こんにちは、企業のデジタル・トランスフォーメーションを全方位で支援するスパイスファクトリー株式会社です。
少子高齢化・人口減少に伴う労働人口不足が顕在化するとされる「2030年問題」が話題となっています。特に労働集約型産業の代名詞とも言える物流業界においては、2030年問題の影響を強く受ける可能性があります。
この記事では、2030年問題がどのように物流業界に影響を与えるのか、またその深刻さについて専門家の視点からわかりやすく解説します。
この記事をお読み頂くと、以下のような内容を理解することができます。
- 物流業界における2030年問題とは何か
- 2030年問題は物流業界にどのような影響を与えるのか
- 2030年問題に対してどの様な対策を行う必要があるのか
ぜひご覧ください。
Contents
2030年問題とは?
2030年問題とは、少子高齢化による労働力不足や社会保障費の増大などが2030年ごろに顕在化することを指します。内閣府が公表する「令和5年版高齢社会白書※1」によれば、2030年には65歳以上の高齢者が人口比率の30%を超えることが想定されています。
また、日本においては少子化も進んでいることから、加速度的に労働人口が減少していく状況にあります。
これにより、企業における人材不足や生産性の低下、社会保障費の増大による現役世代の負担増、地域社会の衰退といった事態が進む懸念があります。
※1参考:内閣府「令和5年版高齢社会白書」
物流業界における2030年問題とは?
時間外労働に対して上限制限が設けられた、いわゆる「2024年問題」に引続き、ドライバー不足が深刻化すると予想されております。
特に地方部では深刻であり、野村総合研究所の推計※では2030年のドライバー数は2015年度と比較し、秋田県で46%に、青森県で48%に、高知県で49%にと、半数以下となると予想されています。全国で見ても、2030年のドライバー数は42.3万人と2025年度と比較して65%程度にまで減少すると推計されています。
結果、「個々の実質労働時間の短縮」に「ドライバー人数の慢性的減少」が重なる事で輸送能力(キャパ)の低下を招くこととなります。
上述した野村総合研究所の推計では、2030年には全国の約35%の荷物が運べなくなるといったシナリオが紹介されています。東北地方では約41%、四国地方では約40%と、ドライバー不足と同様に地方部で深刻な状況に陥ると予想されます。
また、物流倉庫内での荷役作業も未だ人手を中心とした運営が多く、慢性的な労働人口減少による影響を大きく受けております。物流倉庫が密集しているエリアでは相場時給を大幅に上回る人手争奪戦が生じたり、労働力不足を補うために作業熟練度の低い日雇い労働者を主な主戦力として採用せざるをえない状況下、作業生産性の低下・教育負荷の増加が生じております。
いわば、「モノを運べない」のみならず「モノを出せない」という状況に陥っております。
ECの一般化をはじめとして、物流インフラにかかる負荷が増える一方で、そのインフラの崩壊は経済活動にとって大きなインパクトを与えます。
輸送力不足は物流業界単体の課題を超えて、社会課題として重要な問題となります。
2※参考:野村総合研究所「トラックドライバー不足時代における輸配送のあり方」
物流業界2030年問題が人々の生活に与える影響
商品価格の継続的値上げ
モノを運ぶ仕事量(需要)に対し担い手であるドライバー人数(供給)のバランスが崩れつつあり、供給力を増やすために物流会社は雇用コストを上げて人手を確保せざるを得ない状況となっております。
結果、あらゆる商品にて物流費高騰を一因とした価格の見直しが始まっております。
抜本的な課題が解決されていない状況下、商品価格の見直しが今後も継続する可能性がございます。
従来の輸送品質(リードタイム・日時指定etc.)が維持出来ない
ドライバー人数減少にて限られた輸送能力では、従来当たり前であった輸送サービスを提供する事が難しくなります。
近隣エリアであれば翌日納品可能であったリードタイムや曜日関係なく同一水準であったサービスが輸送能力の減少にてサービス変更・廃止を余儀なくされる事が予想されます。
また、昨今ニュースでも「不在時再配達」問題が取り上げられておりますが、限られた輸送能力を結果的に無駄に使ってしまっている状況を招いており、将来的には再配達の有料化も検討されております。
物流業界の労働環境について厳しいものであるという認識を持っている方も多く、たとえ賃上げを行ったとしても人材を確保できない可能性もあるでしょう。
2030年問題への対策
具体的に、物流業界においてはどのように2030年問題への対策を進めていくべきなのでしょうか。ここでは、いくつかの対策を取り上げてご紹介します。
物流DXによる生産性の向上
最も期待されているのが、物流DXによる生産性の向上です。あらゆる業界・業種において進むDXですが、物流業界においてもさまざまな領域において改善の余地が存在します。
国土交通省でも、国の物流政策の起点となる「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)※」の中で、「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化」を最初の方針として掲げるなど、国を挙げて物流DXの推進が進められているところです。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
<物流DXの例>
●物流全体効率化システムの導入
物流業界の特性として、特定の事業者のみが単独でDXを進めることが難しいという点が挙げられます。よって、サプライチェーン全体を通して手続きの整備やデータ基盤の構築、システムの共有などを行う必要があります。
たとえば、サプライチェーンの上流から下流までが利用する物流全体効率化システムの導入はこのような施策の一つです。
●手続き書面の電子化
従来、FAXなどの書面や電話で行われることが多い民間事業者間の貨物集荷や防疫手続きなどを電子化するものです。
これにより、各所におけるデータの入力・出力の手間削減や入力ミスの防止による再入力の負荷軽減が期待できます。
●倉庫管理における機械化
先進的な倉庫で導入されつつあるピッキングロボットや無人フォークリフト、AGV(無人搬送車)などですが、このような自動化・機械化の技術をあらゆる工場へと広げていく取り組みも有効です。
一方で、中小規模の企業ではこれらの投資を行うことが難しいことも事実です。より安価な仕組みの開発が求められます。
●陸上輸送の効率化
トラックの隊列走行や自動運転トラックなど、近年では幹線輸送の効率化に関する取り組みも進んでいます。
幹線道路を利用するという関係上、企業単体での取り組みは難しいものも多いですが、これらが実用化されるとトラック輸送における人手不足問題に大きな効果をもたらすことができるでしょう。
●海運の効率化
内航船・外航船などの海運領域においては、AIや数理最適化アルゴリズムを利用した配船計画の最適化の取り組みや、船舶の自動監視による運航自動化、気象・海象などの情報を用いた航路の自動検討などの取り組みが考えられます。
船舶の自動運転の実用化により、人手不足への対策ともなります。
●配送の効率化
配送領域においては、自動運転カーやドローン物流などの検討が進んでいるところです。
現在、国や民間企業においてさまざまな実証実験が行われており、山間部や離島などの過疎地域における実用化の検討も進んでいます。
また、ソフト面ではAIによる配送経路最適化の検討も進んでいます。
このように、物流DXとして考えられる施策はさまざまです。2030年に向けてこれらの取り組みを進めることで、人手不足への対策を進めていく必要があると考えられます。
※5参考:国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」
荷主主導による物流リソースの有効活用している企業事例
限られた輸送能力を効率的に活用すべく、複数荷主企業による共同輸配送化も積極的に検討が進んでおります。
トラックの積載効率は現状、非常に低い状況にあります。上述した「総合物流施策大綱」によれば、2016年度で39.9%であった積載効率は、2019 年度37.7%まで減少しています。
つまり、トラックの許容積載量のうち37.7%程度しか活用できていないという状況です。
積載効率が低い原因として、EC台頭によるケース小口化(店→個人宅)、多様化する輸送ニーズ対応(リードタイム・日時指定)が挙げられています。
たとえば、花王とライオンでは、それぞれの工場間での輸送を統合して行う取組みを進めています※。
また、ファッションEC大手のZOZO TOWNでは、ドライバーの負担軽減に関する協力を購入者に呼びかける「ゆっくり配送」を導入する取り組みも始まっております。
一般的に輸配送の条件を決めるのは荷主側であるため、物流会社単体での課題解決にも限界がありますが、2030年問題を踏まえると、トラックの積載効率向上・ドライバーの負荷軽減は重要なテーマであるため、垣根を超えた取組みの進展が期待されます。
※6参考:ライオン「花王・ライオンが協働してスマート物流への取り組みを開始」
これからの物流DXについて
当社、スパイスファクトリーでは物流関連企業より依頼を受けたソリューション開発を数多く手掛けており、この度「物流2030年問題」の解決に向けた支援体制を強化すべく、「物流DX支援特化型チーム」をドライバーの日である2024年10月18日に立ち上げました。
<提供する物流DX支援の内容>
- 物流DX実現に向けた既存プロセスのデジタル化や改善を推進するコンサルティング
- アジャイル開発を活用した物流DXプロジェクトの迅速な遂行支援
- データ活用による業務効率化や改善提案の提供
- DXツールの導入サポートおよび現場での最適化支援
- 独自のシステム開発から運用・保守に至るトータルサポート
物流DXには、IoT、ビッグデータ、AIのみならず物流業界ではあまり馴染みのない最新テクノロジー・ITツールも駆使したアプローチが業務プロセス変革の突破口になりうると当社は考えております。
当社では、実際にモノを運ぶという人手作業が残り続ける物流業界における「DX」に向けた一歩として、「今従事しているヒト」に焦点を当てた取組みが必要です。
▼今ある業務負荷をITの力で如何に削減・効率化していくか
▼データに不慣れな方でも如何にデータ活用できるようにするか
▼日々多忙の現場にて如何にデータ活用しやすい環境を構築するか
あらゆる高度なソリューション活用に当事者が時間を割けるよう、より使いこなせるよう
DXに向けた組織・環境作りが企業に求められます。
当社では創業当初より、UI・UXを意識した「ヒト」起点のシステム開発を手掛けており、物流関連企業様へのDX支援実績もございます。
▼データに不慣れな方でも如何にデータ活用できるようにするか
<実績例:物流業務アプリの開発支援>
日頃、物流業務で生じる分析や計算を機能として盛込み、手軽にデータ活用の一歩が踏み出せる業務アプリ。
▼日々多忙の状況下で如何にデータ活用しやすい環境を構築するか
<実績例:物流センター内での作業配分最適化システムの開発支援>
膨大な作業を「ロボット」でやるべきか「ヒト」でやるべきかを瞬時にデータ解析・選別し
作業管理者が日々Bestな運用を実現できるようにした支援システム。
まとめ
この記事では、2030年問題がどのように物流業界に影響を与えるのか、またその深刻さについて詳しくご紹介しました。2030年問題に対する解決策として、物流DXの推進は重要であると考えられます。
一方で、これまでデジタル技術を活用した事業変化という取り組みを経験されていないという方も多いのではないでしょうか。そのような方にとっては「そもそもどのように取り組みを進めたらよいのか」「誰に相談すればよいのか」という悩みを持たれていると思います。
当社、スパイスファクトリーでは「物流2030年問題」の解決を目指し、「物流DX支援特化型チーム」をドライバーの日である2024年10月18日に立ち上げました。物流DXには、IoT、ビッグデータ、AIのみならず物流業界ではあまり馴染みのない最新テクノロジー・ITツールも駆使した業務プロセスの変革が必要不可欠となります。当社では、これまでさまざまな社会問題をIT・DXのソリューションで解決してきました。
これらの知見・ノウハウを生かしつつ、私たちのパーパスである「1ピクセルずつ、世界をより良いものにする。」という理念を胸に、物流業界のDXを支援します。
物流DXについて悩まれている方、具体的な取り組みを進めたいものの進め方が分からないという方は、ぜひ一度当社までお問い合わせください。
記事の監修者
プロフィール
株式会社データ・シェフ 代表取締役
濵田 雅人(はまだ まさと)
業務改善コンサルティング会社の代表取締役として、業務フローの改善やデータ活用支援を提供。これまでに物流運営会社やシステム開発会社での物流関連システムの企画・設計・導入を担当し、効率化の推進に寄与。特に物流業界における業務改善やDX支援に注力し、豊富な現場経験に基づいた実践的なアドバイスが強み。物流センターの運営や経営に関するノウハウを持ち、理論だけでなく、システム開発等の知見を掛け合わせた具体的な現場改善策を提案できる点で高く評価されている。
About The Author
tomoaki_kaji