詳しくは以下の記事でもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

※関連記事:MVP開発とは?アジャイル開発との違い、実施プロセスや注意点を解説

https://spice-factory.co.jp/development/what-is-mvp-development/

※関連記事:新規事業担当者必見。“アジャイル開発”で小さく始めるシステム開発

https://spice-factory.co.jp/development/new-business-agile-development/

高速にPDCAを回す

新規事業開発は迅速性が重要です。市場環境が変化しやすい現代においては、検討に時間をかけすぎてしまうと、せっかくの参入機会を失ってしまうことにもなりかねません。

素早く市場に参入しながら、高速にPDCAサイクルを回し、継続的に改善を行うことが重要です。

新規事業においては、立ち上げ期から段階的に事業拡大のグロース期へと移り変わっていきます。高速でPDCAを回すことで、事業と投資の精度を高め、新規事業から事業拡大へと進んでいくことがポイントです。

スパイスファクトリーが支援した新規事業開発の事例

最後に、当社が実際に支援した新規開発事業の事例をご紹介します。

【事例1】本田技研工業株式会社様

当社では、世界的な自動車メーカーである本田技研工業株式会社様のPoCプロジェクトを支援しました。プロジェクトにおいてはプロトタイプ開発から検証、システム開発への移行まで一貫してサポートを実施いたしました。

本プロジェクトでは新規事業の市場ニーズを把握するため、プロトタイプ開発とリサーチを2ヶ月という短期間で実施。プロジェクトではターゲットから具体的なフィードバックを得るために、ユーザーの導線まで作りこんだ高解像度のプロトタイプを開発しました。

※参考:本田技研工業株式会社|PoC支援

【事例2】伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社は、コンサルティングからシステム開発まで多岐にわたる事業を展開しています。当社では、同社のDX新規事業の支援を行いました。

プロジェクトでは当社メンバーが同社のチームの一員として参画しました。プロトタイプの開発においてはアジャイルネイティブである当社が全面的に担当。

チーム内の議論で見えてきた新規事業のコンセプトや最低限の機能要件といった事業の軸となる情報を基に、高速でプロトタイピングを行いました。

本プロジェクトにはマーケターとUI/UXデザイナーも参加し、プロトタイプのデザインだけでなく、リサーチやデザインシンキングのワークショップを提供しました。

※参考:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社|DX新規事業支援

【事例3】株式会社holografy様

IT コンサルティング事業などを展開されている株式会社holografy様は、新規事業としてライフスタイルブランド『inch blank_.』がリリースされました。

当社では、プロダクトアイデアを元にブランド立ち上げ〜デザインへの落とし込みまでを行いました。 コンセプト構築後は、ブランドの視覚化を実施。ブランドロゴやパッケージのデザインに至るまで、弊社で制作を行っております。

新規ライフスタイルブランドの立ち上げにあたっては「どこから着手したら良いのか」、「なにをしたら良いのか」などの不安はつきものです。そうした不安の解消のため、定期的なミーティングでお互いのTODO整理と進捗状況の更新を行い、非同期のコミュニケーションでは Slack を活用することで細かい疑問の解消や、課題の解決を行いました。

※参考:株式会社holografy | ライフスタイルブランドの新規立ち上げ

まとめ

今回は、新規事業開発について、当社スパイスファクトリーの知見も踏まえ、解説を行いました。

新規事業開発においてデジタルを活用するケースが増える中、「社内にデジタルに関するスキルセットを持った人材がいない」という声を聞く機会も増えています。

当社では、記事中で紹介した事例の他にも、これまで多くの企業の新規事業開発を支援して参りました。

アジャイル開発に精通したエンジニアやUI/UXデザイナーなど、高いスキルを持った豊富な人材がサポートを行います。

「新規事業開発においてPoCやMVP開発を行いたい」「アジャイル型でプロダクトを開発したい」といった方は、ぜひ当社までお問い合わせください。

こんにちは。企業のデジタル・トランスフォーメーションを全方位で支援するスパイスファクトリー株式会社です。

業界・業種を問わずDXの取り組みが行われる中、自治体においてもDXの動きが進んでいます。住民と直接相対する自治体においては、DXによる住民サービスの向上が求められています。

本記事では、自治体DXの概要や必要性、総務省による推進計画に加えて、当社が実際に企画から開発・導入まで支援させていただいたプロジェクト事例についてご紹介します。

この記事を読むことで、以下のような内容を理解することができます。ぜひご覧ください。

  • 自治体DXとは?
  • 自治体DXの必要性
  • 自治体DXの具体的な事例

DXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスや社会の仕組みを根本的に変革することを指す言葉です。

単なるシステム化・IT化とは異なり、業務プロセスやサービスの提供方法、組織文化などを包括的に見直し、より効率的で柔軟なシステムを構築することを目指します。

近年では、経済産業省の旗振りもあり、DXを推進する企業が増えています。

IPAが実施している調査「DX動向2024」では、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」企業が全体の37.5%、「全社戦略に基づき、一部の部門でDXに取組んでいる」企業が21.9%、「部署ごとに個別でDXに取組んでいる」企業が14.3%と、合計で73.7%の企業が何らかの形でDXに取り組んでいる状況が明らかとなっています。

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5内画像をもとにスパイスファクトリーにて作成
※引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5より(新しいタブで開きます)

自治体DXとは?

このような中、自治体におけるDXの取り組みも進んでいます。自治体DXとは、地方自治体がデジタル技術を活用して行政サービスや業務プロセスを効率化し、住民の生活をより豊かにするための取り組みを指す言葉です。

自治体は住民に対して直接的にサービスを提供するという重要な役割を担っており、デジタル技術の導入によりサービスレベルの向上や各種施策の迅速な実施が求められています。

https://spice-factory.co.jp/development/progress-of-dx-in-local-government/

総務省による自治体DXの推進計画

自治体DXについて理解するためにまず押さえておきたいのが、総務省による自治体DXの推進計画です。

総務省では、自治体DXの推進にあたり「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画※」を策定し、取り組みを進めています。

本推進計画は2020年に初版が公開された後、2024年に最新版である第3.0版に改訂されました。以下では、本推進計画の概要をご紹介します。

※参考:総務省 地方行政のデジタル化「自治体DXの推進」(新しいタブで開きます)

DX推進体制の構築に向けた取り組み内容

第3.0版では、自治体がDXを進める上で取り組むべき観点を以下の4つに整理しています。

1.組織体制の整備

限られた予算内で自治体のDXを進めるためには、住民と自治体の接点の多様化や情報システムの標準化など、自治体全体での取り組みが必要です。そのためには、全庁的かつ横断的な推進体制を整えることが重要となります。

2.デジタル人材の確保・育成

自治体でのDX推進には、専門知識を持つデジタル人材が重要です。一方で、自治体では適任者の確保が課題となっています。

そこで、外部人材を登用する動きも進んでおり、2022年9月時点で198の自治体が外部からデジタル人材を任用しています。内部に適切な人材がいない場合は外部人材の活用を積極的に検討すべきです。

並行して、デジタル人材の育成も重要です。中長期的視点で体系的な人材育成方針を設定しつつ、最新の技術動向に関する研修や管理職の意識改革研修など、実践的な研修を計画します。

3.計画的な取り組み

DXの取り組みを効果的に進めるためには、DXの全体方針が必要です。この全体方針は自治体内で広く共有し、目指すべき方向性にブレがないようにします。

各自治体が着実にDXに取り組めるように、総務省では「自治体DX全体手順書※」を公表しています。このような情報も参考にしつつ、計画の策定と計画に沿ったDXを実施します。

※参考:総務省「自治体 DX 全体手順書」(新しいタブで開きます)

4.都道府県と市区町村の連携による推進体制の構築

全国的にデジタル人材が不足していることから、小規模な市区町村では少人数の職員でDXを推進せざるを得ません。

このような状況では、市区町村がより主体的にDX推進を行うことが求められます。そこで、都道府県が市区町村のDX推進進捗や課題、人員体制を把握し、連携してDX 推進体制を構築することが重要です。

7つの重点取り組み事項

これらのDX推進の基本的な事項を実施しつつ、同推進計画では具体的な取り組みとして「7つの重点取り組み事項」を設定しています。

  1. 自治体フロントヤード改革の推進
  2. 自治体の情報システムの標準化・共通化
  3. 公金収納におけるeLTAXの活用
  4. マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
  5. セキュリティ対策の徹底
  6. 自治体のAI・RPAの利用推進
  7. テレワークの推進

ここでは各取り組みの詳細な紹介は省略しますが、同推進計画では取り組みごとの具体的な進め方や国の支援策について紹介されています。

なぜ自治体DXが必要なのか?

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グローバル化、気候変動、少子高齢化、インフラ老朽化、住民から求められる行政サービスの水準向上など、自治体はさまざまな課題を抱えています。これらの課題を解決するためにも、デジタル技術を活用した高度で効率的な業務遂行・住民サービスの提供が必要です。

特に、自治体DX推進の機運が高まった直接的な要因となったのが新型コロナウイルス禍です。上述した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の冒頭においても、自治体におけるDX推進の意義について以下のような記述があります。

新型コロナウイルス対応において、地域・組織間で横断的にデータが十分に活用できないことなどさまざまな課題が明らかとなったことから、こうしたデジタル化の遅れに対して迅速に対処するとともに、「新たな日常」の原動力として、制度や組織の在り方等をデジタル化に合わせて変革していく、言わば社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が求められている。
※引用:総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」P2より(新しいタブで開きます)

自治体職員の方は、刻々と変化する情勢や国の施策に対応するために、住民へのサービス提供を迅速かつ効率的に行う必要がありました。

デジタル技術をうまく活用できた自治体では、素早く効率的に住民への情報提供や補助金の給付、ワクチン接種の予約受付などを実現できました。一方で、全ての自治体でうまくデジタルを活用できたわけではありません。

新型コロナウイルス禍は自治体におけるデジタル技術活用およびDX推進の重要性が認識されるきっかけとなり、今日では自治体DXの取り組みが進められています。

自治体DXに取り組む上での課題とポイント

自治体DXを進める上ではどのような観点が課題となり、どのように解決を進めるべきなのでしょうか。ここでは、2つの観点から課題と対応策について整理します。

既存業務の置き換えでなく、「デザイン思考」でユーザーを中心にデジタルで再設計する

自治体DXにおいては、既存の手続きを単純にデジタル化しただけではうまくいきません。「デジタルを前提に体験を再設計する」ことが重要です。

ユーザー体験やデジタルの特徴を考慮せずに既存の手続きをそのまま電子化したり、特定のソフトがないと利用できない、操作が煩雑であったりする仕組みは、住民には支持されず結果として利用されません。

DXにおいては、スマートフォンなどのデバイスの操作性や特徴を活かして誰もが便利かつ直感的に利用できること、すなわちUI/UXへの配慮が求められます。

例えば、役所に書類を提出する場合を想定すると、自治体の視点では「申請書の作成」「窓口での提出」「受理」といった住民と直接対面する部分しか見えません。

しかし、住民にとっては「必要性に気づく」「申請方法を調べる」「書類を集める」「問い合わせをする」といった役所に訪れる前までの流れがあり、書類の提出後も「結果の受領」「利用や実施」といった流れがあります。

このように、利用者にとってより便利なサービスをデジタルで作り上げるためには、UI/UXをはじめとする「デザイン思考」という考え方が有用です。

デザイン思考とは、サービスを利用する際の利用者の一連の行動に注目して、サービスを設計するアプローチです
デザイン思考の視点では、これら全ての流れに注目して住民に対してどのようなサービスを提供すべきかを検討します。これにより、住民が本当に必要とする形でサービスを提供できるのです。

https://spice-factory.co.jp/development/agile-development-design-thinking/

受託事業者への丸投げではなく、共創型で課題を解決する

業務プロセスや住民サービスの見直しには「ワンチームで一緒に取り組むこと」が重要です。

デジタル技術の導入には多様な知識や経験が必要となります。従来、システム導入プロジェクトにおいては請負契約が採用されることが多く、自治体側と受託事業者が分断されていました。しかし、より良いサービスを生むには、両者間で詳細なコミュニケーションをとり、共創型で課題を解決していくべきです。

ここで有効なのがアジャイル開発というシステム開発手法です。アジャイル開発では、自治体とベンダーが一つのチームとして協力し、情報を共有しながらプロジェクトを進めます。

これにより受託事業者は住民サービスの提供意義を深く理解できますし、自治体側では技術面で実現可能な要求について理解できるようになります。

アジャイル開発は、DXの推進において非常に有効な手法です。アジャイル開発とDXについては以下の記事でもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/development/agile_dx_reason/

スパイスファクトリーが取り組んだ事例

当社では、これまで多くの自治体サービスに関連するプロジェクトを支援してまいりました。ここでは、当社が実際に担当した自治体DX推進の事例をご紹介します。

東京都デジタルサービス局とのアジャイル開発の取り組み事例

東京都は、デジタルの力を活用した行政を総合的に推進するため、2021年にデジタルサービス局を設置するなど、DXの取り組みを進めています。

従来、自治体におけるシステム調達においては、仕様書に基づく競争入札で調達することが一般的でした。一方で、変化の激しい現代においては、仕様書の作成に時間をかけられないという課題があります。

そこで同局では、都民の生活の質・利便性向上を進めるため、迅速かつ柔軟に新しい価値を創出するアジャイル開発の採用を進めています。

当社は、同局が企画するアジャイル型でのプロトタイプ開発プロジェクトを受託しました。本プロジェクトの実施にあたっては、まず東京都職員様にアジャイルマインドを理解してもらうために、アジャイル開発に関するワークショップを開催。

職員の皆様と当社メンバーがワンチームになるためのアイスブレイクゲームのほか、プロダクトオーナーの体験を通してアジャイル開発プロジェクトについての理解を深めました。

ワークショップ後、デジタルサービス局と当社では、東京都庁内の各組織において以下の4つのアジャイルプロジェクトを推進しました。

  1. 動物の愛護に関する問い合わせ等受理簿のデータベース化
  2. VOC(揮発性有機化合物)連続測定データベースの統一化および可視化
  3. 通学区域デジタルマップ化
  4. 「シン・トセイ」職員専用ポータルサイトの改修

本プロジェクトは、東京都という大規模な組織においてもアジャイルマインドを核にチームとなることでアジャイル開発によるDX推進を実現できた事例といえます。

https://spice-factory.co.jp/development/case-study-of-agile-development-initiatives-with-the-tokyo-metropolitan-government/

東京都町田市 | 「バーチャル市役所」の実現を目指した市民のためのポータルサイト構築

東京都町田市では2021年から「町田市デジタル化総合戦略」を策定し、DXを推進しています。同市では他の自治体に先駆け、オンライン行政手続きをはじめとしたデジタルサービスのポータルサイト「まちドア」を開設しました。

当社は、この「まちドア」の構築を支援しました。
本プロジェクトでは、「誰にとっても」「使いやすい」サービスを構築することを重視。20代~50代までの幅広い層を対象にユーザーテストを行いユーザー心理やサービスの課題を解析しつつ、その結果をデザインに反映することで、あらゆる世代が使いやすいデザインを実現しました。
同市では、行政手続きのオンライン化の取り組みを今後さらに加速させる予定です。そこでまちドアの設計においては、カテゴリを容易に追加できるようにするなど、将来的な拡張性や運用コストの軽減も考慮しています。

https://spice-factory.co.jp/works/17664/

株式会社NTTデータ関西 | 個人番号カード 交付予約・管理サービス「e-TUMO MYNUM」のUI・UX改善

株式会社NTTデータ関西様では、国・地方公共団体向けのクラウドサービス「行政総合サービスモールe-TUMO」を提供しています。

当社では、「e-TUMO」シリーズの一つである、個人番号カード交付予約・管理サービス「e-TUMO MYNUM」のUI/UX改善を支援いたしました。

同システムは地方自治体の職員向け業務システムとして多数の自治体で利用されるものである一方、画面デザインが古いままであり、改善が必要でした。

当社では、現行システムの分析やヒアリング結果を踏まえ、ユーザー体験を向上させる機能を提案。初めてシステムを使った方が実際の画面でチュートリアルを受けられる「オンボーディング機能」や職員間でのやりとりを効率化する「チャット機能」など、ユーザーニーズを踏まえた機能追加を行いました。

また、UI/UXの改善内容が具体的にイメージできるよう、上述したオンボーディング機能など重要なポイントの実際の動きを検証できるプロトタイプを構築。プロトタイプを用いたお客さま社内での評価会などを通して、UI/UX改善の価値を伝えることができました。

https://spice-factory.co.jp/works/13083/

まとめ:自治体DXにはデザイン思考とアジャイル開発がおすすめ

この記事では、自治体DXの概要や必要性、事例についてご紹介しました。

記事中でもご紹介しましたが、自治体DXの推進においては、ユーザー視点での体験設計すなわちUI/UXを取り入れることと、従来の請負型のシステム開発ではなく、迅速で柔軟なアジャイル開発の採用が効果的です。

当社では、これまで多くの自治体のお客さまのDX推進において必要となるUI/UXデザインから実装まで、伴走型でのサポートを実施してまいりました。これからDXを進めたいものの、進め方に悩んでいるという方は、ぜひ当社までお問い合わせください。

当社は【2025年最新版】DX支援おすすめ企業4選(新しいタブで開きます)に掲載されています。

これまでは、主に製造業において採用されてきたラピッド・プロトタイピングですが、シリコンバレーをはじめとした海外を中心に、ソフトウェア開発領域においてもその有用性が認識されるようになりました。

ラピッド・プロトタイピングとはどのような手法なのでしょうか。また、新規事業開発を進める上でどのように役に立つのでしょうか。この記事では、注目されるラピッド・プロトタイピングについて詳しくご紹介します。

この記事を読むことで、以下のような内容を理解することができます。ぜひご覧ください。

  • ラピッド・プロトタイピングの導入目的とメリット
  • 従来のプロトタイプ開発とのプロセスの違い
  • これからのPoC開発について

ラピッド・プロトタイピングとは?

ラピッド・プロトタイピングは、製品やサービスの開発過程において、スピードを重視して高速に試作品を作成する手法のことです。

ラピッド・プロトタイピングは主に製造業において、CADシステムや3Dプリンターを利用し、金型の製作などをスキップして効率的に開発を行う手法を指す言葉として利用されてきました。

一方で、ソフトウェア開発においても、2010年代初頭からシリコンバレーをはじめとした海外を中心に採用されてきたこの考え方が、ここ数年は日本でもベンチャー企業や教育機関を中心に注目されつつあります。なぜなら、変化の激しい現代のビジネス環境において、スピード感は非常に重要な要素となるためです。

プロダクトのリリースを高速に実現するラピッド・プロトタイピングは、新規事業の開発やサービスの強化などを実施する上で、強力な武器となります。

通常のプロトタイプの開発との違いや、プロセスの詳細については後述で説明します。

ラピッド・プロトタイピングを導入する目的とメリット

新規事業開発の成功に不可欠なのは、良質で迅速な「多産多死」、投資効率と成功確度を向上させるための3つの要点をまとめています

なぜソフトウェア領域において、ラピッド・プロトタイピングへの注目度が高まっているのでしょうか。以下では、ラピッド・プロトタイピングを採用する目的とメリットについてご紹介します。

迅速なフィードバックを得るためのラピッド・プロトタイピング

ラピッド・プロトタイピングを導入する最大の目的は、ユーザーや市場からのフィードバックを迅速に得るためです。

実際に動作し、触れられるプロダクトを素早く提供することで、開発の初期段階でユーザーのニーズをより正確に把握したり、課題を発見して修正したりといった取り組みを進めやすくなります。

特に、新規事業開発など不確実性の高い取り組みにおいて、ラピッド・プロトタイピングは有効です。机上でユーザーのニーズを完全に読み切ることは難しく、アイデアを具現化したプロダクトを利用してもらうことで、フィードバックを得やすくなります。

これにより、プロダクトの品質向上のほか、見込みのあるアイデアの選別もしやすくなります。

DX推進の流れもあり、近年では新規事業開発においてソフトウェアを活用することは一般的となりましたが、一方で新規事業の成功率は15%というデータもあります※1。

新規事業の失敗確率をできるだけ下げるためにも、早期にプロダクトを開発し、ユーザーニーズの見極めを行う取り組みが必要とされています。

※参考1:アビームコンサルティング「アビームコンサルティング、新規事業創出の実態調査を発表」(新しいタブで開きます)

ラピッド・プロトタイピングにより時間とコストを削減

ラピッド・プロトタイピングのメリットは、時間とコストの削減にあります。完全ではないものの、一定の機能を備えたプロトタイプを高速に用意することで、低コスト・短期間でプロダクトがニーズをとらえているかを判断することができます。

撤退のしやすさもポイントです。新規事業開発としてプロトタイプを作った結果、市場とマッチせず撤退するというケースもあるかと思いますが、その場合でもサンクコストを最小化できる点がラピッド・プロトタイピングのメリットとなります。

また、時間の節約も可能です。早期にユーザーからフィードバックを得られるため、早期に新規事業の継続可否を判断できます。

従来のプロトタイプ開発との違い

以下では、ラピッド・プロトタイピングと通常のプロトタイプ開発を比較します。

ラピッド・プロトタイピングと通常のプロトタイプ開発を、概要・期間・撤退のしやすさで比較しています
通常のプロトタイプ開発も、早期にプロダクトをユーザーに利用してもらい、フィードバックを得ることを目的に行われます。

ラピッド・プロトタイピングは、このプロトタイプのプロセスをより高速に実施するものです。プロトタイプ開発の高速化により、早期にフィードバックを得て、プロダクトを改善することができます。また、撤退時のサンクコストも抑えやすくなります。

特に不確実性の高く、失敗リスクの高い新規事業開発においては、このようなラピッド・プロトタイピングの特性がマッチします。

なお、プロトタイプ開発に関しては以下の記事で詳しく解説しています。こちらの記事も併せてご覧いただけると、より理解が深まるかと思います。

関連記事:システム開発におけるプロトタイプ・モデルのメリットと注意点

ラピッド・プロトタイピングのプロセスを解説


ここでは、ソフトウェア開発においてどのようにラピッド・プロトタイピングを進めるのか、具体的なプロセスについて解説します。

高速に低解像度プロトタイプを作成

開発する製品のコンセプトを踏まえ、主にUXデザイナーが中心となり、プロダクトの低解像度プロトタイプを作成します。

低解像度プロトタイプとは、基本的な機能や要素のみを実装したプロトタイプであり、素早く手間をかけずに最低限の利用ができるものを作ることを指します。

ここで作成するプロトタイプはできるだけシンプルで小さいものにする必要があります。

場合によっては、デザインツールなどを利用せず、紙とペンだけなど、素早く具体化できる道具だけでプロトタイプを作成することもあります。

実装に時間をかけることなく、まずは頭の中にあるアイデアを具現化することが目標です。

フィードバックの取得

作成したプロトタイプを、他のチームメンバーや関係者、プロダクトの想定エンドユーザーなどに共有します。プロダクトを利用してもらうことで、イメージを持ってもらい、プロダクトに対するフィードバックを得られるようにします。

フィードバックの取得においては、うまくユーザーに質問することがポイントです。ユーザーの表情や身ぶり・手ぶりを観察しつつ「XXXの機能についてどう思いましたか?」「どの操作が難しかったですか?」といったオープンクエスチョンにより会話を広げます。

さらに「なぜそう思ったのですか?」といった質問でユーザーの意見を深掘りすることも有効です。

新規事業開発においては、取得したフィードバックが芳しくないものであれば、そのアイデアの実装を中断することも検討します。早めに撤退を行うことで、次のアイデアを検証できる余力を確保します。

改善

各ユーザーからのフィードバックを受けて、プロトタイプを改善します。フィードバック結果の傾向を分析し、改善ポイントをまとめ、優先度の高いものからプロトタイプへ反映していきます。

改善後、再びユーザーにプロトタイプを共有し、フィードバックを取得します。このプロセスを繰り返すことで、素早くプロダクトのアイデアを検証していきます。

ラピッド・プロトタイピングの事例

ソフトウェア領域におけるラピッド・プロトタイピングの事例として、PayPalのケースをご紹介します。

従来、同社では以下のプロセスでプロダクトの開発を進めていました。

  • プロジェクトマネージャーがアイデアを出し、文章化してデザインチームに渡す
  • デザイナーは、プロジェクトマネージャーが書いた指示を基にデザインを具現化する
  • デザイナーは開発者にイメージを伝える
  • 開発者はそのイメージを再現し、機能を開発する
  • プロジェクトマネージャーは、開発者の成果物を確認し、修正を依頼する

一方で、このプロセスには時間がかかります。このプロセスを改善するために、PayPalはより効率的にプロダクトを開発するためのオペレーションモデル“DesignOps 2.0”を構築しました。

DesignOps 2.0では、汎用的に利用できるデザインテンプレートを用意し、誰でも簡易的なデザインを実施できるようにしています。このデザインテンプレートの利用にあたっては、デザインに関するスキルは必要ありません。

ロゴやボタンなども、デザイナーが作業することなく、既存のテンプレートの組み合わせで作成することができます。

これにより、プロジェクトマネージャーは自身で既存のテンプレートから一定のデザインを確認できるようになり、複数のメンバーによる多重的なプロセスをスキップすることができます。

一定の検証を行った後、リリース前のタイミングでデザインチームはプロダクトのデザインを確認し、修正を行います。

このようなプロセスの組み方により、デザインチームの負荷が大きく減少し、より高速に、より多くのプロダクト開発を実現できるようにしています。

※参考:「How to Improve Your Product Design and Development Model: Lessons From PayPal」(新しいタブで開きます)

スパイスファクトリーが推奨する超高速PoC開発

2段階のプロトタイピングで、アイデアを素早くカタチにし、モノを見て絞り込んでいくことで、リリースまで一気に加速することを実現するサービスを提供しています

当社では、このようなラピッド・プロトタイピングの概念を踏まえ、超高速でPoC開発を実現する取り組みを進めています。

特に新規事業開発においては、PoCにおいてFigmaなどのデザインツールを用いてプロトタイプを作成し、実現可能性を検証する取り組みがよく行われます。

一方で、さらに迅速なPoC開発を実現するためには、ラピッド・プロトタイピングの考え方を踏まえてプロダクトアイデアを高速に可視化しつつ、アイデアを検証していくことが重要です。

高速にアイデアを具現化することで、アイデアの「筋の良さ」を素早く判断できるため、多数のアイデアを検証しやすくなります。

これらの中から、優れたものをとりあげて事業化を進めることで、より新規事業の成功確率を高められると考えています。

ラピッド・プロトタイピングを踏まえた超高速PoC開発においては「一番早く体験できる方法を考え」「実際に手を動かし」「簡単な方法で素早く実現する」ことがポイントです。

ユーザーは当初の想定と違う方法でプロダクトを利用する、ということはよくあります。ユーザーがどのように製品を利用するか想像するのに時間をかけすぎず、粗いプロトタイプ作りテストを行うことが重要です。

実際に当社内で実践した「ラピッド・プロトタイピング」によって、4名ワンチームで、1時間という制限時間の中で、「アイデア出し、プロトタイプ制作、ユーザー検証まで」を1時間で完走したワークショップの実践事例

実際に当社社員で行ったしたラピッド・プロトタイピングのワークショップでは、1時間という短時間で顧客に提供できる水準の製品プロトタイプを作成し、フィードバックを受ける取り組みを実施しました。

結果として、概念をプレゼンテーションするより、実際に手を動かして具体化することによって、問題点の把握がしやすくなるという気づきもありました。

今後も当社では、ラピッド・プロトタイピングを含めた超高速PoC開発の取り組みを進めて参ります。詳細は以下のプレスリリースもご覧ください。

https://spice-factory.co.jp/news/18066/

なお、PoC開発に関しては以下の記事でも詳しく解説しております。ぜひ併せてご覧ください。
※関連記事:PoCとは。ビジネスにおけるPoC活用メリットや進め方を徹底解説

まとめ

この記事では、ラピッド・プロトタイピングについて、その概要や目的、メリット、具体的なプロセスなどについてご紹介しました。

ますます高速化する現代社会において、スピード感は何より重要な要素です。新規事業開発の成功率をあげるためにも、ラピッド・プロトタイピングは有効な手段だといえるでしょう。

当社では、これまで多くのお客さまの新規事業開発を支援してまいりました。アジャイル開発やデザイン思考の豊富な知見をベースとして、密なコミュニケーションを行いながらお客さまのビジネスを具現化してまいります。

新規事業開発に関してお悩みやご質問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代、企業が競争力を維持し、業務効率を向上させるためには、柔軟かつ迅速な開発手法が求められています。

そこで注目されるのが「アジャイル開発」です。この記事では、DX推進におけるアジャイル開発の有効性について詳しく解説します。

この記事を読むことで、以下のような内容を理解することができます。ぜひご覧ください。

  • DXに関する基本的な知識
  • DX推進におけるアジャイル開発の役割
  • アジャイル開発のメリット

DXとは?

デジタルトランスフォーメーション、通称DXは、企業や社会がデジタル技術を活用して業務や生活を根本的に変革することを指します。

デジタル技術の急速な進化により、これまでにはないアプローチでビジネスを推進できるようになりました。DXはさまざまな業界において新たなビジネスモデルの創出や既存業務の最適化を可能とし、競争力を高めるための重要な手段となっています。

DXの定義と目的

2024年に公表された経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」によれば、DXの定義は以下のとおりとされています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

※引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」P2脚注より(新しいタブで開きます)

この定義において注目したいのは、「データとデジタル技術を活用して」「製品やサービス、ビジネスモデルを変革」するとともに「業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革」するという点です。

DXは単なる業務の効率化や改善にとどまらず、ビジネスモデル自体の変革、もしくは組織・プロセス・企業文化・風土の快活という大上段の視点が求められる取り組みといえるでしょう。

なぜ、DXが今必要なのか?

DXが必要とされる背景として、デジタル企業による業界革新が進んでいることが挙げられます。ディスラプションとは「既存のビジネスを破壊するような革新的なイノベーション」を指す言葉です。

例えば、書籍における出版、取次、書店といった従来型のビジネスモデルは、Amazonに代表されるインターネット通販サービスの台頭により変化を余儀なくされました。決められた時間にしか見ることができないテレビは、オンデマンド型の動画配信サービスにより顧客を奪われつつあります。

ソフトウェア業界においては、クラウドサービスの一般化により個別にソフトウェアを開発したりするケースは減少しつつあります。また、石油業界においては電気自動車の普及などを背景に、長期的に需要が減少することが見込まれています。

このようなディスラプションに対抗するために、あらゆる業界においてデジタル技術の活用によるビジネスモデルの変革が求められています。

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5より

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5内画像をもとにスパイスファクトリーにて作成

このような中、近年では一定の企業でDXの取り組みが進んでいます。IPAによる「DX動向2024」では、2023年時点で「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業は全体の37.5%、「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」と回答した企業は21.9%となりました。

※引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P5より(新しいタブで開きます)

一方で、企業規模別にみると取り組みに濃淡があることが分かります。

同調査によれば、従業員数が100人以下の企業においては、「DXに取り組んでいない」企業が38.1%と、大企業と比較すると取り組みが進んでいない状況が明らかとなっています。中小企業におけるDXの取り組みは道半ばと考えられます。

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P6内画像をもとにスパイスファクトリーにて作成

※引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P6より(新しいタブで開きます)

日本におけるDXの取り組みが一定進む一方で、経営層のITへの理解という観点が進まないという課題もあります。

2023年時点におけるIT分野に見識のある役員の割合について「3割未満」であると回答した企業は全体の53.8%に、「いない」と回答した企業は29.5%となりました。

下のグラフのとおり、この数字は近年で横ばいです。DXの取り組みが進む一方で、経営レベルでのIT・DXへの理解が進んでいない点が浮き彫りとなっています。

独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P18内画像をもとにスパイスファクトリーにて作成

※引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024(データ集)」P18より(新しいタブで開きます)

DXの取り組みは単なる業務改革ではなく、ビジネスモデルや企業文化の変革を目標としたものです。よって、DXの推進には経営層の理解と旗振りが必要となります。DXの成功のためには、経営者がIT・DXの知識とスキルを持つことが重要です。

アジャイル開発とは?

DXの推進において意識したいのが、アジャイル開発の採用です。アジャイル開発とは、ソフトウェア開発における手法の一つで、反復的かつ増分的なアプローチを採用することで、柔軟かつ迅速にソフトウェアを開発することを目指します。

従来のウォーターフォール型開発とは異なり、アジャイル開発ではスプリントと呼ばれる短いサイクルごとに製品を部分的に完成させ、フィードバックを基に改良を重ねていく方法を取ります。

アジャイル開発はDXの推進において非常に有効です。具体的には、アジャイル開発には以下のようなメリットがあります。

〇柔軟な進行
まず、アジャイル開発の反復的かつ増分的なアプローチがDXの柔軟な進行に適しています。事業環境や市場の変化に迅速に対応することが求められるDXにおいて、アジャイルの短いサイクルでの開発と継続的なフィードバックは非常に効果的です。

これにより、プロジェクトの方向性を素早く修正し、適応することが可能となります。

〇不確実性への対応
アジャイル開発は不確実性への対応手法としても優れています。DXプロジェクトでは新しい技術やビジネスモデルの導入を行うため、どうしても不確実性が高くなります。アジャイル開発にてスプリントごとにリリースを行い、その都度フィードバックを得ることで、リスクを分散し、プロジェクトの成功確率を高めることができます。

〇チームのコラボレーション強化
アジャイル開発はチームのコラボレーションを強化します。DXの推進には組織全体での連携が不可欠であり、部門間や専門領域を超えた協働が求められます。

アジャイルの手法では、チームメンバーが頻繁にコミュニケーションを取り合い、共通の目標に向かって協力することで、チーム一体となってプロジェクトを進めることができます。

このように、アジャイル開発はDXの実現において効果的なさまざまなメリットが存在します。
なお、アジャイル開発のメリット・デメリットについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もおすすめです。

※関連記事:アジャイル開発のメリット・デメリット、相性の良いプロジェクトや事例まで解説

より実践的なケースについて知りたい方は、アジャイル開発の事例に関する記事もご覧ください。

※関連記事:4つの事例で学ぶアジャイル開発 スクラム手法を取り入れた最適なアプローチとポイント

DXとアジャイル開発の親和性が高い4つの理由

市場の変化への迅速な対応が可能

DXを推進する上で最も重要な要素の一つが、市場の変化へ迅速に対応する能力です。従来型の開発手法では、計画からサービスやプロダクトを社会に実装するまで長期間を要するため、完成時には市場のニーズが変化してしまうリスクがありました。

アジャイル開発では、2-4週間程度の短いスプリントサイクルで開発を進めるため、市場の変化に応じて優先順位や機能要件を柔軟に調整できます。これにより、競争が激化するデジタル時代において、企業の競争力を維持・向上させることが可能となります。

顧客価値の検証と改善が継続的に行うことができる

DXの成功には、デジタル技術を活用して真の顧客価値を生み出すことが不可欠です。アジャイル開発では、最小限の機能を持つプロダクトを早期にリリースし、実際のユーザーからフィードバックを得ることができます。
このアプローチにより、顧客が本当に求める機能や改善点を素早く特定し、製品やサービスの価値を継続的に高めていくことが可能です。また、投資対効果を早期に検証できるため、経営資源を効率的に配分することができます。

組織の変革を段階的に進められる

DXは単なるシステム導入だけではなく、組織全体の変革も必要とします。アジャイルで小規模に開発したプロダクトをいち早く展開し、段階的に運用と機能改善を行うことで組織へ定着させることができます。また、短期間での成功体験を積み重ねることで、組織全体のデジタル変革に対する理解と受容を促進することができます。これは特に従来型の業務プロセスが根付いている企業にとっても重要なメリットとなります。

デジタル技術の進化に柔軟に対応できる

AIやクラウドなどを始めとしたデジタル技術は日々進化しており、DXを推進する企業はこれらの新技術を素早く効果的に取り入れる必要があります。アジャイル開発の反復的なアプローチは、新技術の導入や検証を小規模に始め、効果が確認できた場合に段階的に拡大していくことを可能にします。

これにより、技術選定のリスクを最小限に抑えながら、最新のデジタル技術を活用したイノベーションを実現することができます。

DX推進においてアジャイル開発を活用した成功事例

以下では、当社が実際に担当したプロジェクトのうち、アジャイル開発を活用してDXを推進した事例をご紹介します。

東京都デジタルサービス局 | アジャイル型方式によるプロトタイプ開発委託

東京都は2021年にデジタルサービス局を設置し、行政のデジタル化を推進しています。当社は、同局が企画する4件のアジャイル型プロジェクトを受託しました。

これまで都庁ではウォーターフォール型開発を中心にプロジェクトを進められてきました。そこで、プロジェクトの成功には職員の皆様にアジャイルマインドを理解していただくことが重要と考え、ワークショップを実施しアジャイル開発の流れをイメージしてもらいつつ、職員の皆様と当社が「ワンチーム」となり一体感を持てるようにしました。

その後、4つのアジャイル型プロジェクトを推進し、成功させることができました。

プロジェクトの成功要因は、デジタルサービス局の「強い思い」と「自由度の高い組織体制」に、当社の「アジャイル開発スキル」がうまく組み合わさったことです。大規模な組織でも、アジャイルマインドを持つことでプロジェクトを成功させることができた事例です。

東京都がアジャイル型開発に取り組む意義から、具体的な開発の進め方まで、より汎用的に活用できるプレイブックの制作にも携わっています。制作したプレイブックは、都政の構造改革ポータルサイト「#シン・トセイ」より詳細にご覧いただけます。
※外部サイトに遷移します。

https://spice-factory.co.jp/works/14765/

株式会社トムス・エンタテインメント | アニメーションの制作管理システム「ProGrace」の開発

株式会社トムス・エンタテインメント様は、主に社内で活用するアニメーションの制作管理システム「ProGrace」を開発。当社は、ProGraceの開発をアジャイル開発で支援しています。
ProGrace は、これまでスタジオや制作進行担当者ごとに独自にエクセル管理していたカット表等の進行管理のための各表を統一し、制作管理業務の効率化、ひいては DX を目指すプロダクトです。

システムの仕様をきっちり決めてスタートするよりも、現場の意見を汲み取り、柔軟に改善を繰り返していくことを重視し、本プロジェクトではアジャイル開発手法を採用しました。実際にシステムを利用する制作進行担当者と密に連携し、UI/UXにもこだわっています。デモやレビューを重ねることで、現場のニーズに合致した直感的で使いやすいインターフェースを実現しました。

https://spice-factory.co.jp/works/17700/

https://spice-factory.co.jp/works/14645/

株式会社ネクスウェイ | 薬局向けDI (薬剤情報) ポータルサービス「アスヤク薬局ポータル」の開発

株式会社ネクスウェイ様では、これまでメールや郵送、FAXなどさまざまな方法で公開されていた薬剤情報(DI)を一本化して閲覧・管理できるサービス「アスヤク薬局ポータル」をアジャイル開発で支援しています。

DXの過渡期対応として、性急なデジタル化ではなく郵送などアナログとの共存が必要なプロジェクトでした。そのため、アスヤク薬局ポータルではWeb 上での閲覧やメール配信に加え、DIの郵送にも対応。印刷および郵送を行う外部サービスと連携し、薬局の希望に応じてメール配信と郵送を切り替えることができます。メール配信の場合には到達や開封、クリックの計測、郵送の場合には配送、不達の計測を行う機能も設けています。

https://spice-factory.co.jp/works/14733/

まとめ

この記事では、DXの推進におけるアジャイル開発の有効性やこれからのDX推進に必要な理由についてご紹介しました。

市場のニーズや技術革新が絶え間なく起こっている現代で、不確実な取り組みとなりがちであるDXと、柔軟性に優れたアジャイル開発の相性はよく、これからのDX推進においてアジャイル開発の活用は必須ともいえるでしょう。一方で、これまでアジャイル型で開発プロジェクトを実施されてこなかった企業においては「どのようにアジャイル開発を進めればよいか分からない」「アジャイル開発のノウハウがない」という悩みも抱えられているのではないでしょうか。

当社では、これまで多数のアジャイル開発プロジェクトを通して、さまざまなDXプロジェクトを推進してまいりました。アジャイルの実践指導経験を持つ企業とパートナーシップも組んでおりますので、アジャイル型開発の内製化支援も対応可能です。記事中でご紹介した開発事例以外にも、多数の実績がございます。

アジャイル開発によるDX推進について悩まれている方は、ぜひお気軽にお声掛けください。

当社は【2025年最新版】アジャイル開発おすすめ企業4選(新しいタブで開きます)に掲載されています。

記事の監修者


プロフィール
CO-FOUNDER /執行役員CTO
泰昌平

工学院大学 情報学部卒業。CakePHP, WordPress, Drupal, React, Rails, GCP, WSO, Shopify, SEO。フルスタックエンジニア。SaaSのIntegration設計やWeb高速化、AWSやLaravelによる開発を得意とする。技術戦略や品質向上の取り組み、エンジニアチームビルディングを担当。2023年よりChatGPT事業の立ち上げ、社内研究を推進する。