アジャイルの理念に沿って柔軟な開発を実現するためには、開発内容を整理したプロダクトバックログを定期的に修正・改善していく取り組みが必要です。
スクラム開発においては、このような活動は「バックログリファインメント」として位置づけられています。
バックログリファインメントは具体的にどのように進めていくべきものなのでしょうか。
この記事では、スクラム開発を得意とする当社、スパイスファクトリーが、スクラム開発におけるバックログリファインメントについて解説します。
Contents
バックログリファインメントとは
バックログリファインメントとはどのような取り組みなのでしょうか。まずはその概要をご紹介します。
バックログリファインメントとは
バックログリファインメントとはスクラム開発におけるイベントの一つであり、スクラムチームによって行われるプロダクトバックログのアイテムの見直し作業のことです。
スクラム開発のガイドラインである「スクラムガイド」によれば、バックログリファインメントは以下のように説明されています。
スプリント内でスクラムチームが完成できるプロダクトバックログアイテムは、スプリントプランニングのときには選択の準備ができている。スクラムチームは通常、リファインメントの活動を通じて、選択に必要な透明性を獲得する。プロダクトバックログアイテムがより⼩さく詳細になるように、分割および定義をする活動である。これは、説明・並び順・サイズなどの詳細を追加するための継続的な活動である。
※引用:Ken Schwaber & Jeff Sutherland「スクラムガイド」P12より
少しわかりにくい文章ではありますが、ポイントとして押さえておくべきは「リファインメントの取り組みはスクラムチームが開発内容を決定しやすいように、プロダクトバックログアイテムを小さく・詳細に定義しなおしていく活動」であるという点です。
なお、そもそもスクラム開発とはどのようなものであり、プロダクトバックログとは何であるかについては以下の記事で詳しく解説しております。
よろしければ、本記事と合わせてご覧ください。
バックログリファインメントの目的
スクラム開発においては、なぜバックログリファインメントによってプロダクトバックログの見直しを行わなければならないのでしょうか。
端的に言うと、柔軟なプロダクト開発を実現するというアジャイルの思想を実現するための取り組みとして必要だからだと考えられます。
プロダクトバックログは、スクラムチームの唯一の情報源として開発すべき要件やその優先順位が記載されています。
開発のスタート時にはプロダクトバックログを作成しますが、その後開発が進むについて実際に動作するプロダクトの確認による気づきや、ユーザーからの意見、もしくはビジネスニーズの変化などにより、開発すべき機能は変化していきます。
アジャイル開発の強みは、このような変化に柔軟に対応できる点にあります。
プロダクトバックログを定期的に見直していくことで、今、スクラムチームが取り組むべき開発内容を再精査することができます。
このようなアジャイルの強みを体現するためにも、イベントとしてバックログリファインメントに取り組むことが必要とされます。
バックログリファインメントで実施すべき内容
具体的に、バックログリファインメントではどのようにプロダクトバックログの見直しを行うべきなのでしょうか。
上述したスクラムガイドによる定義を踏まえると、見直しにおいて実施すべきは以下の4つの観点であると捉えられます。
- プロダクトバックログアイテムの粒度調整
- プロダクトバックログアイテムの詳細化
- プロダクトバックログアイテムの優先度調整
- プロダクトバックログアイテムの追加
プロダクトバックログアイテムの粒度調整
ひとつは、プロダクトバックログアイテムの粒度を調整する作業です。
各スプリントにおける開発を円滑に進めるためには、プロダクトバックの粒度は小さいほうが望ましいといえます。
広い概念を含むプロダクトバックログアイテムがあれば、より細かい単位で分解してきます。スクラムにおいては、明確かつ簡潔にプロダクトバックログを整理することが重要です。
また、場合により開発中にプロダクトバックログアイテムがどんどん追加されていくことで、意図せず内容の重複が発生することもあります。
プロダクトバックログ全体を見直してみて、統合すべき内容があれば統合することも検討します。
プロダクトバックログアイテムの詳細化
各スプリントにおいてプロダクトバックログのアイテムを開発していくためには、各アイテムが十分に詳細化されている必要があります。
具体的には、プロダクトバックログのアイテムがどのようなものであるか十分に説明されており、また開発にどの程度の作業量が必要であるか見積されていることが必要です。
また、チーム内においてプロダクトバックログアイテムの価値が共有されており、開発者は何を作ればよいか理解できている状況である必要があります。
スプリントにおける開発を円滑に進めるためにも、プロダクトバックログアイテムを詳細化し、チームメンバーに伝わる形としていく必要があります。
プロダクトバックログアイテムの優先度調整
プロダクトバックログアイテム全体を改めて確認し、優先順位の調整を行います。
様々なニーズや要望により、開発の優先度は常に変化していきます。
粒度の調整や詳細化の結果を踏まえつつ、バックログリファインメントのタイミングで優先度の見直しを行うとよいでしょう。
優先度調整の作業においては、プロダクトゴールを常に意識する必要があります。
もし当初定めたプロダクトゴールから変更を検討すべきなのであれば、プロダクトバックログアイテムの優先度だけではなく、全体の方向性となるプロダクトゴールについても見直すべきです。
プロダクトバックログアイテムの追加
もちろん、プロダクトバックログアイテムの追加についても必要に応じてリファインメントのタイミングで実施します。
当初想定されていなかったものの、新たに対応が必要になった要素があれば、このタイミングで追加し、併せて他のアイテムと合わせて優先度の調整などを実施していきます。
バックログリファインメントの実施方法
バックログリファインメントはどのような取り組みとして行うべきなのでしょうか。
以下では、「いつ」「誰が」「どのように」進めるべきかという各観点で整理します。
いつやるか
スクラムガイドによれば、バックログリファインメントの実施タイミングは「スプリントプランニング時」とされています。
スプリントプランニングはスプリントの起点となる活動であり、本スプリントにおいて何を開発するかを決定する作業です。
スプリントにおいて開発する内容を決定する際には、最新の状況に基づき整理されたプロダクトバックログが必要となります。
よって、このタイミングでのバックログリファインメント実施が有効です。
スプリントプランニング
スプリントプランニングはスプリントの起点であり、ここではスプリントで実⾏する作業の計
画を⽴てる。
~中略~
開発者は、プロダクトオーナーとの話し合いを通じて、プロダクトバックログからアイテムを
選択し、今回のスプリントに含める。スクラムチームは、このプロセスの中でプロダクトバッ
クログアイテムのリファインメントをする場合がある。それによって、チームの理解と⾃信が
⾼まる。
※引用:Ken Schwaber & Jeff Sutherland「スクラムガイド」P9より
誰が実施するべきか
スクラムガイドによれば、プロダクトバックログのリファインメントは「スクラムチーム」が実施することとされています。
リファインメントの活動はチーム全体で実施するべきものです。
一義的には、プロダクトバックログの管理はプロダクトオーナーの役割ですので、バックログリファインメントにおいてもプロダクトオーナーの意見・意思は重要なものとなります。
一方で、プロダクトオーナーはアジャイル・スクラムに精通しているとは限らず、適切な粒度でプロダクトバックログアイテムを整理することが難しいケースもあります。
そのような場合は、スクラムマスターや開発チームなどがサポートを行います。
また、開発規模の見積作業などは開発チームでなければできない作業です。
どのように実施すべきか
バックログリファインメントの進め方について、最新のスクラムガイドでは具体的な記載はありませんが、2017年版では「リファインメントは開発チームの作業の10%以下」を目安とするという記述があります。
たとえばスプリント期間が1週間の場合、2時間程度が一つの目安となるでしょう。
バックログリファインメントにかけるべき工数に悩まれる方は、ひとつの参考にするとよいでしょう。
また、スプリントプランニングを行う上では、開発対象となるプロダクトバックログアイテムがどのようなものであり、どのような価値を生むのかをチームが理解している必要があります。
バックログリファインメントの結果はチーム全体で共有していくことが重要です。
正しいバックログリファインメントで円滑なスクラム開発を
この記事では、スクラム開発におけるバックログリファインメントについて、その概要や実施内容、進め方についてご紹介しました。
スクラム開発を遠隔に進めていくためには、バックログリファインメントの活動が重要であることが伝われば幸いです。
スクラム開発を成功させるためには、バックログリファインメントをはじめとしてスクラムの考え方を十分に理解したスクラムマスター・エンジニアがチーム内にいることが重要となります。
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