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4つの事例で学ぶアジャイル開発 スクラム手法を取り入れた最適なアプローチとポイント

4つの事例で学ぶアジャイル開発 スクラム手法を取り入れた最適なアプローチとポイント

アジャイル開発という言葉は日本においても定着化したといえます。
一方で、アジャイル開発に継続的に取り組んでおり、成果を挙げているという企業は決して多くはありません。
アジャイル開発を文化として取り入れ、成果を挙げていくためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

本記事では、海外・国内におけるアジャイル開発の成功事例を取り上げつつ、成功事例から見るアジャイル開発のポイントについて整理します。

アジャイル開発とは

アジャイル開発とは
アジャイル=「機敏な」という言葉の意味からも分かる通り、アジャイル開発とは小さい開発スパンの繰り返しによって機敏にシステムの開発を行っていくものです。
アジャイル開発の特徴の一つとして、各開発単位が完了した際に、実際に動作するシステムを触って確認してみるという点が挙げられます。
これにより、段階的に開発したシステムの内容を確認し、場合により方向転換をすることも可能となります。

実際にアジャイル型で開発を行う場合には、アジャイル開発の理念を踏まえた様々なプラクティスに準ずるケースが一般的です。
たとえば、チームを組んでスプリント単位で開発サイクルを回していくスクラム開発や、ペアプロミングやテスト駆動開発などのプラクティスの集合体である XP(エクストリームプログラミング)などが挙げられます。

アジャイル開発の詳細については以下の記事でも紹介しておりますので、併せてご覧ください。

※参考記事:アジャイル開発とは? – システム開発を発注する時に知っておきたい開発手法の話

なぜアジャイル開発が世界で取り入れられているのか

アジャイル開発が取り入れられる理由
日本でもアジャイルもしくはアジャイル開発という言葉が一般化して久しいといえますが、特に海外においては日本よりも早くからアジャイル開発が取り入れられてきました。
これはなぜなのでしょうか。

すこし古い資料ではありますが、2012年に IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が分析を行った報告書※が参考となります。
同報告書では、アメリカのケースを例としてアジャイルが普及している理由を以下のように考察しています。

  • 米国ではソフトウェアに対する投資は「自社開発(内製)」「市販パッケージソフトの利用」が約2/3をしめている
  • また、他国に比べて多くのIT技術者がユーザ企業に所属している。米国のプロジェクトの形態の特徴は、3割が内製している点にある

つまり、ポイントは「アメリカにおいてはパッケージソフトの利用が基本であり、パッケージソフトが利用できない場合でも社内に在籍するエンジニアにより内製化している」という点にあります。

日本企業においては、多くの場合システム開発に携わるリソースを外部に委託しています。
外部委託においては、発注内容を事前に明確化し契約として定めることができるウォーターフォール型が適用しやすいと認識されていました。
一方で、社内リソースで開発を行うことができるアメリカをはじめとした海外においては、柔軟に開発方針を変更できるアジャイル開発のメリットを生かしやすいといえます。

※参考:独立行政法人情報処理推進機構「非ウォーターフォール型開発の普及要因と適用領域の拡大に関する調査」

世界のアジャイル開発成功事例

世界のアジャイル開発の成功事例
具体的に、海外で実施されているアジャイル開発では、どのような成功事例があるのでしょうか。
以下では 2点ほど事例をご紹介します。

テスラ

電気自動車の生産・販売を手掛けるテスラでは、アジャイルの文化を取り入れた開発を実施しています。
同社では、自動車というハードウェア面も含めた製品開発においてアジャイル開発を採用しています。

テスラのアジャイル開発の特徴は、その圧倒的なスピード感にあります。

たとえば、同社では毎日自動車のマイナーモデルチェンジイベントを実施しています。
一般的な自動車会社であれば、マイナーモデルチェンジであったとしても年に 1度実施すれば多い方といえるのではないでしょうか。
同社の開発では毎日 60個の部品が導入され、毎日61個以上の部品が削除されているといいます。
たとえばヘッドライトなどは 2日で設計・製造・テスト・リリースまでを実施し、変更されているのです。

また、テスラでは、予算を 1分ごとに変更しています。
一般的な会社では予算は 1年に一度もしくはクオーターごとに見直しを行うのが一般的です。
これにより、超速度での対応が実現できるのです。

※参考:Agile Tech EXPO 2022「Keynote -アジャイルコーチが学んだ「Tesla 真の凄さ」〜あなたが学んできたアジャイルとTeslaは何が違うのか〜」

FBI

アメリカの警察機関の一つであるFBI(連邦捜査局)では、当初ウォーターフォール型で失敗したシステム開発をアジャイル開発で実施することにより成功させました。

FBI では事件管理システムの高度化を進めるため 10年間の歳月をかけたものの、失敗に終わりました。
当初想定された予算である 6億ドルを超過し、支出額は総額で10.5億ドルに到達。
それでも、当初想定の半分程度の機能までしか開発できませんでした。この原因は、管理不足・不十分な設計・非効率な開発にありました。

FBI では、2010年からプロジェクトを刷新。ウォーターフォール型からアジャイル型の開発手法を採用し、プロジェクトの立て直しを実施しました。
結果として、プロジェクトの立て直しに成功。この背景には、アジャイルの哲学を徹底したことが挙げられます。

※参考:How the FBI Proves Agile Works for Government Agencies

日本のアジャイル開発成功事例

日本のアジャイル開発の成功事例
先進的な日本企業においても、アジャイル開発の取り組みが進んでいます。
以下では、日本企業におけるアジャイル開発の成功事例もご紹介します。

デンソー

早くからアジャイル開発に取り組んでいる企業として知られているのが自動車部品メーカーであるデンソーです。

デンソーでは、2017年からデジタルイノベーション室を設置し、アジャイル開発の取り組みをスタート。
アルゴリズム開発や部品製造などにおいてアジャイルによるプロダクト開発を進めています。

この背景には「自動車のソフトウェア化」という潮流があります。
従来、ハードウェアとして見られてきた自動車ですが、近年では自動運転や運転サポートなどその差別化要素がソフトウェアに移りつつあります。
このような時代において、デンソーでは早くからソフトウェアの重要性を意識し、対応を進めてきました。

デンソーでは、経営層やマネジメント層を対象にしたセミナーを開催するなど、アジャイル開発の重要性を全社的に理解してもらえるように機運を醸成してきました
開発現場においては、コーチングスタッフがアジャイルやスクラムの実践に関する助言や指導を行うなど、組織としてアジャイル開発を浸透させるための取り組みを進めています。

KDDI

KDDI では、国内企業としては早くからアジャイル開発を採用し、その取り組みを進めています。

KDDI は、子会社としてアジャイル開発手法やサービスデザインに基づきサービスを提供する「KDDIアジャイル開発センター株式会社」を設立。
同社では FPTジャパンとの提携による「アジャイル × ローコードプラットフォーム」の提供やワーケーション検索サービス「タビトシゴト」の開発など、様々な領域においてアジャイル開発によるサービス提供を推進しています。

※参考KDDIアジャイル開発センター株式会社 Webサイト

事例から見る、アジャイル開発成功のポイント

これらの事例を踏まえると、アジャイル開発を成功させるためにはどのような観点がポイントとなるのでしょうか。
以下では、3つのポイントを取り上げてご紹介します。

マインドセット

アジャイル開発の採用における重要な観点として、アジャイルマインドの浸透が挙げられます。

テスラでは、超高速の開発を実現するためにアジャイルマインドが全従業員に浸透している状態といえます。
日本企業においても、デンソーの例のように組織としてアジャイル開発の有効性や取り組み方を共有し、意識を変えていく取り組みがされています。

アジャイルを成功させるためには、まず組織内でのマインドセットの共有・定着化が重要といえるでしょう。

仕組み化

アジャイル開発が単発の取り組みとして終わってしまう企業も多いのではないでしょうか。

アジャイルを一度のみの取り組みに終わらせず、組織に根付かせていくためには仕組み化も重要です。
アジャイルを組に定着させていくためには組織面や知識面など様々な取り組みが必要です。

具体例を挙げると以下のとおりです。

  • 組織面
  • ・内製化の推進やジョブ型雇用制度の導入
    ・各種ツールの利用
    DevOpsの採用 など
  • 知識面
  • ・アジャイルのマインドセット共有
    ・スクラムなど、アジャイル型開発手法のスキルを備えた人材の育成
    ・アジャイルで実施したプロジェクトの成果・改善点を組織内で共有 など

スキルを持った外部リソースとの協業

内製化が進む海外企業では、社内のエンジニアによりアジャイル開発を進めることができます。
一方で、システム開発の内製化が進んでいる日本企業は少ない状況です。

そのような企業において検討したいのが、外部リソースの有効活用です。
KDDI の事例では、企業とアライアンスを結ぶことで不足する知見を補い、新たなサービスの提供を行っています。
これからアジャイルを本格的に取り入れていきたい企業や、さらにアジャイル開発を進めていきたい企業において、外部リソースの活用は有効な選択肢となるでしょう。
参考記事:システム開発リソース不足の原因と解決法とは?できること総まとめ

事例を参考に、自社にアジャイル開発を取り入れよう

この記事では、アジャイル開発の事例を踏まえたポイントについてご紹介しました。

当社、スパイスファクトリー株式会社ではこれまでに多くのお客さまに対してアジャイル開発の支援を実施してまいりました。
これらの経験から得た豊富なアジャイル開発・スクラム開発の知見を踏まえ、皆様のアジャイル開発の取り組みを支援いたします。
アジャイル開発でプロジェクトを実施したいという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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