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フィジビリティスタディとは?PoCとの違いや具体的な実践例と記入例を紹介

フィジビリティスタディとは?PoCとの違いや具体的な実践例と記入例を紹介

検証項目の記入例をダウンロードする

新規事業開発や ITシステムの導入などにおいては一般的に多額の投資が必要となります。

事前にその実現可能性や妥当性についてフィジビリティスタディを通して評価を行うことで、大きな失敗を避けることにもつながります。

この記事では、様々な企業の新規事業開発を支援してきた当社、スパイスファクトリーが、フィジビリティスタディについてご紹介します。

プロトタイプ開発

フィジビリティスタディとは?

まず初めに、フィジビリティスタディの概要についてご紹介します。

概要

フィジビリティスタディとは、計画された事業やプロジェクトなどが実現可能か、実施することに意義や妥当性があるかを多角的に調査・検討する取り組みを指す言葉です。

「フィジビリティ(feasibility)」とは「実現可能性」を意味する英単語であり、実現可能性について事前に検証するのがフィジビリティスタディの位置づけです。

新規事業の開発や ITシステムの導入においては、多額の投資が必要となります。投資の可否を判断するために、フィジビリティスタディを行い、その妥当性を判断します。

フィジビリティスタディに必要な要素

フィジビリティスタディを実施する上では様々な考え方が存在しますが、ここでは「技術面」「財務面」「市場面」「運用面」の 4つの観点で検証を行う例を紹介します。

これらの要素はそれぞれ以下のような位置づけのものです。フィジビリティスタディを行う対象にもよりますが、多くの場合これらすべての観点で検証が必要となります。

技術面

プロジェクトを進める上で必要となる技術や設備について検証する。

財務面

プロジェクトのコストを予想し、自社の財務面から投資が可能であるか、もしくは投資対効果があるかを検証する。

市場面

競合製品や市場ニーズなどの分析を通して、市場にプロダクトが受け入れられるかを検証する。

運用面

人的なリソースや組織、法的な要件などからプロジェクトの実施が可能であるかどうかを検証する。

PoCとの違い

フィジビリティスタディと混同されやすい概念に PoC(Proof of Concept:概念実証)が挙げあられます。

PoC は、ビジネスアイディアなどの実証を目的とした、プロトタイプ開発や検証のことを指します。

一般的に、机上で行われるケースが多いフィジビリティスタディに対して、PoC はプロトタイプシステムの開発などにより実際にユーザーが触ることができる試作品を開発し、現実世界で試行・検証を行います。

PoC を実施すること自体にも一定のコストがかかるため、フィジビリティスタディで机上検証を行い、実現可能性が十分に高いと判断できた場合に PoC のフェーズに移るという進め方も採用されます。

PoC については以下の記事でもご紹介しておりますので、よろしければご覧ください。

PoCとは。ビジネスにおけるPoC活用メリットや進め方を徹底解説

フィジビリティスタディを実施すべきタイミング

一般的に、新規事業開発や新製品・サービス開発は以下の流れで実施されます。

1.事業・サービス構想
事業やサービスのコンセプトメイキングや事業計画の立案を行う。

2.フィジビリティスタディ
主に机上で実現可能性を検証する。

3.コアバリュー策定
フィジビリティスタディの結果を踏まえ、事業やサービスの提供価値を定義する。

4.PoC
プロトタイプの開発などを通して、より具体的に実現可能性の検証を進める。

5.本番開発
ユーザーに製品・サービスを提供するため、リリースできるプロダクトを開発する。

上記の流れのとおり、フィジビリティスタディは事業・サービス構想を行った後、その内容が妥当であるか、実現性はあるのかを検証するために実施されます。

その後、PoC などを通してユーザーニーズへの合致状況の確認やプロダクトの品質向上、費用対効果の検証などを行い、本番開発に進む流れが一般的です。

フィジビリティスタディで検討する項目と実践例

以下では、上述した「技術面」「財務面」「市場面」「運用面」という 4つの検討項目について、より具体的にご紹介します。

ここでは、新規事業開発として「生成AI を活用したコールセンターの顧客対応支援」を例として取り上げたいと思います。

フィジビリティスタディをイメージしやすいよう、検証項目の記入例をご用意しております。よろしければ下記よりダウンロードしご覧くださいませ。

検証項目の記入例をダウンロードする

①技術面

技術面は、本例のような新規事業における大きな差別化要素となります。一方で、その技術が一般に提供するために十分な品質であり、また現実的に利用できるのかについては検証が必要です。

コールセンターにおける生成AI を利用した顧客対応が現実的なものであるのか、文献や既存技術の調査を行います。主な調査方法は研究論文や既存の開発事例の探索、生成AI を提供する企業へのヒアリングとなるでしょう。

ここで得られた情報から、生成AI により顧客対応が現実的に利用できる精度で行えるのかを机上で検討します。

②財務面

新規事業開発にはお金がかかります。今回実施しようとしているサービス開発にどの程度の投資が必要であるのか概算金額を把握します。

主に、プロダクトの開発コスト、宣伝・営業費用、導入や運用にかかる費用などが想定されます。

想定される投資金額をどのように賄うかも検討する必要があります。

自社が保有する資金で資金を賄えない場合は、外部からの調達について検討します。

大きくは金融機関からの融資と投資家からの投資という2つの選択肢があります。

融資は回収可能性が高いケースに、投資は回収可能性が低いものの大きなリターンが見込める可能性がある場合に活用されます。

今回例に挙げている挑戦的な新規事業の場合は、投資家からの投資や予算管理部門から決裁を引き出せるポテンシャルがあるかという観点での検討が必要でしょう。

③市場面

本サービスが市場においてニーズがあるかどうかもフィジビリティスタディの検討対象となります。

新規事業開発においては、既存の知識や人脈でのつながりなどからアイディアを思いつくことも多いですが、改めて提供するサービスに本当にニーズがあるのかを精査します。

市場調査のフレームワークとして良く知られているのがファイブフォースモデルです。

ファイブフォースモデルは、「業界内の競合」「代替品の脅威」「新規参入者の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」という 5つの観点で市場分析を行います。

コールセンターにおける顧客対応支援サービスにはどのようなものがあり、どのような価値を提供しているのか、また買い手となるコールセンター運営者はどの程度存在し、どの程度の投資余力があるのかなどを整理することで、市場分析を進めます。

④運用面

実際に新規サービスを提供していくためには、人的なリソースを含めた運用体制を整える必要があります。

一般的に、新規事業の提供においては「営業」「開発」「カスタマーサポート」などのメンバーが必要です。

近年では、カスタマーサクセスとして顧客の成功を支援する役割も重要視されつつあります。特に生成AI を活用するという今回の事例では、開発担当者として AI に関するスキルを持ったエンジニアも必要でしょう。

これらのスキルを持った人的リソースを確保できるかもポイントです。

フィジビリティスタディに役立つデータ一覧

主に机上で実施するフィジビリティスタディを進めていく上では、各種文献を基に調査を行っていくことになります。

ここでは、特に技術調査や市場調査などに活用できるデータについてご紹介します。

こちらでご紹介させていただくものにつきましては外部サイトへ遷移いたしますので、あらかじめご留意くださいませ。

情報通信白書・DX白書

国内の IT・通信に関する技術動向や市場動向は、総務省が年次で刊行している情報通信白書※1や、IPA が定期的に取りまとめを行っている DX白書※2にて知ることができます。
令和 4年度版の情報通信白書では、情報通信産業における労働人口の状況や ICT産業の市場動向、研究開発動向などについて大まかな整理がされています。クラウドサービスやモバイル端末などの市場シェアや AI、メタバースなどの長期的な市場規模予測など、フィジビリティスタディにおいて活用できる様々な情報が眠っています。
DX白書 2023 では、特に企業における DX の推進状況を網羅的に整理しています。データ利活用技術やシステム開発手法の章を見れば、事業開発においてどのような技術が利用でき、また先進的な企業はどのような技術を活用しているのかを把握できます。人材面では、デジタルスキルを持った人材とはどのようなものであり、どのように育成していかなければならないかといった観点でも情報を収集できます。

※1 総務省「令和4年度版情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r04.html

※2 独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.html

総務省統計局

市場調査を行う上で有効なのが政府の各省庁・機関が実施している統計調査です。これらの情報は、総務省統計局が一元的に取りまとめを行っています。
たとえば、市場調査を行う上では以下のような統計情報が参考になるでしょう。

〇国勢調査:地域別人口数、世帯状況、就労状態などを把握できる。5年間隔で実施されるため最新の状況とずれが生じる可能性がある点に注意が必要。
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/index.html

〇家計調査:家庭における家計の収支を把握できる。人々が何にどれだけお金をかけているのかを知ることができる。
https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html

〇サービス産業動向調査:産業分類別に売上高と従事する従業員数を月次で調査し、推移を確認できる。
https://www.stat.go.jp/data/mssi/index.html

〇小売物価統計調査:月次で主要品目についての販売価格を調査したもの。商品の価格変化状況を把握できる。
https://www.stat.go.jp/data/kouri/index.html

上記以外にも、目的に応じて様々な統計情報を活用できます。

民間コンサルティング企業の書籍

その他、民間コンサルティング企業においても様々なデータが公開されています。一例をあげると以下のとおりです。

〇野村総合研究所
https://www.nri.com/jp/knowledge/report

〇ボストン・コンサルティンググループ(BCG)
https://www.bcg.com/ja-jp/about/corporate-newsroom

〇NTTデータ経営研究所
https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/reports/

フィジビリティスタディで大きな失敗を避けよう

この記事では、フィジビリティスタディの概要や実践例、検討項目、活用できるデータソースなどについてご紹介しました。

フィジビリティスタディの段階でどれだけ精度高く検証を行えるかは、その後の PoC や本番開発の成否にも影響します。

当社ではフィジビリティスタディだけでなく、その後の PoC やプロトタイプ開発まで含めた支援サービスをご提供しております。

ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

無料相談はこちらから
https://spice-factory.co.jp/service/prototype/

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